- 更新日 : 2024年8月8日
四半期報告書とは?内容や提出期限を解説
有価証券報告書はニュースやSNSなどで話題になることがあり、ご存じの方が多いと思います。ただ、実際に上場企業の決算書を探してみると、有価証券報告書よりも四半期報告書の方が目に触れる機会が多いのではないでしょうか。
四半期報告書の内容としては、有価証券報告書の簡易的なものになります。この記事では四半期報告書について解説するとともに、対象企業や提出期限について説明していきます。四半期報告書について知ると会社の情報をより深く理解できるようになるでしょう。
目次
四半期報告書とは
四半期報告書とは、金融商品取引法(以下、金商法)の対象となる上場企業等が四半期ごとに作成する報告書です。
四半期報告書の内容は、企業の基本的な情報や事業の情報から四半期決算の情報までその企業に対する投資判断に役立つ情報です。
また、3月決算の会社を例にすると、四半期報告書は以下の期間に対応して開示されます。
期間 | 報告書 |
---|---|
第1四半期(1Q) 4月1日~6月30日 | 第1四半期報告書 |
第2四半期(2Q) 7月1日~9月30日 | 第2四半期報告書 |
第3四半期(3Q) 10月1日~12月31日 | 第3四半期報告書 |
事業年度 4月1日~3月31日 | 有価証券報告書 |
上記表で第4四半期がないのは、四半期報告書よりも情報量が多い有価証券報告書が作成されるためです。
また、各四半期の簡単な表示として「1Q」「2Q」などと表示されることがあります。
これはクォーター「Quarter」を英語表記したときの頭文字を取ったものです。
四半期報制度
四半期報告制度は、2006(平成18)年の証券取引法改正により創設されました。
この改正の背景には、これまで有価証券報告書と半期報告書のみの情報開示で年2回が原則でした。しかし、これは欧米諸国と比べ投資家が企業情報に触れる機会が少ないため、問題とされていました。
そこで、このような問題に対処するため、四半期報告制度が導入されました。
つまり、投資家へ適時に企業情報を開示するため、上場企業に四半期報告書の作成の義務が発生したことになります。
また、四半期報告制度は現在までに何度も改正され、企業の事務負担や迅速な開示を考慮して、四半期報告書の内容の一部を省略・簡略化が認められるようになりました。
このような経緯で四半期報告書は企業情報を適切に開示しつつも、迅速に開示することを目的として、有価証券報告書よりも簡易的な内容となっています。
四半期報告制度の対象会社
四半期報告制度の対象会社は証券取引所に上場している会社で、いわゆる上場企業のことです。金商法では、四半期報告書の提出義務を上場企業と店頭登録会社(旧ジャスダック市場)に定められていますが、現在は店頭登録会社が存在しません。
したがって、四半期報告書制度の対象会社は、上場企業という認識でいいでしょう。
また、上場企業は基本的に四半期報告書を作成する義務があります。
しかし、例外的に上場企業であるとしても主に銀行や投資ファンドなどでは、四半期報告書を作成せず、半期報告書を作成する場合が多いです。
理由は、自己資本比率規制によるもので、四半期報告書の連結財務諸表ではなく、半期報告書の個別財務諸表を作成する必要があるためです。
四半期報告書の提出期限
四半期報告書の提出期限は、例年通りであれば各四半期会計期間経過後45日以内です。
ただし、新型コロナウィルスの影響等で期限内に提出が難しい場合は、所管の財務局長の承認により提出期限を延長することができます。
例年通りの3月決算の会社を例にすると、以下のスケジュールで決算短信と四半期報告書が開示されます。なお、決算短信は決算速報のような書類であり、詳しくは後述します。
期間 | 決算短信 | 四半期報告書 |
---|---|---|
第1四半期(1Q) 4月1日~6月30日 | 7月末ごろ | 8月15日前 |
第2四半期(2Q) 7月1日~9月30日 | 10月末ごろ | 11月15日前 |
第3四半期(3Q) 10月1日~12月31日 | 1月末ごろ | 2月15日前 |
なお、上記表の決算短信は30日程度で計算しています。企業によっては、四半期決算日から10日から45日以内に開示されます。
四半期報告書の内容
四半期報告書の内容は、主に以下の通りです。
大項目 | 主な内容 |
---|---|
企業情報 | ・売上高や当期純利益などの重要な財務数値 ・重要な指標 ・重要な事業の内容 などの株価に重要な影響を与える情報 |
事業の状況 | ・事業等のリスク ・経営者によるキャッシュ・フローの説明 ・重要な契約 などの会社の事業を営む上で重要な情報 |
提出会社の状況 | ・発行済株式や新株予約権 ・自己株式 ・役員の状況 などの株式や株主に影響を与える情報 |
経理の状況 | ・四半期財務諸表 ・財務諸表に関する注記 ・セグメント情報 などの会社の決算の詳細 |
監査報告書 | 監査法人の意見が記載され、 基本的に無限定適正意見が表明されます これ以外の意見は四半期報告書の信頼性に問題があります |
上記の表よりさらに細かい内容になりますが、経理の状況に関して四半期報告書では連結財務諸表のみが開示されます。有価証券報告書では提出会社単体の個別財務諸表が開示されますが、四半期報告書で個別財務諸表は省略されます。
また、四半期報告書では第1四半期、第3四半期ではキャッシュ・フロー計算書が省略されます。対して、第2四半期ではキャッシュ・フロー計算書が開示されます。
四半期報告に監査は必要?
