• 更新日 : 2021年7月9日

消費税における「切り捨て」とは? 法人が行う消費税の計算・納税方法を解説

消費税における「切り捨て」とは? 法人が行う消費税の計算・納税方法を解説

消費増税や軽減税率に対応した結果、消費税の端数が生じた経験はありませんか?
端数処理は、切り上げ、切り捨て、四捨五入などが考えられますが、どれが適切なのか判断しかねる方も多いと思います。

そんな方に向けて、表示価格や請求書で消費税の端数が生じた場合や、確定申告での端数処理を解説していきます。

消費税の計算方法

令和元年(2019年)10月1日から消費増税及び軽減税率制度の導入によって、消費税率が標準税率10%と軽減税率8%の複数税率の状態になりました。

商品やサービスを消費者へ販売する段階(事業者間の取引を除く)では「総額表示」 (税込金額の表示)が義務付けられています。

総額表示のために税込金額を計算した際、消費税部分の1円未満の端数が生じた場合の端数処理は「切り上げ」「切り捨て」「四捨五入」などの選択は事業者ごとによって任意に選択できます。

また、請求書などで消費税を計算した結果、端数が生じた場合も同様に「切り上げ」「切り捨て」「四捨五入」などの端数処理の選択は事業者ごとによって任意に選択できます。

ただし、請求書などで注意すべきなのは、端数処理を行う段階です。

複数税率に対応した請求書(区分記載請求書または適格請求書)では、「税率ごとの合計金額」が記載されるため、消費税部分の1円未満の端数がある場合は「税率ごとの合計金額」欄で端数処理を行うことになります。

具体的には、標準税率10%の対象商品と軽減税率8%の対象商品を同時に販売し、請求書を発行する場合、標準税率10%の税込金額合計欄で端数処理を行い、軽減税率8%の税込金額合計欄で端数処理を行います。
なお、請求書が複数枚になる場合は、一領収単位で端数処理を行います。

消費税が「課税される取引」と「課税されない取引」とは?

消費税に関して、消費税が「課税される取引」と「課税されない取引」をおさえておきましょう。
以下の4つの要件をすべて満たすと基本的に消費税が「課税される取引」になります。

【消費税が課税される要件】

要件内容
国内において基本的に日本国内を意味しています。
事業者が事業者として行う取引事業者は、法人と個人事業主を意味し、
取引を繰り返し、継続、かつ、独立して行うことを意味しています。
対価を得て行う取引物品の販売などをして反対給付を受けることをいいます。
寄付金や補助金、無償の取引は含まれません。
資産の譲渡等商品や製品などの販売、資産の貸付及びサービスの提供をいいます。

(引用:国税庁「課税の対象」

基本的には、日常的に行う取引はほぼ課税される取引になります。

また、上記の要件を満たしても消費税になじまない取引や要件を満たさない取引は、消費税が「課税されない取引」になります。
課税されない取引の主な例は以下の通りです。

・土地や住宅の譲渡、貸付(一時的なものは除く)
・商品券などの譲渡
社会保険医療、介護サービス、社会福祉事業など
・特定の医療行為
・特定の学校の入学金、授業料など
・保証料、保険料など

(引用:国税庁「非課税となる取引」

税額計算時の「切り捨て」とは?

軽減税率制度の導入によって、以下のように消費税率及び地方消費税率が変更されています。
確定申告時には計算でよく使う税率ですので確認しておきましょう。

適用時期令和元年9月30日まで令和元年10月1日から
区分旧税率標準税率軽減税率
消費税率6.3%7.8%6.24%
地方消費税率1.7%2.2%1.76%
合計8.0%10%8.0%

確定申告で消費税の納税額を計算する際の端数処理は大きく分けて以下の3通りがあります。

・課税標準額は1,000円未満切り捨て
課税仕入れに係る消費税額や、その他、計算の途中で生じる端数は1円未満の切り捨て
・消費税及び地方消費税の納税額は100円未満切り捨て

上記3通りを具体例とともに解説していきます。
※注意:以下の具体例は相互に独立しており、数字や内容に関係性はありません。

まず「課税標準額は1,000円未満切り捨て」について、この処理は税率ごとの売上に対して行います。

【課税標準額は1,000円未満切り捨ての具体例】

●前提
税込(消費税及び地方消費税込)の売上金額は以下の通り。
旧税率分:4,560,000円
標準税率分:3,890,000円
軽減税率分:2,450,000円

