• 更新日 : 2020年9月17日

資金繰りは経営の必須項目

経営にかかわる数字のうち、経営者はどうしても売上高や利益に目が向きますが、資金繰りに目を向けることも重要です。資金繰りがおろそかになると、利益は出ているのに資金が不足して、事業の存続が危ぶまれることもあります。

これから、なぜ利益は出ているのに資金が足りなくなるのか、また、資金不足を防ぐにはどうしたらいいかについてお伝えします。

勘定合って銭足らず

「勘定合って銭足らず」とは古くから伝わる言葉で、利益は出ているのに資金が足りない状態のことをいいます。資金繰りが古くから経営課題の一つであったことがうかがえます。

利益があっても資金が足りない理由とは

売上が順調に伸びて利益も出ているのに、資金が不足して支払に事欠くことはよくあります。どうしてそのようになるのでしょうか。その理由を考えるには、利益と資金の関係について押さえておく必要があります。

売上が100円、売上原価が80円だった場合、利益は20円となります。(ここでは販管費などの経費は考慮しません)。

資金繰り

この取引が掛取引の場合は、取引の時点では資金は動きません。つまり、取引があって帳簿上は利益が計上されても、売掛金が入金されるまでは手元に資金は入ってきません。むしろ、先に買掛金を支払うことが一般的です。

買掛金80円を支払って、売掛金100円が入金されて、手元に20円残ることで、はじめて帳簿上の利益と資金の収支が一致します。

事業を継続的に行っていると、売掛金の入金や買掛金の支払が終わるまで次の取引を待つことは現実的ではありません。そのため、帳簿上の利益と資金の収支は一致しないのが一般的です。このことを念頭に、資金繰りについても目を配らなければ、気がつけば資金が不足していたということになります。

資金不足は倒産につながることも

資金不足になるとどのようなことが起こるのでしょうか。

資金不足になると、手形や小切手が決済できない、つまり不渡りの状態になります。6か月以内に2回不渡りを出すと、銀行取引停止処分が出されます。銀行取引停止処分は信用力の大幅な低下を意味し、事実上の倒産や経営破たんなどと呼ばれています。手形や小切手の取引がなくても、取引先への支払や給与の支払が滞ると信用力はたちまち低下します。

資金繰りを改善するには

売上が順調に伸びて利益も出ているのに資金が不足する原因には、主に「売掛金の入金より買掛金の支払のほうが早い」、「借入金の返済額が多い」の2つがあげられます。これらを解決することで、資金繰りの改善につながります。

売掛金の回収期日と買掛金の支払期日を変える

売掛金の回収期日は早く、買掛金の支払期日は遅くします。取引条件を変えることになるので、取引先の事情で思うようにできないこともあります。さらに、極端な条件変更は信用不安を招くこともあります。しかし、既存の取引先の条件が変えられなくても、新規の取引先の条件から変えていくことはできます。

また、売掛金の回収期日を早くしていても、営業担当者が期日どおりに回収していない場合もあります。営業担当者にも資金繰りの重要性を説いて、売掛金を期日どおりに回収するよう促すことも必要です。

借入金の返済に無理がないかチェックする

借入金の返済が資金繰りを圧迫しているケースはよくあります。早く返済したい一心で、返済額を多く設定していないでしょうか。借入金の返済のために、通常の取引に支障があってはいけません。返済額が多すぎるのであれば、金融機関に条件の変更を申し出てください。

資金繰りに困らないための対処法

入金より支払を少なくするか遅らせるのが資金繰り改善の王道です。しかし、設備投資で多額の資金が必要になるときや、取引先の倒産で急に資金繰りに行き詰まったときなどは、日々の資金繰り改善だけでは対応しきれません。このようなときに備えるための方法をいくつかご紹介します。

経営セーフティ共済に加入

経営セーフティ共済とは、中小企業の連鎖倒産を防ぐための制度で、取引先の倒産で資金繰りに行き詰まった場合に資金が借りられます。また、取引先の倒産以外の理由で資金が必要になった場合にも、一定の条件のもとで資金が借りられます。引き続き1年以上事業を行っている中小企業者であれば加入できます。

公的機関の資金・助成金の活用

国や都道府県などの公的機関による融資や補助金・助成金を活用するという方法もあります。融資は低利で受けられるほか、補助金や助成金は返済の必要はありません。一定の条件を満たすか、審査を受けて採択される必要がありますが、検討しない手はありません。

中小企業基盤整備機構が運営する中小企業のためのポータルサイト「J-Net21」の資金調達のコンテンツを参照してください。
参考:資金を調達する|J-Net21[中小企業ビジネス支援サイト

金融機関とのつき合い方を見直す

即効性はありませんが、銀行など金融機関とのつき合い方を見直すのも一つの方法です。

ネームバリューを気にして大手金融機関とだけ取引していないでしょうか。中小企業であれば、第二地銀、信用金庫、信用組合、JAなどの地域金融機関とも取引することをおすすめします。地域に密着した親身な対応が期待できます。

また、一つの金融機関とだけ取引するよりは、複数の金融機関と取引することもおすすめします。融資を受けるときに条件を比較することができます。また、ある金融機関で融資を断られても、ほかの金融機関で融資を受けられる場合があります。万が一、取引金融機関が破たんしても、複数の金融機関と取引していれば影響を抑えることができます。

まとめ

ここまでお伝えしたとおり、安定した経営を続けるためには、利益を上げるのはもちろんのこと、資金繰りにも気を配る必要があります。帳簿上の利益と資金の収支は一致しないことは、ぜひ覚えておいてください。また、ここまでお伝えした、資金繰り改善の方法や、多額あるいは緊急の資金が必要になったときに対応する方法も積極的に活用しましょう。

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