- 更新日 : 2024年9月6日
ファイナンス・リースとオペレーティング・リースの違いをわかりやすく解説!
ファイナンス・リースとオペレーティング・リースの違いがよくわからず、どちらを利用するべきなのか悩んでいる方も多いでしょう。
どちらもリース契約ではありますが、それぞれに特徴があります。本記事ではそれぞれのメリットやデメリット、会計基準での判定や会計処理について詳しく紹介します。
目次
ファイナンス・リースとは?
ファイナンス・リースとは、貸し手が借り手の代わりにリースする商品を購入し、借り手に貸す取引のことをいいます。通常の賃貸借やレンタルのように、すでに貸し手が保有している商品から借り手が選んで借りるのではありません。借り手が選んだものを貸し手が購入し、リース料の中から購入代金などを回収します。
「リース」という名称ではありますが、借り手側にとっては、リース会社を仲介して商品を分割で購入することと同じです。ファイナンス・リースには、以下の2つの特徴があります。
- ノンキャンセラブル
- フルペイアウト
ノンキャンセラブルでは、通常のリースとは異なりリース期間の途中で解約できません。解約時に相当な違約金を払う必要があり、事実上解約できないケースも該当します。フルペイアウトとは、リース物件を所有する場合に得られる経済的利益を借り手が享受でき、さらに生じる費用を負担する必要があることをいいます。
つまりファイナンス・リースでは実質的に商品を所有していることと同じ状態です。リースという形態ではあるものの、実質的に商品を分割払いで購入していることからファイナンス(分割払い)・リースと呼ばれています。
ファイナンス・リースのメリット・デメリット
ファイナンス・リースのメリット・デメリットについて見ていきましょう。
ファイナンス・リースのメリット
ファイナンス・リースのメリットは、一括で購入することなく機械設備などの資産を利用できる点です。そのため手元のキャッシュを使わなくてよく、事業の資金繰りへの影響がありません。さらに借入ではないため融資枠を使うこともなく、いざという時の調達余力は残しておくことが可能です。
リース契約でありながら、実質的にその資産を購入したことと同じ経済的効果を得られます。またオペレーティング・リースと比べると比較的リース期間が長く、契約内容次第ではリース期間終了後も引き続き資産を利用できる場合もあります。
ファイナンス・リースのデメリット
ファイナンス・リースのデメリットは、途中で解約できない点です。もしリース契約した資産が期待通りではなかったとしても、途中で変更することはできません。ファイナンス・リースを利用する際は、本当に必要な資産かどうか慎重に見極める必要があります。
またファイナンス・リースを利用した場合、支払総額は一括購入するよりも割高になります。手元キャッシュを残しておける効果はありますが、長い目で見れば一括購入のほうがお得です。
オペレーティング・リースとは?
オペレーティング・リースは借り手が金銭を支払い、貸し手から資産をレンタルする取引のことをいいます。ファイナンス・リースと違って単に借りるだけの契約なため、期間が終了すれば資産は返却しなければなりません。
資産を所有しているわけではないため、資産に故障などがあった場合は貸主が修理を行います。イメージとしてはレンタカーや、レンタルCDと考えればわかりやすいでしょう。会計や税務上では、オペレーティング・リースを「ファイナンス・リース以外のリース取引全般」と定義しています。
オペレーティング・リースのメリット・デメリット
オペレーティング・リースのメリット・デメリットを見ていきましょう。
オペレーティング・リースのメリット
オペレーティング・リースのメリットは、ファイナンス・リースに比べ、リース料金総額を抑えられる点です。また途中で借り換えを行うこともできるため、常に最新の設備を利用できます。1年間という短い期間でのリース契約もできたり、中途解約ができたりするなど、柔軟な契約も可能です。
オペレーティング・リースのデメリット
オペレーティング・リースのデメリットは、途中解約した際に違約金が発生することです。中途解約できることがオペレーティング・リースのメリットではありますが、いつでも自由に解約ができてしまえば貸し手はメリットを得られません。そのため解約が可能でも、違約金が発生します。
また対象の資産は多岐にわたるため、高額な物件であればリース期間が長期に及ぶこともあります。資産によっては外貨建ての取引もあるため、為替リスクにも注意が必要です。高額な資産を利用する場合は、事前に契約内容を確認しましょう。
ファイナンス・リースとオペレーティング・リースの違い
ファイナンス・リースと、オペレーティング・リースの主な違いは、次の3つです。
- 会計処理の違い
- 支払方法の違い
- 解約可能かどうかの違い
それぞれの内容を見ていきましょう。
会計処理の違い
オペレーティング・リースの場合は、一般的な賃貸借契約と同じように会計処理を行います。リースした資産は借りているだけのため、資産には計上されません。一方でファイナンス・リースの場合は、商品の売買が行われたものとして会計処理を行います。
具体的には3種類の会計処理が必要で、まず1つ目はリース資産とリース債務の計上です。リース契約を開始した時点で、関連した資産と負債をバランスシートに計上しなければなりません。2つ目は毎月のリース料の支払いで、支払利息とリース料を、現預金を相手方として処理します。3つ目は減価償却で、減価償却費を費用として貸方には減価償却累計額として仕訳します。