監査法人は、会社の決算情報に重要な間違いや虚偽がないかどうかを監査しています。監査の結果、重要な間違いや虚偽がなければ、決算情報を信頼できるという意味で無限定適正意見が表明されます。つまり、投資家は会社の決算情報を信じられることになります。
このような前提があるため、上場企業が開示する決算情報には監査報告書が付いています。基本的には無限定適正意見です。これ以外の意見の場合は決算情報に重要な間違いや虚偽があるため、証券取引所からの業務改善命令や上場廃止などの罰則があります。
また、四半期報告書に対する監査はレビューといわれ、有価証券報告書に対する監査と違いがあります。四半期レビューの方が有価証券報告書の監査よりも提出期限が短く時間が限られるため、簡素化された手続きになります。主な違いは、以下の通りです。
有価証券報告書の監査 | 四半期報告書のレビュー | |
---|---|---|
意見の形式 | 積極的形式 | 消極的形式 |
保証の程度 | 合理的保証 | 限定的保証 |
手続き | 突合や現物確認など | 質問や簡単な分析 |
決算短信や有価証券報告書との違い
上場企業が決算情報を開示するのは、四半期報告書だけでなく決算短信や有価証券報告書があります。それぞれ簡単にどんな書類か、四半期報告書との違いを確認していきましょう。
決算情報とは?四半期報告書との違い
決算短信とは、上場企業が決算情報を四半期報告書または有価証券報告書よりも早く開示することを目的とした決算速報の位置づけであり、各四半期と事業年度末の計4回開示されます。
さらに、決算短信の内容は主に財務諸表とその補足情報のため、四半期報告書または有価証券報告書よりも簡素化されています。
四半期報告書と決算短信との主な違いは、以下の通りです。
四半期報告書 | 決算短信 | |
---|---|---|
目的 | 迅速な情報開示 | 迅速な決算開示 |
提出期限 | 45日以内 | 30日~45以内 |
適用される制度 | 金商法 | 取引所のルール |
監査報告書 | あり | なし |
補足ですが、提出期限について、決算短信は決算情報の速報のため、四半期報告書よりも早く開示されます。したがって、四半期報告書の期限45日以内よりも早く開示されます。取引所のルールのため強制されませんが、早ければ早いほど望ましく10日ほどで開示する企業もあります。
また、監査報告書について四半期報告書には付いていますが、決算短信には付いていません。ただし、決算短信の決算数値と四半期報告書または有価証券報告書の決算数値は基本的に相違しないため、問題はありません。
有価証券報告書とは?四半期報告書との違い
有価証券報告書とは上場企業が年に1度、決算情報など投資判断に有用な情報を開示する書類です。3月決算の上場企業では、決算後に有価証券報告書が作成され、6月に開催される株主総会で重要な資料になります。たびたびニュースで取り上げられることがありますが、有価証券報告書に虚偽の記載をすると金商法違反をはじめとした極めて重い罰則があります。
また、四半期報告書と有価証券報告書との形式的な違いは、以下の通りです。
四半期報告書 | 有価証券報告書 | |
---|---|---|
目的 | 迅速な情報開示 | 有用な情報開示 |
提出期限 | 45日以内 | 3か月以内 |
適用される制度 | 金商法 | 金商法 |
監査 | レビュー | 監査 |
また、内容面では四半期報告書よりも有価証券報告書の方が、記載量が多く内容が豊富です。有価証券報告書に含まれる情報で四半期報告書に含まれない情報は、主に以下の通りです。
- 設備の状況
- コーポレートガバナンスの状況
- キャッシュ・フロー計算書
- 個別財務諸表
- 個別財務諸表に対する監査報告書
上記の他、さらに有価証券報告書の内容を知りたい方は、以下のリンクが参考になります。
四半期報告書の役割分担表テンプレート – 無料でダウンロード
上場申請には多くの手続きが発生します。ミスや漏れを防ぐためにも、役割分担をして進めていきましょう。
以下のテンプレートには、必要な項目が揃っていますので、内容を書き換えるだけでかんたんに作成できます。
ぜひこのテンプレートをダウンロードして、ご活用ください。
四半期報告書のまとめ
四半期報告書は第1四半期から第3四半期まであり、各四半期会計期間の終わりから45日以内に開示されます。決算数値の速報は各四半期の決算短信で、四半期報告書が開示される前に公表されます。
内容面では、四半期報告書は有価証券報告書よりも簡素な内容で、個別財務諸表が省略され、第1四半期と第3四半期はキャッシュ・フロー計算書が省略されます。
また、監査は四半期報告書に対してはレビューが行われ、有価証券報告書に対する監査よりも限定された手続きです。基本的に無限定適正意見が表明されます。
よくある質問
四半期報告書とは?
金融商品取引法の対象となる上場企業等が四半期ごとに作成する報告書です。
四半期報告書の内容は?
企業情報、事業の状況、提出会社の状況、経理の状況、監査報告書などが開示されます。
四半期報告書の提出期限は?
例年通りであれば各四半期会計期間経過後45日以内ですが、新型コロナウィルスの影響等で期限内に提出が難しい場合は提出期限を延長することができます。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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