- 更新日 : 2024年11月21日
経費精算のペーパーレス化でどのぐらい楽になるか?効果や事例を解説
経費精算のペーパーレス化とは、経費精算業務を電子化することです。経費精算の電子化は電子帳簿保存法も関わってくるため、要件に適したシステムを導入する必要があります。経費精算のペーパーレス化によるメリットや事例、成功のポイントについて解説します。
目次
経費精算のペーパーレス化とは?
経費精算のペーパーレス化とは、経費精算の手続きに必要な書類や添付する書類を電子化して、オンラインやネットワーク上で申請や承認を行うことです。ペーパーレス化することで、経費精算に関する書類をデータとして保存できるため、物理的な保存スペースのスリム化が図れます。また、要件に従って電子化することにより、電子帳簿保存法に対応することもできます。
経費精算でペーパーレス化される書類一覧
経費精算システムの導入でペーパーレス化される主な書類は、以下の通りです。
経費精算申請書 | 経費精算の申請に必要な書類で、利用年月日や金額などの詳細を記載して提出します。システム上で確認できる書類です。 |
---|---|
領収書 | 経費精算申請書の証拠となる書類です。紙で受領した領収書は 電子帳簿保存法のスキャナ保存の要件に、電子データで受領した領収書は電子データ保存の要件に従って電子化すれば、原本は破棄できます。 |
レシート | 領収書に準じた書類です。領収書と同様に、電子帳簿保存法の要件に従えば原本を破棄できます。 |
利用明細書 | クレジットカードの利用など、領収書やレシートが発行されない場合に証拠として提出できる書類です。 |
経費精算における課題
経費精算でよくある課題を取り上げます。
申請から承認、精算フローの遅れ
経費精算の課題でよく挙げられるのが、申請から精算までの経費精算の手続きが遅いことです。経費精算の手続きがスムーズに進まないと、経費を立て替えた社員に精算されず、さらに立て替えた経費が増えることで、社員の負担が増加してしまいます。
経費精算が遅い理由として考えられるのが、手続きが複雑であることや期限が設定されていないことです。承認フローなどの手続きの遅れも影響することがあります。
入力ミスや計算ミス
紙ベースの経費精算申請書を採用している場合、経路や金額など申請者側の手入力が必要な部分が多いことから、入力ミスや計算ミスが発生しやすくなります。申請のあった書類に誤りがある場合は、経理担当者は提出者に差し戻しを行い、再提出依頼をする必要があります。入力ミスや計算ミスがあると差し戻しの手間がかかるだけでなく、申請者・承認者・経理担当者それぞれの負担も増えます。
申請書類の不備
紙ベースでは、申請書類の不備も発生しやすくなります。例えば、記載項目の記入漏れ、領収書などの添付漏れ、最短経路でない交通費の申請、定期区間の控除忘れなどです。申請書類に不備があると、記載ミスや計算ミスが生じた場合と同じように差し戻しが発生します。
経理担当の作業負担
社内での経費精算の件数が多いほど、経理担当者の作業負担は重くなります。申請のあった書類について、ひとつひとつ目視で確認する必要があるためです。また、先述のように記載ミスや書類の不備があれば、差し戻しなどの追加作業も必要になります。
経費の不正使用のリスク
紙ベースの経費精算では、不正行為が行われる可能性があります。例えば、領収書の発行がない経費の不正計上や領収書の改ざんなどです。承認フローが複雑でチェック体制に問題があると、不正が起こりやすくなります。
経費精算をペーパーレス化するメリット
経費精算をペーパーレス化することには、以下のようなメリットがあります。
- 承認までのスピードが向上する
- 人的ミスを防止できる
- 印刷代などのコスト削減になる
- 電子帳簿保存法に対応できる
- 過去のデータが検索しやすい
- 紛失や盗難のリスクを軽減できる
申請から承認のスピード向上
経費精算は、申請者の上司に提出し、上司が内容を確認した上で経理部門に回付されるのが一般的なフローです。会社の組織形態によっては、複数の上司への確認が必要な場合もあります。経費精算で作業に遅れが生じやすいのが、承認フローや経理部門での確認フローです。特に承認フローについては、確認する上司が多いほど手続きが遅くなる可能性があります。ペーパーレス化されれば、承認者は外出先でもデータを確認でき、端末から承認することが可能です。申請や承認をオンラインで処理することで、承認までのスピードを向上できるメリットがあります。
人的ミスの防止
