• 更新日 : 2024年9月27日

決算賞与とは?通常賞与との違いや支給のメリット・デメリットを解説

社員への還元として、決算賞与の支給を検討している方も多いのではないでしょうか。決算賞与には、どのようなメリット・デメリットがあるでしょうか。決算賞与を支給する際には、利益額や設備投資なども踏まえて慎重に判断する必要があります。

今回の記事では決算賞与のメリット・デメリットや、通常賞与の違いなどを踏まえて詳しく紹介します。

決算賞与とは

決算賞与とは、会社の業績に応じて支給する賞与(ボーナス)のことです。業績が好調な企業が、事業年度末に利益を従業員に還元する目的で払われます。決算賞与について、詳しく見ていきましょう。

決算賞与は決算日から1ヶ月以内に支払われる

決算賞与は、名前の通り決算時期に支払われます。決算時期は会社によって違いますが、事業年度末が決算期になります。決算賞与は決算を締めた利益に応じて支払われるため、支給は翌期になってしまうことも少なくありません。

しかし決算賞与を当期の損金に算入するためには、決算日から1ヶ月以内に支給する必要があります。そのため決算賞与は決算月、もしくは決算翌月に支給されるケースが多いです。

決算賞与の対象は期末日に在籍していた社員

決算賞与の支給対象者は、決算期末時点で在籍していた社員です。実際にどこまで支給するかは企業の任意で、正社員のほかパートやアルバイトにも支給することも可能です。また業績への貢献度が大きい一部の社員のみに支給しても問題ありません。

一部の社員に支払う場合や、正社員などに限定する場合は、社内のトラブルを避けるために社内規程などを定めておくとよいでしょう。

支給額は利益に応じて決める

決算賞与は利益に応じて支給されますが、決められた基準があるわけではありません。確定した利益の中からどれだけ社員に還元するかは、会社の経営判断によります。一般的には、下記の要素を加味して支給額を決めます。

  • 利益の金額
  • 従業員の人数
  • 設備投資を行うか

決算で利益が出た場合でも、大きな設備投資を行う予定があれば決算賞与はあまり支給できないでしょう。決算賞与は利益の金額や社員数、設備投資などを踏まえて検討します。

決算賞与と通常賞与(ボーナス)は異なる制度

一般的には賞与(ボーナス)は、夏と冬の2回にわけて支給されることが多いです。決算期に支払われる決算賞与に対し、夏と冬に支払われる賞与は通常賞与と呼ばれます。それぞれの違いを確認しておきましょう。

決算賞与

通常賞与

支給義務なしなし

ただし、通例として夏・冬に支給することが多い

支給時期決算後夏・冬が多い
支給対象正社員(パートやアルバイトを含む場合もある)正社員(パートやアルバイトを含む場合もある)
支給額業績による業績連動、もしくは貢献度などによる

通常賞与は夏と冬に定期的に支給される報酬の一環としての立ち位置ですが、決算賞与は業績がよかった際に臨時的に支給される報酬というイメージです。

決算賞与を支給するメリットとデメリット

決算賞与を支払うかどうかは、企業の経営判断です。メリットもあればデメリットもあるため、支給の有無は慎重に判断するようにしましょう。

メリット

■節税ができる

決算賞与を支給することで、節税できる点がメリットの1つです。決算賞与は一定の要件を満たすことで、当期の損金に算入できます。損金に算入することで、利益を圧縮できるため税額を減らせます。

とくに利益が出た年度は税金が高額になるため、どのようにして利益を圧縮するか悩む経営者は多いでしょう。節税策の1つとして、決算賞与は活用できます。当期の損金に算入するための要件は、後ほど詳しく紹介します。

■社員のモチベーション向上が期待できる

決算賞与の大きなメリットは、社員のモチベーション向上が期待できる点です。決算賞与は業績に連動して支払われるため、決算賞与が支給されることで会社の業績がよいことが伝えられます。社員は自分たちの頑張りが、業績に貢献できていることを実感できるでしょう。

デメリット

■資金繰りが悪化する

決算賞与のデメリットの1つに、資金繰りへの悪影響があります。前述のように決算賞与は設備投資や利益の額などを総合的に考えたうえで、支給を判断する必要があります。無計画に支給してしまうと、資金繰りが悪化してしまうかもしれません。

