• 作成日 : 2023年8月10日

減価償却明細書とは?テンプレートを基に書き方や注意点を解説

減価償却明細書とは?テンプレートを基に書き方や注意点を解説

減価償却明細書とは、企業が保有する資産の減価償却状況を一覧にした帳簿を指します。個々の固定資産の減価償却の流れを記載した固定資産台帳とは別の帳簿です。

減価償却明細書があると「少額減価償却資産の取得価額に関する明細書」の別表を作成しやすくなるでしょう。この記事では、減価償却明細書の書き方や注意点について解説します。

減価償却明細書とは?

減価償却明細書(げんかしょうきゃくめいさいしょ)とは、企業が保有する固定資産の減価償却に関する明細を一覧にした、減価償却費の明細書です。

減価償却明細書により、どの資産がどれだけ減価償却されているのか、期末の帳簿価額はいくらなのかなどが一目でわかるようになります。減価償却費や固定資産の明細なので、会計上は補助簿です。

減価償却明細書で使用する明細は、科目、資産名、取得年月、取得価格、未償却残高、耐用年数、償却率、月数、当期償却費、期末簿価が挙げられます。

確定申告においては、減価償却明細書は提出必須ではありません。しかし、自治体に償却資産申告をする際に、減価償却明細書の提出が必須の場合もあります。

減価償却自体については、下記記事で詳しく解説しています。

少額減価償却資産を経費や損金算入する際の基礎データにできる

中小企業者は「中小企業者の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」により、取得価額が30万円未満の減価償却資産を損金算入できます。

この制度を利用する際は、「別表16(7)」と呼ばれる「少額減価償却資産の取得価額に関する明細書」の添付が必須です。

別表16(7)は、減価償却明細書と近い記載内容です。そのため、減価償却明細書を使って別表16(7)を作成することも可能です。

個人事業主の場合は、青色申告決算書の「減価償却費の計算」欄に必要事項を記載することで、取得価額が30万円未満の減価償却資産を経費として算入できます。この場合も、減価償却明細書をベースにして作成すると良いでしょう。

  固定資産台帳との違い

減価償却明細書と似た帳簿として、固定資産台帳が挙げられます。

固定資産台帳は、1つの固定資産について減価償却の履歴を記載する帳簿です。つまり、固定資産を基準にして記帳されるものです。

一方、減価償却明細書のベースは「減価償却費」です。減価償却費が発生する固定資産を一覧にした帳簿になります。両者は性質の違う書類ですが、記載項目を増やして1つにすることも可能です。

減価償却明細書のテンプレート(エクセル)

減価償却明細書の記帳には、エクセルで作成したテンプレートが便利です。以下のページよりダウンロードが可能ですので、ぜひご活用ください。

減価償却明細書の書き方

それでは、前章で紹介したエクセルテンプレートを参考に、減価償却明細書内の項目や書き方を解説します。

減価償却明細書の書き方

科目

科目欄には、購入した資産の勘定科目名を記載します。建物の場合は「建物」、車であれば「車両運搬具」、パソコンなら「備品」です。

実際に購入した品物の詳細は次の「資産名」で詳しく記載します。「科目」には、会計上の分類となる勘定科目のみ記載しましょう。

資産名

資産名には、資産の具体名を記載します。科目が「車両運搬具」の場合は、ここで車種名を記載しましょう。同種の車が複数ある場合は、社内で個別に割り振られた識別番号やナンバープレート番号を記載して、どの車についての記載か判別できるようにしておきましょう。

パソコンやプリンターなどの備品も同様です。識別番号や設置場所を記載し、どこのどの備品についての記載かわかるようにしておきます。

取得年月

取得年月には、購入した年と月を記載します。月の途中で購入した場合も、購入月を記載しましょう。

定額法は平成19年4月1日より、定率法は平成19年4月1日、平成24年4月1日よりそれぞれ償却率が変わっています。減価償却費を正確に計上するためには、購入した年月も正確に記載することが大切です。

取得価格

取得価格は、購入した際の価格です。仕訳の際に、各勘定科目で使用した金額を記載します。具体的には、仕訳の際に借方に記載する「建物」「車両運搬具」「備品」などで使用した金額です。

ここでは、割賦払い、掛取引といった支払方法は問いません。購入したときの資産価格を記載しましょう。

未償却残高

未償却残高とは、減価償却が済んでいない金額を指します。

購入初年度は、購入時点では減価償却がまだ行われていません。したがって、取得価格と未償却残高の金額は同じです。期末になった時点で未償却残高から当期償却費(後述)を引き、期末簿価を算出します。

