• 更新日 : 2023年3月23日

一人親方が経費にできるもの・できないものまとめ

一人親方が経費にできるもの・できないものまとめ

一人親方が独立した当初に直面する大きな問題が確定申告です。売上額は請求書で確認できても「何を経費に入れればよいのか」といった、疑問や不安を抱く方もいるでしょう。今回は、一人親方が経費にできるものとできないものをまとめました。具体的なケースや仕訳例も紹介するため、はじめて確定申告される方や税金の知識が浅い人に役立つでしょう。

一人親方が経費にできる主なもの

税金の負担を抑えるには、漏れなく経費を計上することがポイントです。所得税の課税対象である所得は、単純化すると「売上-経費-所得控除」で算出します。差し引く経費が増えるほど課税対象額が減るため、節税につながります。

一人親方が経費にできる主な項目は次のとおりです。

地代家賃

地代家賃はオフィスや店舗、駐車場などを借りたときに支払う賃料を記帳する項目です。事務所の賃料はもちろん個人の住宅を仕事場として使用している場合、その家賃も経費に算入できます。

ただし、経費として認められるのは事業と関連がある部分にとどまります。事業以外のプライベートな部分にかかる賃料は、経費から除外しなくてはいけません。事業に使用する広さや時間などを基準にし、業務上必要な経費を算出する処理が必要です。(家事按分)

仕訳では経費に入れられない私的な部分の賃料は事業主貸で処理します。

仕訳例)家賃100,000円のマンションで4部屋のうち1室を事業で使っている場合

借方貸方摘要
地代家賃
事業主貸
25,000円
75,000円
普通預金100,000円事務所家賃

旅費交通費

旅費交通費とは業務を行うために必要な移動にかかる費用です。具体的には自動車のガソリン代・電車代・バス代・出張時の宿泊代・食事代などが該当します。遊びに行く際のタクシー代や電車賃など私的な交通費は除外します。

タクシー代や駐車場料金などは、後から見返したときに仕事で使ったものか判別がつかなくなりやすいです。旅費交通費に限らず、普段から領収書を事業用とプライベートに分けておきましょう。

交通系ICカードを使用する場合、経費算入が可能なのは実際に使った金額です。チャージした段階では経費ではないため注意してください。

仕訳例)出張のために飛行機代や在来線代、宿泊ホテル代など計50,000円を支払った

借方貸方摘要
旅費交通費50,000円現金50,000円出張代

材料費

仕事を行うための工具・備品の材料費も経費計上できます。仕訳で使用する勘定科目は基本的には消耗品費です。重機や建設機器など大型のものから、日曜文具まで広く含まれます。耐用年数が1年以上、購入金額が10万円以上のものは「工具器具備品」で処理します。

消耗品費は雑費と混同しやすいですが、雑費とはどの科目にも該当しない少額の費用を計上する勘定科目です。勘定科目として材料費も存在しますが、こちらは主に製造業で原料を調達した際に使う勘定科目です。

仕訳例)業務に使用するコピー機のトナーを10,000円で購入した

借方貸方摘要
消耗品費10,000円現金10,000円コピー機のトナー

水道光熱費

水道光熱費にはオフィスや事務所の電気代・ガス代・水道代などが該当します。飲食店や美容室など店舗型のビジネスを経営されている方は、その建物で生じた水道高熱費を全額経費に入れられます。

自宅兼事務所の場合、例によって家事按分が必要です。スペースごとに正確な金額を把握するのは難しいので、一般的には使用時間や使用日数を基準に按分します。

自宅兼事務所で毎日12時間部屋の電気を使用していて、うち6時間を仕事で使っているときの仕訳は以下のとおりです。

仕訳例)1ヵ月の電気料金が20,000円、仕事で毎日6時間使用した場合

借方貸方摘要
水道光熱費
事業主貸
5,000円
15,000円
普通預金20,000円電気料金

通信費

仕事上の通信や連絡に関わる費用は、通信費で処理します。通信費に含まれるのは、固定電話代・携帯電話代・ファックス代などが該当し、日常的な費用が多く使用頻度の高い勘定科目です。

パソコンやインターネット関連費用も通信費の範疇です。仕事用のホームぺージを持っている場合、維持管理に要する費用も全額経費になります。

自宅兼事務所で自宅の固定電話を仕事にも使用しているときは、家事按分の処理が必要です。

仕訳例)事業専用の固定電話料金10,000円を支払った

借方貸方摘要
通信費10,000円現金10,000円固定電話料金

上記仕訳例は事業用途のみの通信費の仕訳です。家事按分を行う場合、プライベートな部分は事業主貸という勘定科目を使用します。

車両費

自動車の購入費用・ガソリン代・洗車代・税金・損害保険料など、車両に関する費用を広く処理できる勘定科目です。経費計上が認められるのは事業に関係する車両に限定されています。

