• 作成日 : 2025年2月5日

建物の減価償却費の計算方法は?耐用年数や新築・中古の違いなども解説

建物の減価償却とは、建物の取得費用を法定耐用年数に応じて毎年少しずつ費用として計上する仕組みです。正しい計算や処理は、経理業務をスムーズに進める鍵となります。

この記事では、建物の減価償却について押さえておきたい基本と仕訳の具体例をわかりやすく解説します。

建物の減価償却とは

建物の減価償却とは、建物の取得価額を法定耐用年数にわたって分割し、経費として計上する会計処理です。建物は使用に伴って価値が減少していく資産として扱われ、土地とは異なり減価償却の対象になります。

そもそも減価償却とは

減価償却とは、固定資産の取得に要した費用を、一度に経費として計上するのではなく、一定の期間にわたって配分しながら費用計上していく会計処理です。企業や個人事業主が事業用に建物や設備を取得した際、その取得価額を一括して経費処理すると、実態以上に大きな損失が計上されることになります。

そのため、税法上では建物や機械装置、車両運搬具などの資産ごとに耐用年数を定め、その期間にわたって価値が逓減していくものとして、毎期規則的に費用配分を行う仕組みです。

この仕組みは会計上、正しい期間損益計算を行うために重要とされ、税務上も法定耐用年数に応じて減価償却費が認められます。建物は比較的高額な取得価額となることが多く、かつ長期間にわたって使用する資産であるため、減価償却の対象となる代表的な資産といえます。

建物の減価償却が必要な場面

建物の減価償却は、賃貸収入がある場合や不動産を売却する際に必要になります。マンションやアパートなどの賃貸経営をして家賃収入を得ている場合、確定申告の際に収益と合わせて物件の取得費を申告しなければなりません。

また、不動産を売却する際の譲渡所得の計算においても、建物の取得費を算出するために減価償却費相当額を考慮する必要があります。これは、建物が築年数の経過とともに価値が減少することを反映させるためです。さらに、アパート経営などの不動産所得がある場合は、減価償却費を計上することで節税効果を得られます。

建物の減価償却費の計算方法

建物の減価償却費の計算方法には定額法と定率法がありますが、1998年(平成10年)4月1日以降に取得した建物については原則として定額法を採用する必要があります。

それぞれの減価償却の計算方法を紹介します。

定額法による計算方法

定額法とは、毎年一定の金額を償却していく方法で、取得価額に定額法の償却率を乗じて行います。資産の取得年度に関わらず、毎年安定した費用配分ができる点が特徴です。

償却率は、国税庁が定める「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」によって決められています。建物の耐用年数は資産の種類や構造によって異なり、それに応じて償却率も異なります。

減価償却費の計算式は、以下です。

減価償却費(償却限度額)=取得価額×定額法の償却率

定率法による計算方法

定率法とは、毎年の減価償却費を前年度末の未償却残高に定率法の償却率を乗じて計算する方法です。この方法では、償却開始時期の減価償却費が最も大きく、その後徐々に減少していきます。

計算の基本は未償却残高に償却率を乗じる方法です。しかし、この金額が一定額(償却保証額)を下回った場合は、改定取得価額と改定償却率を用いた計算に切り替わります。最終的には1円を残して償却を完了します。

定率法の特徴は、初期の節税効果が高くなる点です。ただし、計算方法は定額法と比べて複雑になります。計算には、以下の式を用います。

未償却残高×定率法の償却率

建物の減価償却費の計算式に必要な項目

建物の減価償却費の計算式に必要な項目についても、把握しておきましょう。

建物の取得価額とは

取得価額とは、建物を取得するために要した金額に、付随費用を加えた総額を指します。たとえば、購入時に発生する以下のような費用が含まれます。

  • 購入代金
  • 仲介手数料
  • 固定資産税精算金
  • 地鎮祭
  • 上棟式

また、建物の取得に関する費用であっても、以下のものは取得価額に含めなくて良いこととなっています。

  • 租税公課(不動産取得税、印紙税など)
  • 建築確認申請費用
  • 登記費用
  • 落成式
  • 竣工式

土地と建物を一括で購入した場合には、契約書に記載された金額をもとに土地と建物の区分を明確にする必要があります。

建物の法定耐用年数とは

法定耐用年数は、資産ごとに税法で定められた期間を指します。建物の用途や構造によって異なり、たとえば以下のように分類されます。

  • 鉄筋コンクリート造(住宅用):47年
  • 木造(住宅用):22年
  • 軽量鉄骨造(柱の肉厚3mm未満):19年

中古物件の場合、法定耐用年数を再計算する必要があります。一般的な計算方法として(法定耐用年数-経過年数)+(経過年数×20%)という計算式が用いられますが、建物の状況によって異なる計算方法が適用される場合もあります。

