- 更新日 : 2024年11月5日
新収益認識基準で前受金が契約負債に?適用後の仕訳・勘定科目も解説!
前受金は商品やサービスを提供する前に受け取る代金です。新収益認識基準が適用されてからは、前受金が契約負債として扱われるようになりましたが、どのような変化が起こったのでしょうか。
本記事では前受金が契約負債として適用されてからの仕訳や勘定科目について詳しくご紹介します。
目次
新収益認識基準で前受金が契約負債に?
2021年4月1日から始まった新収益認識基準の適用により、前受金は契約負債として分類されるようになりました。企業は顧客から受け取った前受金を収益として認識するのではなく、契約に基づく義務を果たすまで負債として計上します。
企業の財務報告における透明性と一貫性を向上させることを目的として新収益認識基準が適用されました。
前受金とは
前受金とは企業が将来的に売上高となるべきお金を顧客から事前に受領したときに使用する負債科目です。具体的には商品やサービスを提供する前に顧客から受け取った代金を指します。たとえば受注生産や予約販売などで、商品を納品する前に代金の一部または全部を受け取った場合は前受金として処理します。
前受金は商品やサービスの提供が完了するまでは会計処理上は負債として計上しなければなりません。企業が顧客に対して商品やサービスを提供する義務を負っていることを示すため、前受金は貸借対照表の負債の部に計上されます。前受金を適切に管理することによって、企業が財務状況を正確に把握できるだけではなく、ステークホルダーに対しても透明性を高められます。
前受金の概要や処理方法については以下の記事でさらに詳しくご紹介しています。
契約負債とは
契約負債とは企業が顧客から受け取った金銭に対して、まだ提供していない商品やサービスに対する履行義務を表す負債のことです。新収益認識基準が適用されたことにより、契約負債は財務諸表において重要な役割を果たすようになりました。
具体的には前受金やポイントの付与、商品券の販売などが新たに契約負債として認定されました。企業が顧客から前払いで受け取った代金は、商品やサービスを提供するまで契約負債として計上されます。契約負債は企業が履行義務を果たしているのかを反映するため、財務報告の透明性と一貫性を向上させるために重要です。また、契約負債の管理は企業の財務状況を正確に把握できるとともに、将来の収益予測にも役立ちます。
新収益認識基準で前受金が契約負債に変わった理由
2021年4月1日から新収益認識基準で前受金が契約負債に変わった理由は、企業の財務状況を第三者に分かりやすくさせるためという目的が背景にあります。従来の基準では、前受金は収益として認識されることがありましたが、企業の実際の履行義務が正確に反映されませんでした。新基準では、前受金を契約負債として計上することによって、企業が顧客に対してまだ提供していない商品やサービスに対する義務を明確に示します。
新収益認識基準の適用により、財務諸表が企業の経済活動をより正確に反映するため、投資家やその他のステークホルダーにとって信頼性の高い情報を提供できます。さらに前受金の契約負債への変更は、国際的な会計基準との整合性を図るためにも重要な施策といえます。
新収益認識基準適用後の前受金の仕訳・勘定科目は?
新収益認識基準の適用により、前受金は契約負債として扱われるようになりました。これにより、企業は顧客から受け取った前受金を収益として認識するのではなく、契約に基づく義務を果たすまで負債として計上しなければならなくなりました。新収益認識基準が適用された後の前受金の仕訳と勘定科目の例を見ていきましょう。
前受金の仕訳例
新収益認識基準が適用された後の前受金の仕訳例として、企業が1万円の商品を販売し、顧客が前受金として1万円を支払った場合、以下のように処理します。
取引内容 | 借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|---|
顧客から前受金を受け取ったとき | 現金 | 10,000 | 契約負債(前受金) | 10,000 |
商品やサービスを提供したとき | 契約負債(前受金) | 10,000 | 売上高 | 10,000 |
新収益認識基準の適用により、企業が顧客から前受金を受け取ったときは貸方に契約負債として計上されます。商品やサービスの提供が完了した後には、貸方に売上高として計上されます。
前受金の受け取り以外で契約負債が計上されるケースは?
