- 更新日 : 2024年9月6日
請求金額より少なく入金された場合の仕訳方法は?パターン別に解説
請求した売掛金に対して、入金が足りない場合はどのように対応すべきでしょうか。取引先への督促や仕訳の方法がわからない方も多いでしょう。
過少入金が発生した場合、まずは原因を特定することが重要です。本記事では、過少入金が起こる要因や仕訳の方法、対処法などを詳しく紹介します。
目次
請求金額より少なく入金されるときのよくある原因
請求金額より少なく入金される際のよくある要因は、次の通りです。
- 振込手数料を引いて入金された場合
- 振込金額の入力ミス
- 所得税を源泉している
それぞれの内容を見ていきましょう。
振込手数料を引いて入金された場合
請求金額より入金が少ない場合に一番多い原因としては、振込手数料が差し引かれている場合です。請求金額から銀行所定の振込手数料分を、差し引いて振込しているため数百円程度少ない金額となっています。
ここで確認しておくべきなのは、振込手数料を差し引くことをこちらが了承しているかどうかです。先方が勝手に振込手数料を差し引いているのであれば、その旨は伝えなければいけません。今後の対処法としては請求書に振込手数料は負担しないことを、記載しておきましょう。
振込金額の入力ミス
請求金額より入金が少ない場合、先方の振込ミスというケースもあります。このようなケースでは不足分の支払いを依頼する必要がありますが、伝えにくい場合もあるでしょう。しかし、先方が間違えたことに気づいていない可能性もあるため、必ず伝えるようにしましょう。
また、振込ミスに早く気づくためにも、日々チェックすることも重要です。
所得税を源泉徴収している
請求金額より入金が少ない場合の要因として、源泉徴収して振込している場合もあります。取引先がフリーランスの個人事業主の場合、取引内容によっては所得税の源泉徴収の対象です。このような場合取引先のほうで税金分を差し引く必要があるため、請求金額より低い金額となってしまいます。
対処法として、請求書にあらかじめ源泉徴収の金額を表示しておくとよいでしょう。事前に表示をしておけば、請求金額と入金額を一致させられます。
請求金額より少なく入金された場合の仕訳方法
請求金額よりも少ない金額が入金された場合の仕訳について、次のケース別に紹介します。
- 翌月に合算して請求する場合
- 少ない金額を督促する場合
- 値引きする場合
翌月に合算して請求する場合
毎月取引がある取引先であれば、翌月に不足分を合算して請求することもできます。まずは、売上時(請求時)の仕訳から見ていきましょう。
借方 | 貸方 | 摘要 | ||
---|---|---|---|---|
売掛金 | 105,000円 | 売上高 | 105,000円 | 〇〇商事分 |
10万5,000円の請求に対し、5,000円不足の10万円入金がありました。
借方 | 貸方 | 摘要 | ||
---|---|---|---|---|
現預金 | 100,000円 | 売掛金 | 100,000円 | 〇〇商事分 |
この時点で売掛金の5,000円は保留にします。不足分の5,000円を次回の請求時に上乗せして請求することで、不足分が解消します。
少ない金額を督促する場合
不足分を督促して、再度入金してもらう場合の仕訳です。請求時の仕訳は先ほどと同様です。
借方 | 貸方 | 摘要 | ||
---|---|---|---|---|
売掛金 | 105,000円 | 売上高 | 105,000円 | 〇〇商事分 |
10万5,000円の請求に対し、5,000円不足の10万円入金がありました。
借方 | 貸方 | 摘要 | ||
---|---|---|---|---|
現預金 | 100,000円 | 売掛金 | 100,000円 | 〇〇商事分 |
この時点で不足分が5,000円あり、こちらを督促します。不足分が入金になった場合の仕訳はこちらです。
借方 | 貸方 | 摘要 | ||
---|---|---|---|---|
現預金 | 5,000円 | 売掛金 | 5,000円 | 〇〇商事分 |
これで不足分の売掛金が解消します。
値引きする場合
