• 更新日 : 2024年11月5日

経費精算の横領とは|社内処分や不正防止策を解説

経費精算における横領などの不正は、犯罪行為であり企業に損失を与えるのはもちろん、場合によっては企業のイメージダウンや存続が危ぶまれる事態に陥るリスクがあるため、事前の対策が求められます。

本記事では、経費精算で横領などが発覚した場合の対応手順や社内処分、そして効果的な防止策について解説します。

経費精算で発覚する横領とは

経費精算における横領とは、業務上の立場を利用して会社の財産を不当に取得することを指します。横領は単なる会計上の不正にとどまらず、刑法上の犯罪行為に該当する可能性がある行為です。

ここでは、経費精算においてどのような行為が横領となる可能性があるのかを見ていきましょう。

交通費の不正請求

交通費の不正請求は、経費精算における横領の典型的な例といえます。虚偽の住所を申告して通勤手当を不正に多く受給したり、実際には利用していない交通手段で通勤したと偽って申請したりするケースが挙げられるでしょう。

また、営業活動などで意図的に遠回りとなる経路を選択したかのように装って、余分な交通費を請求するような行為も横領に該当する可能性が高いです。

出張時の交通機関変更

出張旅費は、交通費よりも大きな金額になることがほとんどです。新幹線や飛行機を使用するような遠方に移動に利用するケースが多いため、実際には在来線を利用したにもかかわらずより高額な新幹線を利用したと虚偽の申告をして、高額の交通費を請求するケースがあります。

さらに悪質なものとしては、実際には出張を行っていないにもかかわらず、架空の出張を申請する「カラ出張」も挙げられるでしょう。

接待交際費の不正請求

接待交際費の不正請求も、経費精算における横領にあたる可能性があります。実際の接待費用を水増しして申請したり、取引先が絡まない私的な飲食を業務上の接待として偽って申請したりする行為が横領に該当します。取引先への手土産と偽って、経費で個人的な部品を購入した場合も同様です。

社員同士の個人的な飲み会の費用を接待と偽るなど、複数人が不正にかかわるケースもあります。

領収書の改ざん

領収書の改ざんや偽造は、経費計算におけるよくある横領の手口です。領収書の金額や宛名、日付、但し書きなどを書き換えて改ざんしたり、飲食店などから白紙の領収書を受け取り虚偽の情報を記入したりするケースが挙げられます。

近年では金額や日付などを空欄のままでは領収書を発行しない傾向がありますが、取引先と共謀して領収書を偽造発行する悪質なケースも存在します。

経費購入時に貯まったポイントを自分で利用したら横領?

経費で物品を購入する際に自分のポイントカードやクレジットカードにポイントを貯める、または既に貯まっているポイント類を利用して購入する行為が横領に該当するかどうかは、2024年10月時点ではグレーゾーンといえます。

法的解釈が分かれており、明確な判断基準は確立されていません。ケースバイケースで判断する、ということになるでしょう。

就業規則に定めがある場合は横領になるケースもある

ただし、企業の就業規則にポイントやマイルの取り扱いについて明確な定めがある場合は、その規定に従わなければなりません。

たとえば、経費購入時に発生したポイントは会社の財産となる旨の規定がある場合、そのポイントを私的に利用すると横領とみなされる可能性があります。企業はこうしたポイントの取り扱いについてルールを策定し、従業員に周知徹底することが大切です。

経費精算の不正をした場合に問われる刑事罰

経費精算の不正が発覚した場合、社内規則違反であるだけではなく業務上横領罪や詐欺罪、文書偽造罪など、複数の刑法上の罪に問われる可能性があります。以下で詳しく解説します。

業務上横領罪

業務上横領罪は、刑法第253条に規定されており、10年以下の懲役刑が定められています。「業務上自己の占有する他人の物を横領した者に成立する犯罪」であり、業務を通じて預かっている、または管理している資産の不正流用などが該当します。

直接会社の資産を占有していない場合でも、経費申請できる立場が一部の占有と解釈されることもあります。

経費精算の不正に関して業務上横領罪が適用される具体的な例をいくつか挙げてみましょう。

  1. 経費精算で虚偽の申請を行い、不当に金銭を得る行為
  2. 個人的な飲食や娯楽の費用を業務上の経費として申請する行為
  3. 架空の出張や取引を申請し、その経費を不正に受給する行為
  4. 会社のクレジットカードを私的な目的で使用し、経費として申請する行為

業務上横領罪は、横領した金額の大小にかかわらず成立します。ただし量刑については、被害額や悪質性、同種の前科なども考慮されたうえで決定されるため、ごくわずかな被害額の場合、業務上横領罪は成立しても処罰されない可能性もあります。

私文書偽造等罪

私文書偽造等罪は刑法第159条に規定されており、私文書の偽造や変造に関する罪として、3ヶ月以上5年以下の懲役に処すると定められています。経費精算において書類の偽造が行われた場合に適用される可能性があります。

私文書偽造等罪に該当する可能性のある行為は、偽造した領収書や請求書を用いて経費を申請する、実際の領収書の金額や日付を改ざんするなどです。

また、私文書偽造等罪は、偽造した文書を実際に使用していなくても成立する可能性があります。文書偽造罪は「悪用する目的で作成すること」で成立するため、偽造した領収書を作成しただけでまだ経費申請に使用していない段階でも罪に問われるリスクが発生する点に注意が必要です。

詐欺罪

詐欺罪は、刑法第246条に規定されており、「人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する」と定められています。この罪は、他人を騙して不正に金銭や物を得る行為が対象であり、経費精算においては虚偽の申請によって会社から不正に金銭を受け取る場合が該当します。

