- 更新日 : 2023年8月24日
法人決算とは?手順や自分ひとりでやる場合の注意点を解説

この記事では、主に「法人決算」とは何か、その手順や自分ひとりで行う場合の注意点について解説します。法人決算は、会社や団体の財務状況を把握することを目的とした重要な作業であり、正確な決算書類を作成することが求められます。法人決算の流れや必要書類、期限など、よくある疑問点をお伝えしていますので、法人決算について理解を深めたい方は参考にしてみてください。
法人や企業の経理担当者、経営者の方などには必須の内容となります。常日頃から必要な作業もあるため、なるべく早くから理解しておきましょう。
目次
法人決算とは
法人決算とは、法人(会社や団体)が毎年行う財務状況の確認作業であり、主にその結果をまとめた決算書類を作成することを指します。法人決算は、会社法や法人税法などの法律や規制に基づいて行うことが必須です。
法人決算の主な目的は、会社や団体の財務状況を正確に把握することです。決算書類には、貸借対照表、損益計算書、その他には、株主資本等変動計算書、個別注記表などが含まれています。
これらの書類を作成することで、会社の資産、負債、純資産、売上高、費用、利益などの情報を客観的に把握することができます。
また、法人決算によって、会社の経営者や株主、投資家などが会社の業績や財務状況を評価し、適切な経営戦略や投資判断を行うための情報として使用することもできます。さらに、法人決算は、税務申告などの手続きに必要な書類を作成する際にも必要となるため、さまざまな意味で重要となる書類なのです。
なお、法人決算は会計士や税理士などの専門家によって行われることが一般的ですが、経理担当者や事業主などが自ら決算作業を行う場合もあります。
法人決算の目的
法人決算の目的について、わかりやすく説明します。
まず、法人決算の目的は主に下記の3つとなります。
- 税金を正しく申告するため
- 株主に対して業績を報告するため
- 業績を分析して改善へ導くため
それぞれについてどのような役割を果たしているのか確認してみましょう。
目的1.税金を正しく申告するため
法人決算は、税務申告などの手続きに必要な書類を作成するために使用されます。法人決算によって、課税対象となる所得や税金の基礎となる事実を正確に把握し、誤りのない正しい申告書を作成することが可能です。
目的2.株主に対して業績を報告するため
法人決算を行うことで、会社の業績や財務状況を評価することが可能になります。決算書類を作成することで、適切な経営戦略や投資判断を行うための情報を提供することができるようになるということです。株主や投資家にとっては、会社の業績や財務状況が重要な情報となるため、法人決算は極めて大切な作業となります。
目的3.業績を分析して改善へ導くため
法人決算では、貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書などの財務諸表を作成します。これらの諸表を通じて、会社の資産、負債、純資産、売上高、費用、利益、現金の流れなどの情報を把握することができます。これによって、会社の財務状況を正確に把握することができます。
法人決算の手順
法人決算の手順・流れを確認していきましょう。
上記の項目について順番に解説します。日常的に行うべき作業や毎月行うべき作業もあるため、しっかりと把握しておきましょう。
日々の取引の記帳
法人が取引を行う際には、常日頃から取引するたびにその内容を正確に記録する必要があります。具体的には、収入や支出、購入した商品やサービス、顧客とのやりとりなどを帳簿に記録します。これにより、会計処理が正確かつ迅速に行えるようになります。
帳票整理
取引の記帳が終わったら、帳票を整理しておく必要があります。これにより、決算書類や税務申告書などに必要な情報を把握しやすくなります。具体的には、仕訳帳や伝票などを整理して、会計処理に必要な情報がすぐに見つかるようにすることが重要です。
資産・負債の実査
決算書類を作成するにあたって、資産・負債の実査が必要です。実査を行うことで、会社の資産や負債を正確に把握することができます。具体的には、財務諸表や口座残高、債務の状況などを調べ、資産・負債の評価を行います。
試算表作成
試算表は、決算書類の作成に必要な重要な文書の一つです。試算表は、会社の収入や支出、資産や負債などを整理した表であり、決算書類の作成に必要な情報を提供します。もう少しわかりやすく言うと、「記帳が正確にできているかを把握するための表」とも言えます。毎月、一定期間で作成する必要があります。
