- 更新日 : 2024年8月8日
フランチャイズ加盟金を経費計上する場合の勘定科目まとめ
フランチャイズ(FC)は、本部が加盟店にブランド力や経営のノウハウを提供する代わりに、加盟店から加盟金やロイヤリティを得る契約のことをいいます。
加盟店が支払う対価のうち、加盟金はフランチャイズ契約の初期に支払う費用です。加盟金はどのような勘定科目を使用して仕訳するのか、加盟店側の仕訳について具体例を交えて解説していきます。
フランチャイズ加盟金を経費計上する際の勘定科目
フランチャイズ加盟店が本部に支払う主な費用に、加盟金とロイヤリティがあります。
加盟金は、加盟店がフランチャイズに加盟する際に本部に支払う初期費用です。契約金である加盟金の支払いによって、加盟店は本部のノウハウやブランド力を使用する権利を得られます。
一方でロイヤリティは加盟金と異なり、定期的に支払いが発生するものです。ロイヤリティは本部の持つ権利の使用料にあたります。一定額をロイヤリティとする方式や、売上の一定割合をロイヤリティとする方式などがあります。
今回見ていくのは、加盟店が本部に支払う費用のうち、加盟金についてです。加盟金は権利使用の対価であるため、基本的に返還されません。将来的に返還の可能性がほとんどないことから、資産に計上せずに「支払手数料」として一時に費用計上するか、「長期前払費用」として資産計上し、効果が及ぶ期間にわたって少しずつ経費にしていくかのいずれかで処理します。
加盟金の税法上の扱い
国税庁の質疑応答事例によると、「ホテルチェーンに加盟するに当たり支出する加盟一時金」は税法上の繰延資産に該当すると回答があります。会計上は繰延資産に該当しませんが、税法上は支出の効果が1年以上にわたる特定の費用は繰延資産として扱うためです。
参考:ホテルチェーンに加盟するに当たり支出する加盟一時金|国税庁
質疑応答事例のように、加盟金はノウハウ提供などのサービスの提供を受けるためのもので、その効果が支払後も続くことから、税法上は繰延資産とみなされます。繰延資産に該当する場合、一時に償却するのではなく、支出の効果が認められる期間にわたって償却しなければなりません。ただし、総支出金額が20万円未満である少額の繰延資産は除かれます。
会計上の繰延資産と税法上の繰延資産の違いなどについては以下の記事で詳しく説明していますので、こちらも参照ください。
加盟金を支払手数料で仕訳する
前述のように、会計上における加盟金の処理は支払手数料または長期前払資産に該当します。しかし、税法に合わせた処理を行わないと税務調整が必要になるため、税法上の扱いに合わせて会計処理するケースも少なくありません。
繰延資産は、支出金額が20万円未満の少額のものについては、全額を支出事業年度に損金とすることが認められます。ただし、損金とするには会計上も全額費用に計上しなければなりません。
「支払手数料」で仕訳するケースとして考えられるのは、加盟金が20万円未満であった場合です。支出事業年度に一時に費用とするため、その後の処理は発生しません。支出時に以下の例のように仕訳をします。
【例】フランチャイズ加盟にあたり加盟金15万円を普通預金から支払った。
加盟金を長期前払費用で仕訳する
通常、加盟金は支出した事業年度のみに効果が及ぶものではないため、効果の及ぶ範囲にわたって少しずつ費用化していく会計処理が適しています。
税法上の加盟金は繰延資産の扱いになりますが、会計上の繰延資産は「創立費」「開業費」「株式発行費」「社債発行費」「開発費」に限定されます。そのため、繰延資産の勘定科目を使っての仕訳ができません。
そのため、加盟金は「長期前払費用」の勘定科目で資産計上し、効果の及ぶ範囲にわたって費用化する必要があります。以下の仕訳は、加盟金を支出したときの仕訳例です。
【例】フランチャイズ加盟にあたり加盟金150万円を普通預金から支払った。
なお、長期前払費用は効果の及ぶ範囲での費用化が求められますが、期間の定めがない場合、その範囲を適切に測定することは困難です。そのため、税法ではノウハウの頭金等の償却期間を5年(契約期間が5年未満のときはその有効期間)と定めていることを根拠に、基本的には5年で償却を行います。
【例】当期首に支出した加盟金150万円について、期末が到来したため償却を行った。
※計算:1,500,000×12/60=300,000円
貸方は長期前払費用償却など、費用の科目を使って仕訳をします。
長期前払費用については以下の記事で詳しく説明していますので、こちらも参照ください。
加盟金は支出額で勘定科目が異なる
フランチャイズの加盟金は、一般的に税法上の扱いに合わせた仕訳を行います。勘定科目は20万円を境目に判断され、加盟金への支出額が20万円未満は費用、20万円以上は資産計上となります。加盟金の支払い時には仕訳が必要な点と、資産計上時には償却の仕訳が必要になる点を押さえておきましょう。
よくある質問
フランチャイズ加盟金の勘定科目は?
支払手数料、もしくは長期前払費用の勘定科目で仕訳します。詳しくはこちらをご覧ください。
フランチャイズ加盟金の仕訳方法は?
税法上の扱いに合わせる場合、支払金額20万円未満のときは「支払手数料」、支払金額20万円以上のときは「長期前払費用」で仕訳します。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
会計の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
事務用品を購入した場合の勘定科目と仕訳例
会社で利用する事務用品にはさまざまなものがあります。文房具だけではなく、業務に利用するコピー用紙、インク、電卓など。これらは毎日の業務に欠かせないものです。 この記事では、事務用品についての勘定科目の選び方や仕訳について解説します。 事務用…
詳しくみる香典を経費にする時の仕訳に使う勘定科目まとめ
従業員や取引先などに会社として香典をお渡しする場合は、経費にできます。仕訳の際は、亡くなった方との関係性によって勘定科目を使い分けることが必要です。従業員やそのご家族の場合は福利厚生費、取引先の場合は接待交際費を使用しましょう。本記事では、…
詳しくみるキャンセル料が発生した場合の仕訳と勘定科目まとめ
本記事では、キャンセル料が発生した場合の勘定科目の使い方や、具体的な仕訳例を解説しています。キャンセル料はその内容によって、課税の取扱いが異なることは意外と知られていません。これまで何となく仕訳をしていたという人は、ぜひこの機会に正しいキャ…
詳しくみる特殊商品売買の基本と仕訳をわかりやすく解説
特殊商品売買とは、商品売買の中でも通常とは異なる販売、購入形態をとる売買をいいます。 「特殊な商品」の売買ではなく、商品販売形態、購入形態などが一般と異なるものです。 この記事では、特殊商品売買の種類や仕訳についての基本を解説します。 特殊…
詳しくみる健康診断費用は経費にできる?仕訳と勘定科目の解説
法人の場合、従業員の健康診断にかかった費用を福利厚生費の勘定科目で経費計上することが可能です。仕訳例を紹介するので、ぜひ参考にしてください。一方、個人事業主の場合は状況が異なるので注意が必要です。従業員や事業主本人の健康診断費用に関して、仕…
詳しくみる不動産取得税の勘定科目は?仕訳方法や取得価額に含めるかを解説
土地や建物を取得する際にかかる不動産取得税の勘定科目は、「租税公課」とするのが妥当です。償却できない土地や、耐用年数が長期となる建物の取得価額に含めて資産計上してしまうと、経費になるまでに長い期間がかかってしまいます。損金算入時期は納税通知…
詳しくみる