- 更新日 : 2026年9月14日
セール・アンド・リースバック取引の会計処理と仕訳をわかりやすく解説
セール・アンド・リースバック取引の仕訳は、リース区分がファイナンスかオペレーティングかで異なります。
- ファイナンスリースは売却損益を繰延処理する
- オペレーティングリースは通常の売却仕訳と同じ
- 新基準では資産の「売却該当性」を先に確認する
Q. ファイナンスリース該当時、売却益はすぐに計上できる?
A. できません。長期前受収益として繰り延べ、リース期間にわたって配分します。
保有する不動産の有効活用を進める企業も増えてきています。セール・アンド・リースバック取引による不動産の有効活用と資金調達も、不動産有効活用の方法のひとつです。この記事では、セール・アンド・リースバック取引の内容と会計処理の方法、注意点についてそれぞれ解説していきます。
セール・アンド・リースバック取引とは

セール・アンド・リースバック取引とは、上の図のように、所有する物件の売却(セール)を行ったあと、同物件について賃貸契約(リース契約)を結び、引き続き同物件を利用できるようにする取引を指します。所有する不動産を中心に企業でも取り入れられているスキームで物件の売却によって資金調達ができる一方、賃貸料を支払うことで、一定期間、物件の利用を継続できるのが特徴です。
なお、セール・アンド・リースバック取引を行うことによって、賃貸契約による賃貸料が発生することにはなりますが、物件の所有者ではなくなるため、物件を管理維持するための修繕費や税金の支払いはなくなります。さらに、物件の売却によって手元資金が増えることもあり、キャッシュフローの改善やコスト管理の簡素化などに有効な方法です。
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セール・アンド・リースバック取引の会計処理の流れ
セール・アンド・リースバック取引は、リース取引を含んだ取引です。そのため、通常のリース取引と同様に、ファイナンス・リース取引とオペレーティング・リース取引に区分して会計処理を行います。ここでは、金融会社やリース会社などのセール・アンド・リースバック取引を業として行っている会社側の会計処理ではなく、一般企業での会計処理を想定して、物件を売却する側の会計処理を取り上げます。
セール・アンド・リースバック取引を引き受ける金融会社やリース会社のリース取引部分の会計処理については、以下の記事を参照ください。
ファイナンス・リース取引に該当する場合
ファイナンス・リース取引は、資産を取得したときと、ほぼ同等の性質があるリース取引を指します。セール・アンド・リースバック取引のリース部分がファイナンス・リース取引に該当するときは、以下のような流れで会計処理を行います。
ファイナンス・リース取引については、以下の記事を参照ください。
物件の売却時
(例)期首において、取得価格5,000万円の鉄筋コンクリートの建物(期首における減価償却累計額3,000万円で間接法により減価償却を行っている)をセール・アンド・リースバック取引で売却した。また、売却により1,500万円が当座預金に入金された。
通常の資産売却の仕訳とほとんど同じですが、売却損の全額を長期前払費用(売却益は長期前受収益)に計上する点が、通常と異なります。ただし、売却損が、合理的な見積市場価額が帳簿価額を下回ることによって生じたことが明らかな場合は、売却損を繰り延べず、売却時の損失として計上します。
物件のリース時
(例)セール・アンド・リースバック取引により、売却した物件のリースを開始した。リース料総額(毎月30万円前払いの5年契約)の割引現在価値は14,500,000円であった。リース契約にともない、1回目の家賃の支払いも当座預金より行っている。
リース開始時には、リース資産とリース債務の両建処理を行い、リース支払時にリース債務を取り崩していきます。今回のケースでは、リース料の支払いは前払いなので1回目の利息は発生しませんが、2回目以降は支払額とリース債務の差額を支払利息として計上します。
また、期末時には、売却時に計上した長期前払費用(または長期前受収益)と合わせて、リース資産の減価償却を行います。
リース資産の減価償却については、以下の記事を参照ください。
オペレーティング・リース取引に該当する場合
ファイナンス・リース取引に該当しないリース取引は、オペレーティング・リース取引で会計処理します。オペレーティング・リース取引では、売却とリース、それぞれ個々の契約として扱うのがポイントです。
物件の売却時
(例)期首において、取得価格5,000万円の鉄筋コンクリートの建物(期首における減価償却累計額3,000万円で間接法により減価償却を行っている)をセール・アンド・リースバック取引で売却した。また、売却により1,500万円が当座預金に入金された。
オペレーティング・リース取引の売却時の仕訳は、通常の資産売却の仕訳と同じです。
物件のリース時
(例)セール・アンド・リースバック取引により、売却した物件のリースを開始した。毎月20万円前払いの5年間のリース契約で、オペレーティング・リース取引に該当する。契約にともない、1回目のリース料を当座預金より支払った。
オペレーティング・リース取引では、リース料支払いの都度、費用計上します。
セール・アンド・リースバック取引の注意点は?
