• 更新日 : 2024年5月9日

繰越欠損金とは?期限や税効果会計の適用方法・控除限度額、仕訳を解説

繰越欠損金とは?期限や税効果会計の適用方法・控除限度額

繰越欠損金とは、過去に発生した赤字を将来の利益に対して控除できる制度です。これにより、税負担が軽減され、企業のキャッシュフロー改善に寄与します。ただし、利用できる期間には制限があり、計算が複雑になる場合もあります。今回は、青色申告の承認を受けている法人も、これから青色申告の承認を受ける法人も、最低限確認しておくべき基礎知識を法改正まで含めて解説します。

繰越欠損金とは

欠損金とは、法人税を計算する際の所得計算において、所得が赤字である場合の金額のことです。

法人税法において青色申告の承認を受けている場合には、一定期間、その欠損金を将来に繰り越して、将来の一定期間の間に発生した所得(黒字)と相殺することが認められています。この法人税法の規定に基づき、繰り越している過去の欠損金のことを繰越欠損金といいます。

繰越欠損金の計上による税効果会計

欠損金を将来に繰り越すメリットは、将来の所得(黒字)と欠損金を相殺し、将来の納めるべき法人税を少なくできる点です。以下の表は条件を非常に簡略化して、繰越欠損金を利用した際の法人税への影響額を示しています。

【繰越欠損金の利用がない場合(表の左側)】
繰越欠損金の利用がない場合は、2年目の黒字150に対して1年目の赤字が考慮されず、所得150に対して課税されることになります。このため、実効税率30%と仮定した場合、45の法人税を納めなくてはなりません。

【繰越欠損金を利用する場合(表の右側)】
繰越欠損金を利用する場合は、初年度に発生した50の赤字を翌年度以降に繰り越すことができます。このため、2年目の黒字150から、1年目の赤字50を差し引いた所得100に対して課税されることになります。実効税率を30%と仮定すると、30の法人税を納めることになります。

つまり、繰越欠損金を利用することで、上記の例のように、繰り越した将来年度の法人税を抑えることができるのです。

繰越欠損金の税効果会計適用には回収可能性の判断が必要

繰越欠損金には将来年度の法人税負担が軽減できるというメリットがあります。しかし翌年度以降も赤字が続いては、繰越欠損金を黒字と相殺して法人税を抑えることはできません。

繰越欠損金によるメリットを十分に得るためには、将来年度において法人税支払いの対象を黒字とすることが必要です。繰越欠損金には繰越可能期限が定められていて、期限切れとなると期待通りのメリットは得られなくなります。

税効果会計では、法人税に対するメリット・デメリットを正しく評価し、計上することが求められます。繰越欠損金を適用する場合は期限切れを起こさずに黒字と相殺できる可能性、回収可能性の判断が必要です。

繰越欠損金の適用条件や期限、控除限度額

繰越欠損金制度の利用には青色申告申請が必須

繰越欠損金制度は、事業年度単位(基本的には1年)で課税を行うことで生じる税負担の変動を平準化するための制度ですが、青色申告の法人だけに認められた特典でもあります。
繰越欠損金を利用するためには、青色申告の承認申請書を税務署へ申請する必要があります。青色申告は、基本的に申請すればどの法人も承認されるので、事業を開始したら忘れずに承認の申請を行いましょう。

繰越欠損金のその他利用要件

繰越欠損金を利用するためには、青色申告であることに加え、その他の要件を充たすことが必要となります。以下は一般的な要件になります(令和2年10月時点)。

  1. 10年以内に開始した事業年度の欠損金であること
  2. 青色申告書を提出した事業年度に生じた欠損金額であること
  3. 欠損金額が発生した年度後も連続して確定申告書を提出していること
  4. 帳簿書類等を適切に保存していること

なお、繰越欠損金は最も古い事業年度のものから順次損金に算入していきます。

繰越欠損金の繰越期間は10年

繰越欠損金は平成28年度の税制改正において期限が1年延長され、平成30年4月1日以後に開始する事業年度からは繰越期間が10年間とされています。

繰越欠損金の控除限度額はいくら?