決算整理仕訳
決算整理仕訳とは、会計期末において、各勘定科目の残高を決算日時点の正しい金額に調整するために行う仕訳のことを指します。これは、決算書類の作成に必要な会計情報を正確に反映するために行われます。正しい損益計算書や貸借対照表を作成するための最終修正とも言えます。
税金の計算(法人税申告書の作成)
法人は、法人税申告書を作成・提出し、税務署に対して所得税や法人税などの税金を納める必要があります。法人税申告書には、法人の収入や費用、所得税や法人税などの税金の情報が含まれます。知識がないと難しい作業なので、税理士や会計事務所に作成を委託するのが一般的となっています。
決算書類の作成
法人の決算書類は、その年度の経営状態を示す重要な書類です。決算書類には、貸借対照表や損益計算書、キャッシュフロー計算書などが含まれます。これらの文書は、法人の財務状況を分析するために利用されます。
取締役会・株主総会での承認
法人の決算書類は、取締役会や株主総会で承認される必要があります。承認が得られた場合、決算書類は「確定した決算」として決議に基づいて法人税の申告書が提出できます。
税務署への提出・納税
法人税申告書が完成したら、税務署に(原則として申告期限までに)提出・納税する必要があります。提出した申告書に基づいて所得税や法人税などの税金を納める必要があるため、必ず忘れないようにしましょう。
書類の保存
法人の決算書類や税務申告書などの重要な書類は、法定保存期間を遵守して保存する必要があります。保存期間は、法人税法や会社法などによって規定されています。保存された書類は、将来的な監査や納税トラブルの解決などに役立ちます。
法人決算で必要な主な書類
法人決算で必要となる主な書類は、下記の通りです。
それぞれの書類について、どのようなものなのかを解説します。作成に誤りや虚偽の内容が含まれると罰則が科されるケースもあるため、正確な作成・用意が求められます。
総勘定元帳
会社のすべての取引に関する勘定科目や金額、日付などを記録した台帳です。総勘定元帳は、会計年度中に行われたすべての取引に関する情報を勘定科目ごとにまとめた集計表として、決算書類の作成に必要な情報を把握するために使用されます。
請求書など
会社が受け取った請求書などを整理・保管するための帳簿です。領収書綴には、各領収書の番号や金額、取引先の情報などが記録されます。領収書は、取引の証拠となるため、決算書類の作成時に必要となります。
決算報告書
会社の決算状況をまとめた報告書で、主に損益計算書や貸借対照表、株主資本等変動計算書などが含まれます。決算報告書は、取締役会や株主総会に提出され、承認されることで正式に決算が終了します。
法人税申告書
法人が年度ごとに提出する税務署に対する申告書です。会社の利益に対する法人税の金額など、税務署に必要な情報を提供し、納税することになります。法人税申告書は法人の事業内容や規模に応じて異なる種類があるため、事前にチェックしておきましょう。
法人事業概況説明書
法人税申告書と一緒に提出する書類で、会社の業務内容や財務状況などの詳細な情報を提供するものです。
消費税申告書
会社が支払った消費税の情報を提供する申告書で、消費税の申告と納税が必要となります。消費税申告書は、月次申告と年次申告、課税期間を短縮して1ヶ月ごとまたは3ヶ月ごとに課税期間を設定して申告する方法の3種類があります。月次申告は、毎月末日までに前月分の消費税を申告・納付するもので、年次申告は、1年間の累計額を申告するものです。
税務代理権限証書(税理士に依頼する場合のみ)
税理士や公認会計士などの税務代理人が会社を代表して税務申告を行う際に必要な証明書です。また、公認会計士でも税理士登録をしていなければ権限はないため注意しましょう。
地方税申告書
市町村などの地方自治体が課税する法人事業税や法人住民税などの申告書です。主に「住民税申告書」「固定資産税申告書」があり、他にも自動車税や法人市民税などさまざまな申告書があります。
勘定科目明細書類
会計帳簿に記録された各勘定科目の明細を詳細に記録した帳簿類です。具体的には、売掛金明細帳、買掛金明細帳、固定資産台帳、仕入帳、売上帳などがあります。決算書類の作成や税務申告時に必要となる情報を提供するため、正確かつ詳細に記録することが求められます。
法人決算を自分でやる場合の注意点
