- 更新日 : 2024年10月25日
販売費及び一般管理費とは?内訳の一覧や決算書での記載方法をわかりやすく解説
販売費及び一般管理費とは、商品やサービスの販売に関連する費用や一般管理業務で必要な費用をさします。いずれも会社が本業を営む上で必要な費用です。この記事では、販売費及び一般管理費の仕訳で用いる勘定科目には何があるか、どのような分析方法があるか、どうやって販売費及び一般管理費を削減していけば良いか解説していきます。
目次
販売費及び一般管理費(販管費)とは
販売費及び一般管理費とは、会社が事業を営む上で必要な販売手数料などの販売に関連する費用と会社の運営に必要な家賃や水道光熱費などの一般管理費の総称です。販売費と一般管理費、それぞれどのような費用が含まれるのか解説します。
販売費とは?
販売費とは、会社の営業活動に支出した費用のうち、商品の販売に関連して発生した、製造原価には含まれない期間対応の間接的な費用です。
販売費は、商品の販売やサービスの提供などに対して生じる経費で、販売員(従業員)の人件費や宣伝広告費、発送費や配達費、保管費などが含まれます。
販売費の中には、販売員に必要な交通費や代理店への販売手数料、出荷手数料や販売促進に必要となる作成費なども含めることが可能です。
会社の経営において、販売費は営業利益とも密接に関係しており、売上総利益から販売費や一般管理を引いて計算した金額が、営業利益となります。
そのため販売費が少ないほど、営業利益が上がっていることになります。
一般管理費とは?
一般管理費とは、製造原価に含まれない間接的な費用で、会社の一般管理業務に必要な会社全体の運営に貢献する費用のことです。
一般管理費には、会社の従業員(事務員など)に対して支払われる人件費や家賃、水道光熱費などの、販売とは直接には関係のない業務に必要な経費が含まれます。
一般管理費と販売費の算出は、会社の経営にとって非常に重要な要素であり、営業利益ともかかわっています。売上総利益から販売費及び一般管理費を引くことで、営業利益を計算することができるため、一般管理費が少ないほうが利益につながります。
なぜ2つの区分に分かれている?
一般管理費と販売費はお互いに関連している要素もあるため、通常、損益計算書においては、販売費及び一般管理費として計上されることが一般的です。
しかし、販売費は会社の販売活動に関連する費用、一般管理費は会社全体の業務の管理活動にかかる費用と明確な違いがあります。販売費に該当する経費は、販売活動に関連する費用であるため、月によって金額が大きく変動しやすいです。一方、一般管理費に該当する経費は、管理活動にかかる経費のため、月ごとの変動が少ない固定費が含まれます。
販売費と一般管理費は経費の性質が異なるため、2つの区分に分かれているのです。
販売費及び一般管理費の内訳・勘定科目一覧
ここからは、販売費、一般管理費それぞれの勘定科目について見ていきましょう。
販売費の内訳・勘定科目一覧
主な販売費の勘定科目には、次のものがあります。
勘定科目 | 内訳 |
---|---|
広告宣伝費 | 広告費やチラシ印刷代など |
販売手数料 | 委託業者や販売代理店などへの手数料 |
荷造運賃 | 商品を運送するための費用 |
販売促進費 | サンプルやキャンペーンなどの費用 |
接待交際費 | 取引先など関係者への接待費用や食事代、慶弔費など |
旅費交通費 | 取引先への移動など営業活動で必要な移動費や出張費 |
一般管理費の内訳・勘定科目一覧
主な一般管理費の勘定科目には、次のものがあります。
勘定科目 | 内訳 |
---|---|
役員報酬 | 役員に支払われる報酬 |
給与賃金 | 従業員の給料や賞与など |
雑給 | パートタイマーやアルバイトなどへの給料・賞与 |
法定福利費 | 健康保険など事業者に負担が義務付けられた福利厚生の費用 |
福利厚生費 | 健康診断や慶弔費など従業員の福利厚生の費用 |
修繕費 | 事務所や機械などのメンテナンス費用 |
外注工賃 | デザイン料など外注により発生した費用 |
水道光熱費 | 水道代、ガス代、電気代など |
地代家賃 | 事務所の家賃や駐車場の地代など |
消耗品費 | 少額の工具・器具、事務消耗品など |
旅費交通費 | 通勤手当代や出張費など |
通信費 | 電話代やインターネット利用料など |
