- 更新日 : 2025年2月19日
固定資産売却損とは?仕訳方法から消費税の取り扱いまで解説
固定資産を売却した際に発生することがある固定資産売却損。どのようなケースで発生し、会計処理はどのように行えば良いのでしょうか。
ここでは、固定資産売却損の基本的な概要や仕訳方法について解説します。
固定資産売却損の基礎知識
土地や建物、車両といった会社が保有する固定資産を売却すると、売却価額によっては売却損が発生するケースがあります。これを、会計処理上の科目名称として固定資産売却損と呼びます。
もう少し詳しく説明すると、固定資産売却損とは固定資産を売却した時点での帳簿価額に対し、売却価額が下回る場合に発生する差額を指します。
帳簿価額は、固定資産を購入した時の金額(取得原価)から減価償却費の累計額を控除したもので、決算期ごとに記録される評価額です。逆に、固定資産の売却価額よりも帳簿価額が上回る場合に発生する差額は、固定資産売却益として計上します。
整理すると以下のようになります。
帳簿価額>売却価額→差額を固定資産売却損として計上
帳簿価額<売却価額→差額を固定資産売却益として計上
一般的に、固定資産売却損は「特別損失」として計上します。なぜならば、本来的に固定資産は長期保有を前提としていて、頻繁に売却されないものとみなされているためです。
ただ、運送業のように頻繁に車両などの固定資産を買い換えるような業種の場合は、固定資産売却損を「営業外費用」として計上します。
手数料と消費税の取扱い
固定資産を売却する際の費用として仲介手数料が発生することがありますが、手数料は別途計上せず、固定資産売却損に含める形で処理をして良いことになっています。
消費税に関しては、固定資産の売却価額に対してかかります。一般的な消費税のイメージからすると、損が出たものに対して消費税がかけられるのは違和感があるかもしれませんが、消費税は課税対象となっている資産の譲渡対価にかけられます。
したがって、固定資産を売却したことによって損が出た(固定資産売却損が発生した)としても、消費税が発生することを知っておきましょう。
期中売却した時の減価償却費
減価償却費は期末時点で保有している固定資産を対象に計算するため、原則的には期中に売却したケースでは算出しません。そのため、固定資産売却損を算出する際は、通常は売却をした期の期首の帳簿価額を使います。
より厳密に減価償却費を計算したい場合は、月割などの按分をすることで算出することは可能です。ただし、会計処理上は減価償却費として計上した値は、固定資産売却損(益)で調整されるため、最終的な利益や税金には影響しません。
つまり、期中の売却であっても期首の帳簿価額を採用して問題ないということです。
固定資産売却損を仕訳してみよう
固定資産売却損が発生したケースの取引について、実際に仕訳してみましょう。
なお、ここでの仕訳方法は実務上一般的な間接法を用います。
■仕訳例:180万円で購入した車両を現金45万円で売却した。減価償却費の累計は120万円とする。
順を追って解説します。まず、固定資産の売却による損益がどうなっているか確認しましょう。単純に考えると、180万円で買ったものを45万円で売ったということで135万円の損が出たと考えがちです。
しかし前述したように、売却価額と比べるのは、減価償却費を加味した会計上の評価額である帳簿価額です。
この取引では、車両を購入した時の取得原価は180万円で、減価償却費の累計120万円を引くと60万円となります。これが帳簿価額です。
そして、帳簿価額に対して売却価額は45万円であるため、会計上の評価額よりも安い金額で売ったことになり、15万円の固定資産売却損が発生したことが分かります。
科目ごとの仕訳については、売却によって受け取った現金と減価償却費の累計額を、帳簿の左側の借方に記入します。そして、固定資産売却損も借方に記入します。反対に固定資産売却益が発生した際は、右側の貸方に記入することになっています。
なお、固定資産売却損を仕訳表に記入する際は、売却した固定資産の種類に応じて以下のように名称をつけるのが通常です。個別の名称を表示しにくい場合は、注記でも良いとされています。
・建物売却損
・車両運搬具売却損
まとめ
固定資産売却損をひと言で表すと、帳簿価額よりも売却価額が下回る場合に発生する差額のことです。固定資産には減価償却という概念があるため、基本的に購入した時点での取得原価と売却時の帳簿価額は変わります。
そのため、固定資産を売却した際の損益の計算には、減価償却費を加味する必要があるのです。
この他、消費税は売却価額に対してかかることや、減価償却費は期中売却であっても期首の帳簿価額を計上すれば良いことなど、いくつかのルールや通例があることをお伝えしました。
固定資産を売却するという取引は、業種によっては滅多に行われることではないと思いますが、稀に行われる時のために基礎知識を身につけておきましょう。
関連記事
・借方と貸方|損益計算書の借方と貸方の違いを初心者向けに解説!
・減価償却費の計算に必要な3つのポイント
・有形固定資産と無形固定資産の違いと間違えやすいポイントを解説
よくある質問
固定資産売却損とは?
土地や建物、車両といった会社が保有する固定資産を売却すると、売却価額によっては売却損が発生するケースがあり、このことの科目名称のことをいいます。詳しくはこちらをご覧ください。
手数料の計上方法は?
手数料は別途計上せず、固定資産売却損に含める形で処理をして良いことになっています。詳しくはこちらをご覧ください。
期中売却した時、減価償却費はどうする?
固定資産売却損を算出する際は、通常は売却をした期の期首の帳簿価額を使います。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
会計の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
仕掛品の意味や半製品との違い 棚卸資産での計上方法や読み方まで解説
製造業における工業簿記や商的工業簿記の決算では、仕掛品の計上は非常に大きな意味を持っています。 この記事では、仕掛品、半製品などの棚卸資産の意味やそれぞれの違い、計上方法などを仕訳とともに解説します。もちろん、それぞれの読み方も付しなが…
詳しくみる絆創膏を経費にする場合の仕訳に使う勘定科目まとめ
従業員のけがに備えて、絆創膏を購入している会社もあるでしょう。絆創膏を経費にする場合に使える勘定科目は複数あります。どんな勘定科目があるのか、どう使い分ければいいのかを理解し、会社に合った勘定科目で仕訳を行いましょう。 絆創膏の仕訳に使える…
詳しくみる複式簿記の書き方を正しく理解していますか?複式簿記の基礎知識と書き方まとめ
複式簿記の書き方、ご存知ですか? 個人事業主はもちろん、たとえ小規模にしても経営者であれば、また、社会人であれば、複式簿記の書き方の基本は知っておきたいものです。 ここでは、複式簿記の大原則と書き方について、最小限の基本をわかりやすく説明し…
詳しくみる過払い金が返金された時の勘定科目は?仕訳方法も解説
過払いが発生して返金された場合、事例ごとに返金処理が必要です。その際使用する勘定科目は、過払いの内容により異なります。過払いが発生する原因は仕入代金を多く払いすぎた場合をはじめ、家賃や社会保険料の支払い、借入金の利息などです。 本記事では過…
詳しくみる香典を経費にする時の仕訳に使う勘定科目まとめ
従業員や取引先などに会社として香典をお渡しする場合は、経費にできます。仕訳の際は、亡くなった方との関係性によって勘定科目を使い分けることが必要です。従業員やそのご家族の場合は福利厚生費、取引先の場合は接待交際費を使用しましょう。本記事では、…
詳しくみる創立費と開業費の会計処理について
会社の創立と開業準備にかかる費用である創立費と開業費は、繰延資産として資産計上でき、償却方法としてはいつでも必要経費として償却することができる、任意償却が適用されます。創立費、開業費、繰延資産についてとその償却方法を説明します。 繰延資産と…
詳しくみる