• 更新日 : 2025年2月4日

支払サイトとは?意味や計算方法、決め方を解説

支払いサイトとは締め日から支払い期日までの期間のことです。個人で例えると、クレジットカードの請求金額が確定してから、口座引き落としの日までのことです。長すぎると何を買ったか忘れてしまい、早すぎると給料日との関係で困ってしまいます。

この記事では、支払サイトについて、もう少しビジネス的に掘り下げていきます。

支払サイトとは

支払サイトとは、取引期間の締め日から支払期日までの期間のことです。ビジネスの現場で、支払サイトは掛取引(かけとりひき)や約束手形とセットでよく使われます。

掛取引も約束手形も共通するのは後払いで、代金を確定させてからいつ支払のかをハッキリさせなければいけません。このように代金を確定させてから支払日までのことを支払サイトといいます。

支払サイトは取引代金の締め日から支払日までの猶予期間のこと

買い手(支払う側)からすると、支払サイトは猶予期間になります。掛取引は支払サイト30日で行わることがよくあり、別の言い方で「月末締め翌月末払い」ともいわれます。

「月末締め翌月末払い」の場合、1ヶ月間の月初から月末までが取引期間になり、この期間の注文代金を確定させてまとめます。注文代金の支払期日は翌月末になるため、買い手からすると30日間の猶予期間があり、支払期日までに代金を準備する必要があります。

支払サイトの語源と英語表現

支払サイトの「サイト」は日本独特の言い回しです。英語で「サイト」は、「Sight」または「Site」の表記です。

前者の「Sight」は直訳で視覚や見えることになり、後者の「Site」は地点や場所、ウェブサイトを意味します。どちらも「期日」や「期間」という意味になりません。

英語で支払サイトをいうと「Payment term」や手形の支払期間を表す「Usance」などが使われます。

支払いサイトの一般的な長さ

一般的に支払いサイトの長さは、30日または60日である場合が多いです。手形取引の場合は、90日〜120日になることが多いでしょう。

ここでは、支払いサイトの長さについて解説します。

30日(月末締め・翌月末払い)

30日が支払いサイトの場合は、売上を月末で締めて翌月末に支払うことが多いです。買い手と売り手の双方が注文内容と代金を確認し、余裕をもって請求書を発行するためには十分な期間といえるでしょう。

月単位で債務や売上高の数字を把握でき、買い手側・売り手側ともに出入金の管理がしやすいため、多くの取引で採用されています。

特に売り手側にとっては1ヶ月ごとに前月の売上を回収でき、資金を早く入手できるため、理想的な長さといえるでしょう。

60日(月末締め・翌々月末払い)

60日が支払いサイトの場合は、月末締めの翌々月末払いが代表的なパターンです。現金で取引する際は、最大限の支払い猶予期間となります。

買い手側にとっては長い期間支払いが猶予されるため、資金繰りに都合の良い長さです。一方、売り手側は締めの月を含めると支払いまでに最大で3ヶ月間の期間が猶予されることになり、他の入金で資金を確保できない場合は資金繰りに影響する可能性があるでしょう。

なお、取引相手が下請業者の場合、代金の支払いサイトは60日以下が原則です。下請代金支払遅延等防止法(以下、下請法)により、下請業者に対する代金の支払いは商品やサービスが提供された日から60日以内に定めることが義務付けられています。

親事業者が不当に長い支払いサイトを設定して、下請業者に不利益を与えないよう、下請業者を守る趣旨があります。

90~120日(手形サイト)

業種や契約条件によっては、代金の支払いを手形で行う場合もあります。手形取引では代金の支払いサイトのほかに手形サイトが加わるため、90~120日と長くなるのが一般的です。これは、手形を手渡したタイミングと、実際に代金を受け取るタイミングが異なるためです。

手形には「振出日」と「支払期日」が設定されています。振出日とは手形を作成し、支払先に渡した日付のことです。支払いサイトが30日の場合は手形の交付から30日後に手形で代金を支払いますが、これが振出日となります。この振出日から支払期日までが手形サイトです。支払期日が過ぎないと、額面通りの現金を受け取れません。

たとえば、支払いサイトが60日の場合、締め日の翌々月に代金の支払いとして手形を振り出し、手形交付日から手形金の入金日までの手形サイトが60日であれば、現金を受け取るまでに120日かかることになります。

中小企業庁と公正取引委員会はこれまで、​​業界の商慣習や金融情勢等を総合的に勘案し、手形サイトについて繊維業は90日、その他の業種は120日を超える場合、下請法が規制する「割引困難な手形」に該当するおそれがあるとして指導してきました。

これを受けて、2024年11月からは下請法上の運用が変更されることになり、サイトが60日を超える手形等による支払いは行政指導の対象となり得ることが決定しています。また、下請法の適用対象とならない取引も含め、サプライチェーン全体で見直しに取り組むことが重要であるとされています。

参考:約束手形等の交付から満期日までの期間の短縮を事業者団体に要請します|経済産業省

支払サイトの決め方・計算方法

支払サイトは業界によって様々で取引先との関係で決まってしまうことも少なくありません。実は、買い手と売り手は支払サイトについて逆のことを望んでいます。

そこで買い手(支払う側)と売り手(回収する側)でそれぞれ確認していきましょう。

買い手の場合は長いほうが有利

買い手側は、支払サイトが長いほうが望ましいです。理由は、支払サイトが長いほど、猶予期間が長くなり手元の資金を短期的に運用できるためです。

ただし、下請代金支払遅延等防止法では給付を受けた日から60日以内になるべくはやく支払ことになっています。

上記を踏まえると支払サイトは30日~45日程度が目安になり、大きな会社相手では60日の可能性もあります。

売り手の場合は短いほうが有利

売り手側は支払サイトが短いほうが望ましいです。理由は、売上を早く回収することで資金的に利益を確定させ、次の仕入れや設備投資に回せるためです。

ただし、短すぎると請求書を急いで作ることになり、買い手に代金の確認を急がせることになるので最低限の期間は必要です。

また、支払サイトによって猶予している売上がどの程度になるかを確認しましょう。支払サイト30日と60日を例に、1月から4月までの売上をシミュレーションすると以下になります。

