• 更新日 : 2023年5月19日

ROEとROAとは?違いや目安、分析方法の解説

ROEとROAとは?違いや目安、分析方法の解説

財務指標の中で、似ているものにROEとROAがあります。どちらも投資家が注目する指標で、企業分析に役立ちます。しかし、計算方法や分析の方法は異なるため、両者の概要と違いを理解しておくといいでしょう。この記事では、ROEとROAの概要や目安と計算式、改善方法・分析方法を解説します。両者の違いもわかりやすく紹介しているため、ぜひ企業分析に役立ててください。

ROEとは?

ROEとは「Return On Equity」の略で、「自己資本利益率」と訳されます。自己資本に対してどれだけの利益を上げているかを示すもので、効率よく利益を生み出せているかを測る財務指標です。

自己資本とは返済不要の資本のことで、具体的には出資されたお金や蓄積された利益などが含まれます。自己資本は純資産とも呼ばれ、総資産から総負債を引くことによって算出が可能です。

投資家が投資を行うには、その会社が出資に対してどれだけの利益を上げられるかを重視します。そのため、ROEは投資家にとって特に注目すべき指標といえるでしょう。

ROEでわかること

ROEが高ければ高いほど、自己資本を効率よく利益につなげられていることがわかります。投資家は効率よく利益を生み出す会社に投資をしたいと考えています。ROEが高ければ「投資するに値する会社だ」と評価され、投資を集めやすくなるでしょう。限られた自己資本を使って効率よく利益を上げられることは、投資家以外からの会社の評価にもつながります。

ROEの計算式

当期純利益が自己資本の何%にあたるかを示すのがROEです。

ROEは次の計算式で算出できます。

ROE(%)=当期純利益÷純資産(自己資本)×100

ROEの分析方法

ROEの分析方法を、具体例を使って見ていきましょう。以下のA社・B社それぞれのROEを計算します。

【例】

  • A社:当期純利益1000万円、純資産1億円
  • B社:当期純利益1500万円、純資産1億円
  • A社:1000万円÷1億円×100=10%
  • B社:1500万円÷1億円×100=15%

両社とも純資産は同じ1億円ですが、当期純利益の金額が異なります。この場合は、当期純利益の金額が多いB社の方がROEは高くなり、より効率的に利益を生み出しているといえるでしょう。

このように、当期純利益の金額ではなく割合で比較します。当期純利益の金額が多ければROEが高くなるという訳ではありません。

ROEの平均・目安

ROEが8~10%以上であれば優良企業と判断されることが一般的です。

ただし、ROEは業種によって異なるため、業種ごとの平均値も確認しておきましょう。2022年の経済産業省の調査によると、以下のような数値が出ています。

ROE(自己資本当期利益率)(2021年度)

業種自己資本当期利益率
全体9.7%
卸売業13.1%
鉱業、採石業、砂利採取業12.8%
情報通信業12.6%
製造業9.8%
サービス業9.1%
個人教授所 8.7%
物品賃貸業7.8 %
小売業7.5%
学術研究、専門・技術サービス業6.4%
クレジットカード業、割賦金融業6.4%
飲食サービス業5.1%
電気・ガス業1.9%
生活関連サービス業、娯楽業-0.7%

参考:2022年経済産業省企業活動基本調査速報(2021年度実績)

ROEの改善方法

ROEを改善するには、計算式で用いる2つの数値を変える必要があります。以下の2つの方法があります。

  • 当期純利益を増やす
  • 自己資本(純資産)を減らす

当期純利益を増やすには、収益性を上げることが必要です。売上を増やすことを思い浮かべる方が多いかもしれませんが、コストを削減することも方法の一つです。

また、自己資本(純資産)を減らすことで計算式の分母が減るため、ROEの向上が期待できます。不要な資産や在庫を処分することで、純資産を圧縮できるでしょう。

ROAとは?

