• 更新日 : 2024年8月8日

法人税の資本金には超えられない壁がある?

法人税には資本金によって大きな壁があるといわれています。資本金がその壁を超えるか超えないかによって、毎年支払う法人税等に多額の差が出てくることもあります。「1,000万円の壁」と「1億円の壁」について、また、それを利用した減資による節税対策について考えます。

資本金1,000万円の壁

平成18年の新会社法施行により、株式会社の最低資本金はなくなり、資本金の額に関わらず会社を設立できるようになりました。しかし、それ以前に設立された会社だと株式会社の資本金として必要最低限であった1,000万円を超すところが多いかもしれません。

1,000万円という壁によって、支払うべき税金が少なくなる場合が2つあります。

1. 会社設立時に資本金が1,000万円未満の場合の消費税

開設後2事業年度分の消費税が免除され、節税に大いに役立ちます。

2. 資本金が1,000万円以下の場合の均等割

法人住民税の均等割税金(所得に関わらず徴収される税金で、その額は会社の資本金、従業者人数によって決まる)が1,000万円を境に変わります。

例えば、東京23区に会社がある場合、従業者数が50人以下で資本金1,000万円以下のケースでは均等割7万円であるのに対し、1,000万円を超える企業は18万円かかります。この均等割は毎年払わなければならないので、11万円の差であっても積み重なると大きいものです。資本金が1,000万円を少しだけ超えている場合は、減資も視野に入れるといいでしょう。

資本金1億円の壁

1億円は大きな壁ともいえるほど、超えるか超えないかによってさまざまな違いを生み出します。資本金1億円以下の中小企業でいることのメリットについて解説します。

1. 法人税を計算する際に、軽減税率を利用することができます。

資本金1億円超の場合、法人税率は現在23.2%、1億円以下の中小企業では年800万円以下の所得に対して15%の軽減税率が適用されます。

2. 交際費は800万円まで、全額を損金にすることができます

通常は、交際費は損金不算入(会計上は費用とするが、税務上では費用に認められない)となりますが、中小企業では、接待飲食費の50%または800万円までは損金として計上でき、その金額を超えた部分のみが損金不算入となります。

一方、資本金1億円を超える場合は800万円までの定額控除がなく、接待飲食費の50%が損金算入が可能です。その他の交際費は全て損金不算入となります。

※資本金が100億円を超える法人は、損金算入額はなく、交際費は、全額損金不算入となります。

3. 30万円未満の少額減価償却資産が年間300万円まで損金として認められます

(令和6年3月31日までに取得し、事業用に使用する場合)

資本金が1億円超えの会社では、固定資産(使用期間が1年未満または10万円未満のものを除く)は、購入年度に全額を損金にすることができません。しかし、1億円以下である場合は、主に次の場合を除き、30万円未満の少額減価償却資産が損金として計上できます。

  • 従業員500人超の法人及び大規模法人(資本金1億円以上、資本金を有しない法人の従業者数1,000人超)が半分以上の額の資本金、出資金を所有。
  • 2つ以上の大規模法人が3分の2以上の額の資本金、出資金を所有。

4. 特定同族会社の留保金課税が免除されます。

親族が株式の過半数を持つ特定同族会社では、配当を抑えるなどして節税をする傾向があるため、追加で課税がかかります。しかし、資本金が1億円以下の会社の場合、特定同族会社であってもこの課税がかかりません。

5. 欠損金の繰り戻し還付が受けられます。

今期に赤字の場合、前期の税金を返してもらえるという欠損金の繰り戻し還付制度があります。従来はどの会社でも使えましたが、現在では会社の解散等があった場合、または資本金1億円以下の会社のみが使えます。

6. 法人事業税の外形標準課税が免除されます。

外形標準課税は従業員数、床面積など、外から客観的に判断できる要素により、税額が決まる法人税です。ただし、1億円以下の会社の場合、支払いの必要がありません。

7. 法人住民税の均等割税金が安くなります。

資本金1,000万円を境に法人住民税の均等割税金の値段が上がったのと同様に、1億円を超えるとさらに高くなります。東京23区での50人以下の企業の場合、1,000万円超1億円以下では18万円ですが、1億円を超えると10億円以下までは29万円です。

減資とは

減資とは、株式の合体や消却などの方法で資本金を減少させることをいいます。法人税の節税にもなりえますが、株主総会の議決が必要だったり、みなし配当となり税金がかかったりする場合があるので、安易に減資=節税とは考えず、しっかりした状況判断をする必要があります。

以上でみたように、資本金が1,000万円、1億円を超えると税金に大きな違いが出てきます。そのため、資本金を常に意識し、1,000万円、1億円を少し超えているといった場合には、会社の状況によっては減資も視野に入れてみてもいいでしょう。


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