• 作成日 : 2024年11月5日

債権回収とは?具体的な方法や注意点をわかりやすく解説

債権回収とは、企業が商品やサービスを提供し、その代金を請求して回収するプロセスを言います。売掛金などが予定期日までに支払われなかった場合に、債権者は債権回収をします。

企業は債権回収されないと資金繰りに影響し、大口の未回収の場合には倒産の危機につながることもあり得ます。この記事では、債権回収について解説します。

債権回収とは?

債権とは、他人に対して何らかの行為を要求する権利を言います。

債権の中でも、目的がお金であるものを「金銭債権(きんせんさいけん)」と言います。

一般に債権回収と言うと、債権者が債務者の支払うべき「金銭債権」を実際に受け取るための活動を指します。

例えば、取引先に提出した請求書が、支払期限を過ぎても何の連絡もなく入金がない場合などに、取引先に電話で連絡をすることも「債権回収」の一つです。

会社の資産として計上されている受取手形、売掛金、貸付金などは金銭債権であり、債務者にはそれぞれ支払期限が設定されています。

中小企業にとっては、取引先からの入金遅延は資金繰りに大きく影響するため、できるだけ早い段階で債権回収をする必要があります。

債権回収が必要となる場面は?

債権回収が必要となるのは、「債権の支払遅延」や「債務者の経営状態悪化」が挙げられます。

支払いの遅延は最も典型的な債権回収のケースです。合意した支払期日を過ぎても、取引先から支払い等がない場合が該当します。

実際には、事前に少し遅れる旨の連絡を受けた場合や入金日が1日~数日の遅延の場合は、様子を見るなど柔和な対応から始めるのが一般的な方法と言えます。支払遅延の中には、意図的に支払いを遅らせるために悪意のあるクレームをつけてくるものもあります。

また、支払期限に到達する前であっても、取引先の経営状態が悪化していることを知った場合には、入金されない可能性が高くなるため早急に債権回収を検討しなければならないこともあります。

債権回収の具体的な方法・流れは?

債権回収の具体的な流れについて、7段階に分けて解説します。後になるほど強力な債権回収方法となります。

先に請求書の控えなど、入金の遅れている債権の証拠を確認し、未入金の事実を明確にしてから回収活動を開始します。

電話やメールで催促する

債権回収の中で、通常の連絡手段として利用する電話やメールでの催促は、最も手軽で実行しやすいものと言えます。状況によっては先方が失念していたり、振り込みに手違いがあったりして、支払う意思はあるにもかかわらず入金されていないケースも考えられます。

また、相手先にとって初めての支払いとなる場合や、相手の会社にとって緊急事態が発生している場合なども考えられます。まずは相手の状況確認をしましょう。

内容証明郵便を送付する

内容証明郵便とは、特定の内容について相手先に正式に通知したことを証明する郵便サービスの一つです。

内容証明郵便によって債権回収について「相手先に通知したという事実」と、「その日付」を証明することができます。

手続きとしては、郵便局で専用用紙に記入して、原本1通と謄本2通の計3通を作成し、郵便局で内容確認の後、料金を支払い発送します。

後に裁判などにおいて、その内容につき、その日付で「通知をした」ことの証明として利用できます。

参考:内容証明|日本郵便株式会社

民事調停手続きを行う

民事調停手続きとは、債権者と債務者の間で話し合いを裁判所が仲介する方法です。裁判よりも柔軟で速い解決を目指すときに利用されます。

手続きとしては、債権者が裁判所に調停の申し立て、裁判所が調停の日時を決めて債権者・債務者両者に出頭を求めます。調停では、調停委員が仲介し、両者の主張を聞いたのち和解案を提示します。

和解が成立したら裁判所の判決と同等の効力を持つ「調停調書」が作成されます。

民事調停は非公開ですので、プライバシーが守られ、裁判に比べると費用が安い方法です。

参考:民事調停手続|裁判所

支払督促を行う

支払督促は、債権者の申し立てにより裁判所が債務者に支払いを命じる手続きであり、債務者の異議申し立てがない限り、強制執行が可能になるものです。支払督促も比較的迅速で、簡易な法的手続きです。

手続きとしては、債権者が簡易裁判所に支払督促の申し立て、裁判所は書面のみで審査し、支払要件を満たしていれば「支払督促」を発令します。債務者に異議がなければ支払督促が成立し、強制執行が可能になります。債務者に異議があれば、通常の裁判(訴訟)に進みます。

参考:支払督促|裁判所

通常訴訟を提起する

通常訴訟は、後述する少額訴訟とは異なり、金額の制限がないものです。

手続きとしては、原告が裁判所に訴状を提出し、裁判所が被告に訴状を送達します。口頭弁論等に当事者が出廷し、主張を行い、必要があれば「書証」の提出や証人尋問などを行います。

