• 作成日 : 2021年5月20日

買掛債務とは?未払金と買掛金の違いや具体的な仕訳もわかりやすく解説

買掛債務とは?未払金と買掛金の違いや具体的な仕訳もわかりやすく解説

買掛債務とは何をさすのでしょうか?
この記事では、未払金買掛金といった買掛債務について解説し、企業が抱える支払の問題に対し、「買入債務回転期間」というキーワードから考えてみます。

買掛債務とは

買掛債務とは、企業が商品やサービスの提供を受けることで生じた代金のうち、まだ支払っていない代金を支払う義務のことで、企業の負債のひとつです。会計帳簿上は、主として次の勘定科目が該当します。

多くの企業では、仕入取引や購買などにおいては、その場で現金を支払わずに、後で振込や手形で決済する「掛け取引」が基本となります。
この掛け取引は後日での決済(支払)となるため、取引者間において相互の信用がなければ成立しません。したがって、掛け取引は「信用取引」とも呼ばれます。
後日、決済(支払)が実行されるまで、その企業は仕入先から資金を借りていることになるため、「債務」となります。

損益計算書貸借対照表に、これら買入債務がどのように表示されるかを見てみましょう。

損益計算書と貸借対照表に買入債務がどのように表示されるか

このように、原則として買掛債務は貸借対照表の流動負債に表示されます。
一方、買掛金や支払手形の相手勘定である仕入は、損益計算書の売上原価の要素となります。

買掛債務の具体的な例

買掛金とは、原則として取引先との通常の取引である仕入によって生じた買掛債務です。
そして、支払手形とは、一定の期日に代金を支払うことが記載された証券ですが、これも仕入取引ではよく利用される買掛債務のひとつです。

買掛金を、英語では「accounts payable」といいます。accountsは「勘定」のことであるので、買掛金をpayable(金銭等を支払うべき)としているのはわが国と同様の考え方です。

また、未払金は光熱費、支払手数料などの販管費で利用されたり、固定資産の取得などの単発的な取引によって生じたりする債務ではあるものの、厳密には買掛債務ではないとされます。
未払金には1年以上先に支払う予定のもの(長期未払金)も含まれ、「通常の継続取引」以外のものとして固定負債に計上される場合もあります。
そして、買掛債務と相対する考え方が売掛債権であり、通常は未収入金を売掛債権に含めないのと同様とされます。

買掛債務の具体的な例

企業の生命線とも言える「資金繰り」から見ると、買掛債務と売掛債権のバランスが非常重要となります。
売掛債権を増やすためには、その元となる買掛債務が必要で、買掛債務を決済するためには、その元となる現預金を売掛債権から得なくてはなりません。

買掛債務の仕訳方法

買掛債務や売掛債権の仕訳は、通常の取引でもっともよく見られます。
ここでは、消費税については税抜処理で考えて見ましょう。

例えば、仕入先から材料の仕入れを110,000円(税込)し、50,000円は支払手形を振出し、残りは掛けとした場合の仕訳は次のとおりとなります。

借方
貸方
材料仕入
100,000円
支払手形
50,000円
仮払消費税
10,000円
買掛金
60,000円

また、一旦は買掛金とし、後日支払手形を振り出すケースもあります。
材料110,000円(税込)を掛仕入したが、後日支払手形を振り出した場合は、次の仕訳となります。
最終的な決済までの仕訳を記すと次のようになります。

【買掛金として計上】

借方
貸方
材料仕入
100,000円
買掛金
110,000円
仮払消費税
10,000円

【支払手形振り出し】

借方
貸方
買掛金
110,000円
支払手形
110,000円

【支払手形決済】

借方
貸方
支払手形
110,000円
現預金
110,000円

買掛債務回転期間

資金繰りを管理する上でその目安となる数値に「買掛(買入)債務回転期間」があります。
買掛債務回転期間とは、売上に必要とする商品・材料を仕入れてから代金を決済するまでの平均期間のことで、事業の安全性の指標としてよく利用されています。
通常、月数で表しますが、日数が使いやすい場合は、12ヶ月の代わりに365日を使用します。その企業によって使いやすい指標とします。

買掛債務回転期間(月)= 買掛債務 ÷ 仕入高 × 12 (ヶ月)

又は

買掛債務回転期間(日)= 買掛債務 ÷ 仕入高 × 365 (日)

仕入の信用取引の流れ

上図を見るとわかるように、買掛債務回転期間は長いほうが資金繰りにはプラスとなります。
しかし、買掛債務回転期間が長いと、貸借対照表上の債務が多くなることを意味します。
やや古いですが、財務省の資料によりますと、2018年度の買掛(買入)債務回転期間の平均値は1.37月となります。

<2018年度の買掛(買入)債務回転期間> 単位:月

資本金の額
1,000万円未満
1,000万超1億円
1億超10億円
10億円超
製造業
0.76
1.43
1.78
1.7
非製造業
0.62
1.22
1.55
1.37

これは、わが国の企業が平均1.37月、約40日で買掛債務を支払っていることになります。
総じて製造業のほうが、非製造業より買掛債務回転期間は大きくなり、資本金が大きくなるにつれて買掛債務回転期間が大きくなる傾向にあることがわかります。
買掛債務回転期間は、損益計算書と貸借対照表があれば計算できるので自社の計算をしてみましょう。

【参考】法人企業統計調査からみる日本企業の特徴(2018年度)|財務省

買掛債務は売掛債権と相対するもの

買掛債務は売掛債権とのバランスで成り立つものです。
例えば、買掛債務>>>売掛債権となった場合には、そもそも個々の取引で赤字が出ていないかを点検すべきでしょう。また、逆に買掛債務<<<売掛債権となった場合には、売掛金の回収状況の点検をすべきでしょう。
このように買掛債務の管理は、個々の決済管理だけにとらわれるのではなく、売掛債権とのバランスに留意しましょう。

よくある質問

買掛債務とは?

買掛金や支払手形など、仕入取引により発生した、まだ支払っていない代金を支払う義務のこと。詳しくはこちらをご覧ください。

買掛債務回転期間とは?

売上に必要とする商品・材料を仕入れてから代金を決済するまでの平均期間のこと。詳しくはこちらをご覧ください。

買掛債務の管理で留意点は?

買掛債務と売掛債権とのバランスを考えること。詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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