- 更新日 : 2024年9月27日
決算公告の見方は?主な媒体や他社の決算公告を調べる方法を解説
決算公告を見る方法としては、官報、日経新聞、電子公告といった会社法に定められた広告媒体やEDINETなどを検索したうえで目的の企業の情報を閲覧する、といった方法が一般的です。本記事では、決算公告を閲覧できる主な媒体をはじめ、決算公告で分かる内容や他社の決算公告を調べる方法について詳しく解説します。
目次
決算公告の見方
決算公告の見方は、見たい企業の決算公告がどの媒体に掲載されているかを探し、そのうえで決算情報を確認する、という手順です。一部の例外を除き株式会社では決算公告が会社法によって義務付けられており、官報、日刊新聞紙、電子公告いずれか、もしくはダブル公告で行われます。
上場企業は、決算公告の義務はありません。ただし有価証券報告書の提出による財務状況の詳細な開示が義務付けられているため、決算公告以上の財務情報が確認できます。
決算公告が確認できる主な媒体は、以下のとおりです。
EDINETなど(上場企業のみ)
上場企業については有価証券報告書の提出義務があるため、会社法第440条4項によって決算公告義務の対象外とされています。
そのため上場企業については、EDINETで調べましょう。EDINETでは、有価証券報告書のほか、有価証券届出書、大量保有報告書、公開買付届出書等の開示書類の閲覧ができるため、決算公告より詳しい財務情報を確認できます。
ほかにも有価証券報告書、総会収集通知などの主要な開示情報を掲載しているインターネットディスクロージャー社の「開示Net」などでも閲覧可能です。
官報
官報は、国の法令や公示事項を掲載し広く国民に周知するための国の公報誌で、行政機関の休日を除き毎日発行されます。官報は大きく「本紙」と「号外」の2種類に分けられ、本紙に掲載しきれないときに発行されるのが号外です。
決算公告が掲載されるのは本紙で、定款に公告媒体の定めがない場合は官報に掲載しなければなりません。
日刊新聞
日刊新聞紙に決算公告を掲載している会社もあります。日刊新聞紙とは、会社法939条に定めがある「時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙」を指します。スポーツ新聞などは決算公告の対象外です。
日刊新聞紙であれば、全国紙、地方紙を問いませんが、実際に掲載されるのは日刊全国経済紙である日本経済新聞がほとんどです。
電子公告
会社法939条に定められている3つの公告方法のうちのひとつが、電子公告です。従来公告方法は官報、日刊新聞の2種類でしたが、2005年2月1日以降電子公告が認められるようになりました。
電子公告は自社のホームページに専用のページを設ける、もしくは外部機関のサイトに掲載するなど、インターネット上で決算情報を掲載する方法です。
決算公告を行っているのはどんな企業?
決算公告は、会社法第440条1項に定めがあり、原則としてすべての株式会社に義務付けられています。ただし、以下の条件に当てはまる株式会社は対象外です。
- 金融商品取引法24条1項に定める有価証券報告書の提出義務のある会社(会社法第440条4項)
- インターネットのホームページにて計算書類の開示(電磁的公示)を行っている会社(会社法第440条3項)
有価証券報告書の提出義務がある会社=上場会社は、有価証券証書の開示によって決算公告よりも詳細な財務情報が確認できるため、決算公告義務はありません。
また、会社法上の特例有限会社 (会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律第28条)や合名会社、合同会社、合資会社にも決算公告義務はありません。
特例有限会社は、2006年の会社法施行で有限会社が廃止された後の、既存の有限会社を指します。かつての有限会社は決算公告の義務がなかったため、その点に配慮され特例有限会社に移行してからも決算公告の対象外となっています。
株式会社以外でも決算公告を行っているケースもある
決算公告は一部の例外を除く株式会社の義務であり、合名会社、合同会社、合資会社といった持分会社には義務がありません。ただし持分会社や、特例有限会社の中には決算公告義務がないにもかかわらず決算公告を行っている会社もあります。
義務がなくても自ら財務情報を明らかにすることで、財務面での透明化、信頼性の向上を図るなどの狙いがあり、取引先などのステークホルダーへのアピールにもつながることが期待できます。
決算公告で分かる内容
決算公告において大会社は貸借対照表と損益計算書、それ以外では貸借対照表の開示が求められます。大会社とは、規模の大きな会社で会社法においては最終事業年度の貸借対照表において計上した資本金が5億円以上、または負債が200億円以上であることと定義されています。
貸借対照表、損益計算書から分かることをそれぞれ以下にまとめました。
貸借対照表から分かること
貸借対照表は、「資産」「負債」「純資産」が記載されており、決算日時点のその企業の財務状態が分かる書類です。「資産=負債+純資産」は一致しなければならず、バランスシートと呼ばれることもあります。
法人の貸借対照表における資産は、流動資産、固定資産、繰延資産の3つに分類されます。
- 流動資産:現金、もしくは1年以内に現金化できるもの。売掛金、商品、資材、短期貸付金など
- 固定資産:1年以内に現金化しない、もしくはできないもの、長期保有を前提としているものを指す。建物や土地、株式、有価証券など
- 繰延資産:すでに支払いが済んでいる費用のうち、支出効果が1年以上に及ぶもの。創立費や開業費など
一般的に流動資産が多いほど、現金ショートを回避でき経営が安定していると見なされます。
負債はいずれ返却しなければならない資産、借金で、返済期間の長さによって「流動負債」と「固定負債」に分けられます。流動負債は支払手形や未払金、買掛金、短期借入金などです。
