• 作成日 : 2020年5月14日

不動産業の会計・経理業務

不動産の経理業務は、言葉にすると非常にハードルが高そうに思えます。賃料はまだ良いとしても敷金や礼金、滞納や前納の仕訳のタイミング、さらには消費税が課税されるかどうかの基準など、分からないことが多数あるでしょう。

今回は不動産業の経理業務を担当することになった方へ、押さえておきたい基本的な内容をお伝えいたします。
    

不動産業とは?

不動産業とは、その名の通り不動産にかかる業務を指します。不動産といえば具体的には、土地及び建物、樹木などを指しますが、不動産業では土地や建物に係る権利も含まれることがあります。
不動産業と一口にいってもさまざまな形態がありますが、大きく次の3種に分類可能です。

  • 不動産を開発する(造る)仕事
  • 不動産を販売・賃貸・仲介する仕事
  • 不動産を管理する仕事

この中で、中小企業の業態として多いのは不動産の賃貸、仲介、管理業の3つです。

不動産賃貸業は保有する土地や建物などの不動産を第三者に賃貸し、対価として賃料を得る業態です。自己の保有するアパートやマンションで賃貸業を営んでいる、いわゆる大家さんが最たる例となります。

不動産仲介業は不動産の売買を仲介する業態です。業務範囲は非常に広く、販売活動から不動産の引渡しまで売買における一連の流れに関わります。 

不動産管理業は不動産の所有者から依頼を受け、賃料の回収や各種クレーム対応などを行う業態です。

これらの中で、この記事では中小企業や個人事業主が経営する不動産賃貸業を取り上げて、経理処理について解説します。

不動産賃貸業における売上タイミングとは?

不動産賃貸業における売上タイミングについて、財務諸表を参照しながら解説します。
まずは、貸借対照表を見てみましょう。

不動産賃貸業では、賃貸を目的として保有する不動産を固定資産に計上し、取得のための資金源となった借入金を負債の部に計上するケースがよくあります。また、入居時に預って退去時に返却する敷金等がある場合は、預り敷金として負債の部に計上します。

次に損益計算書を見てみましょう。

不動産賃貸業では、不動産賃貸による賃借料を入居者から受けることで売上となります。さらに、入居者から受け取った更新料や水道光熱費を売上として計上することもあります。

損益計算書の記載事項で特徴的なことは、保有固定資産に係る費用が大きいことでしょう。減価償却費をはじめ、修繕費等のメンテナンス費用、損害保険料や借入金の利息といった項目も目立ちます。

租税公課では、固定資産税の占める割合が非常に高いのも特筆すべきポイントです。

家賃収入については、次の点に注意が必要です。

・消費税について非課税と課税の区別を明確にすること
建物を住宅用として貸した場合、賃貸料には消費税が課税されませんが、建物をオフィスや店舗として貸した場合、賃貸料には消費税が課税されます。

土地だけを貸し、借りた相手がその上にお店を建てた場合は、土地の賃貸料は消費税非課税となります。

他にも共益費や管理費等さまざまな費用がありますが、契約によって居住用の家賃に含まれるものは基本的に非課税です。

・ 売上の計上基準が個人と法人で異なること
個人の場合、売上の計上は賃貸契約書に記載されている「支払日」に行います。
一方、法人の場合は貸付期間に対して売上を計上する形式です。法人の場合は、「発生主義」の考え方で売上を計上するため、前払いで受けた賃料は、前受家賃として処理します。

不動産賃貸業における原価の考え方とは?

売上原価は、販売した商品の仕入れや製造にかかった費用のことを指しますが、一般に不動産業においては仕入れや製造による原価は発生しません。

したがって、ほとんどの費用は「販売費及び一般管理費(販管費)」に含まれるのが特徴です。

販管費は広い意味で原価であり、減価償却費や修繕費が多いことは前述した通りです。そして特に気をつけておきたいのが、この減価償却費と修繕費です。

建物の資産価値が経年劣化により減少した場合、その減少分を経費として計上するというのが減価償却費の基本的な考え方です。なお、減価償却費の算出方法には「定率法」と「定額法」の2つが存在します。

減価償却費を計上できる年数(=法定耐用年数)は、建築方法や使用された素材で大きく変わります。また、建物に付属の設備がある場合や器具・備品などがある場合、建物とは別の法定耐用年数が適用されます。さらに、中古物件を取得した場合も法定耐用年数の計算方法が異なります。

一方修繕費というのは、建物を直した時に発生する費用です。基本的には原状回復のための支出がこれに当たります。例えば部屋の壁紙が汚れたり傷ついたりして、新しいものに貼り替えたという場合は修繕費に計上可能です。

減価償却費や修繕費を正しく計上するためには、固定資産管理が非常に重要です。前述した通り仕入れや製造による原価が発生しないからこそ、現在の建物の状況を詳細に把握し、正しい減価償却によって費用を計上することが肝要です。
また、固定資産管理の重要性は法定耐用年数の関係から、建物の築年数が経過するほど上昇していきますので、その点しっかりと認識しておきましょう。

不動産賃貸業の経理業務における注意点とは?

不動産賃貸業ならではの注意点として挙げられるのは、賃貸料として売上計上するにあたっては、常に「契約」と結びついた処理をするということです。

個々の入居者は賃貸期間がそれぞれ異なるだけではなく、物件ごとに毎月賃料が違う上、テナントの売上高に応じた変動賃料となる場合もあります。フリーレントといって一定期間無料となる契約もあります。また賃貸契約には、自動更新のついているものとそうでないものがあります。

管理すべき賃貸物件の情報を一括管理できるシステムソフトと会計ソフトを連携させる等、物件の管理と会計を安定的に紐づけることで、会計の入力漏れを防ぐことができます。

その他の注意点として、借入金が多い場合には、金利変動による支払利息の増加リスクがあります。建物の取得に要した費用について借入をしている場合は、固定金利にする、返済期間を延ばす等の対策を考えましょう。

さらに、不動産賃貸業は天災だけでなく人災トラブルの影響も受けます。

賃貸物件に空き部屋が目立ち始めると、家賃収入より建物の減価償却費のほうが大きくなることがあります。賃貸物件の市場での価値が低下したため、赤字となる現象です。

この時、建物の価値の減少分だけ、帳簿価額を減らす会計処理を減損会計といいます。

減損会計とは、上場企業などについては義務づけられている会計処理で一定の基準がありますが、中小企業においても評価損を計上するなどして、切り抜けなければならない時があります。

なお、帳簿価額切下げ時に生じる損失は、減損損失として損益計算書の特別損失に計上します。

   

不動産業における経理業務はタイミングの認識が重要

不動産の経理業務において何よりも重要なことは、基本に立ち戻ることです。経理の基本、それは適切なタイミングに正しく仕訳を行うこと。

そのためには日々、漏れなくデータを管理する必要があります。またいざ仕訳を行う際に困らないよう、データを整理しておくことも重要です。

会計ソフトなどもうまく利用して、スムーズに経理業務を進めていきましょう。

※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

監修:岡 和恵 (税理士 / フィナンシャルプランナー AFP)

大学卒業後、2年間の教職を経て専業主婦に。その後、システム会社に転職。
システム開発部門と経理部門を経験する中で税理士資格とフィナンシャルプランナー資格(AFP)を取得。
2019年より税理士事務所を開業し、税務や相続に関するライティング業務も開始。

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