- 更新日 : 2020年9月17日
リース債務

「リース債務」は、リースした物品に対するリース料などのことを指す勘定科目です。リースを行った際には、このリース債務をはじめとしたリース会計と呼ばれる処理を行う必要があり、その際に気をつけるポイントが多数あります。
今回はリース債務を中心に、リース会計において注意しなければいけないポイントを学習していきましょう。
リース債務の種類とは?
リース会計やリース債務について学ぶためには、まずリースの取引にどんなものがあるのかを理解することが大切です。
リースの取引には主に、以下の2種類があります。
・ファイナンス・リース取引
・オペレーティング・リース取引
このうち「ファイナンス・リース取引」にはさらに以下の2種類があります。
・所有権移転ファイナンス・リース取引
・所有権移転外ファイナンス・リース取引
例えばパソコンをリースした際に、中途解約ができず、使用中の修理費用は使う側持ちである契約と、契約期間が柔軟に変更でき、使用中の修理費用は貸した側持ちである反面、リース期間が終了した場合にパソコンを返却するという契約があります。
この場合、前者のような契約がファイナンス・リース取引、後者の方がオペレーティング・リース取引です。
さらにファイナンス・リース取引であっても契約後にパソコンを返却するか追加料金を払って買い取るような契約であれば「所有権移転外ファイナンス・リース取引」、契約後にパソコンを返却する必要がない場合には「所有権移転ファイナンス・リース取引」となります。
リースの期間による違いとは?
リース債務を考える際には、期間についても考えましょう。リース債務はいわゆる「1年基準(ワン・イヤー・ルール)」によって短期・長期に分けることができます。
1年基準は資産や負債(今回の場合はリース資産やリース債務)が「流動」か「固定」かを判断するものとなります。貸借対照表の翌日から数えて1年以内に契約が満了するものに関しては、「流動」として扱います。この「流動」として扱うものが、短期リース債務にあたるのです。
そして逆に、1年を超えて契約が続くものは「固定」として扱います。この「固定」として扱うものが、長期リース債務です。この2つの違いについても理解しておき、混同しないようにすることが大切です。
リース債務は財務諸表でどう扱う?
では、このような特徴があるリース債務は、実務の中でどのように会計処理を行っていけばよいのでしょうか。
実務上では所有権移転ファイナンス・リースの場合、資産の取得とされる取引ですので、通常の売買取引と同じようにリース資産とリース債務を扱います。
逆に、所有権移転外ファイナンス・リース取引と、オペレーティング・リース取引の場合、資産の取得とはみなされない取引になりますので、リース料は「賃借料」として考えます。
これらを踏まえたうえで、実際の計上方法についてまとめると、以下のようになります。
仕訳例:営業車を5年リースで契約し、1年目のリース料金50万円を小切手で支払った。
仕訳例:所有権移転外ファイナンス・リース取引、およびオペレーティング・リース取引の場合
資産の所有権が移転するか否かによって処理が変わりますので、混同しないように注意が必要です。
減価償却費はどのように計上する?
さて、リースによって得ている資産も、当然減価償却を行う必要が出てきます。この場合にも、資産の所有権が移転するか否かによって、処理方法が変わりますので注意しましょう。
資産を最終的に返却する必要がない所有権移転ファイナンス・リース取引の場合には、自社にある資産の減価償却と同じ方法で減価償却費を計上してしまって問題ありません。
所有権移転外ファイナンス・リース、およびオペレーティング・リース取引の場合、平成20年4月1日からは、税務上では売買取引として扱われています。ですから、支払うリース料がそのまま減価償却費として扱われ、リース料を支払い終わった段階で、減価償却限度額と累計のリース料が合致します。
このようなことから、リース取引の減価償却費計上方法は、以下のようになります。
■例:年間50万円の支払いで5年リースしている営業車の、1年分の減価償却費を計上する。
仕訳例:所有権移転ファイナンス・リース取引の場合(直接法)
仕訳例:所有権移転外ファイナンス・リース取引、およびオペレーティング・リース取引の場合
仕訳例:年間50万円の支払いによる5年リース(所有権移転外ファイナンス・リースもしくはオペレーティング・リース)が終了した段階の減価償却費の計上
まとめ
リース債務は、ファイナンス・リース取引、オペレーティング・リース取引によって処理方法が変わります。さらに、ファイナンス・リース取引は所有権が移転するか否かという部分でさらに扱いが異なるということを押さえておきましょう。
さらに、資産が「固定」か「流動」かという部分で、長期・短期の違いが生まれることも忘れてはいけません。1年基準に照らし合わせて、分類の仕方を誤らないようにしましょう。
そして、実務上におけるリース取引の計上に関しては、所有権が移転するか否かで計上方法はもちろん、減価償却費の扱い方についても全く変わるという部分まで押さえることが重要です。
リース取引の分類を正しく理解したうえで、その分類に則した会計処理ができるようにしていきましょう。
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