対して固定負債は社債や貸倒引当金、退職給付引当金、長期借入金などの1年を超えて返済可能な負債を指します。固定負債は長期にわたって計画的に返済することが可能であるため、流動負債よりも固定負債が多いほうが健全な経営といえるでしょう。純資産は自己資本ともいわれるもので、株主からの出資金と事業活動から得た利益の蓄積です。
貸借対照表からは当座比率や自己資本比率、固定比率など様々な情報が読みとれます。最低限負債の総額が資産の総額を超える債務超過の状態になっていないかどうかだけでもチェックしておきましょう。
債務超過であることが倒産に直結するわけではありませんが、債務超過の状態が長引けば、会社の存続が困難になることが予想されます。
損益計算書から分かること
損益計算書はその年に会社がどれだけの費用を使い、どれだけの利益を上げたのかが分かる書類です。業績を「売上総利益」「営業利益」「経常利益」「税引前当期純利益」「当期純利益」の5つの利益に分類して示します。
- 売上総利益:売上高から売上原価を引いた粗利益
- 営業利益:売上総利益か販売費及び一般管理費を差し引いた利益
- 経常利益:本業で得た営業利益に、本業以外で稼いだ営業外利益を足したうえで営業外費用を引いて求められる利益
- 税引前当期純利益:経常利益から特別利益・特別損失を差し引いた利益
- 当期純利益:税引前当期純利益から法人税、法人住民税、法人事業税などを引いた利益
当期純利益を見ると、その決算年度においてすべての費用を控除したあとの最終損益が分かります。営業利益も忘れずにチェックしておきましょう。当期純利益がプラスであっても営業利益がマイナスであれば本業が赤字であり、あまり良い財務状況とはいえません。
そのままの状態が長く続くと、事業の継続が難しくなる可能性があります。
他社の決算公告を調べるには
決算公告を掲載している媒体は、官報、日刊新聞紙の電子公告の3種類です。電子公告で検索して見当たらなければ、官報、日刊新聞紙を調べることになります。
ただし株式会社のうち、有価証券報告書の提出が義務付けられている上場企業に関しては、決算公告の義務がないため別途四季報やEDINETなどで確認する必要があります。
上場企業の調べ方
上場企業の決算情報は、金融庁が運営しているサイト「EDINET」で調べられます。有価証券報告書をはじめ、四半期報告書や過去の決算書なども閲覧でき、PDFでダウンロードすることも可能です。
さらに詳細な情報が必要な場合は、「開示Net」の利用も検討してみるとよいかもしれません。大手監査法人なども利用しており情報量はEDINETよりも多いですが、利用には年間20万円弱の料金がかかります。
会社四季報でも、上場企業の決算情報の入手ができます。会社四季報は上場企業の特色や財務情報、株価の動きなどをまとめた季刊雑誌です。会社四季報・未上場会社版もあり、未上場会社版では比較的規模の大きい未上場企業の財務情報も得られます。
電子公告の調べ方
電子公告をしている企業で自社ホームぺージでの開示を行っている場合は、検索エンジンで企業名と「決算」などのキーワードを入力して探します。その他、「帝国データバンク」や「東京商工リサーチ」など、決算公告情報を掲載するインターネットサイトで調べる方法もあります。
法務省が提供している、電子公告を行っている会社や法人を検索できるサービス「法務省 電子公告システム」で調べるのもよいでしょう。
官報の決算公告の調べ方
官報とは法令や条約、法令に基づき掲載される告知や叙位・叙勲などの情報を一般に周知、交付するために発行されている国の機関誌です。内閣府の委託を受けた独立行政法人 国立印刷局によって編集・印刷及び普及などが行われています。
官報は「本紙」と「号外」に大別されますが、決算公告が掲載されるのは本紙であり、行政機関の休日を除いて毎日発行されます。
官報に掲載された決算公告を見るには、官報販売所で購入する、またはインターネット版を閲覧する方法があり、インターネット版は直近90日間分の官報が無料で閲覧可能です。ただし、インターネット版は検索機能がありません。
目的の企業が決算公告を出した日付がわかっていればよいですが、不明な場合は「官報索引」を活用するのもひとつの方法です。官報索引は官報全紙に掲載された多岐にわたる項目を簡単に検索できるよう関係各省庁別に分類され、編纂された索引集で、1年ごとに発行されています。
官報索引には「会社決算公告」項目もありますが、企業名からの検索はできないため掲載日順に探していくことになります。
新聞の決算公告の調べ方
決算公告の媒体として使用できる新聞は、日刊紙に限られます。日刊紙であれば全国版、地方版を問わず掲載可能ではありますが、決算公告が掲載されるのは日本経済新聞がほとんどです。
日本経済新聞に掲載された過去の決算公告を調べるには、日本経済新聞東京本社の最終版朝夕1ヶ月分を収録した「縮刷版」が便利です。縮刷版の巻末には記事索引があり、索引の中の「会社決算公告」の項目で掲載日、掲載面を探せます。
決算公告は官報、日経、電子公告のほかEDINETなどでチェックしよう
決算公告は一部の例外を除いてすべての株式会社に義務があります。公告媒体は官報か日刊新聞(ほとんどが日本経済新聞)、電子公告ですが、上場企業の場合は有価証券報告書の内容をEDINETなどで確認することが可能です。
決算公告では大企業においては貸借対照表と損益計算書、それ以外では貸借対照表が開示されています。それぞれを正しく理解して分析し、企業の財務状況や健全性、安定性など、自社はもちろん他社の状況を把握しておきましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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