車に関する費用が経費になるかの線引きは他の費目と同様、事業の継続に必要かどうかです。家族名義の車両でも事業に使用したときに経費として認められた判例があり、個別具体的な判断が下されます。

一人親方(個人事業主)の場合、事業専用車両を保有しているケースは少ないと思われます。プライベートと併用しているときは家事按分によって、仕事のために使用した部分のみ経費計上可能です。

仕訳例)事業に要する車両のガソリン代5,000円を支払った場合

借方貸方摘要
車両費5,000円現金5,000円ガソリン代

接待交際費

接待交際費は懇親会費用やタクシー代、贈答品の購入費など取引先と円滑な関係を作るための活動にかかる費用のことです。プライベートの飲み会で生じた費用を接待交際費に入れるのはNGです。

法人では損金に計上可能な接待交際費に上限額が設定されているのですが、個人事業主の場合は際限なく経費にできます。

接待交際費はプライベートな飲食との境目が付きづらく、税務署からのチェックが厳しくなる傾向はあります。上限がないからといって、むやみやたらと懇親会に交際費を計上すると、申告時に疑われかねないため注意しましょう。

仕訳例)取引先へのお土産代5,000円を現金で支払う場合

借方貸方摘要
接待交際費5,000円現金5,000円お土産代

組合費

一人親方専用の特別加入団体に加入することで、労災保険の補償を受けられます。また、特別加入団体の入会金・組合費・事務手数料は経費算入が可能です。

会社員の場合、原則として雇用先で労災保険に加入します。しかし一人親方は会社の従業員ではないため、原則として労災保険の適用を受けられません。

一人親方は何もしていないと業務で病気やケガをした際の補償制度がなく、非常に不安定な働き方を強いられます。上記の問題を解決するための救済制度が、一人親方専用の特別加入団体です。

仕訳例)事業用の口座から組合費(労災保険料)15,000円を支払った場合

借方貸方摘要
事業主貸15,000円普通預金15,000円組合費

専従者給与

自らが営む事業の従業員として配偶者や一定の親族を雇っている場合、その給与が経費になるケースがあります。家族への給与は基本的には経費にならないのですが、所得税法に定める条件を満たせばOKです。

青色申告白色申告のどちらを採用しているかで、要件が若干異なります。青色申告で専従者給与を経費に入れるためには以下の条件が必要です。

  • 青色事業専従者給与にかかる届出を提出していること
  • 生計を一にする配偶者、もしくは15歳以上の親族であること
  • 適正な金額であること
  • 6ヵ月以上事業に従事していること

仕訳例)専従者(妻)に対して専従者給与100,000円を現金で支給した場合

借方貸方摘要
専従者給与100,000円現金100,000円専従者給与

一人親方で経費にできないもの

企業は新年会・忘年会の費用や慶弔見舞金など従業員の生活安定に資する費用を、福利厚生費として経費計上できます。

一人親方の場合、上記のような扱いは認められていません。福利厚生費は、あくまでも従業員のための支出なので、社員がいない一人親方では認められないのが基本です。家族を従業員として雇っている場合も、専従者の扱いとなるため福利厚生費を計上できません。

ただし、一人親方でも一定の条件を満たせば、福利厚生費の計上が認められる余地はあります。たとえば、将来的に事業を拡大して新たに社員を雇い入れるときです。

福利厚生費を計上するためには、社会通念上妥当な金額で、かつ全従業員が平等に利用できる必要があります。特定の役員や従業員のみ対象の支出はNGです。健康診断の費用を福利厚生費にしたい場合は、全員に対して実施しなくてはいけません。

異常な高額だと税務調査で怪しまれる場合があります。極端な高額ではなく一般的な金額のみ計上するようにしてください。

一人親方が経費に入れられる項目は多い

地代家賃・旅費交通費・材料費・水道光熱費・通信費のように、一人親方が経費にできる費用は少なくありません。もれなく経費を計上し、所得額を抑えるのが節税につなげるポイントです。

事業用とプライベートにまたがって拠出する項目の場合、家事按分の処理が必要なことにも注意が必要です。自宅兼事務所で働いている方は、時間や使用日数などを基準に按分割合を定めましょう。

従業員がいない一人親方の場合、福利厚生費という概念がありません。取引先との懇親会や健康診断の費用は経費算入不可です。

よくある質問

一人親方が経費にできるのはどんなもの?

一人親方が経費にできる主な項目は「地代家賃」「旅費交通費」「材料費」「水道光熱費」「通信費」「車両費」「接待費」「交通費」「専従者給与」です。詳しくはこちらをご覧ください。

一人親方が経費にできないのはどんなもの?

慰安旅行や新年会等、福利厚生に関する費用は経費算入不可です。詳しくはこちらをご覧ください。


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