• 更新日 : 2020年9月17日

未償却残高はどのように算出するのか

みなさんは未償却残高という言葉を聞いたことがあるでしょうか?

一言で言えばその資産に現在どれくらいの価値が残っているかを表している金額となります。

それでは試算表をみたときにどの数字が未償却残高を意味しているのでしょうか。また、減価償却をしていた場合としていない場合でどのような違いが発生するのでしょうか。

本記事ではそのような疑問を解説していきます。

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減価償却とはどのようなもの?

原則的に10万円以上の購入物は、支払時にその全額を経費にすることができません。購入物の耐用年数(財務省により資産毎に定められています)によって、徐々に経費に落としていくこととなります。

その考え方を「減価償却」といい、減価償却の主な方法には「定額法」と「定率法」があります。今回の説明はわかりやすさを重視しておりますので、通常は考慮する「償却保証額の考え」の説明は省略させていただきます。

定額法

定額法とは、減価償却する金額が毎年同じ(定額)になる計算方法です。個人事業主が特別な届出をしない場合は定額法での減価償却となります。

計算方法は「取得原価×定額法の償却率」となります。

減価償却 定額法

上記の表では、150万円の車を期首の日(その決算期は12ヶ月あるとする)に購入した場合の定額法の減価償却の金額を表しています。

毎年の減価償却費が定額となっていることがお分かりいただけると思います。結果として未償却残高は毎年定額で減少していきます。

定率法

定率法とは、減価償却をする率が毎年同じ(定率)になる計算方法です。法人が特別な届出をしない場合は定率法での減価償却(建物及び平成28年4月1日以後取得の建物附属設備及び構築物を除く)となります。

計算方法は「前期末の未償却残高×定率法の償却率」となります。

減価償却 定率法

※平成19年4月1日~平成24年3月31日までに取得した場合

上記の表は、150万円の車を期首の日(その決算期は12ヶ月あるとする)に購入した場合の定率法の減価償却の金額を表しています。

減価償却費は、車を購入した最初の年ほど大きく、徐々に減少していっているのが分かると思います。結果として、未償却残高は最初の年に大きく減少し、その後は徐々に減少幅が小さくなってきます。

なお、5年目と6年目は償却保証額等の考え方によって、再計算後の金額となっております。

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未償却残高が一目でわかる方法とは?

定額法や定率法の計算具体例でお分かりいただけるように、未償却残高とは「取得金額-その期までの減価償却累計額」によって確認することができます。

しかし、試算表の表示方法には「間接法」と呼ばれる方法と「直接法」と呼ばれる方法があります。

そのため、試算表をよく確認しないと、未償却残高を誤って確認してしまう可能性があります。以下では、この表示方法の違いについて説明いたします。

間接法

間接法とは過去の減価償却費の合計額を「減価償却累計額」という科目によって表示する形式です。

試算表 間接法

上記の試算表は、設立日が平成11年1月1日の法人の平成13年12月末の状況を表したものです。

間接法の場合の未償却残高の計算方法は「資産の取得価額(車両運搬具)-減価償却累計額」となります。今回の例ですと、未償却残高は「1,500,000-1,202,767=297,233円」となります。

直接法

直接法とは過去の減価償却費の合計額を、資産の金額から直接控除する形式です。

試算表 直接法

上記の試算表は、平成11年1月1日設立法人の平成13年12月末の状況をあらわしたものです。

直接法の場合、取得価額から減価償却累計額を控除した後の金額が計上されますので、未償却残高は「資産の簿価そのもの」となります。今回の例ですと、未償却残高は「297,233円」となります。

個別注記表

では、直接法の場合には減価償却累計額はどのように確認すれば良いのでしょうか。実は直接法の減価償却累計額は「個別注記表」によって確認することが可能です。

個別注記表とは、会社の会計処理や補足的情報に関する注意事項(注記)をまとめたものです。なお、個別注記表に記載する項目は「会社計算規則」によって定められています。

個別注記表

上記の図は「個別注記表」の具体例の一部抜粋です。減価償却累計額は青枠のように表示され、その金額を確認することができます。

減価償却の義務

ところで、減価償却は毎年する義務があるのでしょうか。結論を先に申し上げますと法人の場合は、減価償却は任意となります。

大企業に関しては、株主への公平性といった観点からは毎年定期的にする必要性がありますが、中小企業に関しては繰越欠損金の繰越期限(現在は10年間)があることもあり、戦略上減価償却を行わないことも考えられます。

その場合は未償却残高がわかるように期末の償却不足額を注記表に明示することが、会社の未来損益把握に役立ってきます。取得価額から減価償却累計額と償却不足額を控除することで、未償却残高を算定することができます。

ただし、試算表を見ただけで未償却残高がわかることが本来は望ましいはずです。未償却残高はそもそも現時点でのその資産の価値を表すものなので、毎年定期的に減価償却を行わないと、その数字に意味がなくなってしまう可能性がある点に十分留意すべきです。

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まとめ

未償却残高の計算方法はわかりましたでしょうか?

未償却残高は今後の減価償却予定額を表し、その会社の未来損益(損益予想)が詳細な数字でわかるようになります。是非、未償却残高にも注目してみてください。

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※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

監修:緒方 康人 (公認会計士 / 税理士)

税理士法人ゆびすい
ゆびすいグループは、国内8拠点に7法人を展開し、税理士・公認会計士・司法書士・社会保険労務士・中小企業診断士など約250名を擁する専門家集団です。
創業は70年を超え、税務・会計はもちろんのこと経営コンサルティングや法務、労務、ITにいたるまで、多岐にわたる事業を展開し今では4500件を超えるお客様と関与させて頂いております。
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