法人決算を自分でやる場合には、下記の項目に注意しましょう。
- 法人税法、租税特別措置法、会社法、会計基準については特に正確に理解する
- 財務諸表の作成に必要な知識やスキルを身につけておく
- 時間的に余裕を持って作業を進める必要がある
- 監査や税務署の調査に備えて必ず書類の保存を行う
共通しているのは「正確な知識」です。法人決算で行う作業や必要書類については複雑なものが多く、浅い知識のまま自己流で行なってしまうと後々のトラブルへ発展してしまいます。
事前に知識やスキルを身につけ、困難だと判断した場合はすぐに税理士や会計事務所などに依頼することが望ましいです。
税務調査の際にも自分で対応することが求められるため、可能であれば税理士などを関与させることが推奨されます。また、本来は税理士などによって得られるはずだった有益な節税情報を逃してしまうケースもあるため、総合的な費用対効果で判断する必要があります。
法人決算の期限
法人決算の期限は、原則として決算日の2ヶ月以内となります。
そのため、実際の期限は各法人の事業年度によって異なります。
例えば
- 決算日が3月31日の場合→5月31日が期限
- 決算日が8月31日の場合→10月31日が期限
上記のようなイメージになります。
該当日が土日祝日などで閉庁日に当たる場合には、基本的に翌日へと繰り越されます。
ただし、上場企業や金融機関など一部の企業には、証券取引所の規定により早期に提出が求められる場合があります。また、税務署による税務調査などによって期限が延長される場合もあります。
期限は法律によって決められているため、遅れが生じると罰則が科されることも。十分に余裕を持って行うよう注意しましょう。
決算書作成は税理士に頼むべき?
決算書作成を税理士に頼むべきかどうかは悩みどころです。そこで、法人決算を税理士に頼んだ場合のメリットとデメリットをそれぞれ解説します。
法人決算を税理士に頼んだ場合のメリット
法人決算を税理士に頼む最大のメリットは決算処理にかかる手間が省ける点です。決算処理には正確性が求められ、煩雑な計算もあることから膨大な時間がかかります。
もし誤った決算書を提出すれば、税務署から修正を求められるでしょう。修正だけならまだしも、税務調査が発生する可能性もあるのです。
税の専門家である税理士に任せることで、決算処理のミスや本来の業務への影響を軽減できます。また、税理士によっては節税や経営計画へのアドバイスも期待できるでしょう。
法人決算を税理士に頼んだ場合のデメリット
法人決算を税理士に頼むデメリットはコストが発生することです。法人決算を依頼する場合、税理士に対して顧問料を支払う必要があります。
税理士事務所ごとに料金は異なりますが、一般的に15万円から25万円というコストは発生するでしょう。また、税理士との相性も重要です。税理士は法人決算の代行業者ではありません。税の専門家として、経営の良きパートナーとなる存在です。
しかし「適切なアドバイスがない」「こちらの意見を聞いてくれない」といった不満を感じる場合もあるでしょう。相性によっては経営にも影響しかねません。
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法人決算は自分ひとりでも行うことも可能!
ここまで法人決算の概要やおおまかな流れ、提出書類、おすすめの会計ソフトなどを解説しました。法人決算の仕組みは確かに煩雑であり、簡単ではありません。
自分ひとりで決算を行う場合に重要なのが、毎月の経理処理です。これを正確に実施すれば決して自分ひとりではできないものではありません。会計ソフトを上手く利用し、自分ひとりでも法人決算ができるようチャレンジしてみてください。

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よくある質問
法人決算の手順とは?
おおまかには下記の手順で行われます。 日々の取引の記帳 帳票整理 資産・負債の実査 試算表作成 決算整理仕訳 税金の計算 決算書類の作成 取締役会・株主総会での承認 法人税申告書作成 税務署への提出・納税 書類の保存 詳しくはこちらをご覧ください。
法人決算に期限はある?
法人決算の期限は原則として決算日の2ヶ月以内です。 決算日は事業年度の終了日を指しています。 詳しくはこちらをご覧ください。
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