- 更新日 : 2024年8月15日
値引を受けた場合の仕訳や経費精算はどうすればいい?
商取引において値引の処理はつきものです。同時に経理業務においても、値引された支払いの仕訳や従業員が値引された商品を立て替え購入した際の経費精算といった処理が発生します。通常の仕訳や経費精算とは異なる対応が必要な値引の処理は、どのように行えばよいのでしょうか。
この記事では、値引された品物を会社で購入した場合、および従業員が立て替えて値引き商品を購入した場合の経費精算についてご紹介します。
目次
値引を受けた場合の経費の仕訳
一口に値引といっても、自社が販売した商品を値引する場合と、購入した商品代金を値引してもらうケースがあります。それぞれにおける仕訳処理の方法についてご紹介します。
売上値引の場合
売上値引とは、一度計上した売上から値引分を差し引く行為を指します。売上値引は主に販売した商品に以下のような問題が発生した際の対応として用いられており、売上値引勘定で売掛金を減らす仕訳が行われます。
- 販売した品が破損していた
- 販売した品に品質不良があった
- 売り上げた品に量目不足が発生していたなど
以下の条件で売上の計上、そして後日値引を行った場合の仕訳は次の通りです。
【売上】
【値引】
仕入値引の場合
仕入値引とは、購入(仕入)した品物に対し値引を受けた場合に使う勘定科目です。仕入値引は、初めから値引されている商品を購入する際の処理ではなく、定価で購入した商品の代金を、破損等の理由で後日値引してもらった際の仕訳で使用します。
以下の条件で値引があった場合の仕訳について見てみましょう。
【仕入】
【値引】
値引と割戻、割引の違い
仕訳での「値引」とは、一旦「売上」「仕入」として仕訳したものを後ほど値引した場合に使うということをご紹介しました。では、似たような意味と思われがちな「割戻」「割引」についても押さえておきましょう。
【割戻】
割戻には「売上割戻」と「仕入割戻」があります。それぞれの意味をご紹介します。
売上割戻:多くの取引をした取引先に対して、代金を安くした場合に使う勘定科目。「リベート」「キックバック」とも呼ばれるもの。販売側が使う勘定科目となる。
仕入割戻:多くの品を仕入れ、代金を安くしてもらった場合に使う勘定科目。仕入側が使う勘定科目。
割戻も値引同様に、一度売上(もしくは仕入)の仕訳を行った後に使う勘定科目です。一旦は売上(もしくは仕入)を計上し、その後、割戻の仕訳を行います。
では、割引についてもご紹介します。
【割引】
割引とは、支払期限前の支払いに対する代金の減額です。売掛金・買掛金に含まれる取引から支払いまでの期間の利息分を差し引く処理を指します。
売上割引の場合の仕訳は次の通りとなります。
仕入割引の仕訳も確認してみましょう。
個人の立替で値引が発生した場合の経費精算
割引や値引は、仕入以外の支出においても発生します。従業員が経費を立て替えた際にクーポンを利用したケース、会社が保有する商品券で支払いを行ったケースにおける処理方法を見てみましょう。
従業員がクーポンを使って立て替えを行った場合
従業員が自分の持っていたクーポンを使って立て替えた場合の精算は、一般的に次の2通りのいずれかで行われます。
- クーポン分も含めて購入した品物の代金で精算する
- 従業員が支払った金額を精算する
どちらが正解とは決まっていませんので、各企業で運用ルールを定めた社内規定を定めるとよいでしょう。ただし、購入した品物の代金で精算するという場合、クーポン分の金額は従業員の「貰い得」になり、クーポンを使わない従業員と差が生じてしまうという点に留意して規定を定めることをおすすめします。
貰った商品券で会社の物品を購入した場合
会社が貰った商品券で会社の物品を購入することもあるでしょう。まずは貰った時点で原則として、以下の会計処理を行う必要があります。
その後、この商品券を使って会社の物品を購入した時は以下の会計処理を行います。
商品券を貰った時に会計処理が必要な点を忘れないようにしてください。
値引・割戻・割引の違いを把握して会計処理を行おう
「値引」「割戻」「割引」はどれも品物の値段を一部分引く(引かれる)処理です。用語は似ていますが、使い方が全く異なりますので、会計処理の際は気を付けてください。
また、値引や割戻の場合は一旦売上や仕入で会計処理を行った後に、値段を引いた(引いてもらった)分の会計処理が必要です。この点は値段を引いた分と合わせて会計処理を行う割引とは異なります。
それぞれの言葉の意味だけでなく、会計処理の方法についてもきちんと把握しておきましょう
よくある質問
仕入値引を受けた場合の経費の仕訳はどうすればいい?
まずは定価で購入したという形で会計処理、後日値引してもらった旨の会計処理が必要です。詳しくはこちらをご覧ください。
個人の立替で値引を受けた場合の経費精算はどうすればいい?
会社の規定により処理が異なります。クーポン分で値引してもらった分を差し引いて精算するか、もしくは実際に現金等を支払った分のみで精算するかは会社ごとに定めて問題ありません。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
会計の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
売掛金と前受金は両建てできる?ケースや処理方法、相殺について解説
企業の経理担当者の中には、売掛金と前受金を両建てして計上することが可能なのかわからないという人もいるかと思います。売掛金と前受金の両建ては、状況によってできる場合とできない場合があるため、注意が必要です。 本記事では、売掛金と前受金に内容や…
詳しくみる請求書の照合を自動化・効率化する方法は?メリットや注意点も解説
請求書の照合を自動化することで、経理業務の効率は大幅に向上します。従来の手作業による照合作業は時間がかかり、入力ミスも発生しやすいものでした。しかし、自動化を導入することで、これらの問題を解決できます。 本記事では、エクセルやRPA、専用シ…
詳しくみる入金遅延の対応方法とは?リスク管理の重要性なども合わせて解説
入金遅延は、会社の経営にまで影響を与えることもあり、決して楽観視してもよいものではありません。そのため、入金遅延が発生すると、適切かつ迅速な対応が求められます。今回は、入金遅延の対応方法について解説いたしますので、入金遅延の対応方法を知って…
詳しくみる小口現金をキャッシュレス化する方法・ステップを簡単解説!
小口現金をキャッシュレス化することにより、業務の効率化だけでなく、長期的に見て顧客ニーズ対応など多くのメリットがあります。特に人員の限られる中小企業においては、将来的な競争力維持のためにもキャッシュレス化を前向きに検討することが推奨されます…
詳しくみる集金代行会社とは?選び方、メリット、活用事例について徹底解説
集金代行会社とは集金代行会社は、企業や個人事業主がスムーズに資金回収を行うために利用するサービスです。集金代行を利用することで、煩雑な入金確認や未払い対策の手間が軽減し、業務を効率化しやすくなります。 本記事では、集金代行会社について詳しく…
詳しくみる軽減税率の導入における経費精算の注意点や仕訳例
2019年10月1日、消費税率8%から10%に移行したことにともない、軽減税率が導入されました。 これにより、消費税の課税対象の一部には軽減税率8%が適用され、対象外のものについては消費税率は10%となります。軽減税率の導入により経費精算は…
詳しくみる