• 作成日 : 2023年7月27日

連結決算の対象となる子会社の基準は?例外や行うことをわかりやすく解説

連結決算の対象となる子会社の基準は?例外や行うことをわかりやすく解説

上場企業の場合は子会社を含む経営全体を把握するために、連結決算が不可欠です。一定の条件下で報告が義務付けられており、中小企業・非上場でも一概には要否を判断できません。違反すると罰則があるため、対象となる基準を正しく理解しましょう。

今回は、連結決算の適用指針と連結計算書類(財務諸表)に関する会計基準を解説します。グループ経営の効率化を図りたい企業の方は、ぜひ参考にしてください。

連結決算とは

連結決算の対象となる子会社の基準は?例外や行うことをわかりやすく解説
連結決算とは、親会社および国内外の子会社・関連会社の2社以上で構成するグループ全体を一つの会社とみなした決算業務を行うことを指します。

連結決算の目的は、グループ全体の財務状況経営成績の正確な把握です。連結決算によって、主に以下のメリットが得られます。

  • グループ全体の業績の実態が把握できる
  • 外部者が企業状況を把握しやすくなる
  • 事業運営の拡大や展開の根拠となる

会社ごとの決算では、グループ全体の実態を把握することは困難です。しかし、グループ全体の貸借対照表損益計算書を連結計算書類として開示すれば、外部からでも企業の状況が把握できます。グループの実態を投資家に知らせることで、投資を促せるでしょう。

ただし、連結決算には次のようなデメリットも存在します。

  • 業務負担が大きい
  • 業務の属人性が高い

連結決算は、業務内容が非常に煩雑なうえ、場合によっては監査を受けなければなりません。加えて、決算の集計は専門的なスキルや経験が求められる業務であり、一部の社員に依存しがちです。連結決算業務ができる社員が退社した場合、業務に支障が生じるおそれがあります。

連結決算の作成義務がある会社

連結決算の対象となる子会社の基準は?例外や行うことをわかりやすく解説
連結決算の作成義務が課せられているのは、有価証券報告書を提出している会社または会社法に定められる大会社です。なお、大会社に該当するのは、次の条件のいずれかを満たす企業です。

  • 資本金が5億円以上
  • 負債の合計額が200億円以上

参考:連結財務諸表に関する会計基準|企業会計基準委員会

連結決算の対象となる子会社の基準

連結決算の対象となる子会社の基準は?例外や行うことをわかりやすく解説
以下3つの基準のうち、1つでも条件を満たす子会社は連結決算の対象になります。

  1. 議決権の過半数を持っている
  2. 議決権の40%以上50%以下かつ一定の要件を満たす
  3. その他一定の要件を満たす

参考:連結財務諸表に関する会計基準|企業会計基準委員会

なお、2および3の「一定の要件」とは、次の①〜⑤のいずれか1つ(3の場合は①および②〜⑤のうちの1つ)です。

①残りの議決権の過半数を親会社・グループ会社が持っていること
②役員の過半数が親会社・グループ会社の構成員であること
③親会社に決定権を委ねる契約を締結している
④融資の大半を親会社から受けていること
⑤その他親会社に従属している事実が確認できること
参考:連結財務諸表に関する会計基準|企業会計基準委員会

連結決算の対象の例外

連結決算には、グループ会社だとしても例外的に対象外となる以下の基準が定められています。

  • 一時的に親会社の傘下に入っている
  • 連結決算により投資家の意思決定の妨げとなるおそれがある
  • 財務状況・キャッシュフローに与える影響が極めて少ない

一時的に親会社が意思決定権を握っている企業では、支配期間が限定的なため決算に及ぼす影響が少ないといえます。

連結決算により意思決定を妨害する可能性がある場合や、規模が非常に小さい子会社は、実務負担の軽減策として除外しても構いません。

連結決算の基準を満たした子会社が行うこと

連結決算の基準を満たした子会社は、以下の手順で親会社に決算報告を行います。

  1. 個別計算書類を作成する
  2. 親会社にグループ会社との取引を報告する
  3. 親会社に未実現利益を報告する
  4. 注記を集計する

それぞれの企業から提出された決算書は、親会社によって一つに集計されて連結計算書類にまとめられます。各ステップで連結計算書類の作成に向けて子会社が行うべき業務内容を確認していきましょう。

①個別計算書類を作成する

それぞれのグループ会社が単独決算を行い、個別計算書類を作成します。具体的には、自社の決算を貸借対照表や損益計算書、株主資本等変動計算書などにまとめ、親会社に提出しなければなりません。

連結調整前計算書類にまとめる際は、正しい比較が行える書類になるよう基本的に親会社の規定に従います。親会社が子会社・グループ会社の単独決算を合算して方針や基準がバラバラだと全体の整合性が取れなくなるからです。

会計システムは異なっていても構いませんが、資本の評価方針・会計上の処理基準はグループ全体で統一する必要があります。決算日はそれぞれの子会社の基準で決められますが、3ヶ月以上のズレがある場合は親会社に合わせて調整しましょう。

海外の子会社の場合、円に外貨を換算する作業が必要です。合わせる為替レートのタイミングは決算日もしくは親会社の出資等取引日が一般的ですが、親会社に確認したうえで業務を進めましょう。

