- 更新日 : 2024年8月8日
数字で読み解く! 日本の中小企業の状態とは
経済白書などの調査から判明した実際の数字から、これからの日本経済を引っ張っていく中小企業の実情を読み解いていきます。
中小企業の数は?
みなさんは、日本にはどれほどの中小企業が存在しているのか想像できますか?
2016年版の中小企業白書によると、2014年時点で中小企業の数(*1)は、小規模事業者 (*1)325万者と中規模企業56万者の合わせて381万者に及ぶとされています。大企業は約1万者であることから、すべての会社のうち、約99.7%を中小企業が占めていることになります。
また、従業員の雇用数で見ても、中小企業が約4488万人で、大企業の約1433万人を大きく上回っていることから、中小企業が日本経済を支える存在であることは間違いありません。
では、日本経済を支える中小企業の現状を再び「2016年版の中小企業白書」から見ていきましょう。
実は、2016年現在は中小企業の経常利益は過去最高水準となっています。アベノミクスの恩恵を受けたと言われる大企業と同様に、中小企業も利益の面でみると良い状態と言えます。
ところが、経常利益の増加要因を見てみると、そこは大企業とは異なります。大企業は売上高を伸ばして利益につなげているのに対して、中小企業は売上高が2009年と比べてもマイナスになっています。
そのかわりに変動費と人件費が大きく減少していることから、過去最高水準の利益が達成されているのです。
このことから、利益が出ているとはいえ、売上が伸びていない中小企業の苦しい状態が読み取ることができます。
今後は、中小企業が売上高を伸ばしていくためにも、この利益分を人件費や機械設備などにうまく投資できるかということが課題になります。
製造業その他→資本金3億円以下または従業員が300人以下(うち小規模事業者は従業員が20人以下)
卸売業→資本金1億円以下または従業員が100人以下(うち小規模事業者は従業員が5人以下)
サービス業→資本金5000万円以下または従業員が100人以下(うち小規模事業者は従業員が5人以下)
小売業→資本金5000万円以下または従業員が50人以下(うち小規模事業者は従業員が5人以下)
中小企業の起業後の実情とは?
現状の中小企業の状況と課題についてお伝えしましたが、今後、中小企業が日本経済を引っ張っていくために重要なのは、新たな起業家たちの存在です。
毎年、多くの中小企業が廃業している一方で、新たな企業が設立されています。経営者の高齢化により、中小企業の数自体は減少していますが、起業を志す若者や女性、さらには意欲的なシニア層が多く存在しているのも事実です。
そこで今度はよりミクロな視点から、中小企業の起業後の実情を、中小企業白書のデータから見ていきましょう。
まずは、起業後3年の売上を表すデータがあります。
図1: 起業後の年商(中小企業白書2014より抜粋)
(出典:中小企業白書 2014)
図1が示すように、起業後3年時点で売上高が年間で500万円以下という企業が約4割を占めています。起業してから3年という短期間であることから、このような売上規模になっていますが、この状態が何年も続くようだと厳しいです。
売上高だけに着目しても、起業後の実情はなかなかつかめません。
なぜなら、事業内容によってはほとんど固定費がかからず、売上高がそのまま利益になっている企業もあれば、その逆で売上高はしっかりと計上されていても人件費などを差し引くと利益としてはあまり残らない企業も存在するからです。
そこで、起業家の実情をより表している起業家の手取金額を見てみましょう。
図2: 起業後の月額手取り収入(中小企業白書2014より抜粋)
(出典:中小企業白書 2014)
まず、起業家自身の生活面から見ると、月額20万円の収入は必要最低限のラインになると思います。図2の起業後の手取り金額の全体平均で見ると、37.5%が手取金額で20万円以下です。
より詳細に見ていくと、女性は約半数、若者で40%が20万円に満たない水準になっています。
逆に、日本のサラリーマンの平均よりも高い水準と言える月額40万円超は全体平均では35.2%です。こちらもシニア層が割合としては大きいですが、これはシニア層の方が資金をある程度投資して一定規模の企業からスタートしている傾向が反映されているのでしょう。
その一方で、月額200万円超の割合だけを取り上げると若者層が5.0%と最も大きいという結果になっています。若者層はIT関連などの資本がなくても始めることができ、短期的に爆発的な成長が望める分野に進んでいるということが伺えますね。
このような数字を高いと見るか低いと見るかは人それぞれですが、実情としては起業したものの、なかなか生活できない人と、起業後3年という短期間でもしっかりとした収入を手に入れている起業家が一定数存在するということは分かります。
まとめ
最後に、今回のポイントをもう一度確認していきましょう。
・雇用の面においても中小企業が約4488万人で、大企業の約1433万人を大きく上回っている
・中小企業の現状は経常利益が過去最高水準となっているが、売上の伸びは見られず、この利益分を人件費や機械設備などにうまく投資できるかということが課題になっている
・起業家の実情としては、起業したものの、なかなか生活できない人と、起業後3年という短期間でもしっかりとした収入を手に入れている起業家が一定数存在する
既存の中小企業がこれからの課題である売上を伸ばしていけるのか、あるいは若者や女性、さらにはシニア層の元気な起業家たちの頑張りがこれからの日本経済の成長の鍵になってきそうです。
関連記事
・中小企業白書が明かす「稼ぐ中小企業」の特徴
・中小企業の定義は法律によって異なる
・中小企業経営者必見!補助金・助成金の基礎知識
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
会計の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
軽減税率に向けた「業種別の影響と対応」 飲食や小売はどうなる?
2019年10月1日の消費税増税とあわせて始まる軽減税率。高齢社会の中で消費税の引き上げがやむを得ない一方、引き上げによって生活が著しく困窮することないよう一部は消費税8%に据え置かれます。 生活の影響についてはある程度は想像しやすいですが…
詳しくみる会計ソフトとERPの違いは?導入検討時の比較ポイント
これまでは「経理なら会計ソフト」といったように、効率化したい業務ごとにシステムを導入する形が一般的でした。しかし現在は、システム単体でなく複数のシステムを統合したERPの導入が増えています。 では経理の領域で考えた場合、会計ソフト単体での利…
詳しくみる会計ソフトのランニングコストはどんなものがある?削減するには?
個人・法人を問わず、経営を行っていく上で決して無視できないのが、帳簿や会計の存在です。昨今では情報データの多さやその利便性から会計ソフトを使用して会計処理を行うことが当たり前になっています。 ゆえに会計ソフトのランニングコストは、経営上軽視…
詳しくみる国保計算を基本から理解するための3つのポイント
職場で社会保険に加入していない人や生活保護を受給していない人であれば加入が義務付けられている国民健康保険(以下、国保)。 ここではこの国保の保険料計算(以下、国保計算)の基本と、保険料がどんなもので構成されていて、どうして支払わなくてはなら…
詳しくみる記帳には会計ソフトを使うべき?色々な方法がある
「会計処理」には多くの時間と手間を要します。しかし「会計処理」は事業をうまく運営し、税金の計算を正確に行うための大切な作業の1つです。 会計の精度は、事業の発展や拡大に大きく影響します。そのために必要となる大切な作業の1つが「記帳」です。 …
詳しくみる連結財政状態計算書とは?見方や会計基準の違い、作成ポイントを解説
連結財政状態計算書は企業グループ全体の資産・負債・純資産を項目ごとに記載した決算書類です。同様の内容が記載された書類としては「連結貸借対照表」というものもありますが、実は規格ごとに記載方法や項目に多少の違いがあります。 この記事では連結財政…
詳しくみる