• 更新日 : 2024年8月8日

支払通知書とは?電子帳簿保存法対応は必要?

企業や個人事業者は、取引先に支払内容や支払期日などを通知する目的で、支払通知書を発行することがあります。支払通知書は一般的にどのような項目で構成されるのか、支払通知書の概要と発行のメリットをはじめ、電子帳簿保存法の対応について見ていきましょう。

支払通知書とは

支払通知書とは、商品やサービスを利用する事業者が、取引先に対してその支払いを通知するための書類です。

支払通知書は支払いが確定した取引について「支払側から通知するもの」であり、一般の請求書とは流れが逆になります。

支払通知書には、支払額などの支払いに関する情報が記載されます。支払通知書を発行する事業者は、支払いを実行する前に発行するのが一般的です。

※国内の上場株式などについて、配当金の支払いをする事業者が支払いを通知する書類も支払通知書と言いますが、この記事では、企業間の取引などで発行される支払通知書について取り上げます。

支払通知書に必要な項目

支払通知書に記載する項目は法律などで規定されていないものの、取引内容を証明する効力をもつことから、以下に取り上げる項目を記載するのが一般的です。

  • 「支払通知書」の名称
  • 支払先の名称
  • 発行事業者の名称や連絡先
  • 書類の発行年月日
  • 支払金額の合計
  • 支払内容の内訳(取引年月日、取引内容、単価、取引金額など)
  • 備考

備考には、支払時に振込手数料分を負担してもらう旨などを記載します。

また、2023年10月からはインボイス制度(適格請求書等保存方式)の適用が開始されます。請求書ではなく、支払側からの支払通知書によって仕入税額控除を認めてもらうには、支払通知書もインボイス制度に対応した様式にしなくてはなりません。

インボイス制度に対応するには、上述した項目に加え、売り手の登録番号税率区分(8%と10%)ごとの対象金額と消費税額の表示相手方の確認を受けたことの文言の記載(例:送付後一定期間内に連絡がない場合確認済とします)が必要です。

したがって、予め売り手の登録番号などを聞いておく必要があります。

参考:インボイス制度に関するQ&A目次一覧|国税庁(問88及び問89参照)

支払通知書を発行するメリット

支払側となる事業者には、支払通知書を発行する義務はありません。請求側である取引先が発行した請求書をもって、取引の証拠とするケースが一般的と言えます。

一方で事業者が支払通知書の発行を行うのは、トラブルの防止や業務効率化の面でメリットがあるためです。支払通知書はどちらかと言えば、支払側の方が取引において優位である場合に作成されるケースが多いと言えます。

トラブルを防止できる

支払通知書は、支払側が事前に発行することによって、支払いを受ける側に支払内容に誤りがないか確認してもらうための書類です。仮に消費税計算の誤りや、振込手数料の負担などに相違があったとしても、支払いが行われる前に対応できます。

支払後のトラブルに関する業務の負担を回避できる点で、支払通知書の発行にはメリットがあります。

業務効率化が期待できる

支払通知書は、請求書と同程度の効力をもつ書類です。そのため、支払通知書があれば、取引先は請求書を発行する必要がなくなります。支払通知書を発行すれば、支払内容の確認を取引先にしてもらうだけで支払いまでスムーズにいくため、毎月同額の支払いが発生する取引先への支払通知書の発行は、業務効率化において大きな効力を発揮するでしょう。

支払通知書と支払明細書、配当金支払通知書の違い

支払明細書は、確定した支払額についてその明細を記載した書類です。給与や賞与の支払明細書、電気料金やクレジットカードの支払明細書(取引明細書)なども支払明細書と言えます。支払通知書との違いは相手先です。支払通知書は主にBtoB(企業間の取引)で用いられますが、支払明細書はBtoC(企業と消費者間の取引)や企業から従業員に対しても発行されます。

ただし、支払通知書および支払明細には書類名称や書式に明確な規定がありません。そのため、書名は企業の任意であり、企業によっては支払通知書を「支払明細書」の名称で発行するケースがあります。

配当支払通知書は、証券会社が上場株式の配当などを受ける個人や法人などに対して発行する書類です。これも名称に規定がないため、支払通知書の名称で発行されることがあります。一般的には、支払通知書は企業間の取引で発行されるものですので、発行の目的などが異なります。

支払通知書は電子帳簿保存法対応が必要?

電子帳簿保存法は、一定の要件を満たす場合は電磁的記録の保存をもって帳簿書類の保存に代えられる制度です。

令和6年1月からは電子取引データにおいては、電子データでの保存が義務付けられるようになります。電子取引データとは、インターネット上のサービスや電子メールの添付などで受け取った電子データを指します。

保存義務の範囲は、所得税や法人税の申告に関連する国税関係帳簿書類です。請求書と同じ効力をもつ電子取引でやり取りした支払通知書は請求書と同等の効力をでもつ書類として、電子データでの保存が求められます(※令和5年12月31日までは、電子データをプリントアウトして保存することも認められますが、令和6年1月11日からは電子取引においてはデータで保存が原則)。

電子取引データの保存については、改ざん防止措置を実施するなど以下の要件を満たして保存する必要があります。

【電子取引データ保存の要件】

  • 改ざん防止の措置(タイムスタンプの付与、改ざんを防ぐ事務処理規定を定める、など)
  • 日付、金額、取引先で検索できるようにする(規則的なファイル名の設定も可)
  • プリンターやディスプレイなど、すぐに出力できる装置を備え付ける

なお、検索要件には特例がありますので、下記の記事を参考にしてください。

参考:パンフレット(過去の主な改正を含む)|国税庁電子帳簿保存法の内容が改正されました

郵送により紙で支払通知書を発行したとき、あるいは書面で支払通知書を受け取ったときは電子データ保存の義務はありません。データで保存したいときは、紙の支払通知書をスキャンして、タイムスタンプを一定期間内に付与するなど、電子帳簿保存法のスキャナ保存の要件を満たす必要があります。

なお、支払通知書の保存期間に関しては、紙での保存と電子データでの保存で期間に違いはありません。法人の場合は7年(青色申告提出の事業年度に欠損金が生じたとき、または災害損失欠損金額生じた事業年度は10年)、個人事業主は5年(消費税法上は7年)の保存が義務付けられています。

電子帳簿保存法とは

電子帳簿保存法は、帳簿書類の紙による保存に代わり、電子データによる保存を認める法律です。正式名称を「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律」と言います。

所得税や法人税などの国税関係帳簿書類を負担なく保存することを目的に制定されました。近年では、電子取引データの増加に伴う処理の煩雑化が懸念されることから、徐々に適用要件が緩和されてきています。

電子帳簿保存法の概要については、こちらの記事で詳細をご確認ください。

電子データで受け取った支払通知書はデータでの保存が必須

支払通知書は、取引先に対して支払金額や支払内容を通知するための書類です。書面で発行した支払通知書、書面で受け取った支払通知書は電子帳簿保存の義務はありませんが、電子取引データによるものは、電子データでの保存が義務付けられました。

電子メールやインターネット上のサービスなどを利用して支払通知書を送付、または受け取る際は、電子データ保存の要件についてよく確認しておきましょう。

よくある質問

支払通知書とは?

取引先に対して、支払金額や支払内容を通知するための書類です。詳しくはこちらをご覧ください。

支払通知書は電子帳簿保存法対応が必要?

支払通知書を電子データで送信したとき、あるいは電子データで受け取ったときは電子帳簿保存法による電子データの保存が義務付けられます。詳しくはこちらをご覧ください。


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