ROAとは「Return On Assets」の略で、「総資産利益率」と訳されます。会社の持つすべての資産に対して、どれくらいの割合の利益を生み出せているかを示します。ROEと同様に、効率的に利益を生み出せているかどうかを測るもので、投資家のほかに取引先や金融機関も注目する財務指標です。

総資産とは現金・預金や売掛金、固定資産など、会社が持つすべての資産のことです。自己資本のほか、借入金など返済が必要なものも含んでいます。この総資産が分母になる点が、ROEとの違いです。

ROAでわかること

ROAもやはり、高いほど効率よく利益を生み出せているといえます。限りある会社の資産をうまく使っている場合は数値が高くなるため、経営の状況を読み取るのにも役立つでしょう。そのため、取引先や金融機関も重視する指標です。

ROAの計算式

当期純利益が総資産の何%にあたるかを示すのがROAです。

ROAは次の計算式で算出できます。

ROA(%)=当期純利益÷総資産×100

ROAの分析方法

ROAもROEと同様に、A社・B社の例を計算してみましょう。

  • A社:当期純利益1000万円、総資産2億円
  • B社:当期純利益1500万円、総資産5億円
  • A社:1000万円÷2億円×100=5%
  • B社:1500万円÷5億円×100=3%

A社に比べてB社の方が当期純利益も総資産も多いですが、ROAはA社の方が高くなっています。A社の方が総資産は少ないですが、効率的に利益につなげられていることがわかります。

ROAの平均・目安

ROAの一般的な目安は5%とされています。

しかし、多くの資産が必要な業種もあれば、少ない資産で事業を回せる業種もあります。総資産は業種によって大きく異なるため、2022年の経済産業省の調査から算出した、業種ごとのROAの数値を確認してみてください。

ROA(総資産当期利益率)(2021年度)

業種総資産当期利益率
全体4.1%
鉱業、採石業、砂利採取業8.8%
情報通信業6.4%
卸売業5.1%
製造業5.0%
サービス業3.5%
小売業3.3%
学術研究、専門・技術サービス業2.8%
個人教授所2.4%
飲食サービス業2.0%
物品賃貸業1.2%
クレジットカード業、割賦金融業0.78%
電気・ガス業0.44%
生活関連サービス業、娯楽業-0.2%

参考:2022年経済産業省企業活動基本調査速報(2021年度実績)

ROAの改善方法

ROAを改善するには、やはり計算に用いる数値を変える2つの方法があります。

  • 当期純利益を増やす
  • 総資産を減らす

当期純利益を増やすためには、ROEと同様に売上の増加やコストの削減を図る必要があります。

総資産を減らす対象は、他にもいくつかあります。総資産に含まれるのは以下のものです。

  • 在庫
  • 固定資産
  • 借入金
  • 投資
  • 売掛金

在庫や固定資産を減らすことで、総資産を圧縮できる可能性はあります。また、借入金を返済することや、投資の解約や売掛金の回収によって入ったお金を別のことに回すこともできるでしょう。

ROEとROAの違い

ROEもROAも利益の割合を示す数値ですが、計算式の分母が異なります。

ROEは自己資本、つまり出資されたお金に対して利益がどれくらい出ているかを示します。出資されたお金に対するリターンです。そのため、多くのリターンを得たい投資家が特に注目する指標です。ROEの高い会社に投資を決めたり、投資する業界を絞ったりといった活用ができます。

ROAは総資産、つまり会社が持つすべての資産に対して利益がどれくらい出ているかを示します。会社の持っているものすべてに対するリターンです。会社の持つ資産は業種によって大きく異なります。例えば、製造業の場合は高額の機械装置や設備を持っていることが多いでしょう。一方で、IT関連企業やサービス業は大規模な固定資産が不要な場合もあり、資産の額は比較的少ない傾向にあります。

このことから、ROAは他業種間で比較するには不向きです。一方で、保有している資産の実情を反映しているため、経営状況を比較するには有効な指標です。そのため、ROAは同業他社との比較や、同じ会社の過去の数値との比較に利用するとよいでしょう。

ROEとROAを企業分析に役立てよう

ROEとROAは似ていますが、分母となる数値が異なるため、読み取れることも異なります。ROEは投資に対する利益の割合、ROAは会社の保有する総資産に対する利益の割合を表します。それぞれをうまく活用することで、より正確な企業分析ができるでしょう。ROEとROAの違いを理解して、ぜひ役立ててみてください。

よくある質問

ROEとは?

自己資本(純資産)に対する利益の割合を示す指標です。詳しくはこちらをご覧ください。

ROAとは?

総資産に対する利益の割合を示す指標です。詳しくはこちらをご覧ください。


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