【支払サイト30日(末締め翌月末払い)の例】

月末前日の未回収の売上月末に回収する売上
1月1月の売上なし
2月1月の売上、2月の売上1月の売上
3月2月の売上、3月の売上2月の売上
4月3月の売上、4月の売上3月の売上

【支払サイト60日(末締め翌々月末払い)の例】

月末前日の未回収の売上月末に回収する売上
1月1月の売上なし
2月1月の売上、2月の売上なし
3月1月の売上、2月の売上、3月の売上1月の売上
4月2月の売上、3月の売上、4月の売上2月の売上

上記のシミュレーションでは、
支払サイト30日の場合、最大2ヶ月分の売上を、
支払サイト60日の場合、最大3ヶ月分の売上を猶予しています。

上記を踏まえると支払サイトは15日~30日程度が目安になります。
毎月の手元資金を確保できる場合は長くても問題ありません。

買い手側が支払サイトを長くする方法

買い手側が支払いサイトを長くするためには、以下のような方法があります。

  1. 契約交渉
    • 契約締結時に、支払いサイトを長くするよう交渉します。
    • 特に大量の注文や長期的な取引関係を築く場合、交渉の余地が広がります。
    • 競合他社の条件を引き合いに出し、より有利な条件を求めることも有効です。
  2. 取引履歴の活用
    • 信頼できる取引履歴を示し、長期的な支払いサイトを求めます。
    • 過去の取引で支払い遅延がないことを強調します。
  3. 支払い能力の強調
    • 自社の財務状況やキャッシュフローを示し、長い支払いサイトでも問題なく支払いができることを証明します。
  4. バルクオーダーの活用
    • 一度に大量の注文を行うことで、支払いサイトの延長を交渉します。
    • 大量注文が売り手にとってメリットがある場合、支払い条件を緩和してくれる可能性があります。
  5. 市場の競争状況を利用
    • 市場での競争が激しい場合、他の売り手の条件を引き合いに出して、支払いサイトを延長するよう交渉します。
  6. 柔軟な支払い計画の提案
    • 分割払いの計画を提案し、複数回にわたって支払いを行うことで、結果的に支払いサイトを延ばす方法を交渉します。
  7. 良好な関係の構築
    • 売り手との信頼関係を築き、柔軟な支払い条件を受け入れてもらえるよう努めます。
    • 定期的なコミュニケーションやフィードバックの提供が有効です。
  8. 支払い遅延ペナルティの見直し
    • 契約書に支払い遅延ペナルティが含まれている場合、その条件を見直し、ペナルティが少ない範囲での遅延を許容してもらうよう交渉します。
  9. 財務計画の強化
    • 自社の財務計画を強化し、売り手に対して支払いサイトの延長が自社の経営にとって必要であることを説明します。
    • 具体的な計画や予測を示すと効果的です。

これらの方法を組み合わせることで、買い手側が支払いサイトを長くすることが可能になります。ただし、売り手との関係を損なわないよう、誠実な交渉とコミュニケーションが重要です。

売り手側が支払サイトを短縮する方法

売り手側が支払いサイトを短くするためには、以下のような方法があります

  1. 契約条件の見直し
    • 新規契約時に、支払いサイトを短くする条件を明示します。
    • 既存の契約を見直し、支払い期限を短くするための交渉を行います。
  2. 早期支払いのインセンティブ提供
    • 早期支払いを行う顧客に対して割引を提供します(例:早期支払い割引)。
    • ボーナスポイントや他の特典を用意します。
  3. 定期的なリマインダー送信
    • 支払い期限前にリマインダーを送信し、顧客に支払いを促します。
    • リマインダーには支払いの重要性を強調し、遅延によるペナルティを明示します。
  4. 自動決済システムの導入
    • 自動引き落としやクレジットカード決済を導入し、迅速な支払いを促します。
    • サブスクリプション型の支払いモデルを検討します。
  5. クレジット管理の強化
    • 顧客の信用調査を強化し、信用度の低い顧客には短い支払い期限を設定します。
    • 支払いの履歴を監視し、遅延が多い顧客には厳しい条件を適用します。
  6. 支払い条件の明確化
    • 請求書や契約書に支払い期限を明確に記載します。
    • 支払い条件を簡潔かつ理解しやすく記載します。
  7. 顧客とのコミュニケーション
    • 定期的に顧客とコミュニケーションを取り、支払いに関する問題を早期に把握します。
    • 支払いに関するフィードバックを受け取り、改善策を検討します。

これらの方法を組み合わせることで、支払いサイトを短くし、キャッシュフローの改善を図ることができます。

支払サイトについてしっかり理解しましょう

この記事では、掛取引と手形をメインに支払サイトを説明しました。ビジネスの現場では、これ以外にも「支払サイト」という言葉を使うことがありますが、「支配期日」や「支払までの期間」という意味は変わりません。

支払サイトについて迷った場合は、代金が確定する日(締め日)と支払期日を確認しましょう。


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