- 更新日 : 2025年4月23日
勘定科目内訳明細書とは?全16種の記載内容と直近の法改正について解説
企業は原則として、法人税申告書を決算日から2ヶ月以内に所轄の税務署に提出する必要があります。
法人税申告書にはさまざまな書類を添付する必要があり、その添付書類の一つに「勘定科目内訳明細書」と呼ばれる書類があります。
勘定科目内訳明細書の役割は、税務署が企業の財産や取引状況の把握を可能にする点です。
今回は、勘定科目内訳書の書き方と注意点について詳しく解説していきます。
目次
勘定科目内訳明細書とは
勘定科目内訳明細書の概要
勘定科目内訳明細書は、冒頭でも説明したとおり、法人税申告書の添付書類として提出義務がある書類の一つです。原則として、法人税申告書は決算日から2ヶ月以内に所轄の税務署に提出しなければいけません。
税務署は勘定科目内訳明細書を調査することで、提出された法人税申告書が企業の実態に沿って、適正に作成されているかを確認するため、その作成が義務付けられています。
勘定科目内訳明細書の作成は、原則として提出する企業の経営幹部や経理が行いますが、会計事務所や税理士法人などの機関が代行する場合もあります。なお、法人税申告書の作成代行は税理士の独占業務です。
また、企業は必要に応じて金融機関などから資金調達をします。資金調達を行う際には、金融機関に提出する資料の一部として勘定科目内訳明細書の提出が求められることもあります。
勘定科目内訳明細書の記載内容
勘定科目とは、日々の取引を複式簿記によって記録する際に使われる会計上の項目のことです。勘定科目は自由に設定することが可能です。
ただし、一般的項目は分野ごとで定められています。例えば、郵便代や電話代については「通信費」、パソコンや本棚などは「器具備品」といったように分類される場合が多いです。勘定科目内訳明細書は、16種類の項目に分類されています。
ただし、必ず16種類の勘定科目内訳明細書を作成する必要はなく、一定の勘定科目を使用している場合に限り、該当する内訳書を作成しなければなりません。
勘定科目内訳明細書の記載内容と書き方
それぞれの内訳書ごとに書き方を説明していきます。
- 預貯金等の内訳書
保有している預貯金等ごとに、「金融機関名」「口座番号」「期末残高」などを記載します。 - 受取手形の内訳書
債権の相手先ごとに、「登録番号(法人番号)」「振出人」「振出年月日」「支払期日」「支払銀行」「金額」などを記載します。 - 売掛金の内訳書
相手先ごとに、「登録番号(法人番号)」「相手先名」「期末現在高」などを記載します。 - 仮払金、貸付金及び受取利息の内訳書
〈仮払金(前渡金)の内訳書〉
相手先ごとに、「登録番号(法人番号)」「名称」「住所」「法人・代表者との関係」「期末現在高」「取引内容」などを記載します。
〈貸付金及び受取利息の内訳書〉
相手先ごとに、「登録番号(法人番号)」「貸付先名」「期末現在高」「期中受取利息額」「利率」「担保の内容」などを記載します。 - 棚卸資産の内訳書
「科目」「品目」「数量」「単価」「期末現在高」などを記載します。棚卸資産の種類の多い業種にとっては、「科目」や「品目」が多く記載が大変となってしまうため、ある程度のグルーピングを行うことも可能となります。 - 有価証券の内訳書
有価証券ごとに、「区分」「種類」「銘柄」「期末現在高」「期中増(減)の明細」などを記載します。 - 固定資産の内訳書
固定資産ごとに、「種類・構造」「用途」「面積」「物件の所在地」「期末現在高」「期中取得(処分)の明細」などを記載します。 - 支払手形の内訳書
支払先ごとに、「登録番号(法人番号)」「支払先」「振出年月日」「支払期日」「支払銀行名」「金額」などを記載します。 - 買掛金の内訳書
相手先ごとに、「登録番号(法人番号)」「相手先名」「所在地」「期末現在高」などを記載します。 - 仮受金の内訳書ー源泉所得税預り金の内訳書
〈仮受金の内訳書〉
「登録番号(法人番号)」「相手先」「期末現在高」「取引の内容」などを記載します。
〈源泉所得税預り金の内訳書〉
「支払年月」「所得の種類」「期末現在高」を記載します。 - 借入金及び支払利子の内訳書
借入先ごとに、「借入先名」「所在地」「法人・代表者との関係」「期末現在高」「期中の支払利子額」「利率」などを記載します。 - 土地の売上高等の内訳書
「商品の所在地」「地目」「総面積」「売上年月日」「登録番号(法人番号)」「売上先」「売上面積」「売上金額」「売上商品の取得年」などを記載します。 - 売上高等の事業所別内訳書