経費精算システムには、必要項目の自動入力や自動計算に対応したものもあります。システムの導入で手入力が必要な部分が減少することによって、入力ミスや入力漏れなどの人的ミスの防止が期待できるでしょう。人的ミスが減ることで、申請者への差し戻しや経理担当者の業務負担が低減されます。
紙や印刷のコスト削減
紙ベースで経費精算をする場合、経費精算申請書を印刷したり、受領した申請書を保管したりしなければなりません。印刷には、インク代や印刷用紙などのコストがかかります。また、紙の書類は原則としてファイリングして保管することになるため、書類を保管するための物理的な保管スペースも必要です。ペーパーレス化することで紙が不要になるため、印刷費や書類の管理費などのコストを削減できます。
電子帳簿保存法への対応
電子帳簿保存法が定める保存区分には、「電子帳簿等保存」「スキャナ保存」「電子取引データ保存」の3種類の区分があります。経費精算に関連があるのが、スキャナ保存と電子取引データ保存です。
スキャナ保存は、紙で受領した書類を電子化して保存する区分です。経費精算で受領した領収書やレシートを電子化する場合に対象となります。電子取引データ保存は、電子メールなどで電子的に受領したデータの保存に関する区分です。インターネット上での予約で、メールで領収書を受領した場合などが該当します。
電子取引データ保存について、電子保存が義務化されました。電子帳簿保存法に対応した電子保存ができる経費精算システムもあるため、システムを取り入れることで電子帳簿保存法に適切に対応できるメリットがあります。
過去データの検索
経費精算システムは、紙に比べて、過去データを検索しやすいメリットがあります。システム上で、キーワードや年月日などを入力することで、簡単にアクセスしたいデータを見つけられるためです。経理担当者の業務負担の軽減にもなります。
紛失・盗難リスクの軽減
ペーパーレス化によって、紙で保存していたものがデータに置き換わります。紙媒体は原本が1つしかないため、紛失や盗難、あるいは自然災害で消失した際に復旧できないなどのリスクがあります。データについては、サーバーへのバックアップやクラウドストレージの利用などによって保存先を分散させることが可能です。経費精算システムには、クラウドサーバーを利用したクラウド型のシステムもあります。サービス会社が管理するサーバーにデータを保存する仕組みで、自社でデータの保存や管理をしなくても済みます。
経費精算をペーパーレス化するために必要な機能
経費精算をペーパーレス化するために確認しておきたい経費精算システムの機能は、ワークフロー機能と電子帳簿保存法への対応です。それぞれの機能について解説します。
申請から承認のワークフロー機能
ワークフロー機能は、システム上で申請や承認手続きを行うための機能です。経費精算システムの多くに、基本機能としてワークフローシステムが備わっています。経費精算システムを選択する際には、ワークフロー機能のカスタマイズ性に注目するとよいでしょう。カスタマイズ性の高いワークフロー機能であれば、承認ルートを会社ごとの状況に応じて柔軟に変えられるなど、自社の組織形態に合わせたワークフローを作成できます。
電子帳簿保存法のスキャナ保存への対応
経費精算で提出する領収書などの書類をデータ化したい場合、確認しておきたいのが電子帳簿保存法への対応です。受領した領収書を電子帳簿保存法に従って保存したい場合、経費精算システムがスキャナ保存に対応している必要があります。スキャナ保存は、3つの保存区分の中でも、より細かな要件が定められている保存区分です。対応しているかどうかは、JIIMA認証の取得(電子帳簿保存法の要件を満たしたソフトウェアなどを認証する制度)などが目安になります。
経費精算の流れ、ペーパーレス化との比較
経費精算の流れは、紙ベースでもペーパーレスでも基本は同じです。下記の表のように、どのような流れで手続きが行われるかが異なります。
工程 | 紙ベース | ペーパーレス |
---|---|---|
立て替え | 社員が経費を立て替え | |
申請書作成 | 会社の様式に従ってExcelなどで申請書を作成 | システム上で申請書を作成 |
上司の承認 | 申請者から原本を受け取り、内容を確認した上で承認 | システム上で内容を確認して承認 |
経理担当の確認 | 申請者の上司から原本を受け取り、内容を確認 | システム上で申請内容を確認 |
差し戻し | 必要な場合は原本を差し戻し | 必要な場合はシステム上で差し戻し |
精算 | 申請額を支払い | |
受領 | 小口現金の精算では、入金を確認して受領印を押印した申請書を提出 | 入金を確認してシステム上で受領手続きを完了 |
