• 作成日 : 2024年11月20日

小口現金が合わない時の対応は?仕訳や防止策を解説

社内で小口現金の取り扱いをしている場合、帳簿残高と現物有高(ありだか)の一致を確認しなければなりません。ただし、小口現金の残高をこまめに確認しても、取引数が多くなると残高が一致しないケースはよくあります。

この記事では、小口現金が合わない時の対応策や仕訳の仕方などを解説しつつ、根本的な解決方法をご提案します。

小口現金の残高を合わせる重要性

小口現金の残高確認は、現物に対する不正や誤りを早期に発見・防止するために重要な内部統制の一環です。たとえ少額であったとしても、小口現金の残高確認は非常に重要な意味を持っています。

定期的な残高確認によって、従業員による小口現金の不正使用リスクを軽減できるでしょう。小さな差異を早めに発見することは、大きな問題への早期解決の一歩になるのです。最終的に、日々の残高確認により未精算や漏れに早く気づき、処理することで、月末や期末決算作業を円滑に進めることにも役立ちます。

また、帳簿残高と現物有高を一致させること自体は単純ですが、これにより財務への基礎的な信頼性が高まると言えます。会社の資産である現金の適切な管理は、財務の正確性や透明性の確保にもつながるでしょう。

小口現金が合わない場合の対応方法

頻繁に残高確認をしていても、気づいたら小口現金残高が合わないケースはよく起こります。そのような場合の対応方法をいくつか挙げてみましょう。

金種表に記入して数え直す

金種表(きんしゅひょう)は、現金の残高、出納する金額を紙幣または硬貨の種類別に記入する表です。例えば、硬貨のみの金種表は次のようになります。

金種個数金額(円)
500円
100円
50円
10円
5円
1円
合計

現金の出入りの都度、この金種表を使用することとし、金種別に動きを把握しておくと、受け渡しミスを減らし、正確に現金を管理することができます。残高確認の際にも、金種表を記入しておくと金種別の残高が確認できるため、不一致となった取引の特定に便利です。

ただし、少額の受け渡しに毎回、金種表を起こす時間と手間がかかります。

帳簿にミスがないか確認する

帳簿および証憑の再確認をします。現物を取り扱う業務においては、極力複数名で確認するのが理想です。

小口現金出納帳を手入力で行っている場合、会計ソフトを利用していても入力の精査ができていない場合などには、入力ミス・精査漏れなどの人為ミスなどが考えられます。

仮払いの発生を確認する

現物残高が少ない場合には、仮払いで未記帳がないかを確認します。金種表まで作成したにもかかわらず、証憑待ちのために帳票が追いついていないケースがよくあるからです。

小口現金では、緊急時の対応として一旦「仮払金」として出金することがあります。小口現金における仮払金においても、申請に基づき支払うのが一般的ではあるものの、先に出金をして仮払申請が途中で止まっているようなケースもあります。

この場合、実際の現金出納が終了していても、仮払申請に基づく記帳が未処理となっているため、残高確認により現物が少なくなっています。

違う担当者が数える

内部統制上、現物管理については複数名で確認することが望ましいとされます。現金の勘定においても違う目線で確認すると、結果が異なる場合があるため、別の担当者が小口現金を確認するとよいでしょう。

小口現金が合わない場合の仕訳

小口現金勘定の残高と現金の有高が合わない場合、後日解決する場合や原因が分からず決算を迎える場合があります。これらについての仕訳について例を挙げて解説します。

過不足の発生時

過不足には、「過:現金有高のほうが多い」ケースと「不足:現金有高のほうが少ない」ケースがあります。これらが複数発生していて、結果として多い場合や少ない場合もありますが、「現金過不足」勘定はこれらの仕訳をする場合において、小口現金の相手勘定となります。

なお、過不足の発生時には、「現物の有高」に帳簿を合わせます。

例)記帳ミスによる現金過不足

小口現金の有高が帳簿よりも500円少なかったので、帳簿を小口現金の有高に合わせるように仕訳し、借方に「現金過不足」を計上した。

借 方貸 方摘 要
現金過不足500円小口現金500円小口現金有高不足

後日、現金過不足の原因が経費支出において5,500円とすべきところを、5,000円としていたため(記帳ミス)であることが判明した。

借 方貸 方摘 要
〇〇経費500円現金過不足500円小口現金有高不足解消

この時、経費修正の方法は会社のルールに従います。ここでは差額のみを調整する方法としています。

原因不明のまま決算を迎えた時

小口現金の残高不一致の多くは解消するものですが、決算時まで原因不明であった場合には、過不足となった金額について「雑損失」や「雑収入」として振り替えます。

例)原因不明の現金過不足

決算を迎えたが、小口現金の過不足が判明しないため雑損失に振り替えることにした。

借 方貸 方摘 要
雑損失500円現金過不足500円小口現金有高不足解消

雑損失や雑収入に振り替える場合、多くは過不足計算の最終値となります。原則として決算が確定してしまうと振替仕訳も取り消せないので、極力原因不明となるものがないようにこまめに小口現金の残高照合は実施しましょう。

小口現金が合わずに自腹を切ると違法?