裁判官が判決を下し、不服がある場合には上訴(上級裁判所への不服申し立て)できます。

通常訴訟の場合、140万円以下は簡易裁判所、140万円を超える場合は地方裁判所で扱われます。

参考:訴え(通常訴訟)を起こす方へ|裁判所

少額訴訟を提起する(60万円以下の場合)

通常訴訟には訴訟の金額制限がないのに対し、少額訴訟では対象が60万円以下の金銭債権に限定されています。少額訴訟は原則として1日で審理を実施し、即日判決が下されます。ただし、被告には拒否権がありますので被告が拒否することで通常訴訟になります。

参考:少額訴訟|裁判所

強制執行を行う

裁判所からの判決や調停調書、支払督促などの債務名義*があっても、なお支払いがない場合の手続きとして強制執行があります。強制執行は、債務者の財産を差し押さえてお金に換える最も厳しい手段として、他の方法で解決できない場合の最終手段になります。

*債務名義とは、強制執行を行うために必要な法的な文書で、確定判決、仮執行宣言付判決、調停詔書、支払督促、公正証書などがあります。

参考:強制執行の概要|裁判所

債権回収をするときの注意点は?

債権回収をする場合の主な注意点を挙げておきます。確認を怠ると回収の可能性が変わりますので、気をつけましょう。

債権の消滅時効を確認する

債権の消滅時効期間は、次の早く到来するほうが適用されます。(民法第166条)

  • 権利を行使できることを知ったときから5年
  • 権利を行使できるときから10年

金銭債権の場合、通常は5年となりますので時効期間が経過しそうな場合は、速やかに法的手続きをとるなどの方法で時効を防ぐ必要があります。

例えば、2024年10月31日が支払期限であった場合には、2024年11月1日から5年後の2029年10月31日に時効が完成します。

ただし、債権者が催告(その債権の入金等を求めること)などの行為を行った場合、催告から6ヶ月間、時効の完成が猶予されることがあります(民法第150条)。この点にも注意し、時効期限内に債権回収の手続きを進めることが大切です。

参考:民法 第166条及び第150条|e-Gov法令検索

契約内容や支払履歴を確認する

債権回収を適切に行うためには、契約内容と支払履歴の確認が不可欠と言えます。

債権回収の対象となっている契約書などをよく確認し、債務者の義務や返済条件などを正確に把握し、過去の支払履歴をはじめ債務者との過去のやり取りや合意事項を確認します。

過去において、通常の支払いがなされた相手先である場合には、経営状態の悪化なども考えられます。

いつでも、未払金額や延滞期間が提示できるように資料を整えておくことが大切です。

分割払いへの対応を検討する

相手先の状況が確認できた場合、分割払いの提案を検討することも大切です。

一括支払いが困難な場合でも、分割払いの提案には応じる可能性も多々あり、分割払いの条件(金額、期間)を相手先の支払能力を考慮して提案します。

この場合も書面等で必ず合意した証拠を残し、分割払いが滞った場合の対応も明らかにしておく必要があります。

以上の点に注意を払いながら、より効果的な債権回収を行うことが求められます。

また、債権回収の手順においては、相手先が未払いとなった状況を考慮し、一方的な取り立てを避けることも考えるべきでしょう。複雑な事情が絡み合っているような場合などは、法律の専門家に相談することをおすすめします。

債権回収は外部の業者に委託すべき?

外部の業者への委託はメリットやデメリットがありますので、よく検討しましょう。

債権回収会社への委託については、専門的なノウハウを活用することができるというメリットがありますが、債権回収会社によって対応は大きく異なることや回収できる債権が限定されることもあります。

また、弁護士に債権回収を委託する場合には次のメリットが考えられます。

  • 幅広い種類の債権回収方法の中から状況に合った方法を検討してもらえる。
  • 相手先との交渉や訴訟におけるやり取り、書類作成などを一任できる。

一方、デメリットとしては債権回収の状況に応じて費用がかかると言えます。回収額に見合った対応ができるか事前によく相談しましょう。

債権回収リスクをなるべく少なく!

従来から安定的な取引が続いていた取引先でも、支払いが滞ることは多々あります。

できるだけ債権回収に奔走することを少なくするためには、新たな取引先を選定する際に慎重さが求められます。

取引の開始にあたっては、財務基盤はどうなのかなどの信用調査機関などのレポートなども参考にしながら、新規取引については社内でよく検討しましょう。

取引開始前の段階で誠実で迅速なコミュニケーションがとれるかどうか、短期でなく長期的に信頼関係を構築できるかどうかなどについてもよく見極めましょう。

取引が開始されてからも、定期的に取引先の状況をモニタリングし、必要に応じて取引条件を見直すことも重要です。


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