2年目以降の未償却残高は、取得価格から減価償却費もしくは減価償却累計額を引いた期末簿価と同じ価格です。

耐用年数

耐用年数は、法定耐用年数です。中古で購入した場合は、簡便法にて耐用年数を算出し記載します。簡便法の計算方法については、後述します。

以下は、国税庁が発表している法定耐用年数をまとめた記事です。法定耐用年数を調べる際の参考にしてください。

償却率

償却率は、減価償却費を計算する際に使われる割合です。償却率は耐用年数や計算方法により変わります。計算方法と耐用年数に沿って、正しい償却率を使用しましょう。

定額法は平成19年4月1日より、定率法は平成19年4月1日および平成24年4月1日よりそれぞれ償却率が変わっています。購入年度によって償却率が変わる点にも注意が必要です。

月数

月数には、減価償却の対象月数を入れます。月の途中で資産を購入した場合、入力するのは購入月から決算月までの月数です。この数字を基準として、当期の減価償却費を計算します。1年間継続して所有している場合は「12」と記載しましょう。

当期償却費

当期償却費は、当期に償却される減価償却費です。月の途中で購入した場合は、年額を12で割り、月数を乗じた額になります。

前章で紹介したエクセルのテンプレートでは、数式が入力済みです。未償却残高、耐用年数、月数を入力することで、自動で登記償却費の算出が可能となっています。

期末簿価

期末簿価は、期末時点での帳簿上の資産価値となります。未償却残高から当期償却額を引いた額です。

翌会計年度に減価償却明細書を作成する際は、前期の期末簿価が来期の未償却残高となります。こちらも、当社テンプレートでは自動で算出されるよう数式が入力されています。

減価償却明細書を書く際の注意点

減価償却明細書を書く際は、減価償却方法や期間を適切に選ぶといった注意点があります。ここからは、減価償却明細書を書く際の注意点について解説します。

減価償却方法の選択

減価償却明細書では、正しい減価償却方法を選択することが大切です。

個人事業主の場合は、定額法を使用して償却します。

法人の減価償却は、基本的に定率法を使用します。しかし、例外として定額法と使用する資産が複数存在します。定率法の例外となる資産は下記のとおりです。

減価償却方法資産の種類
常に定額法建物、構築物、建物に附属する設備、ソフトウェア
届出により定額法の選択可能機械設備、車両運搬具、工具器具備品
常に定率法上記以外の資産

定額法や定率法の概要、計算式などについては、下記記事で詳しく解説しています。

減価償却期間の適切な設定

減価償却明細書においては、減価償却方法だけでなく期間も適切に設定しましょう。減価償却対象の資産には、これだけの期間は使用に耐えられるとされる「耐用年数」が法律で決められています。

中古で購入した場合、法定耐用年数をそのまま使用してはいけません。中古で資産を購入した際は、別途耐用年数の見積もりが必要です。耐用年数の見積もりが困難な場合は、簡便法を用いて次の計算式で算定します。

中古資産の状態計算式
法定耐用年数の全部を経過した資産法定耐用年数 × 20%
法定耐用年数の一部を経過した資産(法定耐用年数-経過年数)+  経過年数×20%

ただし、中古資産の購入金額が、その資産を新品で購入した場合の取得価額の50%以上である場合は、法定耐用年数となります。

中古資産を購入した場合、耐用年数の算定は購入年度にのみ可能です。減価償却明細書を書くにあたっては、正しい耐用年数で減価償却期間を適切に設定することが重要です。

年度途中に資産を購入した場合

年度途中で資産を購入した場合は、減価償却費は年額を月割した額を計上しましょう。3月決算の会社で10月に資産を購入した場合、10月~翌年3月までの6ヶ月分を減価償却額として計上します。月の途中で資産を購入した場合も、ひと月分の計上です。

年間の減価償却費が1万5,000円だった場合を例にすると、以下の式で6ヶ月分の減価償却費を求められます。

15,000(円)÷12(ヶ月)×6(ヶ月)=7,500

減価償却明細書を作成すると資産の減価償却状況を把握できる

減価償却明細書は、会社が所有する資産の減価償却状況を一覧にした帳簿です。1つの固定資産について記帳する固定資産台帳とは別の帳簿ですが、同じ帳簿として扱う企業もあります。

法人が減価償却をする場合は、資産の種類により、定率法か定額法かが変わります。個人事業主と法人でも減価償却方法が変わるので、正しい算出方法や償却期間を選択しましょう。

減価償却明細書を作成することで、減価償却状況を把握できます。確定申告で提出する書類のベースにもなるので、ぜひこの機会に作成することをおすすめします。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談していただくなど、ご自身の判断でご利用ください。

関連記事