担当者のミスで小口現金が合わない場合、少額だからと担当者が自腹で補填することも考えられます。

小口現金の不足額に責任を感じ、担当者が独自の判断で個人的に補填することについては、特に違法ではありません。個人事業主では小口現金とプライベートの現金の境目が曖昧なケースもあります。

しかし、このような行為には下記に挙げるような問題があり、推奨される行為ではありません。社内ルールにも、担当者における自費での補填はしないように定めておきましょう。

  • 会計の透明性欠如

個人的な補填では実際の現金の動きを正確に反映できないため、「会計の透明性」を損なうリスクがあります。

  • 不正隠蔽のリスク

個人的な補填が横行すると、意図的な横領や不正を隠蔽するために使われるリスクがあります。

  • 責任の不明確化

個人的な補填によって、その後の不一致の原因究明や再発防止策の検討が正しく行われにくくなります。

担当者による補填が発覚すると、内部統制の有効性が問われることとなります。

個人的な補填では、小口現金の管理体制や不足が発生時の対応プロセスが適切とは評価されません。また、会計監査や税務調査においても追及される可能性があります。

「小口現金が合わない!」を防ぐ対策

社内に小口現金がある限り、残高の確認を続けなければならず、時間と手間がかかります。小口現金の残高確認を少しでも軽減する方法を紹介します。

小口現金を廃止する

思い切って、小口現金の制度そのものを廃止する方法です。すべての授受は振込などにより行い、キャッシュレスな業務に変更します。

小口現金を廃止するにあたっては、従業金立替金制度などを整備したり、法人クレジットカードについての社内ルールを整備したりと、小口現金に委ねていた機能を他で代替することになります。小口現金の出納帳を確認して、どのような用途で小口現金が使われているかを分析しましょう。小口現金の取り扱いがなくても、少額支払の体制ができていれば問題はありません。

小銭を多めに用意する

上記と逆の発想であり、あまり推奨されないものの、小口現金における「小銭」を多めに準備することで頻繁な両替を減らし、業務効率が向上するという考え方もあります。

小口現金の残高をこまめに確認する

現行ルールどおりに小口現金制度を継続するための一番の方法が、「こまめな確認」でしょう。営業日の業務の終わりに小口現金残高を照合するだけではなく、小口現金の授受がある都度残高を照合するなどによって、常に残高照合ができている状態にしておきます。

しかし、この方法は担当者の手間と作業時間を増やします。

経理の業務フローを見直す

経理の業務フローの見直しは、残高不一致防止に効果があると言えます。まず、現行の業務フローを作成し、小口現金管理の各段階の作業を明確にします。そして、どの時点で不一致が発生しやすいかを特定します。

業務フローを分析し、「非効率な手順」や「誤りが起きやすいポイント」がどこかが分かれば改善します。新たな業務フローでは、不一致の早期発見、修正が可能となるように「確認や照合」のステップを組み込むようにします。

小口現金管理を含む経費精算の効率化には、マネーフォワード クラウド経費の導入がおすすめ!

近年、小口現金の業務はキャッシュレス化、業務効率化に向けて変わりつつあります。小口現金の業務以外に、従業員立替金制度や法人カードの利用がある場合には比較的、小口現金業務の見直しがしやすい状況であると言えるでしょう。

経費精算システムである「マネーフォワード クラウド経費」は、小口現金の精算に手間がかかっている場合の解決にもよく利用されるシステムです。

従業員立替においては、領収書やレシートをスマホで撮影するだけで、日付・金額・支払先をデータ化するため、手入力によるミスが激減します。また、法人カードだけでなく、交通系ICカードなどの各種サービスとデータ連携できるため、立て替え購入したものについて明細データを自動取得し、対象を選択するだけで経費登録が完了します。

「マネーフォワード クラウド経費」の導入によって、小口現金の残高照合から解放され、次なるステップを目指してはいかがでしょうか。

参考:マネーフォワード クラウド経費

小口現金管理から全体的な資金管理へ!

日本に限ったことではないかもしれませんが、小口現金の管理が重視される背景には、日本の企業文化や伝統的な価値観が関係しているとも考えられます。

現物管理は、金額の多寡にかかわらず厳密な管理体制が問われる業務です。伝統的に「細部への注意と厳密な管理」が重視される我が国の企業文化において、たとえ少額であっても現金は適切に管理することが求められてきました。それは、まず企業内における信頼関係が重要視されるからであり、疑心暗鬼を防ぎ、健全な職場を維持するためには、厳密な管理による裏付けが必要でした。

しかし、今やこの管理をすべて人為的な努力により続けるよりも、システムに委ねる部分を増やしながら、「細部への注意と厳密な管理」ができるように変わってきています。現金の適正な管理と業務の効率化を両立させるためにも、経費システムの導入を検討されてはいかがでしょうか。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。

関連記事

会計の注目テーマ