租税公課 | 印紙代や固定資産税などの税金や公的書類の発行手数料 |
保険料 | 会社所有物における損害保険料など |
車両費 | ガソリン代や車両のメンテナンスなどにかかる費用 |
リース料 | コピー機などのリース費用 |
新聞図書費 | 事業で購入した書籍や新聞の費用 |
諸会費 | 組合費や商工会費などの会費 |
支払手数料 | 専門家への顧問料や銀行への振込手数料など |
減価償却費 | 資産計上している減価償却資産の当期費用計上分 |
人件費は売上原価になることも
業種によって、給与手当などの人件費は売上原価になることもあります。例えば、製造業の場合、工場で働く人への賃金と事務所で働く人への給料では、経費の性格が異なります。
工場で働く人への賃金は、売上を生み出す製品の製造に直接関係する費用ととらえることができ、売上原価にします。一方、事務所で働く人への給料は、会社全般の管理がメインの仕事となるため、一般管理費になります。
同様にサービス業などでも、人件費を売上原価としてとらえる考え方もあります。
販売費及び一般管理費は決算書のどこに記載されるか
販売費及び一般管理費の額は、財務三表のひとつである損益計算書に記載されます。
販売費及び一般管理費は損益計算書で確認できる
損益計算書は、会社が一定期間に得た収益や、一定期間に支出した費用を記載した書類です。販売費及び一般管理費は費用の項目に含まれることから、損益計算書に全体の金額が記載されます。
損益計算書内の売上利益の下に記載されている
販売費及び一般管理費の額は、上記の画像のように、「売上総利益」の下に記載されます。売上総利益の額から販売費及び一般管理費の額を差し引いた金額が「営業利益」です。販売費及び一般管理の内訳については、上記のようにまとめて記載するのではなく、損益計算書内に内訳を記載する場合もあれば、別紙で内訳を作成する場合もあります。
販売費及び一般管理費を用いた分析
販売費比率
販売費及び一般管理費を用いた財務分析で一般的なものが「販売費比率(販売管理費比率)」です。販売比率とは、売上に対して販売費や一般管理費がどれぐらいの割合になっているのかを見る指標です。この指標は販売費などの効率性を表します。
販売費比率は低いほうが良いです。比率が高い場合は、その売上を生み出すために、販売費などの費用が多くかかっていることを意味し、効率的な経営ができていないことを意味します。
一方、比率が低い場合は、少ない費用で売上を生み出すことができているため、効率的な経営ができていることを意味します。
販売費比率の計算方法
販売費比率は、販売費のみを計算の対象にする場合と、販売費と一般管理費の両方を対象にする場合があり、それぞれの場合の求め方は以下のとおりです。
■販売費のみを計算の対象にする場合
■販売費と一般管理費の両方を対象にする場合
例)販売費100万円 一般管理費200万円 売上高1,000万円の場合
販売費比率は、販売費100万円÷売上高1,000万円×100=10%になります。
販売管理費比率は、販売費及び一般管理費(100万円+200万円)÷売上高1,000万円×100=30%になります。
販売費比率を分析する際のポイント
販売費比率の分析を行う際の重要なポイントは以下の通りです。
時系列での比較
販売費比率を一定期間にわたって追跡し、トレンドを把握することが重要です。これにより、特定の期間における費用の増加や減少が売上高にどのように影響しているかを理解できます。また、季節変動や市場の変化が販売費用にどのような影響を与えているかを見極めることもできます。
業界基準との比較
自社の販売費比率を同業他社や業界平均と比較することで、自社の費用効率が業界内でどの位置にあるのかを評価することができます。この比較により、過剰な費用が発生していないか、または逆に投資不足があるのではないかといった点を見極めることが可能です。
費用の内訳の分析
販売費比率だけを見るのではなく、その内訳を詳しく分析することが重要です。販売促進、広告費、人件費、物流費などの各コンポーネントに注目し、どの費用が比率を押し上げているのか、または効率良く管理されているのかを理解する必要があります。これにより、コスト削減や投資の最適化の機会を特定できます。
これらのポイントを踏まえ、データを定期的に分析し、経営戦略や予算計画に活かすことが、効率的な財務管理と競争力の強化につながります。
販管費を削減するには?
