- 更新日 : 2024年8月8日
中間・確定申告書(第6号様式)の記載例は?画像をもとに各項目を解説
中間・確定申告書(第6号様式)は、法人事業税などの地方税を法人が申告するための書類です。この記事では、申告書を一から作成したいと考えている法人の担当者向けに、申告書の記載例や各項目の書き方、記載のポイントを解説します。
目次
中間・確定申告書(第6号様式)の記載例
中間・確定申告書(第6号様式)は、法人が、法人事業税、特別法人事業税、法人都道府県民税を自治体に申告するための書類です。以下は、熊本県が公表している申告書(第6号様式)の記載例です。
出典:確定申告書(第6号様式)記載例【①外形標準課税適用法人、②連結申告法人、③収入金額課税法人を除く】|熊本県
記載する項目は基本的に同じですが、自治体によって申告書の様式が異なります。必ず、申告する自治体の様式を用意した上で、申告書類の作成を進めてください。
申告書の様式には、法人の区分に応じて第6号様式その2やその3、申告する内容に応じた明細書として別表もありますが、ここでは代表的な第6号様式について紹介します。
中間・確定申告書(第6号様式)の書き方
法人税申告書の各項目の書き方を、記載例で紹介した熊本県の申告書をベースに説明します。
基本事項
申告書(第6号様式)の上部は、申告を行う法人の基本事項を記載する部分です。「※処理事項」は自治体側で記載するため、処理事項以外の項目を記載します。
出典:確定申告書(第6号様式)記載例【①外形標準課税適用法人、②連結申告法人、③収入金額課税法人を除く】|熊本県
提出日:受付印欄横の年月日を記載する項目には申告書の提出日を記載します。
法人番号:13桁の法人番号を記載します。
この申告の基礎:修正申告、更正、決定、再更正の場合に記載する項目です。基礎となる申告の年月日を記載します。
申告年月日:申告年月日を記載します。
所在地:本店の所在地を記載します。複数の都道府県に事務所等がある場合は、申告する自治体に有する主たる支店等の所在地も併記します。
法人名:法人の名称にフリガナを振って記載します。
代表者氏名:法人の代表者の氏名にフリガナを振って記載します。
経理責任者氏名:法人の経理責任者の氏名にフリガナを振って記載します。
事業種目:事業の種類を記載します。複数ある場合は、複数を併記して主たる事業に〇を付します。
期末現在の資本金の額又は出資金の額:期末時点の資本金または出資金の額を記載します。
同上が1億円以下の普通法人のうち中小法人等に該当しないもの:非中小法人に該当する場合に〇を付します。非中小法人に該当するのは、例えば資本金5億円以上の法人が100%出資しているような場合です。
期末現在の資本金の額及び資本準備金の額の合算額:資本金の額に資本準備金の額を加えた金額を記載します。
期末現在の資本金等の額:基本的に資本金と資本準備金の合計額ですが、連結申告法人や保険業法に定める相互会社などは記載する金額が異なる場合があります。
所得金額の計算の内訳等
申告書(第6号様式)の左下部の記載項目です。計算の基礎となる所得金額の計算を示した部分で、作成するには法人税申告書別表4、必要に応じて申告書(第6号様式)の別表9~11が必要です。
出典:確定申告書(第6号様式)記載例【①外形標準課税適用法人、②連結申告法人、③収入金額課税法人を除く】|熊本県
62.所得金額又は個別所得金額:法人税申告書の別表4に記載の所得金額「34」、または別表4の2付表記載の個別所得金額「42」から転記します。
63~66.加算・減算:税法上は損金に算入しない金額あるいは益金に算入しない金額など、所得金額の計算上調整が必要な金額を法人税申告書をもとに記載します。
67.仮計:「62+63+64-65-66」の金額を記載します。
68.繰越欠損金額等若しくは災害損失金額又は債務免除等があった場合の欠損金額等の当期控除額:第6号様式別表9~11の当期控除額に記載がある場合に転記します。
69.法人税の所得金額又は個別所得金額:法人税申告書の別表4に記載の所得金額「48」、または別表4の2付表記載の個別所得金額「55」から転記します。
70.法第15条4の徴収猶予を受けようとする金額:納付の猶予を受ける場合に記載する項目です。
事業税
法人事業税の計算に関する項目です。
出典:確定申告書(第6号様式)記載例【①外形標準課税適用法人、②連結申告法人、③収入金額課税法人を除く】|熊本県
27~32.所得割(法人事業税の所得割の計算に関する項目)
27.所得金額総額:「67-68」の所得金額、または別表5「36」の金額を転記します。
