• 作成日 : 2025年2月5日

パソコンは減価償却できる?計算方法や30万円未満の特例、耐用年数も解説

パソコンの減価償却は、取得価額や用途ごとに処理が異なり、判断に迷うことも多い業務です。特に法定耐用年数や特例の適用条件を誤ると、税務上のリスクが発生する可能性が否定できません。そのため正しい理解が求められます。

本記事では、パソコンの取得価額ごとの減価償却の計算方法や法定耐用年数、特例の適用条件などについて解説します。

パソコンは減価償却ができる

パソコンの購入費用は、会計上「資産」として処理されることが多いです。一定期間にわたり使用する資産については、取得した年に全額を経費として計上するのではなく、耐用年数に応じて費用配分を行います。これが「減価償却」と呼ばれる手続きです。

業務に使用するパソコンは、取得価額や耐用年数に基づいて減価償却を行うことが可能です。ここでは、減価償却の基本的な概念から、パソコンを減価償却するメリットまでを確認していきましょう。

そもそも減価償却とは

減価償却とは、長期にわたって使用される固定資産の取得価額を、使用が見込まれる期間(耐用年数)にわたって配分したうえで経費(費用)計上する手続きです。

一部特例による例外や取得金額による違いはありますが、通常パソコンは購入した年だけでなく、法定耐用年数に応じて費用計上するのが原則とされています。

減価償却を行う理由は、固定資産の資産価値が時間の経過によって減少していくことを財務諸表に反映するためです。実際の現金支出は購入した年度に集中しますが、会計上はその費用を複数年度に分散させ、企業や個人事業主の収益力をより正確に表します。

パソコンを減価償却するメリット

パソコンの減価償却を適切に行うことで、購入費用を複数年度にわたって配分でき、年間の税負担を平準化することが可能です。また、まとめて何台も購入した場合でも、減価償却の方法を理解していれば費用配分が明確になり、損益計算書貸借対照表において、資産と費用がバランスよく計上されます。その結果、会社や事業の財務状況を正確に把握しやすくなり、計画的な設備投資や資金管理にも役立つでしょう。

また、決算時の見た目の利益を急激に増減させないという観点でも、減価償却による費用配分は有効です。企業の場合は株主や金融機関などに提出する決算書の安定性にもつながるうえ、個人事業主であっても業績の把握がしやすくなるため、事業計画の策定に役立ちます。

パソコンは取得価額がいくらから減価償却できる?

パソコンを購入した際の税務処理は、取得価額によって異なります。ここでは、金額ごとにどのように経費処理するかを見ていきましょう。

10万円未満の場合、減価償却が不要

税務上、取得価額が10万円未満の資産については「消耗品費」や「費用」として処理しても良いこととされており、原則として取得した年度に全額を経費計上できます。そのため、10万円未満のパソコンは減価償却する必要はありません。

10万円以上20万円未満の場合、一括償却資産として3年間で償却が完了

取得価額が10万円以上20万円未満の場合は、「一括償却資産」として扱います。一括償却資産とは、個別の固定資産として減価償却するのではなく、その名のとおり一括で償却していく方法が認められた資産区分のひとつで、取得した資産の金額を3年間にわたって均等に償却していきます。たとえば15万円でパソコンを購入した場合、5万円ずつ3年にわたって費用計上できるというイメージです。

一括償却資産の場合、毎年の減価償却費を計上する必要はありますが、法定耐用年数に基づく詳細な計算は不要です。3年という比較的短期間で償却が完了するため処理が比較的簡便であり、実務負担を軽減の軽減にもつながります。

一方で、購入後に短期で廃棄や売却をした場合でも、残存簿価があると譲渡損失などでまとめて処理できません。

30万円未満の場合、少額減価償却資産の特例の対象に

取得価額が30万円未満のパソコンの場合、一定の条件を満たせば「少額減価償却資産の特例」を利用できます。

この特例を活用すると、30万円未満の減価償却資産について、取得年度に全額を経費計上が可能です。ただし、この特例を利用できるのは、年間の対象資産の合計額が300万円以下であるなど、一定の条件を満たす場合に限られる点に注意が必要です。

取得価額が30万円以上の場合、法定耐用年数による減価償却が必要

パソコンの取得価額が30万円以上の場合は、少額減価償却資産の特例が使えないため、取得年度に全額を経費計上できません。原則として、法定耐用年数に基づく減価償却を行います。