具体的には、実際には出張を行っていないにもかかわらず出張費用を請求する「カラ出張」や、架空の取引を装って経費を請求する行為が挙げられるでしょう。詐欺罪は未遂でも「詐欺未遂罪」が成立するため、実際に金銭を得られなかった場合でも虚偽の申請をした段階で処罰されるリスクがあります。

このように、経費の横領などの不正は犯罪であり、その影響は個人や企業にとって深刻なものになりかねません。

参考:e-Gov 法令検索 刑法

経費精算の不正が発覚した場合の対応手順

経費精算の不正が発覚した場合の社内処分は、不正の内容や程度、就業規則によって異なります。以下に、代表的なケースにおける処分の目安を解説します。

事実関係を調査する

経費計算における不正の可能性が発覚したときにまず行うのは、申請内容と実績との照合を行い、不正の疑いがある点を明確にするための調査です。領収書や明細書など関連する書類やデータを詳細に確認し、交通機関のキャンセル履歴なども調べます。

必要があれば、取引先や関係者への確認を行い、事実関係を可能な限り正確に把握するよう努めなければなりません。

本人から事情を聞く

調査によって不正の疑いが拭えないとなった場合は、客観的な証拠を基に不正行為が疑われる社員から事情を聴取します。この際、聞き取りの内容は録音する、またはメモを取るなど何らかの形で記録として残すことが重要です。

必要に応じて、人事部門などの第三者も同席させることが望ましいでしょう。聴取は公平性を保ちつつ、事実関係を明確にすることを目的として行います。

就業規則に則り処分する

事実関係の調査や聞き取りの結果を基に、横領などの不正が決定した場合は就業規則と照らし合わせて適切な処分内容を決定します。処分を決定した場合は、その内容を書面で本人に提示し、十分な説明を行いましょう。

処分の公平性と透明性を確保するため、過去の類似事例との整合性にも留意する必要があります。

被害額が大きい、常習性が高いなどの悪質な経費精算の不正の場合は、損害賠償の請求や被害届の提出、刑事告訴を検討することも視野に入ってくるかもしれません。

経費精算の不正が発覚した場合の社内処分

経費精算の不正が発覚した場合の社内処分は、不正の内容や程度によって異なります。以下に、代表的なケースにおける処分の目安を示します。

悪意なくミスで経費を不正受給した場合

悪意のない過失によって結果的に経費の不正受給になったケースにおいて、被害金額がそれほど大きくなければ、始末書の提出や戒告といった比較的軽い処分が適用されることが一般的です。もう少し重い処分としても出勤停止、減給などが妥当と考えられます。

悪意のない過失によるケースでは、懲戒解雇は通常適用されません。ただし、再発防止のための指導や教育は必要不可欠です。

故意に経費を不正受給した場合

故意に経費を不正受給したケースにおいては、より重い処分の対象になります。被害額の大小にもよりますが、論旨解雇や懲戒解雇が適用される可能性も否定できません。

長期にわたって組織的に行われた不正や、高額の被害を生じさせた場合などは、懲戒解雇が検討されます。また、刑事告訴や民事訴訟による損害賠償請求が行われることもあります。

経費精算の不正を防止する対策

横領などの経費精算の不正は、会社に金銭的損失をもたらすだけでなく、法的責任や社会的信用の低下にもつながります。こうしたリスクを未然に防ぐためには、経費精算における不正を防止するための対策が欠かせません。

ここでは、経費精算の不正を防止するための対策を紹介します。

経費精算システムを導入する

経費精算システムの導入は、業務効率化だけでなく不正防止にも有効です。領収書の自動入力やクレジットカードとの連携などにより、人の手による改ざんが行われにくくなります。また、紙ベースでの管理と比較すると精算データの分析が容易になるため、不正の早期発見や防止に役立つメリットもあります。

さらに、承認フローもシステム上で行われるため、複数の目で確認するプロセスが確実に実行されるようになり、チェック機能が強化され、不正リスクの低減が期待できるでしょう。

経費算のルールを明確にし、周知徹底する

企業内の経費精算に関するルールを明確化し、全社員に周知徹底することも大切です。全社員が経費精算に対する正しい認識を持つことは、過失による悪意のない不正受給防止につながります。

経費として認められる項目や上限額、申請手順・期日、必要な添付書類などを詳細に定め、社内規程として文書もしくはデータ化し、いつでも閲覧できるようにしておきましょう。

法改定などによってルールが更新されたらその都度周知するのはもちろん、研修などを行い社員の認識もアップデートすることが大切です。

社内の内部統制を見直す

全社レベルで内部統制の見直しを行うことも、経費精算の不正防止に有効です。経費精算に関する専門の対策チームを立ち上げ、定期的に監査やレビューを行う、などが例として挙げられます。

また、部門ごとのチェック体制を強化したり、不正に気づいた従業員が不安を感じることなく報告できる内部通報制度を整備したりすることも重要です。こういった取り組みにより、組織全体で不正を許さない文化を育むことができるでしょう。

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横領などの経費精算の不正対策は徹底しよう

経費精算における不正は業務上横領罪や詐欺罪などの刑事罰に問われる可能性もあり、個人のキャリアだけでなく、企業の信頼にも大きく影響します。

経費精算の不正対策は、一部の部門だけでなく、組織全体で取り組むべき重要な課題です。経費精算ルールの周知徹底や経費精算システムの導入など、できることから始めましょう。


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