保管 | 原本をファイリングして保管 | 電子データとして保管 |
紙ベースの場合、原本の確認が必要です。申請者の上司のスケジュールによっては出社のタイミングが合わず、承認作業に遅れが生じる可能性があります。一方、ペーパーレスで経費精算を進める場合、すべてシステム上で手続きが完結できます。スマートフォンなどの端末に対応している場合は、外出中の申請や承認ができるため、承認手続きがスムーズに進みやすくなります。経理担当者もシステム上ですぐに申請内容の確認や差し戻しができるため、事務負担の軽減につながるでしょう。
経費精算のペーパーレスの成功事例
経費精算をペーパーレス化することで、作業時間の削減や作業効率の向上に成功した事例を2つ紹介します。
経費精算の業務負荷が1/10以下に|株式会社クリアーツ
業務委託やフリーランスとの契約もあり、当初は個別に経費精算の対応を行っていた企業の事例です。必要なときに個別に連絡を受け、確認をしてから経費精算の処理をする流れで手続きを行なっていました。
しかし、業務を回していくことで負担が増加していきます。アプリで簡単に経費精算ができるシステムを導入したことで、経費精算の業務負荷が改善されました。業務負荷は従来のフローの10分の1以下まで軽減できています。
スマホアプリでスピーディーに経費の申請・承認対応|サンラリー株式会社
経費精算では、上長の承認の後、営業事務と経理でのチェックがあり、複数の工程で内容の確認が行われていました。紙ベースでの手続きで問題となっていたのが、承認フローが長期間停止してしまうことです。紙での回覧であったため、海外出張など長期不在があるとフローが進まないという問題がありました。
ペーパーレス化することで、承認フローの問題が改善されたほか、経費精算の所要時間を1/3に短縮させることにも成功しています。また、導入にあたり、全体研修の場でスマホアプリの実演や個別相談に対応したこともあり、社内でのスムーズな導入にも成功しています。
スマホアプリでスピーディーに経費の申請・承認対応|サンラリー株式会社
経費精算のペーパーレス化するポイント
経費精算のペーパーレス化を成功させるためのポイントを紹介します。
規模や機能が適したシステムを選ぶ
ペーパーレス化を成功させるには、規模や機能が自社の状況に適した経費精算システムを選ぶことが重要です。
例えば、ワークフローが複雑な企業のペーパーレス化を実現させるには、ワークフローのカスタマイズ性が高い経費精算システムの選択が適切でしょう。承認フローのタイムラグに悩んでいる場合は、スマートフォンなどのパソコン以外の端末でも利用できるシステムが検討できるのではないでしょうか。
自社に適したシステムを導入するためにも、自社が抱える経費精算の課題を的確に把握することが求められます。
従業員への周知や教育を行う
ITリテラシーには個人差があります。特に、アプリの利用などに慣れていない社員について、どのように説明し、納得してもらうかが重要です。マニュアルの配布などではわかりにくい場合は、実際に使ってもらうなど、実演により操作方法を覚えてもらう方法もあります。システムは社員に活用してもらうことが重要なため、導入の周知や教育に力を注ぎましょう。
経費精算のペーパーレス化はマネーフォワードがサポート
電子帳簿保存法に対応した経費精算のペーパーレス化は「マネーフォワード クラウド経費精算」がサポートしています。マネーフォワードなら以下の機能が利用できます。
- カスタマイズできるワークフロー
- 連携先の経費明細の自動取得
- 領収書画像データの自動取得
- 交通系ICカードからのデータ取得
- 経路検索と交通費の入力
- アプリでの申請
- アプリでの承認
- 仮払申請・精算
- 外貨対応
- チャットサービス連携
など
経費精算書に関するひな形、テンプレート
経費精算の件数が少ないなど、紙ベースで経費精算の手続きを進める場合は、経費精算書のテンプレートを利用いただけます。
経費精算書の書き方の詳細などは、下記の記事をご覧ください。
ペーパーレス化で経費精算の効率化を図ろう
従来の紙ベースの経費精算業務は、経費精算システムによるペーパーレス化で効率化が図れる可能性があります。ペーパーレス化に成功するには、自社に適したシステムを選択し、社員に広くシステムの導入と教育のサポートを実施することが重要です。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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