• 更新日 : 2023年5月12日

未払法人税等とは?計上方法や勘定科目、仕訳例まで徹底解説!

未払法人税等とは?計上方法や勘定科目、仕訳例まで徹底解説!

決算日時点における税金の未払い額を表す勘定科目に「未払法人税等」があります。法人税の確定申告は、決算日よりも後になりますので、法人税などを納める企業であれば、通常は未払法人税等の計上が必要です。未払法人税等とはどのような勘定科目で、決算書のどこに表示されるものなのか、どのような税金を対象に、どのようなタイミングで計上すべきものなのか、概要を解説します。

未払法人税等とは?

はじめに、「未払法人税等」の概要を見ていきましょう。

勘定科目

「未払法人税等」は、納付すべき法人税などの未払い額を表す勘定科目です。法人の確定申告は、決算日の翌日から2カ月以内に行うと定められており、決算日と確定申告の時期には期間のずれがあります。

決算書には、決算日時点の財産の状況を適切に示す必要があります。そのため確定決算によって確定年税額を明らかにし、中間納付分などを差し引いた後に税金の未払額があれば、その額を適切に表示しなければなりません。

そこで、決算日時点において確定年税額を計上し、中間納付分を差し引いた未払分を「未払法人税等」勘定として処理する仕訳を行います。

流動負債として表示

「未払法人税等」は、今後支払う義務がある債務となるため、負債に分類されます。

また未払法人税等は、計上される決算時から2カ月以内に支払う債務です。そのためワン・イヤー・ルールに則り、貸借対照表上では負債の部の流動負債として計上されます。

貸借対照表上の未払法人税の表示場所

未払法人税等の具体例

未払法人税等に含まれる税金の代表例は、法人(所得)税、法人事業税、法人住民税です。それぞれどのような性格の税金か簡単に解説します。

法人(所得)税

法人税は、法人の所得に対して課税される税金です。国に納付する国税に分類され、所得に一定の法人税率を乗じて納税額が算出されます。

納期は法人税の確定申告時期と同様、決算日の翌日(課税事業年度終了の翌日)から2カ月以内です。予定納税(中間申告)を行っている場合には、当期の法人税額から予定納税額を指し引いた金額を未払法人税等に計上し、納期限までに納付します。

なお、予定納税の義務がある法人は、前事業年度の法人税額が20万円を超える普通法人が該当し、NPO法人等の公益法人は予定納税の義務を負いません。

法人事業税

法人事業税は、事業を営んでいる法人のうち、都道府県に事務所や事業所をもつ法人に課される税金です。地方自治体に納める地方税に該当します。法人の課税所得に一定の税率をかけた額が納めるべき法人事業税の額になります。法人税の予定納税義務がある法人は、法人事業税においても予定納税を行う義務があります。

なお、法人事業税は原則として収益を得る法人すべてが対象となりますが、収益を伴わない人格のない社団および公益法人、公共法人は課税対象とはなりません。

法人住民税

法人住民税は、都道府県や市区町村が、エリア内に事務所や事業所を有する法人に対して課す税金です。地方税に分類されており、都道府県民税と市町村民税が含まれています。法人住民税は、法人税に一定の税率をかけて算出する「法人税割」と、法人の資本金および従業員数に応じて算出される「均等割」の2つの基準で納税額が決められます。

事業年度が赤字で終わった場合には法人税が発生しないため、法人税割は支払う必要がありません。しかし均等割は法人の規模に対して課税されるため、赤字の事業年度であっても納税する必要があります。

なお、事業年度が6カ月を超え法人税の予定納税額が10万円を超える法人は、法人住民税の予定納付義務があります。この事業年度が最終的に赤字だった場合、予定納付していた法人税割は、均等割と相殺可能です。

未払法人税等の計上の流れ

未払法人税等はどのように計上するのでしょうか。計上のタイミングや計上までの流れについて解説します。

計上のタイミング

未払法人税等の具体例でも取り上げたように、未払法人税等に含まれるのは、法人(所得)税、法人事業税、法人住民税です。

法人税と法人事業税は、税法上の課税所得を基準に税額を計算しますので、その事業年度の所得の金額が確定しないと計算できません。また、法人住民税は法人税額を基準に計算するため、法人税を計算しないと税額が出せません。