セール・アンド・リースバック取引は、資産の売却とリース契約が一体となった取引です。通常の固定資産売却と同じ感覚で仕訳を行うと、売却損益やリース料の処理を誤る可能性があります。
ファイナンス・リース取引に該当するか確認する
セール・アンド・リースバック取引では、売却後のリース契約がファイナンス・リース取引に該当するかどうかで仕訳が変わります。ファイナンス・リース取引とは、解約不能または解約不能に準ずるリース取引で、かつ借り手がリース物件から得られる経済的利益を実質的に享受し、リース物件の使用に伴うコストを実質的に負担する取引です。
ファイナンス・リース取引に該当する場合、売却時に発生した固定資産売却益や固定資産売却損を、すぐに損益として処理しない点に注意が必要です。売却損益は長期前受収益または長期前払費用として繰り延べ、リース期間にわたって配分します。一方、オペレーティング・リース取引に該当する場合は、通常の固定資産売却と同じように売却損益を認識し、リース料は支払時に費用処理します。
解約不能とフルペイアウトの条件を確認する
ファイナンス・リース取引に該当するかを判断する際は、解約不能とフルペイアウトの条件を確認します。解約不能とは、契約上リース期間の途中で解約できない取引や、解約できるとしても実質的に解約が難しい取引を指します。たとえば、途中解約時に多額の違約金が発生する場合は、解約不能に準ずる取引と判断されることがあります。
フルペイアウトとは、リース期間中のリース料によって、貸し手が物件の取得価額や関連費用をおおむね回収できる状態をいいます。この条件を満たす場合、借り手は実質的に資産を購入して使用している状態に近くなるため、ファイナンス・リース取引として処理する必要があります。セール・アンド・リースバック取引の仕訳を行う前に、契約書、リース料総額、リース期間、解約条件を確認しておくことが重要です。
フルペイアウトについては、以下の記事を参照ください。
転リースを行う場合は会計処理が変わることがある
セール・アンド・リースバック取引で借り戻した物件を、子会社や関連会社など第三者に転リースする場合は、通常の処理とは異なる点があります。転リースとは、自社がリースした物件をさらに別の相手に貸し出す取引です。この場合、リース料の支払いと受け取りを別々に総額表示するのではなく、差額を手数料収入として処理することがあります。
また、一定の条件を満たす場合は、売却時に発生した固定資産売却損益を繰延処理しないことがあります。具体的には、おおむね同一条件で転リースしていること、ファイナンス・リース取引に該当すること、取引実態として売買損益が実現していると判断できることなどがポイントです。転リースを伴う取引は仕訳が複雑になりやすいため、通常のセール・アンド・リースバック取引とは分けて確認する必要があります。
新リース会計基準でセール・アンド・リースバック取引の仕訳はどう変わる?
企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」は2024年9月に公表され、原則として2027年4月1日以後開始する事業年度の期首から適用されます。なお、2025年4月1日以後開始する事業年度の期首から早期適用することもできます。
そのため、適用時期に応じて、従来のリース会計基準と新リース会計基準のどちらに基づいて会計処理するかを確認する必要があります。従来のように、売却とリースバックを単純に分けて仕訳するだけでなく、まず資産の譲渡が会計上の「売却」に該当するかを確認することが重要です。
資産の譲渡が売却に該当するかを先に判断する
新リース会計基準では、セール・アンド・リースバック取引を、売手である借手が資産を買手である貸手に譲渡し、その資産を買手からリースバックする取引として整理しています。仕訳を行う際は、形式上の売買契約があるかだけでなく、資産の支配が買手に移転しているかを確認します。売却に該当する場合は、資産の譲渡とリースバックをそれぞれ会計処理します。売却に該当しない場合は、固定資産売却益や固定資産売却損を認識せず、金融取引に近い処理を検討する必要があります。
参考:企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」等の公表|企業会計基準委員会
売却に該当する場合はリースバック部分を新基準に沿って処理する
資産の譲渡が売却に該当する場合、売手である借手は、売却により資産を帳簿から外しますが、譲渡対価と帳簿価額との差額の全額を売却損益として計上するわけではありません。差額のうち、買手(貸手)に移転した権利に対応する部分のみを売却損益として認識し、リースバックにより自社が引き続き使用する権利に対応する部分の損益は認識せず、その分は使用権資産の取得価額に反映させます(企業会計基準適用指針第33号 第56項)。そのうえで、リースバック部分については、新リース会計基準に沿って使用権資産とリース負債を計上します。従来基準では、リースバック部分をファイナンス・リース取引とオペレーティング・リース取引に分けて処理していましたが、新基準では借手のリースについて使用権資産とリース負債を認識する考え方が中心になります。
譲渡対価が時価と異なる場合は調整が必要
セール・アンド・リースバック取引では、資産の売却価格とリース料が一体で設計されることがあります。そのため、譲渡対価が時価より高い、または低い場合は、売却損益をそのまま認識すると実態とずれる可能性があります。売却価格が時価より高い場合、超過部分は実質的に追加の資金調達と考えられることがあります。反対に、売却価格が時価より低い場合は、将来のリース料に反映されている可能性があります。仕訳を行う際は、売却価格、時価、リース料の関係を確認し、取引実態に沿って処理することが重要です。
セール・アンド・リースバック取引でよくある仕訳ミスは?
