• 作成日 : 2021年5月25日

仕入割引は損益計算書の勘定科目!仕訳方法や割戻・値引との違いとは?

仕入割引は損益計算書の勘定科目!仕訳方法や割戻・値引との違いとは?

割引と聞くと、日常使いされている商品代金の値引きを思い浮かべる方も多いでしょう。しかし、会計用語の「仕入割引」は、買掛金を支払期日より前に支払うことで、商品やサービスの価格を一部減額するという意味を持ちます。

割引を利用して減額が行われた場合は、勘定科目の仕訳に注意しなければなりません。また、価格を下げるという点では「割戻」「値引」といった類似用語もあります。

同じ減額でも目的によって使用方法が異なるため、正しく把握しておくことが重要です。そこで本記事では、仕入割引の概要や具体的な仕訳方法、間違えやすい割戻・値引との違いについて解説します。

仕入割引とは?

仕入割引とは、買掛金を支払期日より前に支払うことにより、本来の期日から早まった期間に応じて、その利息に相当する額を支払金額から割引きすることを指します。仕入割引を受けた場合、損益計算書の仕訳はどのようにすればよいのでしょうか。まずは、損益計算書における勘定科目の仕訳や、消費税の取り扱いについて解説します。
仕入割引

仕入割引は損益計算書の営業外収益の勘定科目

買掛金には掛け取引によって代金の決済日が遅れることから、取引日から支払期日までの利息に相当する金額が代金に含まれていると考えられています。したがって、買掛金を支払期日より前に支払った場合は、予定期日までの利息相当額が免除されることもあり、その部分を仕入割引という収益勘定で処理することが可能です。

仕入割引は利息的な性格を有するため、損益計算書上は営業外収益として計上します。ただし「仕入」と付いていますが、仕入高として控除しないように注意が必要です。

なお、販売側は売掛金の一部を減額するため、売上割引として営業外費用で会計処理を行います。

仕入割引した場合の消費税の取扱い

仕入割引は会計上、受取利息に準ずるものとして営業外収益に計上されます。一方で、消費税法上の取扱いにおいては、課税取引に該当します。「消費税法基本通達12-1-4」において、次のように記載されています。

課税仕入れに係る対価をその支払期日よりも前に支払ったこと等を基因として支払いを受ける仕入割引は、仕入れに係る対価の返還等に該当する」

仕入割引は消費税法の「仕入れに係る対価の返還等」に該当するため、割引にかかる消費税は仕入高のマイナス項目で取り扱う必要があるのです。

【引用】国税庁 第1款 対価の返還等の範囲

仕入割引の具体的な仕訳方法

仕入割引の具体的な仕訳方法を、例題を用いて見ていきましょう。

【例題】
A社はB社から100,000円分の商品を7月10日に仕入れて、7月20日に支払い手続きを行った。この取引には、買掛金を仕入日より2週間以内に支払うと代金の5%を割引する条件が付いており、A社は支払額の割引を受けた。この時の5%は年率であるため、日数按分として137円の割引となる。

【仕入側(A社)の割引の仕訳】

借方
貸方
買掛金¥100,000当座預金¥99,863
仕入割引¥137

上記例題の場合、A社は仕入れ代金の割引分を「仕入割引」として処理します。前述した通り、仕入割引は営業外収益の扱いとなるため、仕入から控除しないように注意しましょう。

間違えやすい仕入割戻、値引との違い

仕入割引と同様、商品やサービスの価格を下げる意味合いを持つ会計用語に「仕入割戻(しいれわりもどし)」と「仕入値引」があります。これらの言葉は、理由がそれぞれ異なるため、仕訳科目に注意が必要です。

ここでは、仕入割引と間違えやすい「仕入割戻」と「仕入値引」の違いを紹介します。

仕入割戻(リベート)との違い

仕入割戻とはリベートとも呼ばれ、一定期間に仕入先から大量に商品を仕入れる際などに、「量」を起因として代金の一部を返還してもらうケースです。購入価格が事後に引き下がることになるため、会計上は仕入および買掛金から控除として処理します。

仕入割戻の仕訳方法も例題を用いて見ていきましょう。

【例題】
A社は掛けで仕入れた商品500,000円から、仕入先のB社より5%の割戻を受けた。

【仕入側(A社)の購入時の仕訳】

借方
貸方
仕入¥500,000買掛金¥500,000

【仕入側(A社)の割戻の仕訳】

借方
貸方
買掛金¥25,000仕入¥25,000

商品を仕入れた時の逆仕訳を行えば問題ありません。販売側(B社)は売上割戻として、返戻額を売上または売掛金から控除します。

値引との違い

商品の傷や汚れなど、値引の理由にはさまざまなケースが考えられますが、仕入れた商品の価格が後から値引きされることを、会計上では仕入値引と呼びます。仕入値引を受けた時は、割戻と同様に逆仕訳の処理を行えばよいです。

【例題】

A社はB社から商品50,000円分を掛けで仕入れた。

【仕入側(A社)の購入時の仕訳】

借方
貸方
仕入¥50,000買掛金¥50,000

その後、仕入れた1個が品質不良と発覚し、B社から3,000円分の値引きを受けた。

【仕入側(A社)の値引時の仕訳】

借方
貸方
買掛金¥3,000仕入¥3,000

なお、商品を返品する場合も上記と同様の手続きを行い、商品仕入時の仕訳を取り消すようにします。

間違えやすい仕入割引を正しく理解しよう

本記事では仕入割引の概要や具体的な仕訳方法、間違えやすい仕入割戻・仕入値引の違いについて解説しました。商品やサービスの価格を下げる意味を持つ「割引」「割戻」「値引」ですが、それぞれ使用目的は異なります。

項目ごとの意味合いを把握するとともに、仕訳科目にも気をつけなければなりません。また、仕入割引は消費税法の「仕入れに係る対価の返還等」に該当し、消費税は仕入高のマイナス項目で取り扱います。一方、割戻しは雑益等で計上すると課税売上高に該当します。処理方法は異なるものの、納付する消費税額も増加します。

そのため、取り扱う項目に誤りがないかしっかり確認することが大切です。今回紹介した代表的な例を参考にして、仕入割引を正しく理解しておきましょう。

よくある質問

仕入割引とは?

買掛金を支払期日より前に支払うことにより、本来の期日から早まった期間に応じて、その利息に相当する額を支払金額から割引きすることです。詳しくはこちらをご覧ください。

仕入割引の勘定科目は?

損益計算書上は営業外収益として計上します。詳しくはこちらをご覧ください。

消費税法上の仕入割引の扱いは?

課税取引に該当します。詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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