• 更新日 : 2024年9月27日

12月決算のメリットは?おすすめの事業者、決算月の決め方を解説

12月決算のメリットは海外企業と会計年度が合致することです。海外売上比率が多い企業や在外子会社との連結決算が必要な時に適しています。

12月を決算月にするとよい別のケースは、確定申告の期間が1月〜12月までと決まっている個人事業主の法人成りです。

この記事では12月決算の利点や適した事業者、決算月の決算月の決め方について詳しく紹介します。

12月決算がおすすめな事業者とそのメリット

決算月とは1事業年度の最終月を表し、貸借対照表損益計算書を算定する対象期間の基礎となるものです。決算期を決める上で特定の月にするべき法的な規制はなく、企業の一存で決められます。一度決めた決算月を変更するのも自由です。

12月決算が好ましい事業者の最たる例は個人事業主の法人成りです。また海外企業やビール業界など特定の企業は慣習で1月〜12月を事業年度に設定するケースが多数あります。

決算月は取引先や競合他社と合わせたほうが税務手続きの手間や業績の比較を考えると都合がよいでしょう。12月決算をおすすめする事業者の特徴やメリットは、以下の通りです。

個人事業主が法人成りする場合

個人事業主が法人化する場合に12月決算を選択すれば、今までと会計期間が変わらず、円滑に事業を引き継ぐことが可能です。個人で事業に励む人は前年の1月〜12月を会計年度で区切り、売上や経費を算出して、翌年の2月中旬〜3月中旬に確定申告を行います。

企業と異なり、事業期間の始期と終期を自由に決められず、原則として12月末を区切りに動かなくてはなりません。

法人成りの際に12月決算以外を選択すると、中途半端な期間が発生して確定申告の手間が増えます。例えば3月決算で4月〜翌年の3月を会計期間と定めた場合、個人事業を廃業した翌事業年度の1月~3月に申告が必要です。

面倒な税務手続きを避けたい人は、空白期間なく事業を引き継ぐことができる12月決算がおすすめです。

海外売上比率が高い企業

日本は自動車業界や精密機器のメーカーなど国際的にも競争力が高い企業が珍しくありません。海外売上比率が高い企業は取引先と決算の時期を合わせられる12月決算が適しています。

アメリカや中国をはじめ、海外の企業は現地の慣習や法律で1月〜12月を事業年度に設定するケースが一般的です。

海外に支店や生産拠点を構えるグローバル企業は、12月決算を選択したほうが好ましいといえます。

在外子会社との連結決算がスムーズに運ぶメリットも見逃せません。既に海外売上比率が高い企業の他、グローバル展開を視野に入れる企業は12月決算を選択肢の1つに含めましょう。

ビール製造企業

ビール製造企業は業界の慣習で12月決算が主流だといわれています。ビールは夏場と忘年会の時期に消費が増える商材です。

12月の売上が顕著に伸びたタイミングで区切りを設け、閑散期である年明けから決算にとりかかることが多いためです。

ビールは2023年10月から新たな税率が適用され、消費者が支払う酒税の負担が減りました。物価が上昇して消費財の価格が軒並み高くなる中、反対に安価になるビール飲料の需要は伸びると予測されます。

ビール業界への参画を考える企業は決算期に注意して、競合他社と足並みを揃えるべきか決断しましょう。

決算月の決め方は?

決算月を決める際に考慮すべき事項はいくつもあり、さまざまな事情を踏まえた総合的な判断を下さなくてはいけません。

法人は自由に決算月(日にちも指定可)を決められますが、最適な時期は経営状況や財務状況によって異なります。決算のタイミングを決める際に注意すべきことを紹介します。

支出の多い時期を避ける

法人は決算から2ヶ月以内に法人税住民税消費税などを申告・納付しなくてはいけません。税負担が多すぎてキャッシュ不足に陥らないよう、決算月は支出の多い時期を避けたほうがよいでしょう。

一事業年度が終了した時は、決算日から2ヶ月以内に所轄の税務署に対し、法人税、地方法人税、消費税(課税事業者のみ)の申告・納付が必要です。12月決算の場合は翌年の2月28日までに申告書の提出と支払いを済ませなくてはなりません。

合わせて地方公共団体に県民税と市民税および事業税を申告・納付する必要があります。利益の額に左右されるとはいえ、各種税金の支払いは企業にとって大きな負担になるでしょう。仕入れがかさむ時期を避け、潤沢なキャッシュを確保できる月を決算期にする必要があります。

支払う余力がないために法人税や住民税などの納付を後回しにするのは避けてください。提出期限を過ぎても申告しない場合、または期限後に申告した場合、無申告加算税や延滞税、重加算税が課されます。

さらに滞納を続けると会社の資産が差し押さえされる可能性もあります。

売上が多い月を年度初めに設定する

原則、売上が多い月(繁忙期)は決算月と離したほうがよいでしょう。利益の変動幅が大きい時期でもあり、決算時期になっても具体的な売上を把握しきれず節税対策を施しにくいためです。

最終的な売上が予想を上回れば納税額が増え、準備していた納税資金では足りなくなるかもしれません。仮に予測が外れても時間的なゆとりがあれば、利用可能な節税対策を調べて適用できます。

想定より売上が下回ったケースでも、決算時期と遠ければ、業績の回復を目指した施策を実行に移すことが可能です。決算で算出した売上は決算書類に公表する必要があるため、赤字化は避けたいところです。

