- 更新日 : 2025年2月3日
債権回収代行とは?外部業者のサービスを利用するメリットや注意点を解説
事業をしていると、商品やサービスを先に提供し、代金を後日まとめて受け取る「掛け」で取引をするケースが多くあります。掛けで取引した場合、販売側は代金を請求できる権利を持てるということです。この権利を「債権」といいます。
今回は、「債権回収代行」についてご紹介します。どのようなケースで使うのか、および回収代行を委託できる業者の種類を確認していきましょう。
目次
債権回収代行とは?
債権回収代行とは、債権を持つ事業者に代わり、回収業務を行う業者のことです。主に以下の2通りの回収方法があります。
- 販売した事業者に代わり、債権の回収業務を行う
- 債権者から債権を買い取る(買取後は、債権回収業者が新たな債権者となる)
どちらの場合も、債権回収代行業者に手数料を支払う必要があります。また、債権回収代行業者に依頼しても、債権の全額回収が必ずできるとは保証されません。これらの点を理解して利用しましょう。
債権回収代行は外部の業者に委託すべき?
債権は自社でも回収することができます。しかし、以下のように回収が難しい場合や問題が発生しそうな場合は、債権回収代行を行う業者の利用を考えましょう。
自社で債権回収できない場合
何度も代金の回収を試みているが相手方が支払ってくれない、など自社での債権回収が難しい場合、債権回収代行の利用を検討しましょう。債権回収代行であれば、債権回収のノウハウを持っています。また、業務が多忙などの理由で債権回収に時間や手間をかけられない、という際も債権回収代行に委託するとよいでしょう。
なお、取引先に支払い能力がない場合や取引先に支払う意思がない場合もあり、自社で債権回収できないケースもあります。これらの状況の対処法に迷った際も、債権回収代行に委託することを検討してください。
自社に債権回収のノウハウがない場合
自社で債権回収を行うと費用がかかりません。その点は利点といえますが、自社で行う場合、相手方の状況の調査、内容証明郵便の郵送、それでも回収できなかった時は訴訟に移るなど、さまざまな手間や時間がかかります。これらの手続きは自社に債権回収のノウハウがないとスムーズに行えません。
債権回収の経験がない事業者、慣れていない事業者は無駄な手間を省くためにも、債権回収代行に委託した方がよいといえるでしょう。
債務者とのトラブルを回避したい場合
取引先が債務者となっている場合、無理に債権回収を行うとトラブルになり、今後の取引に影響する恐れがあります。
また、債権回収が原因で、悪質な対応をされる可能性があるかもしれません。このようなトラブルを回避するためにも債権回収代行の利用を考えた方がよいでしょう。
債権回収代行を委託できる業者の種類は?
債権回収を委託できる業者には「債権回収会社」「ファクタリング会社」「弁護士」があります。また、先に述べましたが、「代理で債権回収を行う」「債権の買取」の2パターンがあります。
債権回収会社
債権回収会社は、その名の通り、債権回収を専門に行う会社です。本来、債権は債務者が債権者に支払うものを指すため、債権者が債務者から回収します。しかし、債務者が誠実な対応をしないときや、債務者と連絡をとることが難しくなったときには、債権回収会社に債権の回収を依頼することができます。債権回収会社は、法を遵守した上で、的確かつ迅速な債権回収を目指します。
債権回収会社の認定基準
債権回収会社は、法務大臣による許可を受けた株式会社です。債権回収会社が許可を受けるためには、以下のような条件を満たしていることが求められます。
- 資本金5億円以上の株式会社であること
- 以前に債権回収会社として許可を取り消されたことがある場合は、取り消された日から5年以上が経過していること
- 罰金刑を科せられた法人の場合は、刑執行終了時等から5年が経過していること
