• 作成日 : 2025年1月23日

地域未来投資促進税制とは?メリットや適用要件、申請手順をわかりやすく解説

地域未来投資促進税制とは、地域未来投資促進法に基づいて導入された税の優遇制度です。地域の強み・特性を活かした事業への投資を促進し、地域経済を活性化させる目的で創設されました。「地域経済牽引事業計画」を作成し、要件に該当することで適用されます。

本記事では、地域未来投資促進税制の概要や適用要件などを解説します。

地域未来投資促進税制とは

地域未来投資促進税制は、地域の特性を活かした事業への投資を促進し、地域経済の活性化を図るために設けられた税制優遇制度です。

ここでは、制度の内容について、詳しく解説します。

地域未来投資促進法による支援措置

地域未来投資促進税制は、「地域未来投資促進法」に基づく減税措置です。「地域未来投資促進法」は、地域の特性を活用した事業の生み出す経済効果に着目し、これを最大化しようとする地方公共団体の取り組みを支援するため、2017年に制定されました。

企業は地域の特性や強みを活かした先進性の高い事業への設備投資を行う際、減税措置を受けられます。

法人税等の特別償却や税額控除を受けられる

地域未来投資促進法による税の優遇を受けたい企業は、まず自社の立地する地域に基本計画があり、その内容が自社に関連するかどうかを確認しなければなりません。

自社の取り組みが基本計画に合致する場合は、「地域経済牽引事業計画」を作成し、都道府県の承認を受けることが必要です。

承認を受けた企業が建物や機械などの設備投資を行うと、次のような減税措置を受けられます。

これにより、企業は設備投資に伴う税負担を削減でき、より積極的に事業を進めることが可能です。

地域経済牽引事業計画の承認要件

優遇措置を受けるにあたって、企業は「地域未来投資促進法」に基づき、都道府県から「地域経済牽引事業計画」の承認を受ける必要があります。

承認を受けるためには、都道府県・市町村が「基本計画」で定める3つの要件を満たさなければなりません。

要件の具体的な内容は、都道府県および市町村が基本計画のなかで定めています。

地域の特性を活用している

ものづくりや観光など、都道府県・市町村が「基本計画」で定めている地域の特性及び活用戦略に合致する事業であることが必要です。

たとえば、東京都では、次のような要件をあげています。

  1. 東京都の機械、⾦属、化学、電⼦・デバイス等の産業集積を活⽤した環境・エネルギー関連等を はじめとする成⻑ものづくり分野
  2. 東京都の情報通信・IT関連産業等の産業集積を活⽤したデジタル分野
  3. 東京都内の観光名所や多摩・島しょ地域における⾃然・景観等の観光資源を活⽤した観光分野

このいずれかを満たすことが必要です。

高い付加価値を創出している

都道府県・市町村が「基本計画」で定める基準額以上の付加価値額を創出していることが必要です。

主要都市を例にすれば、付加価値増加分として次の金額を超えることとされています。

  • 東京都:1億9,872万円
  • 大阪府大阪市:6,889万円
  • 福岡県:5,427万円

地域の事業者に対する経済的効果がある

売上・地域取引額・雇用者数・給与総額といった都道府県・市町村が「基本計画」で定める基準を満たす必要があります。

東京都の例では、次のいずれかの経済効果が見込まれることが要件とされています。

  • 取引額:11%増加
  • 雇⽤者数:7%増加
  • 売上:11%増加

参考:経済産業省 第2期東京都基本計画の概要経済産業省 大阪府⼤阪市における基本計画の概要経済産業省 福岡県地域未来投資促進基本計画の概要

課税特例の要件

地域経済牽引事業計画の承認を受けた企業は、その計画に従って建物・機械等の設備投資を行う場合に、税の特例を受けることが可能です。

その際は、課税特例として、通常の要件と上乗せ要件を満たす必要があります。

通常の要件

通常満たすべき要件は、次のとおりです。

  • 先進性を有すること
  • 設備投資額が2,000万円以上
  • 設備投資額が前年度減価償却費の20%以上
  • 対象事業の売上高伸び率がゼロを上回り、過去5年度の対象事業にかかる市場規模の伸び率より5%以上高い
  • 旧計画が終了しており、その労働生産性の伸び率4%以上かつ投資収益率5%以上

「先進性の有無」については、通常類型のほか、異なる観点から確認を行うサプライチェーン類型や、特定非常災害の被災地域で事業を実施する場合にこの要件を免除する災害特例も用意されています。