②親会社にグループ会社との取引を報告する

作成した個別計算書類とあわせ、グループ会社との取引を親会社に報告します。仮に親子間の取引の売上原価を決算に含めた場合、正確な売上高を見分けられません。

親会社は親子間で大量に取り引きした実績があっても正しく利益を計上するよう、提出された子会社の決算書をもとに連結パッケージを作成します。連結パッケージ作成時、グループ会社との取引の売上を相殺することで決算書の精度が高められるでしょう。

期限に特例が適用されるケースもあるとはいえ、グループ全体を巻き込んだ連結決算はある程度の時間を要します。取引内容を定期的に集計し親会社と情報を共有しておくなど、連結決算をスムーズするためのスケジュール管理を日常的に行いましょう。

③親会社に未実現利益を報告する

親会社が連結修正決算できるよう、未実現利益を報告します。未実現利益とは、連結修正決算のときにまだ成立していない取引の利益です。たとえば、親会社から仕入れた商品のうち、まだ在庫が残っている分の利益が未実現利益に該当します。

親会社が利益を正確に計上するためには、連結修正決算で未実現利益を相殺しなければなりません。子会社の在庫を集計結果から除外しなければ、実際に商品が顧客に売れていないにもかかわらず帳簿上は利益が出たよう記録されてしまいます。

期限内の連結決算報告に支障が出ないよう、親会社と定期的な打ち合わせをするなど、未実現利益を効率よく報告できる体制を整えておきましょう。

決算業務の効率化には、グループ全体で統一したバックオフィスツールを導入・運用するのもおすすめです。グループ全体で統一のシステムを運用していれば、逐一報告せずとも未実現利益の把握が容易にできます。

④注記を集計する

子会社の個別計算書類における注記事項を集計し、表にまとめます。現在の会社法では、決算書ごとに注記を記載するのではなく個別注記表を別途に作成しなければなりません。

注記事項は、経営・決算に関わる内容の補足を目的として公表されます。数値だけでは会社の実態を正しく把握するのは難しく、投資・融資の判断材料として不完全なケースが多いでしょう。

注記事項は、企業継続の前提条件や会計上の方針など全19項目です。なお、2021年4月1日以降は収益の情報も上記項目に付け加えるよう定められました。

注記の集計は、会計ソフトを利用すれば手軽に行えます。滞りなく注記集計を進めるためにも、会計ソフトを包括したバックオフィスシステムの導入を検討してみましょう。

個別注記表については、以下のページで詳しく解説していますので、気になる方はぜひ参考にしてください。

まとめ

グループ全体の状況を国税庁に正しく報告するため、一定の条件を満たす会社に課せられた義務が連結決算です。決算時のグループ全体の動向が視覚的にわかりやすく示されるため、投資を促進させる効果も期待できます。

連結決算の義務が課されるのは上場企業が多いのですが、中小企業や非上場企業でも一定の条件下において必要です。連結決算の義務があるにもかかわらず報告しなかったときは罰則が課される可能性がありますので、自社が対象かどうかをきちんと見極めましょう。

判断が難しいときは、税理士や専門のコンサルタントへの相談をおすすめします。また、連結決算業務の効率化にはバックオフィスシステムの導入が最適です。

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よくある質問

連結決算が義務付けられたのはいつから?

連結決算が日本で義務付けられたのは、1978年3月期以降です。とはいえ、日本では義務化した後も長きに渡って単独決算がメインであり、連結決算は非公開がスタンダードでした。 従来の連結決算が現在の方式に見直されたのは2000年3月期からです。金融商品取引法(旧・証券取引法)で規定されるディスクロージャー制度が見直しとなり、有価証券を発行する企業で財務や経営の状況を示す報告書の提出が義務となりました。 連結決算報告書は、投資先の選択場面で重要な位置付けを占めます。このため連結決算の公開が求められるようになり、徐々に現在の形に落ち着いたのです。

中小企業に連結決算は必要?

中小企業に連結決算の義務はありません。連結決算の方針は、企業が任意で判断できます。 義務ではないとはいえ、近年は本業とは異なる分野の事業運営を目的に子会社・関連会社を持つ中小企業も多いです。場合によっては、連結決算で事業全体の把握が必要なケースもあります。 中小企業にとっての連結決算の主なメリットは、自社の経営状況を外部に公開することで信頼性が高まり、融資を受けやすくなる点です。一方、帳票の作成に時間的・人的コストがかかるため親会社との連携がうまくいかなければ業務負担が増えるおそれがあります。 連結決算すべきかどうかは、メリット・デメリットを比較し、自社にとってどちらの比重が大きいかによって決めると良いでしょう。

非上場企業は連結決算の義務はある?

非上場企業でも、連結決算義務の対象にならないとは限りません。連結決算の義務が課されるかどうかの判断基準は、社会に与える影響の大きさです。上場企業に連結決算義務があるのは、社会への強い影響力を持っていると判断されることが主な要因だといえます。 このため非上場企業でも株主数が多かったりする等有価証券報告書を提出している場合は連結決算の義務が発生します。非上場企業だからといって連結決算は必要ないと決めつけるのではなく、条件と自社の状況を正しく把握したうえで判断しましょう。


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