• 作成日 : 2022年7月22日

大規模修繕費は減価償却できる?耐用年数や計算方法も解説

大規模修繕費は減価償却できる?耐用年数や計算方法も解説

マンションなどを大規模修繕で費用を支出した場合、減価償却できる場合があります。減価償却するためには、その費用が建物など固定資産の耐用年数を延ばしたり資産価値を増加させたりする「資本的支出」として計上されなければなりません。

本記事では大規模修繕が減価償却できるかについて説明し、資本的支出と修繕費の違いも紹介します。

マンションなどの大規模修繕費も減価償却はできる

マンションの大規模修繕で高額な費用を支出した場合、会計上の処理は「資本的支出」と「修繕費」のいずれかです。資本的支出となる場合は減価償却の処理を行います。

ここでは、大規模修繕の会計処理について紹介します。

大規模修繕費用の会計処理

マンションなどの大規模修繕を行った場合、会計上は「資本的支出」もしくは「修繕費」のいずれかで計上します。

資本的支出とは、固定資産の価値や耐久性を高める支出のことです。会計上は固定資産として考え、資産として減価償却期間に毎年計上します。

一方、修繕費は建物の損傷部分の原状回復や、定期的な維持管理を図るために支出した費用が該当します。修繕費になる場合は全額をその年の経費に計上します。

大規模修繕費用は資本的支出と修繕費のどちらに仕訳する?

大規模修繕を資本的支出と修繕費のどちらに仕訳するかは、工事の内容によって判断します。

固定資産の使用可能期間を延長、もしくは価値を高めるために行った修理やリフォームに支出した費用であれば資本的支出となり、維持管理や壊れた部分を元の状態に戻すことを目的とした工事であれば修繕費です。

このあとの項目でそれぞれ具体例を紹介しますので、参考にしてください。

資本的支出と修繕費はどう使い分ける?

マンションの大規模修繕で資本的支出と修繕費を使い分けるには、工事の内容に着目します。明確に分けられない場合は、支出した金額や修繕の頻度で判断する基準があります。

資本的支出と修繕費の概要と具体例を見ていきましょう。

資本的支出とは

資本的支出とは、固定資産の耐用年数を延長するか、価値を高めるために行った修理や改良に支出した費用のことです。

資本的支出の基準としては、以下の要素がある場合があげられます。

  • 建物の増築、新たな設備の取付け
  • これまでとは別の用途で建物を改装
  • より性能を向上させる部品への取替え

具体的には、以下のような工事が該当します。

  • 防水加工工事
  • 耐震補強工事
  • 外壁塗装に断熱材を追加
  • オール電化への移行
  • バリアフリー対応への改築
  • リフォームや増改築工事
  • 非常階段などを建物にあとから設置
  • 照明設備など10万円以上の設備の新設
  • 機械などの設備をグレードアップ

修繕費とは

修繕費とは、通常の維持管理、もしくは壊れた部分を元の状態に戻すことを目的とした工事に支出した費用です。原状回復を目的にした工事をした場合が該当します。

具体的には、以下のような工事です。

  • 外壁の塗替え
  • 部分的な防水改修工事
  • 雨漏りの修理
  • 電球や壊れた備品などの交換
  • 壊れた備品などの補修
  • 外壁のヒビや亀裂の修復

明確に分けられない場合の基準

資本的支出か修繕費か明確に分けられない場合、次のような基準で判断します。

明確に分けられない場合の基準

費用が20万円未満の場合、資産の価値が増加する場合でも修繕費となり、20万円以上でも約3年以内の期間を周期として行われる場合には修繕費として経費計上します。

最終的に判断が難しい場合でも、60万円未満、もしくは修繕する資産の前期末所得価格の10%未満の費用である場合は、修繕費として計上しましょう。

大規模修繕費の減価償却はどう計算する?

大規模修繕が資本的支出となる場合、減価償却として毎年経費計上していくことになります。

減価償却費の計算方法には定額法と定率法があり、建物の場合は定額法を用いて計算します。定額法による減価償却費の計算式は以下の通りです。

物件の取得価格 × 償却率

 

償却率は建物の耐用年数ごとに決められているため、減価償却費の計算ではまず建物の耐用年数の算出が必要になります。

建物の耐用年数表

建物の耐用年数を構造別に、事務所用と店舗用・住宅用の分について表にしました。

構造
細目
耐用年数
木造・合成樹脂造
事務所用
24年
店舗用・住宅用
22年
木骨モルタル造
事務所用
22年
店舗用・住宅用
20年
鉄骨鉄筋コンクリート造・
鉄筋コンクリート造
事務所用
50年
店舗用・住宅用
47年
れんが造・石造・ブロック造のもの
事務所用
41年
店舗用・住宅用
38年
金属造
事務所用
4ミリを超える
38年
3ミリを超え4ミリ以下
30年
3ミリ以下
22年
店舗用・住宅用
4ミリを超える
34年
3ミリを超え4ミリ以下
27年
3ミリ以下
19年

大規模修繕を資本的支出として資産計上した場合の耐用年数は、原則として資本的支出を行った建物と種類及び耐用年数を同じくする新たな資産を取得したものとして、その耐用年数に応じて償却を行うことになります。

例えば、鉄骨鉄筋コンクリート造の事務所用マンションに大規模修繕して資本的支出となる場合、新たに耐用年数50年の資産を取得したとして、支出した年から50年かけて減価償却していくことになります。

参考:主な減価償却資産の耐用年数表|国税庁
参考:減価償却資産の耐用年数等に関する省令(昭和四十年大蔵省令第十五号)|e-GOV

大規模改修費を減価償却する場合の計算方法

大規模修繕が資本的支出となり減価償却する場合、「支出した費用×償却率」の計算式で減価償却費を計算します。

償却率は国税庁の減価償却資産の償却率表を参考に、耐用年数に応じた数字で計算してください。

例えば、鉄骨鉄筋コンクリート造の事務所用マンションに大規模修繕をして1,000万円を支出した場合、定額法における耐用年数50年の償却率を確認します。償却率は「0.020」となっているため、1,000万円×0.020=20万円が減価償却費となります。

参考:No.2100 減価償却のあらまし|国税庁
参考:減価償却資産の耐用年数等に関する省令(昭和四十年大蔵省令第十五号)|e-GOV

建物を改修工事やリフォームした場合、耐用年数は変わる?

建物の改修工事やリフォームで資本的支出となる場合でも、建物自体の耐用年数は変わりません。

また、資本的支出に該当する場合、原則として資本的支出を行った固定資産と同じ種類、同じ耐用年数の新たな資産を取得したものと考えます。例えば、鉄骨鉄筋コンクリート造の事務所用マンションを取得してから10年目に大規模修繕した場合でも、50年 – 10年 = 40年の耐用年数とはなりません。

大規模修繕は工事内容で減価償却になる場合がある

マンションなどの建物を大規模修繕した場合、工事内容により会計処理が変わります。建物の価値を高めた場合は資本的支出、維持管理や原状回復であれば修繕費です。資本的支出となる場合は一括で経費計上せず、減価償却費として毎年経費に計上します。

どちらか判断に迷う場合は、金額や工事の頻度などで判断しましょう。

よくある質問

マンションなどの大規模修繕でも減価償却はできますか?

資本的支出にあたる場合は減価償却できます。詳しくはこちらをご覧ください。

資本的支出と修繕費とは?

建物の使用可能期間を延長、もしくは価値を高めるために行った修繕は資本的支出、原状回復の工事は修繕費にあたります。詳しくはこちらをご覧ください。


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