• 作成日 : 2019年12月24日
  • 更新日 : 2019年12月24日

株主の帳簿閲覧は可能?会計帳簿閲覧謄写請求権

会計帳簿は経営状況を把握したり経営戦略を検討したりする際に活用され、会社にとって非常に重要な書類です。しかし、一定の条件を満たした株主は、会社のオーナーとして会社に会計帳簿の閲覧や謄写(コピー)を求めることができます。この記事では株主の会計帳簿閲覧謄写請求権の概要や請求方法、会社側の拒否権についてご紹介します。

会計帳簿閲覧謄写請求権とは

会計帳簿閲覧謄写請求権とは、株主が会社に対して、会計帳簿の閲覧を請求できる権利です。請求できる具体的な会計帳簿類は、次のように定義されています。

請求することのできる会計帳簿類
・会計帳簿又はこれに関する資料が書面をもって作成されているときは、当該書面の閲覧又は謄写

「会計帳簿」には、総勘定元帳仕訳帳のほか、現金出納帳売掛金元帳などの補助帳簿が挙げられます。また「これに関する資料」とは、契約書、領収書、請求書、納品書、伝票など、仕訳起票の基礎となる証憑書類(エビデンス)です。

会計帳簿閲覧の請求にかかる費用は、当該請求した株主側の負担となります。

請求できる該当者

会計帳簿閲覧謄写請求権は、全ての株主に認められる権利ではありません。
会社法第433条では、当該権利の請求者を次のように定義しています。

会計帳簿閲覧謄写請求権者
・総株主(議決権の全部を行使することができない株主を除く。)の議決権の百分の三以上の議決権を有する株主
・発行済株式(自己株式を除く。)の百分の三以上の数の株式を有する株主

要約すると、議決権のある株式数の百分の三以上の議決権を有する株主のみが、会計帳簿閲覧謄写請求権を有することになります。

当該株主は、当該請求の理由を明らかにすることで、会社に対して会計帳簿の閲覧謄写請求を行うことができます。
また、株主一人では議決権が百分の三に満たない場合であっても、複数人の株主と合計して議決権が百分の三以上となる場合には、当該請求権が認められます。
なお、定款に定めをおくことで、当該権利者を総議決権数の百分の三以下に引き下げることが認められています。

会計帳簿閲覧謄写請求権者(親会社の株主)
・株式会社の親会社社員は、その権利を行使するため必要があるときは、裁判所の許可を得て、会計帳簿又はこれに関する資料について請求をすることができる。

当該会社の株主のほか、親会社の株主についても同様の請求が認められます。ただし、裁判所の許可が必要となるため、ハードルは上がります。

請求できる期間と請求の理由

請求できる時間は次のとおりです。

請求できる時間
・株式会社の営業時間内

会計帳簿閲覧謄写請求権者は、株式会社の営業時間内であれば、いつでも会計帳簿の閲覧を請求することができます。

また、会計帳簿の閲覧謄写請求理由としては、例えば次のようなケースが想定されます。

・取締役の違法行為の差し止めや、すでに取締役の行った行為に関して会社に損害賠償を求める場合
・取締役の専断横行を是正するために、取締役の解任を議題とする株主総会の招集請求を行い、当該取締役の解任を図る場合
・取締役の解任の訴えを起こすための資料収集を行う場合

会社側の拒否権

会計帳簿閲覧謄写請求権者は、どんな目的・状況においても、この請求権を行使できるわけではありません。
会社法第433条では、会社が会計帳簿の閲覧謄写請求を拒否できる条件として次のように定義されています。

会社が会計帳簿の閲覧謄写請求を拒否できる場合
・請求者がその権利の確保又は行使に関する調査以外の目的で請求を行ったとき。
・請求者が当該株式会社の業務の遂行を妨げ、株主の共同の利益を害する目的で請求を行ったとき。
・請求者が当該株式会社の業務と実質的に競争関係にある事業を営み、又はこれに従事するものであるとき。
・請求者が会計帳簿又はこれに関する資料の閲覧又は謄写によって知り得た事実を利益を得て第三者に通報するため請求したとき。
・請求者が、過去二年以内において、会計帳簿又はこれに関する資料の閲覧又は謄写によって知り得た事実を利益を得て第三者に通報したことがあるものであるとき。

この条文から、以下のような場合に会社が請求を拒否できることがわかります。

・オーナーとしての権利を行使する目的以外で会計帳簿の閲覧謄写請求を行った場合
・仮にオーナーとしての権利行使であったとしても、それが会社の運営上マイナスとなるような場合(当該株主が同業他社の経営者であり、競合関係にあるような場合)
・第三者に対して情報を漏えいする目的で行われた場合(ただし、この理由の場合、本当に漏えい目的なのかどうかを会社側が立証しなければなりません。)

つまり株主は会社のオーナーではあるものの、会社の利益を害するような請求を行った場合は、会社側から拒否できるということです。株主といえど、必要以上に内情を知ったり情報を悪用したりすることはできないようになっています。

閲覧請求に備えて会計帳簿を整理しておきましょう

会計帳簿の閲覧謄写請求には、議決権の百分の三以上というルールがあるため、誰でもすぐに請求できるものではありません。
しかし、閲覧謄写の請求をされた場合には、速やかに対応できることが望ましいでしょう。
そのためにも、常に会計帳簿を整理しておくことが大切です。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

監修:藤沼 寛夫(公認会計士)

ライター 兼 公認会計士
「会計」「税務」「財務分析」について、分かりやすい記事を提供します。
https://fujinuma-write.com/

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