契約負債は企業が顧客から金銭を受け取ったものの、まだ商品やサービスを提供していない場合に計上される負債です。前受金の受け取り以外にも、以下のようなケースで契約負債が計上することがあります。
ポイント制度
小売業などで顧客にポイントを付与する場合、ポイントは将来的に商品やサービスと引き換えられるため、企業は「ポイントと引き換えに商品を提供する義務」を負います。この義務が果たされるまで、ポイント相当額を契約負債として計上します。
商品券の販売
企業が商品券やギフトカードを販売する際にも、引き換えに商品を提供する義務が生じます。商品券やギフトカードが使用されるまで、受領した代金は契約負債として計上します。
サブスクリプション型サービス
定期的なサービス提供を行うサブスクリプション型のビジネスモデルでは、顧客から前払いで受け取った料金に対して、サービス提供の義務が生じます。前受金などと同様に、サービスが提供されるまでの間、受け取った料金は契約負債として計上します。
新収益認識基準の適用後の前受金は契約負債です
新収益認識基準の適用により前受金は契約負債として分類されるようになりました。企業は顧客から受け取った前受金を収益として認識するのではなく、契約に基づく義務を果たすまで負債として計上しなければなりません。契約負債は前受金の受け取り以外にも、ポイント制度や商品券の販売、サブスクリプション型サービスなど、企業が顧客に対して負う履行義務がある場合にも計上されることを知っておきましょう。
新収益認識基準の適用後の仕訳や勘定科目についても理解を深めることにより、適切な財務管理にもつながります。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
会計の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
貸倒実績率とは?計算方法をわかりやすく解説!
会計処理、特に期末における決算整理仕訳では、貸倒引当金の計上の要否を検討します。貸倒引当金とは、取引先が倒産等で支払い不能となった状態などに備えて、事前に損失額を予測して計上しておく引当金です。貸倒引当金の計算方法には、取引先の財政状態等に…
詳しくみる小切手は2026年度末までに廃止予定!理由や電子記録債権(でんさい)などの代替手段を解説
2026年度末(2027年3月末)に、紙の小切手が完全に廃止されます。小切手は日本企業の取引で長年使われてきましたが、効率性の問題や不渡り・紛失などのリスクから電子決済への移行が求められています。この変化は、企業だけでなく、小切手を使ってい…
詳しくみる掛取引とは?仕訳の具体例と健全な割合を解説
掛取引(かけとりひき)とは、簡単にいうと後払いのことです。 個人に置き換えると、買い物でクレジットカード払いをするのとほぼ同じです。後日口座から引き落とされるものの、財布の現金を減らさずに商品を手に入れることができます。 会社同士で大量に取…
詳しくみる振替とは?振込との違いやメリット、導入の流れを紹介
口座振替は取引先や顧客の口座から自動的に利用料金などを引き落とすサービスであり、事業者と取引先・顧客双方にメリットが多い方法です。 本記事では、口座振替を導入するメリット・デメリットを、事業者と取引先・顧客別に解説します。口座振替の導入が…
詳しくみる入金遅延の対応方法とは?リスク管理の重要性なども合わせて解説
入金遅延は、会社の経営にまで影響を与えることもあり、決して楽観視してもよいものではありません。そのため、入金遅延が発生すると、適切かつ迅速な対応が求められます。今回は、入金遅延の対応方法について解説いたしますので、入金遅延の対応方法を知って…
詳しくみる突合(読み方:とつごう)とは?簡単に解説!
「突合(とつごう)」とは、異なるデータや情報の整合性を確認する作業のことです。 突合は、経理業務や点検作業、レセプト処理などビジネスの多岐にわたる分野で利用されています。突合を行うと、誤りや不整合を早期に発見し、情報の正確性が確保できます。…
詳しくみる