- 更新日 : 2021年6月1日
ROA(総資産利益率・総資本利益率)とは何の指標?目安や計算方法、ROEとの違いも

会社が作成した貸借対照表、損益計算書などの決算書は、経営分析で活用できます。経営分析の代表的な指標が、ROAやROEです。このうち、ROAは総資産利益率や総資本利益率といわれ、資産がどれだけ利益につながったかを表します。
この記事では、ROAに焦点をあて、ROAの概要やROEとの違い、計算方法などを解説していきます。
目次
ROA(総資産利益率または総資本利益率)とは?
ROAとは、会社の事業に対して投資された資産について、どれだけ効率よく収益を得ているかを示す指標のことです。読み方は、リターン・オン・アセットです。
日本語では、総資産利益率、または総資本利益率といいます。総資産とは、貸借対照表の左側(借方)に表示される流動資産、固定資産、繰延資産、のすべての資産の合計です。総資本は、貸借対照表の右側(貸方)に表示される負債の部と純資産の部を合計したものになります。総資本と総資産の額は常に一致する関係にあるため、総資産利益率と総資本利益率は同義です。
総資産利益率の計算に関して、どんな利益を使うか(売上総利益、営業利益、経常利益、税引前当期純利益、当期純利益)で考え方が異なりますが、一般的には当期純利益を使うことが多いです。理由は、会社の取引は税金などの経費を引いた利益を得ることが目的であるためです。事業の効率性や収益性を考える必要があることから、当期純利益がよく使われます。
当期純利益を使う方法のほかには、支払利息と税引前当期純利益を合算した額を使う方法もあります。それを借入金利と比べることで、借入金利よりも利益を獲得できているか、財務レバレッジの有効性を分析することが可能です。会社の多くは借入を資金繰りの目的で行っており、必ずしも借入金が利益に貢献しているとは限りません。財務レバレッジの評価は、借入金が有効活用されているかという点で重要な指標となるでしょう。
ROA(総資産利益率)からわかること
ROAからわかることは、資産がどれだけ利益に貢献しているか、どれだけ効率良く使われているかです。
資産は、営業活動において生じる資産、設備投資などによって生じる固定資産、投資活動などによって生じる資産、繰延資産などに分けられます。企業の資産の多くは、営業活動のためや、事業継続の設備投資のために利用されているはずです。
ROAは、事業のために投下された資産がうまく活用されているのか、事業活動につながっているのかを測るのに重要な指標です。ROAの比率次第では、経営者は事業投資のあり方自体を考え直す必要があります。
ROE(自己資本利益率)との違い
ROAとともに経営分析でよく使われる指標に、ROEがあります。ROEは、自己資本利益率のことで、リターン・オン・エクイティと読みます。ROAとROEは利益と何かを比べる意味では同じです。ただし、比べる対象が異なります。
ROAは、総資産(総資本)全体を利益と比較する指標です。対して、ROEは、総資本のうち自己資本に絞って利益と比較します。
自己資本とは、他人から融資してもらったものでなく、出資者から募った額など自己が所有する資本を表します。貸借対照表上は、資本金、資本準備金、資本剰余金、利益準備金、利益剰余金の株主資本に評価・換算差額を加減した額です。自己資本と利益を比較することで、自己資本により生み出された利益がどれくらいかを測ります。
ROA(総資産利益率)の求め方
当期純利益を使ってROAを求める場合は、貸借対照表の総資産額(資本の部の合計額)、損益計算書で最終的に導きだされる当期純利益の額を使います。当期純利益を使った計算でわかるのは、企業の純粋な利益に対する資産の貢献度です。
損益計算書には、当期純利益のほかに、さまざまな利益の額が表示されます。純粋な営業活動における利益を表す「営業利益」、営業利益に経常的に発生する営業外損益を加えた「経常利益」、経常利益に突発的に発生した損益などを加えた「税引前当期純利益」です。
それぞれの利益は、当期純利益の額の部分に、それぞれの値を代入することで計算できます。さまざまな利益の角度から、資産の活用具合を分析することが可能です。
ROA(総資産利益率)の目安・平均
ROAの目安や平均値は一般的には10%ほどで大変優良、5%ほどで良い、1~2%ほどで普通と判断されます。
しかし、ROAの目安や平均値は、社会情勢や経済状況によっても変わってくるため、そのときそのときで変化することにも注意が必要です。
日本の上場企業においては、2018年のROAの平均は4%程度に回復してきていますが、リーマン・ショックのあった2008年には0.7%と、1%を割り込みました。
数々のグローバル企業を生み出してきたアメリカの上場企業のROAの平均は2018年時点では6%を超えているため、国内企業はあまりROAが高くないことがわかります。
ROAの平均値はあくまで目安として、そのときの経済や社会の状況と合わせ、他業種の同程度の企業と比べてどうか比較していくことが重要です。
ROA(総資産利益率)を改善する方法
ROAは、利益(一般的には当期純利益の額)と総資産の額をもって計算すると説明しました。単純に解釈すると、分子である利益の額を増やすか、分母である総資産の額を減らすか、いずれかのアプローチを行えばROAの割合を高めることができます。
利益の額を増やす
突発的に発生するような特別損失を避けるのは難しいので、ROAを改善するためには経常利益を改善することを考えます。経常利益を改善するとは、具体的に以下を改善することです。
- 営業利益を上げる
- 経常利益を上げる
具体的な方法としては、売上を伸ばして営業利益を上げる、変動費の中から無駄な費用を削って営業利益を上げるなどが考えられます。いずれも、売上を伸ばす努力、コストにシビアになる努力と、会社の経営努力が必要です。
総資産の額を減らす
利益の額を増やしてROAを改善する方法は、社会情勢や経済状況も関係してくるため、企業の努力だけではどうしようもないこともあります。ROAの改善を考えるなら、もうひとつの方法、総資産の額を減らすことを中心に考えるのが効果的でしょう。総資産の額を減らすにはさまざまな方法があります。例えば、以下のような方法です。
- 不要な在庫を整理または処分する
- 回収が難しい売掛金などの債権を整理して貸倒損失にする
- 遊休資産など不要になった土地や建物を処分する
- 土地や建物を売却しオフィスをレンタルする
- 中小企業なら特例を活用して固定資産を一括で費用処理する
- 費用処理できる繰延資産は資産計上ではなく全額費用処理する
以上のように、総資産の額はさまざまな方法で減らすことが可能です。負債に計上されている借入金を早期返済して、間接的に総資産を減らす方法もあります。
ROAは改善を図ることによって、投資家にとって投資価値のある企業になるよう価値を高めることができるほか、企業の財務状況の整理にも役立ちます。いずれの対策を採用するにしても、会社の経営にとって無理のない方法を選択することが大切です。
ROA(総資産利益率)を経営に活かそう
ROAは、会社の総資産に対し、どのくらいの利益が生み出されたか分析するために使われる指標です。資産がどれくらい利益に貢献しているかを測ります。ROAの目安は、社会情勢や業界によって変動しますが、0%に近いなど極端に低い場合は改善の余地があります。ROAを活用して企業経営に役立てましょう。

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よくある質問
ROA(総資産利益率または総資本利益率)とは?
会社の事業に対して投資された資産について、どれだけ効率よく収益を得ているかを示す指標のことです。詳しくはこちらをご覧ください。
ROA(総資産利益率)の求め方は?
当期純利益の額÷総資産額(総資本額)×100=ROA(%)となります。詳しくはこちらをご覧ください。
ROA(総資産利益率)の目安・平均は?
平均値はあくまで目安として、経済や社会の状況、他業種の同程度の企業と比較していくことが重要です。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。