• 作成日 : 2022年3月4日

営業外支払手形と営業外受取手形を仕訳から解説

営業外支払手形と営業外受取手形を仕訳から解説

手形を活用すれば、資金を準備できないときでも、仕入や有価証券の購入などを行うことが可能です。企業が扱う手形は、取引の事由に応じて、支払手形(受取手形)と営業外支払手形(営業外受取手形)に分かれています。

今回は営業外支払手形、および営業外受取手形の特徴や仕訳の方法を紹介します。

営業外支払手形とは

備品や有価証券、車両のように営業外の取引を起因とする手形債務のことをさします。手形は期日まで支払いを猶予してもらえるため、預金残高に不足が生じている時に便利な制度です。約束手形為替手形などの種類がありますが、営業外支払手形で使用されるのは約束手形です。

手形の場合、支払期日が半年や1年先になる場合もあるため、手形帳による管理が必要です。営業外支払手形の期限が1年を超える場合、長期営業外支払手形に振り替える必要があります。

会計処理上、前回の決算から1年を超えて期限が到達するものを固定負債として扱うルールがあるためです。

支払期日を過ぎたのにも関わらず、手形の決済が行われないと、不渡りになります。不渡り手形を出すと、取引先や顧客からの信頼低下につながりかねません。

営業外支払手形の仕訳例

【例】備品30万円を購入し、代金を手形で支払った

借方
貸方
摘要
工具器具部品
300,000円

営業外支払手形
330,000円
A商店
仮払消費税
30,000円

【例】手形を決済して、購入代金を振り込んだ

借方
貸方
摘要
営業外支払手形
330,000円
当座預金
330,000円
A商店

負債がなくなるため、手形を振り出した時と同額の金額を借方に記載します。口座から引き落とされるため、対応する貸方の勘定項目は当座預金です。

支払手形は、支払いが遅くなることで利息が発生する場合があります。この場合、備品本体と利息を区分して、処理する必要があります。

利息を表す勘定は「前払利息」であることに注意しましょう。利息は時間の経過とともに生じるため、「支払利息」を手形振り出しと同時に計上する必要はありません。

【例】100万円の備品を購入したのに、110万円の手形を発行した

借方
貸方
摘要
備品
1,000,000円
営業外支払手形
1,100,000円
B商店
前払利息
100,000円

決済代金を分割して支払う場合、利息も案分して対応する金額を出さなくてはなりません。例えば、110万円を年4回(3月、6月、9月、12月)に分けて支払う場合、その都度ごとに行う仕訳は以下の通りです。

借方
貸方
摘要
営業外支払手形
275,000円
現金
275,000円
B商店
支払利息
25,000円
前払利息
25,000円

営業外受取手形とは

有価証券や固定資産の売却をはじめ、売上高以外の未収分は営業外受取手形勘定で処理します。営業外支払手形と同様に1年基準があり、手形の期日が前回決算の翌日から起算して1年を超える時は、固定資産として扱われます。

受取手形は満期が訪れる前に、金融機関で手続きを行うことで現金化が可能です。ただし、期日前となるため、額面から金利相当額を控除した金額しか受け取れません。これを割引手形と呼び、控除額を含めて仕訳する必要があります。

営業外受取手形の仕訳例

【例】事業の運転資金とするために、備品(帳簿価格2万円)を3万円で売却した

借方
貸方
摘要
営業外受取手形
30,000円
備品
20,000円
C商店
固定資産売却益
10,000円

【例】上記の受取手形期日が到来し、指定の口座に入金を受けた

借方
貸方
摘要
当座預金
30,000円
受取手形
30,000円
C商店

受取手形には支払期日や金額以外にも、支払場所が設定されています。通常の場合、支払場所に設定されているのは銀行です。

しかし、銀行と事業所が離れている場合があるため、支払期日に銀行へ出向くのは非効率です。そのため、取り立てを銀行に依頼し、支払期日に決済が行われた時点で仕訳を行います。

次は手形割引の会計処理を紹介します。

【例】約束手形30万円について手形割引を行う。割引額は3万円。支払いは預金口座へ。

借方
貸方
摘要
当座預金
270,000円
受取手形
30,000円
手形売却損
30,000円

手形割引により生じた利息は、手形売却損勘定で処理してください。手形は支払い余力がない会社には助け舟になりますが。受け取る側は売掛金をなかなか回収できないため、ストレスを感じる恐れがあります。

実際に支払いを受けるまで数ヵ月以上経過することもあるため、期日までに資金不足に見舞われる恐れもあります。手形割引は、売掛金の弁済を待つ企業の資金不足を防げる便利な制度です。

通常の手形との違い

建物や備品、土地など営業外の事象が原因で手形を使用する場合は、「営業外支払手形」「営業外受取手形」勘定を用います。一方、本業の仕入で使用する場合は「支払手形」「受取手形」勘定で処理します。

会計処理上は営業取引とそれ以外の取引を明確に区分して処理しなくてはなりません。そのため、同じ手形であっても、別々の勘定を使用します。取引の種類に応じて、扱う手形も使い分けると覚えましょう。

また、営業取引に関する保証金を手形で支払ったときは、「差入支払手形」という勘定項目を使用します。

営業外支払手形は通常の手形と分けて会計処理を行う

主たる営業活動で生じた手形は支払手形、営業活動以外が原因の手形を営業外支払手形と区分して仕訳を行います。受取手形も同じ考え方・処理方法です。

仕訳の方法自体は、営業外支払手形か支払手形かによって違いはありません。営業外支払手形は利息の処理を行う場合、手形の決済回数に応じて利息額も案分して計上することに注意が必要です。

営業外受取手形の場合、割引を行うことで期日の到来前に現金化が可能です。手形割引では、利息分を手形売却損で計上することを忘れないようにしましょう。

よくある質問

営業外支払手形とは?

土地や備品など、営業外の取引が原因の手形債務です。詳しくはこちらをご覧ください。

営業外受取手形とは?

土地や備品など、営業外の取引が原因の手形債権です。詳しくはこちらをご覧ください。


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