つまり、所得金額が確定するその事業年度の終了日までは各種税額はわからないということです。一事業年度の所得の金額が確定するのはその事業年度の確定決算が行われた後となるため、確定決算後の決算日をもって未払法人税等を計上することになります。

計上の流れ

未払法人税等はどのように計上していくのか、計上の流れを詳しく見ていきましょう。

1.税引前当期純利益を確定させる

未払法人税等はその事業年度の所得金額が確定しないことには計算できないと説明しました。しかし、税法上の所得金額は、会計の当期純利益から加算減算する形で計算していくため、すぐに所得金額を算出するのは困難です。また、会計上と税務上では、収益と益金、費用と損金の計上時期に違いがあるため、完全に一致させることはできません。

そのため、計上する未払法人税等は、税法上の所得の金額ではなく、税引前当期純利益の額をもとに計算することになります。

計算のもとになる税引前当期純利益を確定するには、事業年度終了日に決算整理を行なっていく必要があります。決算整理とは、実地棚卸や減価償却経過勘定の確定など、その事業年度の決算のため行為です。決算整理後、それらに関わる決算整理仕訳を起こし、税引前当期純利益を確定させます。

2.法人税等の金額を計算し未払法人税等を計上する

会計上の法人税等の金額は、その事業年度の法人税、法人住民税、法人事業税を合算した金額のことです。

各種税金の税額は、法人税及び地方法人税申告書、法人住民税及び法人事業税申告書を使って課税所得を算定し、(※課税所得は、税引前当期純利益を起点に税務上の加減算項目を入れて計算します)各種税金の税率を乗じてそれぞれ計算します。

法人税等の額を計算したら、その事業年度において既に支払った法人税等の額(中間納付等)を控除し、未払法人税等を計上します。

3.計上後の処理

実際の法人税等の納税額の計算は確定申告書作成時に行い、確定申告書提出とともに納税額分を納付した段階で、未払法人税等を取り崩す会計処理を行います。

未払法人税等の仕訳と計算方法

未払法人税等の仕訳が必要になるのは、決算のときです。決算日には、決算日時点の財産の状況を適切に表示する必要があるため、決算日時点で入手できる情報をもとに未払法人税等の計上を行います。

この際必要になるのが、法人税や法人事業税の確定年税額となる法人税等の額です。決算書をベースに法人税などの計算を行い、法人税等の計算を行います。法人税等を計算したら、「仮払法人税等」に計上されている中間納付額などを差し引き、残額を「未払法人税等」へ計上します。以下は、未払法人税等の仕訳例です。

(仕訳例)当期の確定年税額は100万円になった。決算日までに中間納付した額は仮払法人税等に計上されている。仮払法人税等の額は65万円だった。

借方
貸方
法人税等
1,000,000円
仮払法人税等
未払法人税等
650,000円
350,000円

未払法人税等がマイナスになる場合

未払法人税等の計上にあたって、未払法人税等がマイナスになることがあります。マイナスになる原因は、当期の所得が前年と比べて少なく、確定年税額よりも予定納税の額が大きかった、などが理由としてあげられます。未払法人税等がマイナスになるときは、未払法人税等の科目は使用しません。確定申告時に法人税等を上回った予定納税額が還付されるため、超過した予定納税額を未収金として処理します。

(仕訳例)当期の確定年税額は50万円、中間納付の60万円は仮払法人税等として処理している。確定年税額と中間納付の差額は、確定申告後に還付される。

借方
貸方
法人税等
未収金
500,000円
100,000円
仮払法人税等
600,000円

未払法人税等と仮払法人税等の違い

事業年度が6カ月を超える普通法人は、原則として中間申告の義務があります(※前年度の確定法人税額が20万円以下など一部を除く)。中間申告の義務がある法人は、予定申告または仮決算を行い、納税額があれば中間納付をしなければなりません。