予期せぬ利益の増加・減少で苦しまないためには、できるだけ売上が多い時期と決算期を離すことが有効です。数ヶ月間空けばよいと甘く考えずに、繁忙期と一番遠い時期に設定しましょう。

売上が多い時期は繁忙期に他ならず、さまざまな部門が忙しくなり、決算にかける時間がとりにくい側面もあります。

納税義務免除期間を最大化する

消費税の免税措置を最大限に活用するために、設立年月日と決算日はできる限り離したほうが賢明です。設立時の資本金額が1,000万円未満の法人は設立から2期目までは消費税が免税になります(インボイス登録している場合を除く)。

個人事業主や法人の場合、基準期間における課税売上高が1,000万円以下の期間は消費税を支払う必要がありません。基準期間は個人事業主が前々年、法人は前々事業年度です。

新たに開設した法人は基準期間における売上は存在しないため、原則設立から2年間は消費税が免税となります。

例えば1月4日を設立日、12月末を決算日にすれば、消費税の免税期間を最大限利用できます。7月1日を設立日とした場合、一期目が半年しかありません。2期目は売上の基準を満たせば1年間消費税を免除できますが、最初の期は最大でも6ヶ月間しか適用できません。

12月決算に限った話ではなく、決算月をいつに設定したとしても、消費税の免税を考えると設立日と決算日は離したほうがよいでしょう。

なお、適格請求書発行事業者は、基準期間の課税売上高の金額にかかわらず、納税義務の免除は適用されません。

決算を担当する人材の業務量に配慮する

決算を依頼する外部の税理士や公認会計士、企業内の経理担当者に過度な負担が生じない時期を選ぶことも重要です。繁忙期を避けるのはもちろんですが、3月決算は多くの企業が選択しているため、税金の専門家はさまざまな依頼を受けて多忙を極めると想定されます。

決算期の直前になって顧問税理士を探しても、リソース不足を理由に依頼を断られるかもしれません。

年初から3月にかけては、企業や個人事業主の申告・納税に関する問い合わせで税務署は混みあいます。公的機関主催の税務相談会などに従事する税理士や公認会計士もいるため、12月決算や3月決算の場合、顧問税理士が見つからない事態が起こり得ます。

企業の経理担当者にとって決算は多大な業務量を強いられる大変な作業です。繁忙期と決算の時期が重なると経理部署は多忙を極め、申告書の提出期限に間に合わなくなる場合があります。

疲れやプレッシャーでミスが頻発する可能性も考慮し、忙しい時に決算月を設定するのはおすすめできません。

法人の決算が多いのは3月・9月・12月

国税庁が公表した「決算期月別法人数」のデータによると、2022年度における決算月ごとの企業数(申告法人数)は以下の通りです。

決算月法人数割合
4月202,3797.10%
5月239,2698.39%
6月281,8489.88%
7月220,7457.73%
8月253,1338.87%
9月316,88911.11%
10月147,3415.16%
11月113,2573.97%
12月304,87810.69%
1月106,8303.75%
2月191,9496.73%
3月518,96018.62%

引用:令和4年度 2 直接税|国税庁

内訳をみると3月決算が最も多く、全体の2,897,478社のうち、占める割合は約18%です。続いて9月決算(316,889社)を採用する企業が多いという結果です。

3月決算の割合が高い理由は国や地方公共団体の会計と整合を図るためだといわれています。公的機関の会計制度は一律4月1日起算、翌年の3月31日締めです。

国や地方公共団体と頻繁に取引する企業は3月決算のほうが会計のルールや法改正に対応しやすく、円滑な業務の進行に効果的です。

9月決算が多い理由は繁忙期を避け、人事異動で慌ただしくなる可能性が低い時期に決算期を設定しているといわれます。多大な負担が生じる決算月を比較的落ち着いた時期にするのは一般的に広く行われていることです。

12月決算を採用する企業が比較的多いのは、海外企業と合わせるためだといわれています。

決算や決算期の決め方について詳しく知りたい人は次の記事を参考にしてください。

参考:国税庁 決算期別の普通法人数

決算月を変更する方法

決算月は回数の制限もなく、所定の手続きをすることで何回でも変えられます。

決算を変更する基本的な手順は次の通りです。

  1. 株主総会の決議
  2. 株主総会の議事録の作成
  3. 異動届出書の作成・提出
  4. 関係先への通知

株式会社が定款で定めた事業年度を変更する際には、株主総会の特別決議が必要です。決議がなされたらその議事録を添付し、異動届出書に添付して、遅滞なく所轄の税務署や県税事務所、市区町村に提出します。

決算月を変更した旨を取引先や提携金融機関へ連絡することも忘れてはいけません。なお法務局への登記事項の変更の届出は不要です。

一度決めた決算月を変える場合、1年に満たない事業年度が発生する点に注意が必要です。3月決算を12月決算に変更した場合、4月〜9月を1事業年度とカウントします。納税期間が変更になるため、変更後の初年度はイレギュラーな対応を迫られると認識しましょう。

12月決算は個人事業主の法人成りや海外売上比率が高い企業におすすめ

12月決算のメリットを享受しやすいのは個人事業主の法人成りや海外売上比率が高い企業です。

自社が上記に当てはまらない場合でも、適切な決算日の設定は、事業を営む上で極めて重要です。資金繰りが厳しい時期や繁忙期は避け、ゆとりをもって決算書類の作成時間を確保できる月を見つけましょう。


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