入金額が少なかった場合、大事な取引先で不足分が少なかったのであれば値引きする場合もあるでしょう。不足分を値引きする場合の仕訳を見ていきましょう。請求・入金までの仕訳は同じです。
借方 | 貸方 | 摘要 | ||
---|---|---|---|---|
売掛金 | 105,000円 | 売上高 | 105,000円 | 〇〇商事分 |
10万5,000円の請求に対し、5,000円不足の10万円入金がありました。
借方 | 貸方 | 摘要 | ||
---|---|---|---|---|
現預金 | 100,000円 | 売掛金 | 100,000円 | 〇〇商事分 |
不足分5,000円を値引きする場合の処理は、こちらです。
借方 | 貸方 | 摘要 | ||
---|---|---|---|---|
売上値引 | 5,000円 | 売掛金 | 5,000円 | 〇〇商事分 |
不足分を売上値引として処理することで、売掛金の不足分が解消します。
請求金額より多く入金された場合の仕訳方法
取引先のミスなどで、請求金額よりも多く入金される場合もあるでしょう。多く入金された場合の仕訳を、ケース別に紹介します。
- 全額返金する場合
- 多かった金額のみ返金する場合
- 翌月に精算する場合
- 収益として処理する場合
全額返金する場合
まずは、全額返金する場合の仕訳から見ていきましょう。10万円の請求に対し、10万5,000円の入金があった場合の仕訳は次の通りです。
借方 | 貸方 | 摘要 | ||
---|---|---|---|---|
現預金 | 105,000円 | 売上 | 100,000円 | 〇〇商事分 |
仮受金 | 5,000円 | 〇〇商事分 |
多く受け取った金額は、仮受金として処理します。その後返金した場合の処理は、下記の通りです。
借方 | 貸方 | 摘要 | ||
---|---|---|---|---|
売上 | 100,000円 | 現預金 | 104,780円 | 〇〇商事分 |
仮受金 | 5,000円 | 現預金 | 220円 | 〇〇商事分 |
振込手数料は先方負担としています。もしこちら側の負担とする場合は、支払手数料などで処理するとよいでしょう。
多かった金額のみ返金する場合
続いて、多かった金額のみを返金する場合の仕訳を見ていきましょう。入金された時点での仕訳は、先ほどと同じです。
借方 | 貸方 | 摘要 | ||
---|---|---|---|---|
現預金 | 105,000円 | 売上 | 100,000円 | 〇〇商事分 |
仮受金 | 5,000円 | 〇〇商事分 |
差額の5,000円のみを返金します。
借方 | 貸方 | 摘要 | ||
---|---|---|---|---|
仮受金 | 5,000円 | 現預金 | 4,780円 | 〇〇商事分 |
現預金 | 220円 | 〇〇商事分 |
10万円は売上としてすでに処理しているため、仕訳には加えません。過入金はあまり多く発生することはないため、摘要欄に詳細を記載しておくとよいでしょう。
翌月に精算する場合
毎月取引のある取引先であれば、翌月に精算することもあるでしょう。翌月に精算する場合の仕訳を見ていきましょう。入金された時点での仕訳はこれまでと同様です。
借方 | 貸方 | 摘要 | ||
---|---|---|---|---|
現預金 | 105,000円 | 売上 | 100,000円 | 〇〇商事分 |
仮受金 | 5,000円 | 〇〇商事分 |
翌月に精算することが決まった場合、仮受金を前受金に振替します。振替は加入金部分のみに行うため、売上は記入しません。
借方 | 貸方 | 摘要 | ||
---|---|---|---|---|
仮受金 | 5,000円 | 前受金 | 5,000円 | 〇〇商事分 |
翌月に精算が終わった時点で、前受金を正式に売上へと計上します。
借方 | 貸方 | 摘要 | ||
---|---|---|---|---|
前受金 | 5,000円 | 売上 | 5,000円 | 〇〇商事分 |
収益として処理する場合
加入金の金額が少額などの場合は、返金することなく収益として処理する場合もあるでしょう。収益として処理する場合の仕訳を見ていきましょう。まずはこれまでと同様に加入金部分を仮受金として処理します。
