• 更新日 : 2024年9月26日

期間按分とは?計算方法・対象となる勘定科目・エクセル管理も解説!

月次処理や決算など会計処理をしていく過程で「期間按分」が必要になるケースがあります。「期間按分」とは、一定の基準に基づいて収益や費用を対応する期間それぞれに按分する計算方法を指します。今回はこの「期間按分」について、基本的な考え方や計算方法、対象となる収益費用などについて解説していきます。

期間按分とは?

はじめに「期間按分」の基本的な考え方を理解した上で、会計処理と期間按分との関係について解説していきましょう。

そもそも按分とは?

1つのものを2つ以上に分割することを「分ける」と呼びますが、「按分」という言葉から、分割するということは容易にイメージできるでしょう。しかし「按分」はただ漠然と分けるのではなく、ある一定の数的基準に基づいて1つのものをその割合に応じて正確に分けることを意味します。

例えば、1つのケーキを各自が食べたい大きさで適当に切ればただ「分けた」だけですが、体積が等しくなるように正確に切り分けたとしたらそれは「按分」したことになります。
そもそも按分とは?

会計にこの「按分」という考え方を取り入れる場合、按分されるのは「金額」であり、「期間」や「割合」などといった数的基準をベースにして金額を按分することになります。

3ヶ月分の費用30万円を一括で支出した場合の、1ヶ月当たりの金額を求めてみましょう。
対象となる期間は3ヶ月ですから、1ヶ月分の金額は30万円×1ヶ月/3ヶ月=10万円となります。

そもそも按分とは?

30万円という「金額」を、3ヶ月間という「月数」を基準として各月に按分したわけです。

按分計算の方法は?

このように、按分するためにはまず「按分する金額」と「按分割合」が必要となります。

按分額 = 総 額  ×  按分割合

ポイントとなるのは、どのような数的基準を用いて「按分割合」を決定するかです。
会計実務において収益や費用を按分する際の根拠として挙げられるものとして「費用収益対応の原則」や「事業割合」などがあります。これらのうち「期間按分」の根拠となるのが「費用収益対応の原則」です。

企業の会計処理指針である「企業会計原則」のなかに「費用収益対応の原則」というのがあります。

一般的に収益と費用は対応関係にあります。収益をあげるためには費用を要しますし、費用が発生すればそれに対応する収益を計上する必要があります。「費用収益対応」とは簡単にいうと、事業期間内に対応する収益や費用を期間の経過に応じて対応させて計上しましょう、という原則です。

したがって「期間按分」をする際に用いる数的基準としては月数や日数、時間などといった時間的なものが用いられます。

期間按分額 = 総額 × 経過した期間/対象期間

12月決算の会社が、費用を支出し期間按分するケースを例に解説します。

例:1月に自動車の自賠責保険料24,000円(24ヶ月分)を支払った

借方
貸方
保険料
12,000円
現金
24,000円
前払費用
12,000円

もし仮に支出した24,000円を当期において全額費用としてしまえば、将来の費用である12ヶ月分も一緒に費用計上されてしまいます。これでは費用収益が期間に応じて対応しているとはいえません。したがって、費用総額を期間の経過に応じて「期間按分」する必要があります。

上記の例であれば、費用総額24,000円(24ヶ月分)のうち、当期に対応するのは12ヶ月ですから期間按分額は「24,000円×12ヶ月/24ヶ月=12,000円」となります。

なお、按分計算について詳しく知りたい方は以下のサイトをご参照ください。

期間按分が必要な勘定科目は?

では、会計実務で「期間按分」が必要となる具体的な勘定科目について、いくつか例示してみましょう。

前受金

家賃の一括受取や雑誌購読料の複数年払いなど、将来分を含めて代金を前受けするケースがあります。もし受け取った時に全て収益計上してしまえば、将来の収益まで先食いしてしまうことになり、費用収益対応の原則から外れてしまいます。
したがって、受け取った代金のうち当期に対応する分を期間の経過に応じて「期間按分」することになります。

減価償却費

機械装置、工具器具備品等のうち固定資産に該当するものは、税法の規定により原則として支出した時点で一括費用計上することが認められていません。(少額減価償却資産や即時償却の特例を除きます)
固定資産を費用計上する処理を減価償却と呼び、減価償却により計上される費用が「減価償却費」です。
減価償却費は会社の任意により計上することはできず、税法で定められた期間内(法定耐用年数)に対して税法で定められた割合(法定償却率)を「期間按分」することになります。

損害保険料

火災保険料や自賠責保険料などの損害保険料を複数年前払いするケースがあります。支出時に将来の費用を含めた総額を一括で支払っていますので、全額を支出時の費用とすることはできません。よって、保険契約の期間にわたって「期間按分」することになります。

前払費用

今期分の1年間分の家賃や保険料などを、事前に支払うケースがあります。この時、一括で支払ったとしても、即座に費用計上するのではなく、該当する会計期間ごとに分割して計上していきましょう。

そこで、自分がサービスを受ける期間に渡って「期間按分」することになります。

期間按分の仕訳例

会計の実務現場における期間按分の具体的な仕訳例についても見ていきましょう。

前受金の仕訳

サブスクリプションサービスにおいて、前受金は利用者からサービス提供前に受け取る料金のことを指します。仕訳方法自体は複数考えられますが、今回は決算時に当期分を前受金から売上に振り替える方法を見ていきましょう。