欠損金について、資本金1億円以下の中小企業等には全額の繰り越しが認められていますが、大企業には上限が設けられています。平成30年4月1日以降を開始事業年度とする大企業の場合、繰越控除前の所得金額の50%が控除限度額です。それより前の控除限度額は以下の通りになっています。

平成29年4月1日~平成30年3月31日開始事業年度・・・55%
平成28年4月1日~平成29年3月31日開始事業年度・・・60%
平成27年4月1日~平成28年3月31日開始事業年度・・・65%
平成24年4月1日~平成27年3月31日開始事業年度・・・80%

繰越欠損金を抱える会社を買収・合併した場合

繰越欠損金の制度の話をすると、「繰越欠損金がある会社を買い取って、合併することで法人税負担を減らせるの?」という質問をよく受けます。

法人税法が定める要件を充たす場合には買収・合併した繰越欠損金を利用できることもありますが、繰越欠損金目的のM&A等により不当に税負担を減らすことないように、法人税法に厳しい規定が設けられているので注意しましょう。

M&Aに関する要件は、例えば以下のような項目があります。とても内容が複雑ですので、もし繰越欠損金の利用を検討している場合には、事前に会計事務所に相談しましょう。

  • 合併される法人の従業員のうち、80%以上が合併する法人の業務に従事すること
  • 合併される法人の主たる事業が、合併する法人でも引き続き継続されること
  • 合併される法人の事業と合併する法人の事業が、相互に関連していること
  • 合併される事業と合併する事業を比較した場合、売上、従業員数、資本金額などの規模が5倍を超えないこと、又は合併後の会社の役員に合併される会社の役員が就任すること
  • 合併される法人の株主で、合併後の法人の株式の全部を継続保有する合併される法人株式数の合計が、合併される法人の発行済株式等の総数の80%以上であること

繰越欠損金の制度は法改正に注意

繰越欠損金の制度は、頻繁に税法の改正が行われている部分であるため、非常に複雑な制度となっています。特に、欠損金がいつの年度に発生したものかによって、繰越せる期間が異なってきますので注意しておきましょう。

繰越欠損金の仕訳

繰越欠損金は、貸借対照表の借方に「繰延税金資産」として計上されます。繰延税金資産は会社の所得と法人税との間に差がある場合に用いられる、損金一時差異の代表的な勘定です。

記載欄は黒字との相殺により翌年度に解消見込みの場合は「流動資産」、それ以外の場合は「投資その他の資産」です。貸方、損益計算書には「法人税等調整額」が記載されます。

繰越欠損金を計上する仕訳

それでは実際に繰越欠損金計上のために必要な会計処理を見ていきましょう。

欠損金100万円について、上限を全額、実効税率30%で繰越欠損金とする場合です。

繰越欠損金=100万円×30%=30万円

仕訳は以下になります。

借方貸方
繰延税金資産300,000法人税等調整額300,000

繰越欠損金のメリットデメリットまとめ

繰越欠損金を使って控除を受ける場合のメリットとデメリットを以下にまとめます。

メリット

  1. 税負担の軽減: 繰越欠損金を利用することで、赤字のあった年の損失を後の年の利益から控除することができ、その期間の税金の負担が軽減されます。
  2. キャッシュフローの改善: 税金の支払いが減ることで、その分の資金が事業運営に回せるため、企業のキャッシュフローが改善されます。
  3. 経営の安定化: 赤字の影響を緩和し、安定した経営を行うための支援となります。これにより、不況時でも事業を継続しやすくなります。

デメリット

  1. 利用できる期間の制限: 繰越欠損金には利用できる期間が限られており(一般的に10年間)、期間が過ぎると損失を控除できなくなるため、期限内に利益を出せなければ損失の恩恵を受けられません。
  2. 計算の複雑化: 繰越欠損金の計算には、適用条件が伴うため、税務申告が複雑になり、管理が煩雑になることがあります。これにより、専門的な知識が必要になることもあります。
  3. 将来の利益への依存: 繰越欠損金を活用するためには将来利益が必要ですが、その利益が確保できない場合、繰越欠損金のメリットを享受できません。

これらのメリットとデメリットを考慮し、企業は繰越欠損金の活用を計画的に行うことが求められます。特に、未来の事業展望や利益計画をよく理解しておくことが重要です。

繰越欠損金制度を正しく活用して法人税負担を減らそう

繰越欠損金は、赤字を翌年度以降に繰り越すことで将来の法人税負担を軽減できる制度です。利用することで企業は事業年度間の法人税負担を平準化し、存続の安定化が図れます。繰越欠損金は特に不測の状況によって多額の赤字となったような場合に、非常に重要な制度となります。まずは青色申告の承認申請を行い、適切に帳簿を付けていく習慣を付けましょう。

よくある質問

繰越欠損金とは?

法人税法の規定に基づき、繰り越している過去の欠損金のことです。詳しくはこちらをご覧ください。

欠損金を将来に繰り越すメリットは?

将来の所得(黒字)と欠損金を相殺し、将来の納めるべき法人税を少なくできることです。詳しくはこちらをご覧ください。

繰越欠損金の適用条件は?

青色申告の承認申請書を税務署へ申請すること、10年以内に開始した事業年度の欠損金であることなどです。詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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