- 取締役の一人以上が弁護士であること
- 暴力団員や暴力団員でなくなった日から5年を経過していない者がその事業活動を支配していないこと
- 取締役や執行役などの会社に対し支配力を有する立場にある者が、破産者、禁固刑以上の刑執行終了等から5年を経過していない者、債権回収業に関して刑法等の法律により罰金刑を科せられ刑執行終了等から5年を経過していない者、暴力団員のいずれにも該当しないこと
- 会社の商号に債権回収という文字が含められていること
法務大臣による許可を受けずに債権回収業務に携わった場合、債権管理回収業に関する特別措置法に違反したとして3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、あるいはその両方を科せられます。
参照:債権管理回収業に関する特別措置法、第三条、第三十三条|e-Gov 法令検索
債権回収会社の仕組み
金融機関や保証会社などの債権者は、債権回収が難しいと判断したときに債権回収会社に債権の回収を依頼します。債権回収会社が利益を得る仕組みには、以下の2つがあります。
1. 債権回収を委託するケース
債権回収会社は、債権者から債権回収の委託を受けたときに手数料を受け取ることがあります。この手数料が債権回収会社の利益です。債権回収会社は債務者から債権を回収する窓口となり、債権者が債権を回収できるようにサポートします。
なお、債権者が債権回収会社に債権回収を委託する場合には、債権者としての権利は移行せず、金融機関や保証会社などの債権者が保有します。
2. 債権を譲渡するケース
債権者が債権回収会社に債権自体を譲渡するケースもあります。この場合、債権回収会社は債権者から債権を割り引いて買い取り、債務者から債権を回収することで、差額を利益にすることが可能です。
債権回収会社が債権を買い取った時点で、債権回収会社自身が債権者になります。そのため、債務者は元々の債権者ではなく債権回収会社と交渉し、債権を返済しなくてはいけません。
債権回収会社に適用される規制
債権回収会社が回収できる債権は、特定金銭債権に該当するもののみです。特定金銭債権には、以下のものなどがあります。
- 金融機関等が有する貸付債権
- リース・クレジット債権
- 資産の流動化に関する金銭債権
- ファクタリング業者が有する金銭債権
- 倒産手続き中の者が有する金銭債権
- 保証契約に基づく債権
- その他政令で定める債権
債権回収会社は「債権管理回収業に関する特別措置法」、いわゆる「サービサー法」に則って業務を行わなくてはいけません。
ファクタリング会社
ファクタリング会社は「ファクタリング」を行う会社です。ファクタリングとは、事業者が持つ債権を買い取り、資金化するというものです。一般的には、債権回収期日前に行われます。債権回収とはいいますが、債権を持つ事業者の資金調達目的という側面が強いサービスといえるでしょう。
なお、ファクタリング会社に依頼した場合、債権の金額の10%台程度を手数料として支払う必要があります。さらに、手続きに関する費用も債権者負担です。回収できる資金と支払う手数料のバランスを考えた上で利用しましょう。
弁護士
従来、債権回収は弁護士の業務でした。特定債権はもちろん、個人の債権や売掛債権など、債権の種類を問わず回収依頼を請け負うことが可能です。
弁護士は法律を熟知しているため、債権回収だけでなく、それに付随した法務全般についてのアドバイスをもらえます。例えば、個人的な貸し借りトラブルを解消したいとき、金融機関以外の企業が取引先から債権を回収できないときなどは、弁護士に依頼するのが通常でしょう。
ただし、弁護士は債権回収の手続きを実施できますが、すべての弁護士が債権回収を専門としているわけではありません。弁護士が扱っている業務内容を確認してから依頼するようにしましょう。
債権回収代行サービスを利用するメリットは?
