• 更新日 : 2021年6月1日

税務会計とは?財務会計、管理会計、企業会計との違い、法人税の計算方法

税務会計とは?財務会計、管理会計、企業会計との違い、法人税の計算方法

会計にはいくつもの種類があり、財務会計管理会計に並んで税務会計があります。
税務会計は、主に所得税や法人税の税金計算のために行われる会計で、財務会計とは目的が違います。

この記事では、税務会計について、そもそもの目的、財務会計・管理会計・企業会計との違いを説明していきます。

税務会計とは?

税務会計とは、税金計算を目的とした会計です。
定義はありませんが、税務会計の意味として以下の3つのうちのどれかで使われることが多い用語です。

  • 税金計算のために会計(帳簿付け)を行うこと
  • 法人税の計算や申告書を作成すること
  • 税効果会計のこと

税務会計が対象とする税金の種類は、主に法人税・所得税・消費税があります。
法人税では、財務会計で計算した利益を法人税の課税所得に調整していく手続きを行っていきます。この手続きには税効果会計が含まれることもあり、税務会計ということがあります。

また、個人事業主決算書の公表はしないため、所得税の計算目的で帳簿付けを行うことが多いです。消費税も同様ですが、税抜き経理方式で帳簿付けを行います。
このようなそもそも決算書の公表を前提としないで、税金計算のために帳簿付けを行うことを税務会計ということがあります。

税務会計の目的

税務会計の目的は、税金を計算することです。
この目的のために帳簿付けの方法として2つあります。

1つは、税務会計に特化して帳簿付けを行う方法です。
具体例として、所得税を計算するためだけに帳簿付けを行うことが考えられます。
所得税のみを想定するため、決算の公表はありません。したがって会計基準よりも税法を優先して会計処理を行っていきます。

もう1つは、財務会計の結果を税金計算のために調整する方法です。
具体例として、決算の公表があり法人税を支払う会社が考えられます。
まず、財務会計で正しく財産や利益の計算を行い決算書の公表を行います。財務会計で計算される利益は法人税の課税所得と必ずしも一致しないため、法人税の計算のために調整する手続きを行います。

税務会計と財務会計・管理会計・企業会計の違い

税務会計のその他の会計と比較していきましょう。
主に違うのは、目的、ルール、決算書や申告書の利用者です。

税務会計と財務会計の違いとは

税務会計と財務会計を比較すると以下になります。

税務会計財務会計
会計の目的税金計算財産や利益の計算
ルールや法律税法会計基準
利用者税務署株主や債権者、投資家など

税務会計と財務会計は厳密に区別できるものではありませんが、税務会計は申告書を作成することや課税所得を計算するために益金や損金(※)を計算することが税務会計です。
税務会計は税金計算が目的のため、法人税法所得税法などの法律がルールになり、計算結果である申告書を税務署に提出しなければいけません。

※財務会計の収益と費用を法人税では益金と損金といいます。

それに対して、財務会計は会計基準を遵守して、財産や利益を正しく計算することが目的です。違いが生じる例として、財務会計では利益を正しく計算するために引当金を計上することがありますが、税務会計では引当金が基本的に認められません。
つまり財務会計では費用にできるものの、税務会計(法人税)では損金にすることができません

補足として、税効果会計という分野があります。
税効果会計は、財務会計でもあり税務会計であるともいえます。内容は法人税等の影響を会計に取り込むものですが、中身は法人税の計算に近い内容です。
税効果会計は会計基準で定められているため、財務会計ともいえますが中身を見ると税金計算に近いため税務会計ともいえます。

税務会計と管理会計の違いとは

税務会計と管理会計を比較すると以下になります。

税務会計管理会計
会計の目的税金計算経営管理に役立つ情報の提供
ルールや法律税法なし、各事業者の任意
利用者税務署経営者や管理者

管理会計は、経営管理に役立つ情報の提供を目的として、各事業者が任意に行う会計です。
代表的なものは資金繰りや予算管理などがあります。当然のことながら管理会計を行っても税金計算に直接影響することはありません。