減価償却方法としては、定額法や定率法などが認められていますが、パソコンの場合はどの耐用年数を適用するかによって毎年の費用計上額が変わってきます。この区分は後述する法定耐用年数のルールを確認しながら、漏れのないように処理を行いましょう。

パソコンの減価償却費の計算方法

パソコンに限らず、減価償却費を計算する方法には大きく分けて「定額法」と「定率法」があります。法人税法所得税法では、どの方法で計算するかを選択できる場合があり、会社規模や会計方針、業種などに応じて適宜判断することが一般的です。

ここでは、それぞれの償却方法のパソコンの減価償却における計算方法を紹介します。

定額法による計算方法

定額法は、耐用年数の期間にわたって均等に費用を配分していく方法です。計算式は以下のとおりです。

取得価額÷耐用年数

この数式で求められた金額を、毎期の減価償却費として計上します。

定率法による計算方法

定率法は、減価償却費を未償却残高に定められた償却率を掛けて毎年の減価償却費を算出する方法です。初年度が最も減価償却費が大きく、年数が経過することに償却費が減少するという特徴があります。

計算式は、以下のとおりです。

未償却残高×償却率=当期の減価償却費

定率法は、資産の早期の費用化に適した方法です。特に、パソコンのように技術進化が速く、価値の低下が早い資産には有効な選択肢といえるでしょう。

パソコンの減価償却費の計算に必要な法定耐用年数とは

パソコンの減価償却費を計算するには、法定耐用年数の把握が欠かせません。法定耐用年数とは、税務上定められた資産の「使用が可能な期間」をあらかじめ基準として示したものです。パソコンの場合、用途によって法定耐用年数が異なります。

一般的に使用されるオフィス用のデスクトップパソコンや、ノートパソコンの法定耐用年数は4年です。一方、パソコンをサーバー用途で使用する場合、法定耐用年数は5年になります。

パソコンの減価償却費の仕訳方法

パソコンを購入し、減価償却を行う場合の仕訳は、一般的には以下のような流れで処理します。

まず、パソコンを購入した時点では以下のように仕訳をします。

  • (借方)工具器具備品 ×××円/(貸方)現金(預金)×××円

このように仕訳を計上し、固定資産として扱います。その後、決算などのタイミングで減価償却費を計上する際には以下のように行います。

  • (借方)減価償却費 ×××円/(貸方)工具器具備品減価償却累計額 ×××円

複数年にわたって費用計上を続けることで、帳簿上のパソコンの価値(帳簿価額)は徐々に減少していきます。期末や決算期には、減価償却累計額とのバランスをチェックして、ミスや漏れがないかを確認することが重要です。

もし固定資産税台帳や減価償却資産台帳を作成していれば、そこに記録を残すことで管理がスムーズになります。

個人事業主が購入したパソコンも減価償却できる?

個人事業主が事業用に使うパソコンを購入した場合も、原則として減価償却が可能です。ただし、個人事業主であっても青色申告者か白色申告者かによって経費処理の選択肢が異なる場合がある点には注意しましょう。

特に、30万円未満の少額減価償却資産の特例は「青色申告者」であることが適用要件のひとつです。白色申告の場合は、この特例を使えないため、10万円未満の消耗品費として計上できる資産を除き、原則的に耐用年数に基づく減価償却を行う必要があります。

また、個人事業主の場合は業務用と私用が混在するケースがあります。私用割合がある資産は、税務上、事業割合を考慮した家事按分が必要です。

たとえば、事業に使用する割合が7割程度であれば、その部分のみ減価償却費として計上し、残りの3割は私用分として経費には算入しません。こうした区分管理を明確にしておくと、税務調査や会計管理上のトラブルを未然に防げますので、領収書の管理や用途区分などは普段から整理しておくとよいでしょう。

パソコンの金額によって計上方法は異なる

パソコンの減価償却については、取得価額によって処理方法が異なります。パソコンは仕事の効率化に欠かせないツールであり、技術進歩やセキュリティ上の観点から定期的な買い替えが必要となるケースも少なくありません。

減価償却の仕組みを正しく理解しておくと、経営判断やキャッシュ・フローの管理がよりスムーズになります。法人だけでなく個人事業主においても適切に減価償却を行うことで、税務リスクを低減しながら、必要なタイミングで設備投資を行いやすくなるでしょう。


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