- 更新日 : 2024年8月8日
固定資産売却損とは?仕訳方法から消費税の取り扱いまで解説
固定資産を売却した際に発生することがある固定資産売却損。どのようなケースで発生し、会計処理はどのように行えば良いのでしょうか。
ここでは、固定資産売却損の基本的な概要や仕訳方法について解説します。
固定資産売却損の基礎知識
土地や建物、車両といった会社が保有する固定資産を売却すると、売却価額によっては売却損が発生するケースがあります。これを、会計処理上の科目名称として固定資産売却損と呼びます。
もう少し詳しく説明すると、固定資産売却損とは固定資産を売却した時点での帳簿価額に対し、売却価額が下回る場合に発生する差額を指します。
帳簿価額は、固定資産を購入した時の金額(取得原価)から減価償却費の累計額を控除したもので、決算期ごとに記録される評価額です。逆に、固定資産の売却価額よりも帳簿価額が上回る場合に発生する差額は、固定資産売却益として計上します。
整理すると以下のようになります。
帳簿価額>売却価額→差額を固定資産売却損として計上
帳簿価額<売却価額→差額を固定資産売却益として計上
一般的に、固定資産売却損は「特別損失」として計上します。なぜならば、本来的に固定資産は長期保有を前提としていて、頻繁に売却されないものとみなされているためです。
ただ、運送業のように頻繁に車両などの固定資産を買い換えるような業種の場合は、固定資産売却損を「営業外費用」として計上します。
手数料と消費税の取扱い
固定資産を売却する際の費用として仲介手数料が発生することがありますが、手数料は別途計上せず、固定資産売却損に含める形で処理をして良いことになっています。
消費税に関しては、固定資産の売却価額に対してかかります。一般的な消費税のイメージからすると、損が出たものに対して消費税がかけられるのは違和感があるかもしれませんが、消費税は課税対象となっている資産の譲渡対価にかけられます。
したがって、固定資産を売却したことによって損が出た(固定資産売却損が発生した)としても、消費税が発生することを知っておきましょう。
期中売却した時の減価償却費
減価償却費は期末時点で保有している固定資産を対象に計算するため、原則的には期中に売却したケースでは算出しません。そのため、固定資産売却損を算出する際は、通常は売却をした期の期首の帳簿価額を使います。
より厳密に減価償却費を計算したい場合は、月割などの按分をすることで算出することは可能です。ただし、会計処理上は減価償却費として計上した値は、固定資産売却損(益)で調整されるため、最終的な利益や税金には影響しません。
つまり、期中の売却であっても期首の帳簿価額を採用して問題ないということです。
固定資産売却損を仕訳してみよう
固定資産売却損が発生したケースの取引について、実際に仕訳してみましょう。
なお、ここでの仕訳方法は実務上一般的な間接法を用います。
■仕訳例:180万円で購入した車両を現金45万円で売却した。減価償却費の累計は120万円とする。
順を追って解説します。まず、固定資産の売却による損益がどうなっているか確認しましょう。単純に考えると、180万円で買ったものを45万円で売ったということで135万円の損が出たと考えがちです。
しかし前述したように、売却価額と比べるのは、減価償却費を加味した会計上の評価額である帳簿価額です。
この取引では、車両を購入した時の取得原価は180万円で、減価償却費の累計120万円を引くと60万円となります。これが帳簿価額です。
そして、帳簿価額に対して売却価額は45万円であるため、会計上の評価額よりも安い金額で売ったことになり、15万円の固定資産売却損が発生したことが分かります。
科目ごとの仕訳については、売却によって受け取った現金と減価償却費の累計額を、帳簿の左側の借方に記入します。そして、固定資産売却損も借方に記入します。反対に固定資産売却益が発生した際は、右側の貸方に記入することになっています。
なお、固定資産売却損を仕訳表に記入する際は、売却した固定資産の種類に応じて以下のように名称をつけるのが通常です。個別の名称を表示しにくい場合は、注記でも良いとされています。
・建物売却損
・車両運搬具売却損
まとめ
固定資産売却損をひと言で表すと、帳簿価額よりも売却価額が下回る場合に発生する差額のことです。固定資産には減価償却という概念があるため、基本的に購入した時点での取得原価と売却時の帳簿価額は変わります。
そのため、固定資産を売却した際の損益の計算には、減価償却費を加味する必要があるのです。
この他、消費税は売却価額に対してかかることや、減価償却費は期中売却であっても期首の帳簿価額を計上すれば良いことなど、いくつかのルールや通例があることをお伝えしました。
固定資産を売却するという取引は、業種によっては滅多に行われることではないと思いますが、稀に行われる時のために基礎知識を身につけておきましょう。
関連記事
・借方と貸方|損益計算書の借方と貸方の違いを初心者向けに解説!
・減価償却費の計算に必要な3つのポイント
・有形固定資産と無形固定資産の違いと間違えやすいポイントを解説
よくある質問
固定資産売却損とは?
土地や建物、車両といった会社が保有する固定資産を売却すると、売却価額によっては売却損が発生するケースがあり、このことの科目名称のことをいいます。詳しくはこちらをご覧ください。
手数料の計上方法は?
手数料は別途計上せず、固定資産売却損に含める形で処理をして良いことになっています。詳しくはこちらをご覧ください。
期中売却した時、減価償却費はどうする?
固定資産売却損を算出する際は、通常は売却をした期の期首の帳簿価額を使います。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
会計の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
労務費の意味や人件費との違い、計算方法や内訳、労務費率まで解説
労務費は製品の製造と密接な関わりがあり、利益にも大きな影響を与える費用です。そのため、きちんと把握・管理した上で適切な値とする必要があります。 この記事では労務費について人件費との違い、計算方法、内訳、労務費率の解説を行います。正しく理解し…
詳しくみる受取手形とは?決済、回収時の仕訳・勘定科目や売掛金との違いをわかりやすく解説
現金での取引は、確実ではあるものの、企業間取引においては柔軟性の高い取引とはいえません。期限に柔軟性をもたせ、現金の代わりに利用されているのが「手形」です。 手形には、約束手形と為替手形があります。特に、受け取ることで将来の入金を約束しても…
詳しくみる災害損失とは?特別勘定や会計処理について解説
被災された事業者は災害損失だけでなく、復旧費用も負担しなければいけません。 そのような事態のため税金面で特別の優遇制度があります。 この記事では、優遇制度を受けるために必要な事項である災害損失の基本的な内容から、災害損失特別勘定に加えて引当…
詳しくみる売掛金元帳とは?書き方や記入例を解説
「売掛金の管理に手間がかかる」とお悩みの場合には、売掛金元帳が便利です。取引先ごとの売掛金の発生・回収状況を把握でき、売掛金がいくら残っているかもすぐにわかります。この記事では、売掛金元帳の内容や書き方のポイントを分かりやすく解説します。 …
詳しくみる前期損益修正益・前期損益修正損とは?仕訳から解説
法人の決算は文字通り「一年間の計算を決する手続き」であり、専門部署の方々が時間と労力をかけてじっくり精査するものです。それでもなお、処理の間違いが起こるケースがありますが、修正を要する場合に登場するのが「前期損益修正益」「前期損益修正損」で…
詳しくみる固定資産台帳とは?作成方法や記入例、見方を項目別に解説
固定資産を購入した場合に取得時の状況やその後の減価償却の状況を記録する固定資産台帳について、その役割や作り方、記入方法を解説します。 固定資産台帳とは 建物や車両などの固定資産を取得した際は、その取得のための費用をその年度の費用とするのでは…
詳しくみる