- 更新日 : 2023年3月14日
法人税の確定申告のやり方とは?決算から申告まで流れを解説

初めて法人で決算や確定申告を行う経理担当者の場合、特に決算から法人税申告書の作成の流れでつまづくことが少なくありません。法人での決算に必要な基礎知識は持っていても、それをきちんと運用できるか不安な方もおられると思います。そこで今回は復習も兼ねて、法人の決算から確定申告までの流れを解説いたします。
目次
法人の確定申告とは
法人の確定申告にもいくつか種類があります。
法人税の確定申告
法人税は、法人が企業活動で得た所得(益金から損金を控除した額)に対して課税される税金です。国内の普通法人の場合、その事業年度の所得全額が課税対象となります。
法人は、原則として事業年度終了日の翌日から2カ月以内に法人税申告書にて、法人税及び地方法人税の確定申告を行わなくてはなりません。
消費税の確定申告
基準期間(2年前の事業年度)の課税売上高が1,000万円を超える場合や、消費税課税事業者選択届出書を提出している場合、特定期間の課税売上高が1,000万円を超える場合は、消費税の申告が必要です。
原則として、消費税及び地方消費税の確定申告は、課税期間の終了日の翌日から2カ月以内に行う必要があります。
法人事業税の確定申告
法人事業税は、自治体に事業所を設けて事業を行っている法人の所得などに対して課せられる税金です。国税である法人税とは異なり、地方自治体が課税する地方税になります。
法人事業税の確定申告も、原則として事業年度終了日の翌月から2カ月以内に行う必要があります。
法人都道府県民税及び法人市町村民税の確定申告
都道府県や市町村に事務所がある法人に課される税金です。法人都道府県民税と法人市町村民税をまとめて法人住民税といいます。法人税額を基準に課される法人税割と資本金・従業員数に応じて課される均等割があり、均等割は必ず発生するものです。
法人住民税は、原則として事業年度終了日の翌日から2カ月以内の確定申告が必要です。法人都道府県民税は県税事務所などへ(※法人事業税と同じ様式)、法人市町村民税は市町村役場などで申告を行います。
法人決算と確定申告の流れ
法人の決算書は株主や取引先、金融機関などのステークホルダーに対し、会社の一定期間の収支や財産状況の報告をすることを目的として作成される書類です。法人の決算では定められた決算日を基準日として、その事業年度の会社の活動結果を決算書にまとめます。
決算書を見れば会社がどのように資金を調達し、どのような投資を行い、一連の営業活動によっていくらの利益が獲得できたのかを確認可能です。また、経理担当者は決算書の内容を受けて各種税金の申告納付、帳簿書類の保存、株主総会の準備等を進めていくことになります。
ここでは主として法人の決算書ができあがる直前から、法人税の申告書を作成する流れについて見ていきたいと思います。法人決算について詳しくはこちらの記事もご覧ください。
決算書作成と法人税の申告書
一般に決算の際、経理担当者は現預金をはじめ各種勘定科目の残高調整、棚卸資産の評価、収益の繰延べや費用の見越し、あるいは減価償却費、各種振替や引当金について調査しつつ、仕訳伝票を作成していきます。
そして、最終的には税引前当期純損益をもとに法人税の計算を行います。法人税の未払計上処理では、法人税の申告書作成をするか、又は重要な調整項目について加減算を行って法人税の課税所得を算出し、法人税率を乗じる過程が求められます。
黒字で決算を迎えた場合、法人税等の未払計上の決算伝票は次のとおりです。
(借方) | (貸方) |
法人税等 ××× | 未払法人税等 ××× |
借方は損益計算書の末尾へ、貸方は貸借対照表の負債の部に表示されます。
赤字決算の場合には、中間申告分の還付も想定されることから、次のような形式となります。
(法人税の中間納付時に仮払処理したケース)
(借方) | (貸方) |
法人税等 ××× | 仮払法人税等 ××× |
では、以下で決算書に計上する法人税等について解説しましょう。
法人税の申告書作成
法人税の申告書は、別表4や別表5(1)とつながりのある個別の別表を先に作成し、最終的に別表1に税額を記載して仕上げる流れです。