たとえば、サブスクリプションサービスを1年間提供する契約で、顧客から360,000円を一括で受け取った場合、この金額はサービス提供が完了していないため、全額を前受金として計上します。

借方貸方
普通預金360,000円前受金360,000円

そして、支払いが行われたのが8月で、決算日が翌年の3月だった場合、1ヶ月分を30,000円とみなして、決算時の振り替えは以下の通りになります。

借方貸方
前受金240,000円売上240,000円

前払費用の仕訳

サブスクリプションサービスにおいて、前払費用はまだ提供されていないサービスに対して、支払った代金を指します。前受金と同じく、決算時に当期分を前受金から売上に振り替える方法を見ていきましょう。

たとえば、サービスを利用するために1年分の契約料金120,000円を先に支払った場合、すぐに全額を費用として計上せず、まずは前払費用として資産に計上します。

借方貸方
前払費用120,000円普通預金120,000円

そして、サービスが提供される期間にわたって按分し決算時に当期分を振り替えます。たとえば、8月に支払いを行い、決算日が翌年の3月だった場合の振り替えは以下の通りです。

借方貸方
サブスクリプションサービス料80,000円前払費用80,000円

減価償却費の仕訳

減価償却の仕訳では、固定資産の耐用年数にわたって費用計上していきます。

耐用年数10年の業務用機械を100万円で購入した場合、まずは業務用機械を資産として計上します。

借方貸方
業務用機械1,000,000円普通預金1,000,000円

機械装置では定率法にもとづいて償却率を定めます。

そして、3月決算法人が12月に耐用年数10年の機械を100万円で取得した場合、償却率は0.2であるため、当期分の減価償却費は以下の通りです。

1,000,000×(1-0.2)×4ヶ月/12ヶ月=266,666円

借方貸方
減価償却費266,666円業務用機械266,666円

損害保険料の仕訳

契約した損害保険の期間が1年を超える場合には、保険料を各年度に按分して計上していく必要があります。

5年間の火災保険に500,000円支払った場合、まずは支払い時に借方として前払費用を計上します。

借方貸方
前払費用500,000円普通預金500,000円

その後、1年目の決算時には前払費用の内、当期分の保険料を費用として振り替えつつ、3年目以降分の費用は「長期前払費用」として計上します。

借方貸方
火災保険料100,000円前払費用100,000円
借方貸方
長期前払費用300,000円前払費用300,000円

そして、翌年の決算時にも前払費用から保険料を振り替えつつ、さらに来期分の費用になる部分を「長期前払費用」から「前払費用」に振り替えましょう。

借方貸方
火災保険料100,000円前払費用100,000円
借方貸方
前払費用100,000円長期前払費用100,000円

広告宣伝費を期間按分することは可能?

自社の製品やサービスを宣伝するために、広告宣伝を行う場合、広告宣伝費として経費計上が可能です。そして、複数年にわたって同一の広告宣伝を行うケースで、契約時に一括払いした時、広告宣伝を実施する期間に応じて按分しなくてはいけません。

実際に期間按分をしながら計上していく際には、支払った費用を年数分で按分し、残り部分を前払費用または長期前払費用として資産計上します。
その後、翌年度以降は前払費用または長期前払費用から取り崩して費用計上していきましょう。

期間按分はエクセルで管理できる?

「期間按分」が必要な収益や費用は前章で解説したものだけではありませんし、同じ勘定科目内であっても「期間按分」が必要なもの、必要ないものに分かれることがあります。

対象となる支出の数が少なければ、手計算により台帳管理していくことも可能でしょう。しかし、事業規模が大きくなり期間按分の対象数が増加するにつれ事務負担は重くなります。

「期間按分」の計算を軽減する方法として挙げられるのが、エクセルやソフトを利用した計算の自動化です。

按分が必要な支出と対象期間さえ正しく認識して入力すれば、あとはパソコンが自動で按分計算してくれますので、手計算による煩雑な計算や台帳管理をする必要がなくなるというメリットがあります。

しかし、エクセルで費用按分を管理した場合、対象期間や按分方法に変更があればその都度1つずつ変更しなければなりません。また、計算式が壊れてしまい違う答えが計算されるといったリスクも考えられます。エクセル管理は確かに計算が自動になり楽ですが、台帳管理自体は煩雑になりがちです。

期間按分の管理はクラウド会計ソフトがおすすめ!

そこでおすすめしたいのが「ソフトウエアを使ったシステム管理」です。

エクセル管理の場合、入力項目から計算式、計算結果やエクセルシート管理などを自分で1から作成し、管理しなければなりません。

その点「ソフトウエアによるシステム管理」であれば、指定された入力欄に必要な項目だけ入力すればあとはソフトが自動的に管理してくれます。エクセルによるシステムの立ち上げや計算式の変更などの事務負担を軽減することができますし、計算式が壊れたり入力間違いをするというリスクを軽減することにも繋がります。

システムですので費用負担が発生するというデメリットはありますが、費用按分の事務負担に悩んでいる方は検討してみてはいかがでしょうか。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。

関連記事

会計の注目テーマ