28~30:年400万円以下の金額、年400万円を超え年800万円以下の金額、年800万円を超える金額に区分して、課税標準には所得金額総額のうち該当する金額を記載します。(千円未満切り捨て)また、税率をかけた金額を税額欄に記載します。(百円未満切り捨て)
※税率は法人の区分で異なります。外形標準課税法人等に該当しない普通法人の税率は、年400万円以下の金額は3.5/100(超過税率3.75/100)、年400万円を超え年800万円以下の金額は5.3/100(超過税率5.665/100)、年800万円を超える金額は7.0/100(超過税率7.48/100)です。
31.計:「28+29+30」の課税標準、税額を記載します。
32.軽減税率不適用法人の金額:外形対象法人など該当する法人が記載する項目です。
33~34.付加価値割:外形標準課税法人(資本金の額が1億円を超える普通法人など)の場合に記載する項目です。
35~36.資本割:外形標準課税法人の場合に記載する項目です。
37~38.収入割:収入金額課税事業(電気供給業や保険会社など)に該当する場合に記載する項目です。
39.合計事業税額:「31+34+36+38」あるいは「32+34+36+38」の税額の合計額を記載します。
40.事業税の特定寄附金税額控除額:寄附金の額の明細書である申告書(第7号の3様式)の「11」の金額を転記します。
41.仮装経理に基づく事業税額の控除額:仮装経理に基づく過大申告の更正により該当する金額がある場合に記載します。
42.差引事業税額:「39」の合計事業税額から「40」と「41」の金額を控除した金額を記載します。
43.既に納付の確定した当期分の事業税額:該当の金額を記載します。
44.租税条約の実施に係る事業税額の控除額:該当の金額または「42」から「43」を控除した金額のうち、いずれか少ない金額を記載します。
45.この申告により納付すべき事業税額:「42-43-44」の金額を記載します。
46~49.45の内訳:「45」の内訳を所得割、付加価値割、資本割、収入割の4つの区分に分けて記載します。
50.45のうち見込納付額:申告書の提出期限の延長を受けている法人に関する項目です。
51.差引:「45」の納付すべき事業税額から「50」の金額を控除した金額を記載します。
特別法人事業税
法人事業税の一部を分離して創設された、特別法人事業税に関わる項目です。法人事業税の申告納税義務のある法人は記載する必要があります。
出典:確定申告書(第6号様式)記載例【①外形標準課税適用法人、②連結申告法人、③収入金額課税法人を除く】|熊本県
52.所得割に係る特別法人事業税額:標準税率が適用される法人については、課税標準の欄に「31」(軽減税率不適用法人は「32」)の金額(百円未満切り捨て)、課税標準に税率(外形標準課税法人等以外の普通法人は37/100)を乗じた金額を税額欄に記載(百円未満切り捨て)します。
53.収入割に係る特別法人事業税額:標準税率が適用される法人については、「38」の収入金額に記載の税額を課税標準に転記し、該当する区分に応じた税率を乗じて税額を計算します。
54.合計特別法人事業税額:「52+53」の金額を記載します。
55.仮装経理に基づく特別法人事業税の控除額:事業税の計算項目に準じて記載します。
56.差引特別法人事業税額:「54-55」の金額を記載します。
57~58:事業税の項目に準じて、それぞれ該当の金額を記載します。
59.この申告により納付すべき特別法人事業税額:「56-57-58」の金額を記載します。
60.59のうち見込納付額:申告書の提出期限の延長を受けている法人に関する項目です。
61差引:「59-60」の金額を記載します。
道府県民税
法人住民税のうち、道府県民税についての計算項目です。
出典:確定申告書(第6号様式)記載例【①外形標準課税適用法人、②連結申告法人、③収入金額課税法人を除く】|熊本県
1.法人税法の規定によって計算した法人税額:法人税の申告書 別表1の法人税額欄の金額を転記します。使途秘匿金の40%相当額が記載されているときは当該金額を加算して記載します。
2.試験研究費の額等に係る法人税額の特別控除額:該当する法人税額の特別控除額がある場合に記載します。
3.還付法人税額等の控除額:申告書(第6号様式)別表2の5に該当する金額がある場合に記載します。
4.退職年金等積立金に係る法人税額:法人税の申告書別表20を提出していて該当する金額がある場合に記載します。
5.課税標準となる法人税額又は個別帰属法人税額:法人の区分に応じて該当する金額(中小の普通法人は「1+2-3+4」の金額)を記載します。
6.2以上の道府県に事務所又は事務所を有する法人における課税標準となる法人税額又は個別帰属法人税額:複数の都道府県に事務所等がある場合に記載する項目です。