最近は申告書ソフトが発達していて、指示のとおりに作成すれば課税所得が求まり、税額計算までやってくれます。しかし、なぜそうなるか、なぜそのように算出されるのかを前提知識として持っていれば、数値に対して自信を持つことが可能です。申告書の数値に自信を持ち、税務の知識を会計側にフィードバックできるよう、計算のしくみを理解しましょう。
利益と所得
会計で計算した税引前当期純利益は、収益から費用や損失を差し引いて求めます。
これに対し法人税の課税所得は、益金から損金を差し引いて算出します。
つまり、この収益と益金、費用・損失と損金の考え方の違いを理解し、調整すればよい、ということです。
結論から言えば、会計で求めた税引前当期純利益に加算・減算することで課税所得を求める過程が別表4であり、その結果を別表1に引き継ぎ法人税額を算出、そして別表5(1)に翌期への引き継ぎ額を記載します。
別表4における具体的な税務調整
法人税における税務調整は4つに分かれており、その考え方はシンプルです。
- 益金算入 :会計上の収益になかったけれど、益金となるものを加算
- 益金不算入:会計上の収益が、益金として認められないので減算
- 損金算入 :会計上の費用や損失になかったけれど、損金として認められるものを減算
- 損金不算入:会計上の費用や損失を、損金として認められないので加算
1と4は課税所得が増えることを、2と3は課税所得が減ることを意味します。別表4の仮計より上の項目にて、加算・減算を入力します。
別表4でよく使われる調整内容は以下のとおりです。
別表4における留保と社外流出
別表4には、留保欄と社外流出欄があります。留保とは会計処理と税務処理のタイミングがずれているためにいつかは必ず解決するものであり、別表5(1)に連携されて翌期以降に持ち越されるものです。
これに対して、社外流出欄はいつまでも会計処理と税務処理のずれが解決されないものを指します。
例えば、会計で交際費を税務上の上限を超えて計上すれば、超えた分は超過額として加算されます。しかし、将来的に解決するものではありませんので、この超過額は社外流出欄に記載されることになります。
別表5(1)に現れる会計と税務のずれ
別表5(1)は、法人税における貸借対照表のような位置づけで、別表4で留保欄に記載された項目が転記されます。会計における繰越利益剰余金と別表5(1)の繰越損益金、別表5(1)の「納税充当金」と会計における未払法人税等はそれぞれ増減が一致します。
このように会計と税務での調整が正しくなされると、法人税申告書のそれぞれの別表は正しく連動してくるものです。
まとめると、法人税の申告書の骨組みとしては、次のとおりとなります。
- 前年度の申告書を参照して、別表5(1)の期首残高を埋める
- 会計処理や前年度の別表5(1)を参照して、別表4を作成する
- 別表5(2)の各税金の当期中の動きを埋める
- 別表1を作成する
法人税申告書について詳しくはこちらの記事もご覧ください。
消費税や地方税の申告納付について
法人税の計算結果を受け、事業税、住民税が計算されます。
事業税は課税所得 × 法人事業税率、住民税は法人税額 × 住民税率 + 均等割額で算出します。
しかし、消費税については決算書から計算するのではなく、税率によってわけた元帳をもとに計算します。
消費税は2019年10月から軽減税率制度が適用され、取引ごとの税率により区分経理(記帳)が求められるようになりました。その代わり経過措置として、区分経理が困難な中小事業者については、売上げの一定割合を軽減税率の売上として税額を計算する特例が設けられています。
法人税や消費税の申告期限は決算日の翌日から2か月以内であり、納付期限も同じ2か月以内です。その他の地方税についても、申告納付の期限は原則として決算日の翌日から2か月以内となります。
法人の確定申告は最新の情報を収集することが重要
今回は決算処理から法人税の申告書作成を中心に、法人の確定申告のやり方についてお伝えいたしました。ただ、消費税の例が示すように、税制改正はさまざまな税に対し毎年行われています。確定申告の時期になって困らないよう、情報収集はこまめに行いましょう。その際、税理士や税務署の力を借りるのもおすすめです。

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