また、管理会計は各事業者が任意に行う会計のため厳密な定義や範囲はありません。ただし、原価計算を管理会計の1つとする場合は、売上原価や商品の金額に影響するため財務会計と関係があることになります。

まとめると、税務会計と管理会計はまったく別の会計と考えて問題ありません。

税務会計と企業会計の違いとは

企業会計は、定義があるわけではありませんが、広い意味と狭い意味合いがあります。

広い意味では、企業会計は企業が行うすべての会計という意味になるため、文字通り財務会計・管理会計・税務会計などの企業が行うすべての会計が含まれることになります。つまり税務会計は企業会計の一部になるという関係です。

また、狭い意味で企業会計は、財務会計と同じ意味です。一般的に企業会計は財務会計と同じ意味合いで使われることが多いです。会計基準や企業会計原則などでは、財務会計と同じ意味として「企業会計」が使用されています。

企業会計を財務会計と同じ意味とすると企業会計と税務会計との違いは、上記の税務会計と財務会計の違いと同じ内容です。

個人事業主のほとんどは税務会計

個人事業主は、所得税で事業所得などを計算するために帳簿付けを行いますが、決算を公表せず所得税計算のためだけに行っているため、税務会計になります。
つまり、所得税のルールに基づいて帳簿付けを行っているということです。

個人事業主が税務会計で帳簿付けを行うことは悪いことではありません。
財務会計で求められる正しい利益や財産計算しても決算を公表しないため、特にメリットがないためです。

法人は財務会計と税務会計

法人は、上記で述べた個人事業主とは違い決算を公表する義務があることがほとんどです。
したがって財務会計で求められる利益や財産を正しく計算し決算書を作成する必要があります。
さらに、法人は法人税も計算し納付しなければいけません。
つまり、財務会計と税務会計を取り入れることになります。

このように2つの会計を取り入れるからといって、財務会計のために帳簿を1つ作成し、さらに税務会計のために帳簿を1つ作成するということはしません。理由は事務負担が大きすぎるためです。
現実的には、財務会計のために帳簿を1つ作成し、財務会計の結果を法人税の計算のために調整するという手順を取ります。

法人税の計算は税務会計に基づく

法人税の計算は、以下の手順で行います。

  • 損益計算書税引前当期純利益までを確定させる
  • 法人税の仮計算を行う
  • 税効果会計の計算と仕訳を行う
  • 税引後当期純利益までを確定させる
  • 法人税の申告書を作成する

 

上記の手順の法人税の仮計算を行うことで、法人税が確定します。
法人税の計算では、財務会計の収益と費用を法人税の益金と損金に調整していきます。このような調整を行うことで財務会計の利益を法人税の課税所得に変換することができます。

税効果会計について

上記の法人税の仮計算の結果から、税効果会計を適用していくことになります。
1つ例をあげると、財務会計の減価償却費が大きすぎる場合は、減価償却費の一部を法人税の損金にすることができません。このような財務会計の考え方と法人税の考え方から生じる差異について税効果会計を適用して財務会計で調整を行っていきます。

税効果会計について詳しくは以下のリンクが参考になります。

税務会計の基礎を理解しよう!

税務会計は、厳密な定義はありませんが、税金計算のために行う会計です。
具体的に税務会計の内容は、所得税のために帳簿付けを行うことや、法人税の計算のための一定の手続きを指すこともあります。さらに、税効果会計も含まれることもあります。

税務会計も重要ですが、税金を考える前には必ず収益や費用、利益を確定していなければいけません。特に法人税では会計の数値がどうなっているのかが前提にあり、そのうえで法人税の考え方で制限がかけられます。

よくある質問

税務会計とは何ですか?

税金計算を目的とした会計を税務会計といいます。詳しくはこちらをご覧ください。

税務会計と財務会計・管理会計・企業会計はどのような点が違うのですか?

会計の目的、ルールや法律、利用者が違います。詳しくはこちらをご覧ください。

法人はどの会計方法を用いればいいのでしょうか?

法人は法人税も計算し納付しなければならないため、財務会計と税務会計を取り入れることになります。詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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