セール・アンド・リースバック取引は、資産の売却とリースバックが一体になった取引です。通常の固定資産売却や賃借料の支払いと同じ感覚で処理すると、売却損益、リース資産、リース負債、支払利息などの仕訳を誤る可能性があります。
通常の固定資産売却としてだけ処理してしまう
セール・アンド・リースバック取引では、物件を売却したあとも同じ物件をリースで使い続けます。売却時の仕訳だけで処理を終えると、リースバック部分の会計処理が漏れてしまいます。ファイナンス・リース取引に該当する場合は、リース資産とリース債務を計上し、支払時には元本返済部分と利息部分を区分する必要があります。単に固定資産を除却し、入金額との差額を固定資産売却益または固定資産売却損として処理するだけでは不十分です。
防止策としては、契約開始時に「売却仕訳」と「リースバック仕訳」を分けて確認するチェックリストを作成し、売却後のリース契約書、リース料総額、支払スケジュールを必ず確認する運用にするとよいでしょう。
売却損益をすぐに全額計上してしまう
ファイナンス・リース取引に該当するセール・アンド・リースバック取引では、売却時に発生した利益や損失を直ちに全額損益として処理しない場合があります。売却益は長期前受収益、売却損は長期前払費用として繰り延べ、リース期間にわたって配分する処理が必要になることがあります。通常の固定資産売却と同じように、発生時に全額を損益計上すると、期間損益が実態とずれる可能性があるため注意が必要です。
防止策としては、売却損益が発生した時点で、リース区分、リース期間、繰延処理の要否を確認する承認フローを設けることが有効です。会計ソフト上でも、固定資産売却損益だけで完結させず、長期前払費用や長期前受収益への振替要否を確認しましょう。
リース区分や契約条件を確認せずに仕訳する
セール・アンド・リースバック取引の仕訳では、リースバック部分がファイナンス・リース取引に該当するのか、オペレーティング・リース取引に該当するのかを確認する必要があります。解約不能性、フルペイアウト、リース期間、リース料総額、買戻し条件などを確認せずに仕訳を行うと、リース資産・リース債務の計上漏れや、賃借料処理の誤りにつながります。
防止策としては、契約書の確認項目を標準化し、経理部門だけでなく、契約担当部門や財務部門とも情報を共有することが重要です。契約締結前に会計処理への影響を確認しておけば、期末になってから仕訳修正が必要になる事態を防ぎやすくなります。
セール・アンド・リースバック取引の概要と会計処理をおさえよう
セール・アンド・リースバック取引は一見、複雑な取引に見えるかもしれません。しかし実態は、物件の売却とリース契約を同時に行うだけであり、それほど難しい会計処理が行われるわけではありません。なお、通常のリース取引同様に、ファイナンス・リース取引とオペレーティング・リース取引に分けて処理する必要がありますので、その点は注意して会計処理を行うようにしましょう。
よくある質問
セール・アンド・リースバック取引とは?
所有する物件を売却したあと、同物件の賃貸契約を行うことで、資金調達と同物件の継続利用を可能にする取引を指します。詳しくはこちらをご覧ください。
セール・アンド・リースバック取引の注意点は?
ファイナンス・リース取引に該当するかの判断、転リースでの会計処理に注意します。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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