販売費及び一般管理費(販管費)を削減するにはどうすれば良いのでしょうか。削減につながるポイントを5つ紹介します。
役員報酬の見直し
役員報酬が事業を運営する上で過大になっていないか見直すのもひとつの方法です。役員報酬の額や役員の数は会社の経営成績と比較して適正か、適宜に見直しを行いましょう。
ただし、法人税法上、役員報酬の変更や増減には規定が設けられていますので、注意が必要です。
例えば、毎月支払われる役員報酬は定期同額給与に該当するため、原則として定時株主総会でしか変更ができません。
著しい業績の悪化など一部の事由を除き、定時株主総会以外のタイミングで減額を行った場合、役員報酬の一部の損金算入が認められないことがあります。かえって法人税額を上げてしまうことになりますので、役員報酬を見直す場合はタイミングに注意しましょう。
人件費の適正化とシステム導入
給与賃金や雑給などの人件費は、販管費の中でも高い割合を占めることが多いです。業務フローに無駄がないか、必要以上の残業が行われていないかなど、人件費の適正化を図ることも販管費の削減につながります。
しかし、コストカット効果が期待できるからといって安易に取り組むと従業員のモチベーションが下がるなど悪影響が出ることもあります。
方法としては、システムを導入して労働時間の短縮や業務効率化を図る方法もあります。影響の出ない範囲で適正化に取り組むようにすると良いでしょう。
賃貸オフィスの見直し
賃貸オフィスを利用している場合は、毎月の家賃も販管費に影響を与えます。事業の状況や規模にあわせて適宜見直しを図ることも必要です。
例えば、規模の変化でスペースに無駄ができたり、立地面が適していなかったりする場合は、適したオフィスへの引っ越しで販管費を削減できる可能性があります。
テレワークを導入できる事業形態であれば、一部をテレワークにして、事務所の規模を縮小するのも方法のひとつです。
広告の見直しと適正化
広告宣伝費は、企業やブランドの認知度の向上や販売促進に必要な費用です。しかし、ターゲットを意識しない広告宣伝を行っていたり、広告宣伝以外のプロモーション活動に目を向けないでいたりすると、思うように効果が出ないこともあります。
広告宣伝に無駄はないか、適宜見直しを図り、自社のマーケットやターゲット層に適した広告宣伝に見直しを図ることが重要です。
特に広告宣伝を外注している場合は、外注先に任せっきりになりやすいため、費用対効果に問題はないか見直すようにしましょう。
旅費交通費の見直し
移動や出張のための旅費交通費は工夫することで削減できる可能性があります。まずは従業員がルールのもと請求できるように出張旅費規程を整備することが重要です。
ほかにも、法人プランや回数券の利用、移動と宿泊のパックの利用、などで旅費交通費を削減する方法があります。社内間の移動などWeb会議でも代用できるものはWeb会議に移行するのも方法のひとつです。
販売費及び一般管理費は決算書の重要項目
販売費及び一般管理費は、会社を経営していく上で重要な項目です。販売費は広告宣伝費のように販売活動に関連する費用、一般管理費は地代家賃などのように会社全体の業務の管理活動にかかる費用です。
販売費や一般管理費の金額が高くなると、それだけ利益が少なくなり、経営を圧迫します。そのため、定期的に販売費及び一般管理費の金額に注視しておく必要があるでしょう。
よくある質問
販売費とは?
会社の営業活動に支出した費用のうち、商品の販売に関連して発生した費用のことです。詳しくはこちらをご覧ください。
一般管理費とは?
会社の一般管理業務に必要な全ての経費のことであり、会社の本業において収益を得るために使われる経費のことです。詳しくはこちらをご覧ください。
販売費及び一般管理費を用いた分析方法は?
「販売費比率(販売管理費比率)」が一般的です。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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