借方 | 貸方 | 摘要 | ||
---|---|---|---|---|
現預金 | 105,000円 | 売上 | 100,000円 | 〇〇商事分 |
仮受金 | 5,000円 |
取引先と交渉の結果、収益として処理することになった場合の仕訳は下記の通りです。
借方 | 貸方 | 摘要 | ||
---|---|---|---|---|
仮受金 | 5,000円 | 雑収入 | 5,000円 | 〇〇商事分 |
加入金を雑収入として処理することで、加入金が解消されます。
請求金額より少なく入金された場合の請求の流れ
請求金額より少なく入金されることは、あまり多くありません。そのため発生した場合にどのように対応すべきかわからない方も多いでしょう。不足部分を請求する際の流れを紹介していきます。
入金不足の確認
入金不足が発生した場合、まずはその原因を特定しましょう。入金不足の要因がこちらにある可能性があるため、必ず要因を特定したうえで取引先に連絡するようにしましょう。入金不足となってしまう要因はパターン化されています。
あらかじめ入金不足となる要因を知識として持っておくと、要因がどのパターンにあてはまるかの検証が行えるため効率がよいです。理由が自社にある場合には、すみやかに対処法を考える必要があります。
顧客への連絡
入金不足の要因が取引先にある場合は、連絡して不足分を請求しましょう。先方の勘違いの場合も多いため、すぐに差額分を入金してくれるでしょう。中には、電話連絡だけでは対応して貰えない場合もあります。何度も連絡しても入金してくれない場合は、内容証明郵便を送ると効果的です。
次回の請求に合算
継続的に取引のある取引先であれば、翌月など次の取引で精算をしてもらう方法もあります。次回の請求に不足分を上乗せして請求することで、不足分が解消できます。ただし、必ずしも次回の請求で払ってくれるわけではないため、信頼できる取引先にのみ対応しましょう。
督促状の送付
督促をしても入金不足が解消しない場合は、前述のように内容証明郵便が効果的です。内容証明郵便とはどのような書類を誰に送ったか証明できるため、「そんな書類は送られていません」ととぼけられてしまうことを防げます。
内容証明でも解決しない場合は訴訟を検討することになります。60万円以下であれば、簡易裁判所で少額訴訟が可能です。訴訟を起こされることで、入金をしてくれるケースもあります。
請求金額と異なる入金を防止するために
請求金額よりも少なく入金をしてしまう間違いは、受けとる場合だけでなく、支払う場合でも発生してしまいます。過少入金を防ぐためには、請求書のダブルチェックやマニュアルの整備などによる事務ルールの制定が効果的です。事務ルールを統一することで、誰が行っても常にエラーのない正しい事務が行えます。
取引先がミスをしないための働きかけも重要です。請求書を送った場合は送りっぱなしにするのではなく、内容に間違いないか確認のメールも送るとよいでしょう。また、支払方法が変わる場合などは、できるだけ早めに案内するようにしましょう。
自分たちが入金する場合も、振込を実行する前に間違いがないか確認する習慣をつけることが大事です。電子請求書であれば間違いを機械的に判断できるため、紙の請求書に比べるとミスの削減が期待できます。
請求金額より入金が少ない場合は適切に対応しよう
請求金額よりも入金額が少なかった場合、まずは原因を特定しましょう。過少入金の原因にはパターンがあるため、今回の記事で紹介しているようなパターンを知っておけば効率よく検証ができます。
取引先へ連絡する際には、できるだけ早く連絡するようにしましょう。督促の電話はしにくいかもしれませんが、時間がたてばたつほど連絡しにくくなります。不足分を請求する際には、毎月取引のある信頼できる先であれば、翌月で精算する方法もあります。督促をしても入金してくれない場合は、内容証明郵便も検討しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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