債権回収代行サービスを利用するメリットは以下の3つです。
- 法律を遵守しながら債権回収ができる
- 債権回収の時間や手間を削減できる
- 精神的負担も軽減できる
それぞれ詳しく見ていきましょう。
法律を遵守しながら債権回収ができる
自社で債権回収を行う場合、法に触れないようできることできないことを一つずつ確認する必要があります。
しかし、省庁に認可された債権回収代行業者や弁護士に依頼する場合、法律も理解した上で行います。法律を守りながら債権回収を行うという意味では、債権回収代行に依頼した方がよいといえるでしょう。法律違反等で債務者側から訴えられるリスクも軽減できます。
債権回収の時間や手間を削減できる
通常業務に加えて債権回収を行う場合、時間や手間を大幅に取られます。通常業務に集中したいというのであれば、債権回収代行に任せた方が確実に債権回収に関する業務を行ってくれます。
精神的負担も軽減できる
取引先からの債権回収を行う場合、やり方によっては関係性にひびが入る可能性もあります。特にこれからも取引を続けたいと考えるのであれば、大きなダメージになるかもしれません。
債権回収代行に依頼すれば、必要な手続きは行ってくれるため、精神的な負担を軽減できるでしょう。
債権回収代行サービスの流れは?
債権回収代行サービスを利用し、債権を回収するまでの流れを確認しておきましょう。
電話やメールで催促する
まずは、電話やメールで未払い金の請求を行います。この請求で支払いが行われたら回収完了です。
内容証明郵便を送付する
電話やメールで連絡しても支払いが行われない場合、内容証明郵便で督促状を送ります。内容証明郵便は、郵便の内容、送付日時、送付元・送付先を日本郵便が証明するサービスです。
内容証明郵便を送ることで、支払期限と支払われなかった場合の法的措置について相手に知らせることができます。
支払督促を申し立てる
内容証明郵便を送っても、連絡や支払いがない場合、法的措置である支払い督促を行います。支払い督促手続きでは、金銭での支払いができなかった場合の代替えの返済方法についても伝達します。
支払い督促受取後、2週間以内に異議申し立て等がない場合、裁判所は債権者の申し立てにより仮執行宣言を行うことが可能です。
裁判所に訴訟を提起する
債務者側が債権の支払いについて争う姿勢を見せた場合、訴訟を提起することもできます。
強制執行を行う
訴訟の判決後、強制執行に移ります。強制執行では財産の差押えなどが行われます。
債権回収代行サービスを利用する際の注意点は?
債権回収代行を利用する前に、注意点も把握しておきましょう。
債権回収できない場合がある
債務者から債権を回収するサービスの場合、必ず債権回収ができるとは限りません。また、手数料などの費用がかかります。
債権回収会社を名乗る詐欺や悪徳業者に注意する
省庁の認可を得ずに債権回収を行う悪徳業者も一部存在します。債権回収は法に基づいて行うサービスです。「手数料が安い」「確実に回収する」などの宣伝に惑わされないように気をつけましょう。
少額な債権でも債権回収代行を委託できる?
少額の債権でも債権回収代行を委託することは可能です。ただし、ごく少額の債権回収の場合、手数料や報酬等の方が高くつく場合もあるため注意してください。
個人の債権でも債権回収代行を委託できる?
商品の代金、マンションの家賃や管理費など、個人の債権の回収に債権回収代行を利用することもできます。ただし、「少額な債権でも債権回収代行を委託できる?」でもお伝えした通り、債権が少額の場合、支払う手数料や報酬の方が高くなる場合があります。費用倒れになる可能性がある点は留意しておきましょう。
債権回収代行を利用する際はメリットだけでなく注意点も要確認!
自社の利益を守るためも、債権をしっかり回収することは重要です。しかし、自社だけで回収が不可能という場合や債権回収業務までは手が回らないという場合は、債権回収代行の利用も検討しましょう。
債権回収代行に依頼すると、煩雑な手続きを行ってくれるため通常業務に影響を及ぼすことはありません。また、債務者とのトラブルを避けることもできます。
ただし、債権回収代行に依頼しても100%回収できるとは限りません。また、手数料などの費用がかかります。メリットだけでなく、注意点も理解した上で利用を検討してください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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