●課税標準額の計算例
旧税率分:4,560,000円 × 100/108 = 4,222,222円(小数点以下の端数切り捨て)
4,222,222円 (1,000円未満切り捨て)→ 4,222,000円

標準税率分:3,890,000円 × 100/110 = 3,536,363円(小数点以下の端数切り捨て)
3,536,363円(1,000円未満切り捨て)→ 3,536,000円

軽減税率分:2,450,000円 × 100/108 = 2,268,518円(小数点以下の端数切り捨て)
2,268,518円(端数切り捨て)(1,000円未満切り捨て)→ 2,268,000円

実際の確定申告では、上記のように課税標準額を計算し、それぞれの消費税率を乗じて売上に係る消費税を計算していくことになります。

次に「課税仕入れに係る消費税額」についての端数処理を解説します。

【課税仕入れに係る消費税額の1円未満の切り捨ての具体例】

●前提
税込(消費税及び地方消費税込)の課税仕入れ金額は以下の通り。
計算の便宜上、この他の仕入れや経費はないものとします。
旧税率分:3,640,000円
標準税率分:2,900,000円
軽減税率分:1,880,000円

●課税仕入れに係る消費税額の計算例
旧税率分:3,640,000円 × 6.3/108 = 212333.33…円
(1円未満の切り捨て)→ 212,333円

標準税率分:2,900,000円 × 7.8/110 = 205636.3636…円
(1円未満の切り捨て)→ 205,636円

軽減税率分:1,880,000円 × 6.24/108 = 108622.22…円
(1円未満の切り捨て)→ 108,622円

「課税仕入れに係る消費税額」以外の端数処理の例としては、主に「返還等対価に係る税額」や「貸倒れにかかる税額」で小数点端数が生じる場合があり、どちらも1円未満の切り捨てを行います。

最後に「消費税及び地方消費税の納税額は100円未満切り捨て」は、売上に係る消費税額から課税仕入れなどに係る消費税額を控除したあとの税額は100円未満切り捨ての処理を行います。
実際の申告書では、税額の10円の位と1円の位にあらかじめ「0」が記入されています。

消費税の納税方法

消費税の納税義務がある事業者は消費税及び地方消費税を確定申告によって申告・納税を行います。

また中間申告について、個人の場合は前年、法人の場合は前事業年度の消費税(地方消費税を含まない)の年税額が48万円を超えると中間申告が必要になります。
中間申告の回数は以下の表の通りです。

前年または前事業年度の消費税の年税額によって中間申告の回数が異なります。

直前の課税期間の消費税額
(地方消費税を含まない)
中間申告の回数
48万円以下不要
48万円超から400万円以下年1回
400万円超から4,800万円以下年3回
4,800万円超年11回

(引用:国税庁「中間申告の方法」

さらに、中間申告は、予定納税方式と仮決算方式のいずれかを任意で選択することができます。予定納税方式は、申告者が計算を行う必要はなく、適切な時期に税務署から納付書が送られてきます。仮決算方式は、申告者が消費税の計算を行い、申告する必要があります。

納税期限と納付方法

消費税の確定申告の場合、申告・納税期限は個人と法人で以下のように異なります。

個人3月31日まで
法人その課税期間の終了の日の翌日から2カ月以内
一定の事由があれば延長可

(引用:国税庁「申告と納税」

中間申告の場合は、各中間申告が対象となる課税期間の末日の翌日から2カ月以内です。

具体的に、個人の中間申告が1回の場合を例にすると、中間申告の対象となる期間は、1月1日から6月30日となり、中間申告の期限は8月31日になります。

まとめ

消費税の端数処理に困るケースとして「総額表示」「請求書」「確定申告」の3つがあります。この記事ではこの3つについて解説しました。

確定申告では、基本的に切り捨てであるものの、切り捨てる桁数に注意が必要です。
総額表示と請求書の端数処理は法律によって強制されておらず、事業者ごとに任意選択できます。

よくある質問

税込金額を計算した際、消費税部分の1円未満の端数が生じた場合の端数処理は?

「切り上げ」「切り捨て」「四捨五入」などの選択は事業者ごとによって任意に選択できます。詳しくはこちらをご覧ください。

確定申告で消費税の納税額を計算する際の端数処理の方法は?

「課税標準額は1,000円未満切り捨て」「課税仕入れに係る消費税額や、その他、計算の途中で生じる端数は1円未満の切り捨て」「消費税及び地方消費税の納税額は100円未満切り捨て」の方法があります。詳しくはこちらをご覧ください。

消費税の納税方法は?

消費税及び地方消費税を確定申告によって申告・納税を行います。詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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