• 作成日 : 2022年3月4日

セール・アンド・リースバック取引の会計処理と仕訳をわかりやすく解説

セール・アンド・リースバック取引の会計処理と仕訳をわかりやすく解説

保有する不動産の有効活用を進める企業も増えてきています。セール・アンド・リースバック取引による不動産の有効活用と資金調達も、不動産有効活用の方法のひとつです。この記事では、セール・アンド・リースバック取引の内容と会計処理の方法、注意点についてそれぞれ解説していきます。

セール・アンド・リースバック取引とは

セール・アンド・リースバック取引とは

セール・アンド・リースバック取引とは、上の図のように、所有する物件の売却(セール)を行ったあと、同物件について賃貸契約(リース契約)を結び、引き続き同物件を利用できるようにする取引を指します。所有する不動産を中心に企業でも取り入れられているスキームで物件の売却によって資金調達ができる一方、賃貸料を支払うことで、一定期間、物件の利用を継続できるのが特徴です。

なお、セール・アンド・リースバック取引を行うことによって、賃貸契約による賃貸料が発生することにはなりますが、物件の所有者ではなくなるため、物件を管理維持するための修繕費や税金の支払いはなくなります。さらに、物件の売却によって手元資金が増えることもあり、キャッシュフローの改善やコスト管理の簡素化などに有効な方法です。

セール・アンド・リースバック取引の会計処理の流れ

セール・アンド・リースバック取引は、リース取引を含んだ取引です。そのため、通常のリース取引と同様に、ファイナンス・リース取引とオペレーティング・リース取引に区分して会計処理を行います。ここでは、金融会社やリース会社などのセール・アンド・リースバック取引を業として行っている会社側の会計処理ではなく、一般企業での会計処理を想定して、物件を売却する側の会計処理を取り上げます。

セール・アンド・リースバック取引を引き受ける金融会社やリース会社のリース取引部分の会計処理については、以下の記事を参照ください。

ファイナンス・リース取引に該当する場合

ファイナンス・リース取引は、資産を取得したときと、ほぼ同等の性質があるリース取引を指します。セール・アンド・リースバック取引のリース部分がファイナンス・リース取引に該当するときは、以下のような流れで会計処理を行います。

ファイナンス・リース取引については、以下の記事を参照ください。

物件の売却時

(例)期首において、取得価格5,000万円の鉄筋コンクリートの建物(期首における減価償却累計額3,000万円で間接法により減価償却を行っている)をセール・アンド・リースバック取引で売却した。また、売却により1,500万円が当座預金に入金された。

借方
貸方
当座預金
15,000,000円
建物
50,000,000円
減価償却累計額
30,000,000円
固定資産売却損
500,000円
長期前払費用
500,000円
固定資産売却損
500,000円

通常の資産売却の仕訳とほとんど同じですが、売却損の全額を長期前払費用(売却益は長期前受収益)に計上する点が、通常と異なります。

物件のリース時

(例)セール・アンド・リースバック取引により、売却した物件のリースを開始した。リース料総額(毎月30万円前払いの5年契約)の割引現在価値は14,500,000円であった。リース契約にともない、1回目の家賃の支払いも当座預金より行っている。

借方
貸方
リース資産
14,500,000円
リース債務
14,500,000円
リース債務
300,000円
当座預金
300,000円

リース開始時には、リース資産とリース債務の両建処理を行い、リース支払時にリース債務を取り崩していきます。今回のケースでは、リース料の支払いは前払いなので1回目の利息は発生しませんが、2回目以降は支払額とリース債務の差額を支払利息として計上します。

また、期末時には、売却時に計上した長期前払費用(または長期前受収益)と合わせて、リース資産の減価償却を行います。

リース資産の減価償却については、以下の記事を参照ください。

オペレーティング・リース取引に該当する場合

ファイナンス・リース取引に該当しないリース取引は、オペレーティング・リース取引で会計処理します。オペレーティング・リース取引では、売却とリース、それぞれ個々の契約として扱うのがポイントです。

物件の売却時

(例)期首において、取得価格5,000万円の鉄筋コンクリートの建物(期首における減価償却累計額3,000万円で間接法により減価償却を行っている)をセール・アンド・リースバック取引で売却した。また、売却により1,500万円が当座預金に入金された。

借方
貸方
当座預金
15,000,000円
建物
50,000,000円
減価償却累計額
30,000,000円
固定資産売却損
500,000円

オペレーティング・リース取引の売却時の仕訳は、通常の資産売却の仕訳と同じです。

物件のリース時

(例)セール・アンド・リースバック取引により、売却した物件のリースを開始した。毎月20万円前払いの5年間のリース契約で、オペレーティング・リース取引に該当する。契約にともない、1回目のリース料を当座預金より支払った。

借方
貸方
リース料
200,000円
当座預金
200,000円

オペレーティング・リース取引では、リース料支払いの都度、費用計上します。

セール・アンド・リースバック取引の注意点

セール・アンド・リースバック取引は、会計処理の部分でも説明したように、ファイナンス・リース取引に該当するかどうかで仕訳や会計処理が異なります。ファイナンス・リース取引の条件は、解約不能(解約不能に準ずる取引を含む)であることと、フルペイアウトであることです。セール・アンド・リースバック取引の会計処理を行う際は、リース取引の区分と条件についても確認しておきましょう。

フルペイアウトについては、以下の記事を参照ください。

また、セール・アンド・リースバック取引で子会社などに物件を転リース(リースした物件を第三者に転貸借)するときは、会計処理の方法が少し変わってきます。具体的には、リース料の受け取りと支払いを相殺して、差額を手数料収入として扱います。また、以下の条件をすべて満たすときは、売却時の損益(固定資産売却損など)を繰延処理(長期前払費用、長期前受収益)しなくて良い点もおさえておきましょう。

  • おおむね同一の条件で転リースしている
  • ファイナンス・リース取引に該当する
  • 取引実態で売買損益の実現が行われたと判断される

セール・アンド・リースバック取引の概要と会計処理をおさえよう

セール・アンド・リースバック取引は一見、複雑な取引に見えるかもしれません。しかし実態は、物件の売却とリース契約を同時に行うだけであり、それほど難しい会計処理が行われるわけではありません。なお、通常のリース取引同様に、ファイナンス・リース取引とオペレーティング・リース取引に分けて処理する必要がありますので、その点は注意して会計処理を行うようにしましょう。

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よくある質問

セール・アンド・リースバック取引とは?

所有する物件を売却したあと、同物件の賃貸契約を行うことで、資金調達と同物件の継続利用を可能にする取引を指します。詳しくはこちらをご覧ください。

セール・アンド・リースバック取引の注意点は?

ファイナンス・リース取引に該当するかの判断、転リースでの会計処理に注意します。詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

監修:萱谷 有香(叶税理士法人 東京事務所代表)

叶税理士法人 東京事務所代表
不動産専門の税理士。

不動産投資に特化した税理士事務所で働きながら収益物件について税務と投資面で多くの知識を得られたことを活かし
自らも不動産投資を手掛ける。
大手管理会社、ハウスメーカーや賃貸フェアなどで講演実績があり、記事執筆も行う。
不動産投資の規模を拡大していくために、なくてはならない金融機関からの融資についても積極的に紹介やアドバイスを行う。
金融機関から融資を引きやすい、または金利交渉しやすい決算書の作成を得意とする。
物件購入前、物件保有中、物件売却時、相続時、どの時点で相談を受けても必ず投資家にプラスになるアドバイスを心掛けている。
著書に『減価償却節税バイブル』( 技術評論社)がある。

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