7.法人税割額:「5」または「6」の欄に法人税割額を乗じた金額を記載します。税率は、資本金または出資金の額1億円以下かつ法人税額が1,000万円以下の法人の場合、1.0/100です。
8~11:該当する金額がある場合に記載します。
12.差引法人税割額:「7」から「8」~「11」を控除した金額を記載します。
13.既に納付の確定した当期分の法人税割額:該当する金額を記載します。
14.租税条約の実施に係る法人税割額の控除額:該当する金額、または「13」-「14」の金額のうち、いずれか低い金額を記載します。
15.この申告により納付すべき法人税割額:「12-13-14」の金額を記載します。
16~19.均等割額:道府県民税の均等割に関する計算項目です。均等割の計算の基礎となる金額は、法人の資本金等の額で異なります。均等割の額に、事務所等を有していた月数を乗じて計算します。
20.この申告により納付すべき道府県民税額:法人税額割と均等割額を合計した金額を記載します。
21.20のうち見込納付額:申告書の提出期限の延長を受けている法人などに関する項目です。
22.差引:「20-21」の金額を記載します。
23~26.東京都に申告する場合の⑦の計算:東京都に事業所等がある場合に記載が必要な項目です。東京都の特別区と特別区以外の市町村に分けて、課税標準と税額を計算します。東京都の申告書の場合は、東京都内の特別区と市町村の税額の合計額と、法人税割額の金額は一致します。
そのほか
出典:確定申告書(第6号様式)記載例【①外形標準課税適用法人、②連結申告法人、③収入金額課税法人を除く】|熊本県
還付請求:中間納付により納めるべき税額が過大なときに記載する項目です。事業税額と特別法人事業税額の合計額、道府県民税の法人税割額と均等割額のうちマイナスの金額の合計を記載して、還付を受ける金融機関を記載します。
法人税の期末現在の資本金等の額又は連結個別資本金等の額:法人税申告書の明細書 別表5(1)または別表5の2(1)付表1の金額から転記します。
法人税の当期の確定税額又は連結法人税個別帰属支払額:該当する法人税額等を記載します。
決算確定の日:株主総会の日などを記載します。
解散の日:法人を解散した場合に記載します。
残余財産の最後の分配又は引き渡しの日:解散した法人の残余財産の引き渡しの日などを記載します。
申告期限の延長の処分(承認)の有無:法人税法の規定で延長の処分を受けている場合は「有」に〇を付します。
法人税の申告書の種類:法人税の申告書が青色の場合は青色に〇を付します。
この申告が中間申告の場合の計算期間:該当する場合に期間を記載します。
翌期の中間申告の要否:法人税の予定納税額が10万円を超える場合などは「要」に〇を付します。
国外関連者の有無:租税条約を締結する国に外国子会社、租税特別措置法に規定する外国親会社などがある場合は「有」に〇を付します。
法人事業税に関わる申告書を記載する際のポイント
法人事業税に関わる申告書は、事業税だけでなく、特別法人事業税と法人の都道府県民税が一体となった申告書です。作成にあたり、法人税申告書に記載の項目も必要になるため、法人税申告書も準備しておきましょう。
なお、法人事業税、特別法人事業税、都道府県民税のなかでも、法人事業税の税率は特に区分が細かく分かれています。
まず、地方税法に定める事業区分により、1号、2号、3号、4号に区分され、それぞれ税率が設定されています。さらに、1号に該当する場合は、特別法人、外形標準課税法人、そのほかの普通法人に区分した上で、それぞれの税率で計算しなければなりません。
各自治体の税率は総務省で公表されているほか、各自治体の公式サイトなどでも公表されているため、確認してから、正しい税率で計算するようにしましょう。
また、事業年度1年未満の事業者は、法人事業税の計算において、所得区分を月割りで計算した金額に換算して計算する必要があるため注意してください。
参考:令和5年度 法人住民税・法人事業税税率一覧表|総務省自治税務局
地方税の申告書(第6号様式)の書き方を把握しよう
法人税の申告を行う法人は、自治体の中間・確定申告書(第6号様式)の作成と申告が必要です。第6号様式には、法人事業税、特別法人事業税、都道府県民税に関する計算を記載します。社内で作成する場合は、今回紹介した書き方を参考に作成を進めてみてください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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