支払方法の違い
両社には支払方法による違いもあります。ファイナンス・リースの場合、借り手はリース期間を通じて、対象資産を購入したのと同程度の価格を支払います。さらに資産の価格に加えて金融コストが上乗せされるため、支払総額は高額になってしまうことも多いです。
一方、オペレーティング・リースでは、借り手はリース期間中の利用に対する支払いのみです。したがって、ファイナンス・リースに比べると支払総額が抑えられます。
解約可能かどうかの違い
両社には、解約できるかどうかの違いもあります。前述のようにファイナンス・リースでは中途解約ができません。借り手は契約期間を通じて資産の利用を保証されるため、解約は資産の購入を取り消すのと同じことになってしまうためです。
一方でオペレーティング・リースは資産を一時的に利用するため、特定の条件下であれば解約できます。たとえばオフィス機器をリースで利用したあと、事業規模の縮小などがあっても解約が可能です。借り手のビジネスニーズの変化に迅速に対応できる一方で、借り手にとっては資産を効率的に管理することで、多くの借り手に再リースできます。
会計基準にもとづくファイナンス・リースとオペレーティング・リースの判定方法の違い
会計基準にもとづいてファイナンス・リースとオペレーティング・リースを判定する場合、借り手が、リース物件からもたらされる経済的利益を実質的に得られ、そのリース物件の使用に伴うコストを実質的に誰が負担するのかが重要なポイントとなります。具体的な判断基準は、以下の通りです。
- 解約不能リース期間中のリース料総額の現在価値が、リース物件の見積現金購入価額の概ね90%以上を占めること
- 解約不能リース期間が、リース物件の経済的耐用年数の概ね75%以上であること
上記のいずれかの基準に該当すると、ファイナンス・リースに該当します。
オペレーティング・リースの定義は、ファイナンス・リースに該当しないリース契約とされています。オペレーティング・リースでは所有権の移転を伴わないため、借り手は資産・負債ともに計上する必要はありません。リース料は軽費として計上され、企業としてはバランスシートを毀損することなく資産を利用できるメリットがあります。
資産の買い替えや中途解約などにも柔軟に対応できるため、更新頻度の高い技術機器や、プロジェクトごとに特定の機器が必要な場合など、特定のビジネスニーズに柔軟に対応できます。
ファイナンス・リースとオペレーティング・リースの仕訳の違い
ファイナンス・リースとオペレーティング・リースの、それぞれの仕訳の違いを見ていきましょう。
ファイナンス・リースの場合
ファイナンス・リースの場合は、対象資産を購入したのと同様の処理をすることになります。そのためバランスシート上に、資産・負債ともに対象資産を計上します。以下の条件で、利用したと仮定した場合の仕訳を見ていきましょう。
- リース料総額:1,000万円(内利息100万円)
- リース資産:車両代金
- 期間:10年
- 支払方法:年間100万円
リース契約締結時の仕訳は、以下の通りです。
借方 | 貸方 | 摘要 | ||
---|---|---|---|---|
リース資産 | 9,000,000円 | リース債務 | 9,000,000円 | 車両代 |
リース料を払った際の仕訳はこうなります。
借方 | 貸方 | 摘要 | ||
---|---|---|---|---|
リース債務 | 900,000円 | 現預金 | 1,000,000円 | 車両代 |
支払利息 | 100,000円 |
減価償却は、次のように計上します。
借方 | 貸方 | 摘要 | ||
---|---|---|---|---|
減価償却費 | 900,000円 | リース資産 | 900,000円 | 車両代 |
オペレーティング・リースの場合
オペレーティング・リースでは、単純に資産を借りる賃貸借契約と同じように仕訳します。先ほどと同様に下記の条件で利用したと仮定した場合の仕訳を見ていきましょう。
- リース料総額:1,000万円(内利息100万円)
- 期間:10年
- 支払方法:年間100万円
リースを締結した際は、所有権が移転するわけではないため会計上の処理は発生しません。資産にも負債にも影響を与えないのが、特徴とも言えます。リース料を支払った際に、次のように仕訳します。
借方 | 貸方 | 摘要 | ||
---|---|---|---|---|
リース料 | 1,000,000円 | 現預金 | 1,000,000円 | 車両代 |
それぞれの特徴を理解して適切なリースを利用しよう
リース契約には、ファイナンス・リースとオペレーティング・リースがあります。どちらもリース契約ではありますが、定義には違いがあります。売買契約に近いのがファイナンス・リースで、レンタカーのように単純に資産を借りるのがオペレーティング・リースです。
両社それぞれに特徴やメリットがあります。たとえば、オペレーティング・リースでは契約の柔軟性が高く、資産の入れ替えなどが行いやすい特徴があります。それぞれの特徴やメリット・デメリットを理解して、ビジネスのニーズにあったリースを利用しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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