- 更新日 : 2023年3月23日
会計における「のれん」とは?償却や減損方法を仕訳まで解説

「のれん」とは企業のブランド的価値のことで、会計上では企業の時価評価純資産と買収価額の差額として表記されます。のれんとは何か、また、のれんを償却するメリットやデメリット、減損処理の際の仕訳の方法、注意点について紹介するので、経理処理の参考にしてください。
目次
会計における「のれん」とは?
のれんとは、企業買収・合併の際に表面化するものです。無形固定資産として扱われ、会計上では企業の時価評価純資産と買収価額の差額として表記されます。
買収価額が企業の時価純資産より高いときは、差額は企業の持つブランド力と表現できるでしょう。また、ノウハウや技術力、信用力といった数値化しにくいけれども、実際に存在する価値も「のれん」として表現することが可能です。
例えば、2,000万円の価値がある資産を有する企業が、M&Aにより5,000万円で買収されたとします。この場合、「のれん」は時価評価純資産と買収価額の差額である3,000万円です。つまり、企業のブランド力やノウハウ、信用力などは、トータルで3,000万円の価値があると判断されたことになります。
反対に、買収価額が時価純資産よりも低いときは、企業のブランド力や技術力、信用力はあまりないと考えられます。このような状態は「負ののれん」です。
例えば、2,000万円の価値がある資産を有する企業が、500万円で買収されたとしましょう。この場合「負ののれん」は1,500万円です。つまり、負ののれんの金額分、企業を安価に購入できたと考えられます。
のれん償却の方法
のれんは減価償却することで、資産の価値を適正に評価できるようになります。ただし、負ののれんは償却できません。負ののれんが生じたときは、「負ののれん発生益」として連結損益計算書の特別利益に記載します。
ただし、のれんが減価償却できるのは、日本の会計基準で会計処理を行うときのみです。国際会計基準や米国区会計基準を用いて会計処理している場合は、負ののれんだけでなくのれんも償却できないので注意しましょう。
国際会計基準を用いて会計処理を行っているときは、のれんの価値が著しく低下したときは減損処理をします。減損処理とは、何らかの理由で帳簿に記載された価額よりも実際の価値が著しく低下したときに行う処理のことで、帳簿に記載された価額と価値を一致させることを目的としています。
のれんの償却期間
日本の会計基準では、のれんは20年以内に定額法などの規則的な方法で減価償却することが定められています。なお、20年以内のため、3年、5年などの短期間で減価償却しても問題ありません。
しかし、のれんが高額な場合に短期間で減価償却すると、1年あたりの減価償却額が増え、利益が生じにくくなります。のれんの効果とも照らし合わせたうえで、適切な償却期間を決めるようにしましょう。
のれんの償却方法
のれんの償却方法は、定額法が一般的です。定額法とは毎年同額ずつ減価償却することにより、例えば500万円を5年で償却する場合は、1年あたりの減価償却額は100万円になります。
のれんの仕訳
「のれん」の仕訳をする前に、まずは「のれん」がいくらなのか計算します。のれんは買収価額から企業の時価評価純資産を差し引いて求めます。例えば、現金資産800万円、買掛金400万円、売掛金・貸付金200万円の資産状況の企業を700万円で買収した場合は、以下の計算式からのれんは100万円です。
こののれんを10年の定額法で減価償却する場合は、次のように仕訳をします。
借方 | 貸方 | 摘要 | |||
---|---|---|---|---|---|
のれん償却 | 100,000円 | のれん | 100,000円 | のれん(100万円)を10年間の定額償却1年目 |
のれん償却のメリット・デメリット
日本の会計基準では、のれんは適切に償却しなくてはいけません。のれん償却を行うメリットとデメリットを紹介します。
メリット
のれんの価値(企業のブランド力や信用力)などは本来、永続するものではありません。のれん償却を行うことで、のれんの価値がなくなっていくことを会計上に反映できます。また、のれんの価値が急激に低下したときも、毎年減価償却しているなら減損処理の下げ幅を減らせます。
デメリット
のれん償却中は減価償却額として計上する分、利益が減ります。意図的な会計が可能(償却期間や償却方法を調整するなど)になるため、会計の透明性が失われるとも考えられます。
のれん償却の注意点
のれんを償却するときは、次のような問題が生じることがあります。
- M&Aの方法によって税務上での扱いが異なる
- 国際会計基準ではのれん償却は行わない
具体的にはどのような問題なのか、また、何に注意すべきか説明します。
M&Aの方法によって税務上での扱いが異なる
株式譲渡を伴うM&Aの場合、税務上ではのれんは発生しないことになります。一方、事業譲渡あるいは現金対価の吸収分割などによるM&Aでは「資産調整勘定」、または「差額負債調整勘定」(負ののれん)として税務上ののれんが発生します。
「資産調整勘定」と「差額負債調整勘定」は、60ヶ月で償却しなくてはいけません。通常ののれんの扱いとは異なり、償却期間を自分で設定できないこと、また月単位で償却することにも注意しましょう。
国際会計基準ではのれん償却は行わない
国際会計基準では、のれん・負ののれんのいずれものれん償却は行いません。今後、日本の会計基準が国際会計基準の影響を受けて、のれん償却を行わない流れに変化する可能性も想定されます。
のれんの減損
のれんは、企業を買収や合併したときに生じる価値です。その時点では正しく価値を評価していても、企業価値の低下などによりのれんの価値が変わることもあるでしょう。のれんの価値が著しく下がったときは、のれんの減損処理が必要になる可能性があります。
減損とは
のれんの減損とは、のれんの価値を下方修正することです。企業価値を下げることになるため、できれば回避するようにしましょう。
のれんの減損の仕訳
のれんとして100万円計上したものの、売上減少などにより60万円に減損したいときは、借方は「減損損失」、貸方は「のれん」として差額を記載します。以下のように仕訳をしましょう。
借方 | 貸方 | 摘要 | |||
---|---|---|---|---|---|
減損損失 | 400,000円 | のれん | 400,000円 | のれんの減損処理 |
「のれん」は慎重に取り扱おう
のれんは無形固定資産です。普段は表面化しませんが、M&Aなどにより企業買収や合併などが生じたときに表れます。正しく償却して価値を適正に評価することも可能ですが、恣意性が働くこともあるため、慎重に取り扱うようにしましょう。

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よくある質問
のれんとは?
買収価額から企業の時価評価純資産を差し引いたものが「のれん」です。のれんは企業買収や合併などの局面でだけ表面化する無形固定資産で、企業のブランド力や信用力などに相当します。詳しくはこちらをご覧ください。
のれんの償却方法は?
日本の会計基準では、のれんを償却することができます。原則として20年以内で定額法などの合理的な方法で償却します。ちなみに、国際会計基準ではのれん償却は行いません。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。