上乗せ要件

上乗せ要件は、2019年度以降に承認を受けた事業が対象です。次の要件に該当すれば、特別償却や税額控除の割合が上がります。ただし、サプライチェーン類型は対象になりません。

  • 直近事業年度の付加価値額増加率が8%以上
  • 労働生産性の伸び率4%以上かつ投資収益率5%以上

上乗せ要件はA・B・Cの3つに分かれ、それぞれ要件が分かれます。

地域未来投資促進税制の適用に関する注意点

地域未来投資促進税制の適用を受ける際は、対象外になるケースもあるため注意が必要です。

対象資産を貸付け用にする場合や、中古の対象資産の取得は対象外

税制優遇の対象となるのは、一度も事業の用に供されていない機械や器具・備品、建物などに限ります。

中古の建物や機械を取得しても対象にならないため、注意が必要です。

また、対象資産を貸付けの用に供する場合も対象外になります。

主務大臣の確認前に対象設備を取得した場合には対象外

手続きの流れや時系列にも注意してください。計画の承認を受ける前に設備の工事に着工しても、承認を受けられません。承認は、必ず「着工前」に受けることが必要です。

また、対象資産を「取得」するのは、確認書の「交付後」でなければなりません。計画の承認後でも、確認書の交付を受ける前に対象となる設備を取得した場合には減税措置を受けられないため、注意しましょう。

地域未来投資促進税制の申請手順

地域未来投資促進税制の申請手順について、確認しておきましょう。

  1. 地域経済牽引事業計画を策定する
  2. 都道府県から地域経済牽引事業計画の承認を受ける
  3. 確認申請書を作成して事前相談を行う
  4. 課税特例の審査を受ける
  5. 計画に基づいて設備投資を行う
  6. 確定申告する

まず、都道府県および市町村が作成する基本計画の内容が自社の事業に合致するかを確認し、「地域経済牽引事業計画」を策定します。都道府県知事に「地域経済牽引事業計画」を申請して承認を受けましょう。

次に、地域経済牽引事業計画のガイドラインに基づいて確認申請書を作成し、期限までに確認申請の事前申請を行います。

課税特例に該当することが確認されたら、国から確認書が届きます。計画に基づき、設備投資を行いましょう。

最後に、課税特例を受けるための確定申告が必要です。

地域経済牽引事業計画が承認されたら受けられるその他の支援措置

地域経済牽引事業計画が承認された場合、税の優遇だけでなく、次の支援措置も受けられます。

  • 金融による支援措置
  • 規制の特例措置

それぞれの内容を解説します。

金融による支援措置

金融における支援措置は、次のとおりです。

  • 日本政策金融公庫からの固定金利での融資
  • 日本政策金融公庫による海外展開支援
  • 信用保証協会による債務保証
  • 中小企業投資育成株式会社からの出資
  • 食品等流通合理化促進機構による債務保証・資金のあっせん

地域経済牽引事業を推進するために行う設備投資や運転の資金は、日本政策金融公庫が提供する長期・固定金利の融資を受けられます。

規制の特例措置

承認を受けた企業は、地域経済牽引事業の遂行を容易にするため、次のような規制の緩和措置を受けられます。

  • 工場立地法における環境施設面積率・緑地面積率の緩和
  • 農地転用許可等の手続きに関する配慮
  • 市街化調整区域の開発許可の手続きに関する配慮
  • 地域団体商標の登録に関する特例措置
  • 財産処分の制限解除手続きのワンストップ化
  • 事業環境整備の提案
  • 事業承継に関する特例措置

予算による支援措置

承認を受けた企業は、各種予算事業等で加点措置・優遇措置を受けられます。対象となる予算事業は、主に次のとおりです。

  • サービス等生産性向上IT導入支援事業(IT導入補助金)
  • ものづくり・商業・サービス 生産性向上促進事業 (ものづくり補助金)

事業によっては終了していたり、新たに追加されたりする場合があるため、情報をチェックしてください。

地域未来投資促進税制は地域経済を活性化させるための優遇制度

地域未来投資促進税制は、地域の特性を活用した事業の経済的効果を高めるために設けられた減税制度です。適用を受けるためには、まず自社の取り組みが都道府県・市町村の定める「基本計画」に合致するかを確認しましょう。

さらに、課税特例に該当すれば承認を受け、設備投資に減税を受けることが可能です。金融支援措置や規制の特例措置なども設けられているため、自社の事業が制度に沿っているときは、申請を検討してみるとよいでしょう。


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