事業所ごとに、「事業所の名称」「所在地」「責任者氏名」「代表者との関係」「事業等の内容」「売上高」「期末棚卸高」「期末従業員数」「源泉所得税納付署」などを記載します。 - 役員報酬手当等及び人件費の内訳書
役員ごとに「役職名」「担当業務」「氏名」「代表者との関係」「住所」「常勤・非常勤の別」「使用人職務分の給与」「使用人職務分以外の給与(役員給与)」「退職給与」などを記載します。 - 地代家賃等の内訳書ー工業所有権等の使用料の内訳書
「地代・家賃の区分」「借地(借家)物件の用途」「所在地」「登録番号(法人番号)」「貸主の名称」「貸主の所在地」「支払対象期間」「支払賃借料」などを記載します。 - 雑益、雑損失等の内訳書
「取引の内容」「登録番号(法人番号)」「相手先」「所在地」「金額」を記載します。
勘定科目内訳明細書を書く際の注意点
それぞれの内訳書には、各勘定科目の期末残高を転記していくことになります。また、期末残高は法人税申告書と同時に提出する貸借対照表や損益計算書の残高との一致が必要です。
この残高が一致しない場合には、税務署に勘定科目内訳明細書の信憑性を疑われることになり、税務調査のリスクが増加する恐れがあるため、残高はしっかりと合わせるようにしましょう。
勘定科目内訳明細書に関する法改正
勘定科目内訳明細書の直近の法改正について解説します。
令和6年度の改正
令和6年3月1日以後に終了する事業年度から、新しい様式の勘定科目内訳書が使用されることになりました。新しい様式の一部には、登録番号(法人番号)の欄が追加されています。登録番号(または法人番号)を記載した場合は、取引先の名称や所在地の記載を省略できます。
平成30年度の改正
平成30年度の税制改正により、資本金1億円超の大法人を対象とした電子申告の義務化を見据えて、勘定科目内訳書が簡素化されることになりました。簡素化された勘定科目内訳明細書については、大企業だけでなく、中小企業などにも適用されます。
簡素化された事項
勘定科目内訳明細書の簡素化は、
- 記載省略基準の柔軟化(件数基準の創設)
- 記載単位の柔軟化
の2つの側面から見直しが図られ、専門的な知識がない方でも簡単に作成することが可能となりました。
また、平成31年4月以後の申告から、勘定科目内訳明細書をCSV形式で提出することが可能になっています。勘定科目内訳明細書の作成は基本的に会計ソフトで作成されていました。
そのため、不慣れな方にとっては作成に時間を要してしまいます。しかし、CSV形式ではExcelで直接入力し、そのまま電子申告できるため、会計ソフトの操作方法を覚えてなくても作成可能です。
簡素化の具体的内容
簡素化された具体的内容は次のとおりです。
- 記載件数を100件までに制限
これまでは、売掛金の内訳書や買掛金の内訳書などは、対象となる取引先については、100件超であっても記載をする必要がありました。法改正により、取引金額の大きいものから上位100位までの記載に簡素化されています。 - 支店、事業所ごとの合計額の記載が可能に
売掛金の内訳書や買掛金の内訳書などについては、支店・事業所ごとの期末残高の合計額を記載することが可能となりました。 - その他にも、従来は存在した記入欄が削除されることなどにより、記載の簡素化が図られています。
勘定科目内訳明細書の理解を深め、自分で作成してみよう!
今回は勘定科目内訳明細書について解説していきました。勘定科目内訳明細書については種類も多く内容も複雑なため苦手意識を持っている方が多いのが現実です。しかし、一つ一つの内訳書を理解していくことで、会計や簿記の知識がない方でも作成が可能となります。
よくある質問
勘定科目内訳明細書とは?
法人税申告書の添付書類として提出義務がある書類の一つです。詳しくはこちらをご覧ください。
勘定科目内訳明細書の記載内容は?
勘定科目内訳明細書は16種類の項目ごとに分類されており、一定の勘定科目を使用している場合に限り、該当する内訳書を作成しなければなりません。詳しくはこちらをご覧ください。
勘定科目内訳明細書の簡素化とは?
平成30年度の税制改正により、資本金1億円超の大法人を対象とした電子申告の義務化を見据えて、勘定科目内訳書が簡素化されることになりました。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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