仮払法人税等は、事業年度終了日が到来しておらず法人税額等が確定していない法人税等を中間納付によって納めたときに使用する勘定科目です。

未払法人税等は、会計上は確定している法人税等のうち、確定申告が行われていないことで未払いになっている法人税等を指しますので、仮払法人税等とは意味も計上するタイミングも異なります。

未払法人税等の納付期限

未払法人税等の額は、その事業年度にかかる法人税、法人住民税、法人事業税の概算額のうち、中間納付分を除いた、決算日時点で支払いが行われていない法人税等を表します。

法人税、法人住民税、法人事業税は、いずれも決算日の翌日から2カ月以内に確定申告を行い納付することとなっていますので、未払法人税等は確定申告の期限までに納付しなければなりません。例えば、法人の各事業年度が4月1日から翌年3月31日までの場合、5月31日までに中間納付を差し引いた分を納める必要があります。

未払法人税等を滞納してしまった場合はどうなる?

法人税の確定申告を行なった法人が、未払いとなっている法人税等を期限内までに納めない場合、延滞税が加算されます。延滞税は未納付額に対して課されるもので、納付期限の2カ月以内と2カ月以降では税率が異なります。2カ月以降はより税率が重いです(※参考として、令和5年度の延滞税は納期限の2カ月以内が年2.4%、それ以降が年8.7%です)。

納期限までの納付がないと、延滞税が発生することに加え、未納が一定期間に及ぶと督促状が税務署より送付されます。督促状が送られて10日以内に納付が行われないと、法律上、差押えが可能になりますので注意しましょう。

実際には、督促状が送られた後、税務職員からの電話や訪問などでの催促、資産状況の調査があり、それでも納付しなかった場合、差押えへと移行することになります。

生活に必要な財産や事業に必要不可欠な資産など一部は差押えの対象外となりますが、差押えにより事業に影響が出ることもありますので、早めに対処するようにしましょう。

期限までに納付が難しい場合は、納税の猶予(原則1年以内)や換価の猶予(差押えの猶予)が認められることもあります。納税が困難な場合は、管轄の税務署に相談することをおすすめします。

過大計上となる理由は?

未払法人税等は、必ずしも法人税額の確定額をもとに計算されるとは限りません。上場企業においては多くの場合、実際の納税額よりも多く未払法人税等を計上する経理テクニックが用いられています。

この実際の納税額よりも多く見積もられた未払法人税等は「タックス・クッション」と呼ばれ、大規模企業のスムーズな経理処理に一役買っています。

企業は複雑な会計ルールが適用されるため、法人税ひとつ計上するにも大変な手間がかかります。さらに大企業は決算後に監査や連結決算といった複雑な会計処理が待っているため、決算から納期限までの間に正確な税金を算出しきれないことも少なくありません。

そのため、あらかじめタックス・クッションを上乗せした未払法人税等を計上しておくことで、細かい計算を済ませなくても法人税等の納税額が足らないという事態は免れます。

なお、中小企業は決算から納期限までの2カ月をたっぷり使って税額計算をできるため、多くの場合タックス・クッションを設定する必要はありません。またタックス・クッションを設定する場合でも、株主の業績判断を誤らせない程度の額に収める必要があります。

決算時の処理をする上で未払法人税等の理解は重要!

未払法人税等の処理は、法人税などを納める企業であれば、基本的に必要です。未払法人税等を適切に処理するためにも、未払法人税等に該当する税金の種類は何か、決算時にはどのようにして計上するか、基本的なところは押さえておきましょう。

【参考】国税庁|法人税
    国税庁|申告と納税

よくある質問

未払法人税等とは?

当期負担分の法人税等について、決算日時点で未払いとなっているものをいいます。詳しくはこちらをご覧ください。

未払法人税等に含まれるのは?

法人税、法人事業税、法人住民税などです。詳しくはこちらをご覧ください。

未払法人税等の過大計上とは?

法人税等の計算が複雑で、財務報告を早期に行わなくてはならない企業では、見越しで未払法人税等を過大計上することがあります。詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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