また賞与を支給すると、会社負担の社会保険料も発生します。決算賞与を支給する際は、資金繰りへの影響も考慮しましょう。

■連続して支給できなければ社員のモチベーションが低下する

決算賞与を一度支給してしまうと、支給しなかった際に社員のモチベーションが下がってしまう可能性があります。決算賞与は利益の還元であるため、支給されれば達成感を得られる一方で、支給がなければ会社に貢献できなかったと感じるかもしれません。

また一度払ってしまうと、毎年貰えると感じてしまうケースもあります。支給しなかった際のモチベーション低下が、デメリットの1つと言えるでしょう。

決算賞与を損金算入できる条件

決算賞与は下記の要件を満たすことで、当期の損金に算入できます。

  • 決算日までに支給対象者に支給すること及び支給額を通知
  • 決算日から1ヶ月以内に通知通りの金額を支給
  • 当期において損金処理している

決算賞与を当期の経費に算入するためには、決算日までに支給対象者に支給額を通知しておく必要があります。さらに決算日から1ヶ月以内に、支給通りの賞与を支給する必要があります。当期の決算では確定した支給額を、未払賞与として計上することも条件です。

上記3点を満たすことで、決算賞与での節税が可能になります。決算賞与は節税の一環として利用されることも多いため、上記条件には注意しましょう。また決算期時点では未払計上するなど、仕訳にも配慮する必要があります。具体的な仕訳については、この後詳しく紹介します。

決算賞与を損金算入する際の仕訳

決算賞与を支払う際の仕訳について、見ていきましょう。決算賞与は当期の損金として計上するものの、実際の支払いは翌期になるため2段階にわけて処理を行います。まず、期末日の仕訳を見ていきましょう。今回のケースでは賞与が1,000万円、賞与に伴う社会保険料が150万円と仮定します。

借方貸方

賞与

11,000,000

未払金

11,000,000

決算日時点で賞与として払うわけではないため、未払金として処理します。続いて実際に賞与を支払った場合の仕訳は、下記の通りです。

借方貸方
未払金11,000,000普通預金10,000,000
未払金1,500,000預り金1,500,000

賞与から控除される社会保険料や所得税などは、預り金として処理します。

決算賞与を導入するか検討する際のポイント

決算賞与にはメリットもあればデメリットもあります。重大な経営判断ともいえますので、導入に悩んだ際はここで紹介するポイントを参考にしてください。

利益と社員への還元を見極める

決算賞与を支給するかどうかは、利益と社員への還元を見極めて慎重に判断する必要があります。利益が予想以上に大きかった場合、社員への還元と節税を考慮して決算賞与を支給するかもしれませんが、節税が必ずしも正解とは限りません。

払うべき税金を払って、会社の内部留保を蓄積することが正解の場合もあります。一方で社員のモチベーションを上げることで、更なる利益を生み出せる可能性もあるでしょう。決算賞与の支給判断は、利益と社員還元を慎重に見極める必要があります。

決算賞与を支給する場合は特別感を伝える

決算賞与を支給する場合は、社員に対して支給する意味をしっかりと伝えることが大切です。決算賞与は定期的に支給されるものではなく、社員の頑張りによって生まれた利益の還元であることを共有しましょう。

会社側と社員側の認識に齟齬があると、決算賞与は毎年支給されるものだと思い込む方もいるでしょう。決算賞与は社員の頑張りに対する臨時的な報酬であることを、しっかりと伝えましょう。

利益に波がある場合は通常賞与を選択するほうがよい

利益に波がある場合は、決算賞与ではなく通常賞与で還元するほうがよいでしょう。前述の通り決算賞与を一度支給してしまうと、支給しなかった際のデメリットが生まれます。決算賞与は臨時的な報酬のため、当たり前ではありますが社員はそう感じません。

毎期の利益が安定していなく、決算賞与が一度きりになってしまう可能性が高いのであれば通常賞与で還元する仕組みをつくりましょう。

決算賞与の支給は慎重に検討しよう

決算賞与は、決算期の利益を社員に還元するために支給する報酬です。夏・冬に支給することが一般的な通常賞与とは違ったタイミングで支給するため、社員のモチベーションアップに繋がります。また要件を満たせば、損金算入できるため節税にもなります。

しかし決算賞与は一度支給すると、支給しない際には社員のモチベーション低下に繋がりかねません。決算賞与を支給する際は、社員に対ししっかりと意義を伝えることが重要です。決算賞与の支給で悩んでいる経営者や経理担当の方は、ぜひ今回の記事を参考にしてください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。

関連記事

会計の注目テーマ