建物の償却率とは

償却率は、建物の減価償却費を計算するために使用する係数です。建物の構造ごとに法定耐用年数に応じて定められています。

参考:国税庁 減価償却資産の償却率表 

建物の減価償却費の計算例

建物の減価償却費は、新築物件と中古物件で計算方法に違いがあります。それぞれの具体例を以下で紹介します。

新築物件を購入した場合

新築物件では、取得価額と法定耐用年数に基づいて減価償却費を計算します。例として、取得価額3,000万円の木造住宅の場合、法定耐用年数は22年で、計算式は以下のとおりです。

取得価額3,000万円×償却率0.046⁼減価償却費138万円

この場合、毎年の減価償却費は138万円となり、22年間にわたって均等に費用化されます。

中古物件を購入した場合

中古物件の場合、経過年数を考慮した耐用年数(残存耐用年数)を計算し、それに基づく償却率を使用しなければなりません。残存耐用年数は、法定耐用年数と経過年数に基づいて以下の計算式で算出されます。

(法定耐用年数-経過年数)+経過年数×20%=残存耐用年数

築10年の木造住宅(法定耐用年数22年)の場合、残存耐用年数14年です。耐用年数14年に対する償却率は法定での場合、取得価額が2,000万円の場合、0.072が償却率になり、減価償却費は以下のとおりです。

取得価額2,000万円 ×償却率 0.072=減価償却費144万円

毎年の減価償却費は144万円となり、14年間にわたって費用計上します。中古物件では、残存耐用年数が新築物件より短く設定されるため、年間の減価償却費が高くなる傾向があります。

建物の減価償却費を自動計算できるツール

建物の減価償却費を正確に計算するには、取得価額、耐用年数、償却率、経過年数など、複数の要素を考慮する必要があります。そのため、自動計算ツールの活用がおすすめです。

各種会計ソフトウェアや税理士事務所が提供するウェブツールを利用することで、自動計算が可能です。これらのツールでは、取得価額や耐用年数、取得年月日などの基本情報を入力するだけで、減価償却費が正確に算出されます。

また、最新の税法改正にも対応しているため、複雑な計算や法的な変更点を気にせず使用できる点が特徴です。さらに、各会計システムでは多くの場合固定資産台帳の作成や管理、税務申告資料の自動生成などの機能も備えているため、経理担当者の業務効率化に大いに役立つでしょう。

建物の減価償却費の仕訳・勘定科目

減価償却費の仕訳方法には、直接法と間接法の2つです。どちらを採用するかは会社の会計方針によりますが、一般的には間接法が多く採用されています。それぞれの特徴と仕訳方法を以下で解説します。

直接法による仕訳方法

直接法は、減価償却費を計上すると同時に、建物勘定の帳簿価額を直接減少させる方法です。帳簿上の建物の価額が逐年減少していく形で表示されます。簡潔でわかりやすい反面、取得価額を維持して記録したい場合には不向きです。

仕訳は、以下のように行います。

【例:年間の減価償却費が100万円の場合】

借方貸方摘要
減価償却費1,000,000円建物1,000,000円減価償却費計上

直接法では、「建物」勘定の金額がそのまま未償却残高を表します。固定資産台帳と帳簿の一致がわかりやすい反面、取得価額の管理ができなくなる点がデメリットです。

間接法による仕訳方法

間接法は、減価償却費を計上すると同時に、貸方科目として「減価償却累計額」を用いる一般的な方法です。この方法では、建物勘定は取得価額のまま帳簿上に記録され、減価償却累計額を別途計上して未償却残高を管理します。

借方貸方摘要
減価償却費1,000,000円減価償却累計額1,000,000円減価償却費計上

間接法では、「建物」勘定の金額は取得価額を維持したまま表示されます。一方で、「減価償却累計額」を差し引いた純額が未償却残高として計算されます。この方法は、取得価額を維持したまま管理できるため、経理処理や財務諸表作成において便利です。

不動産投資をするなら建物の減価償却の知識は欠かせない

不動産投資においては、賃貸収入に対して減価償却費を正しく計上することが求められます。建物の取得価額の把握や法定耐用年数の判断、新築と中古物件の違い、そして減価償却費の計算方法や仕訳処理など、どれも正確に理解していないと思わぬ誤りを招く可能性があります。

特に中古物件は耐用年数の計算が複雑になりがちなので、会計ソフトや減価償却計算ツールを活用して誤差なく処理していくことがポイントです。また、必要に応じて専門家のサポートを受けるのが望ましいでしょう。


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