- 更新日 : 2022年9月21日
段階取得に係る差益とは?わかりやすく解説

連結財務諸表を作成するための会計処理には、子会社への投資と、資本の相殺消去をする処理が必要になります。このとき、子会社株式を一括して取得(一括取得)する場合と、複数回にわたって段階的に取得(段階取得)する場合があり、それぞれ処理が異なります。
今回は段階取得した場合における会計処理、及び「段階取得に係る差損益」について具体例を使用して解説していきます。
段階取得とは
段階取得とは、同じ会社の株式を段階的に購入し、結果として当該会社に対する支配を獲得し、連結子会社とすることをいいます。そして、連結財務諸表を作成する際、支配を獲得する前に購入した株式は、支配獲得した時点における株式購入価額(時価)で評価替えをします。
企業結合の会計基準では、支配の獲得(子会社化)が複数の取引により行われた場合、連結決算上、支配獲得時の時価をもって投資の原価を算定する、とされています。これは、支配の獲得(子会社化)によって、同じ会社への出資であっても投資価値が大きく変わったとみなし、いったんそれまで保有していたその会社の株式を時価で売却し、改めて時価で株式を取得した、という考えに基づいています。
そして、時価に評価替えした投資原価と、それまで段階的に取得した取引ごとの取得原価合計額との差額は、「段階取得に係る差損益」として特別損益に計上することになります。
また、「段階取得に係る差損益」は連結財務諸表作成にあたり、連結仕訳を行う過程で親会社の利益剰余金に含まれ、最終的に「のれん」の金額に影響を与えます。
段階取得の会計処理の流れ
ここでは連結財務諸表を作成するにあたり、子会社株式を段階取得した際の会計処理について見ていきましょう。連結仕訳は以下の流れで行います。
- 投資勘定の評価替え
- 子会社の資産・負債の評価替え
- 投資と資本の消去
それでは、それぞれの項目について解説します。
投資勘定の評価替え
個別上の取得原価を支配獲得時の時価に評価替えした際に発生した差額は「段階取得に係る差損益」として特別損益に計上します。つまり、差益の場合は「段階取得に係る差益」として特別利益に、差損の場合は「段階取得に係る差損」として特別損失に計上します。
<差益が出る場合>
(※)支配獲得時における時価-個別上の取得価額
<差損が出る場合>
(※)個別上の取得価額-支配獲得時における時価
子会社の資産・負債の評価替え
個別上の子会社の資産・負債を支配獲得時における時価に評価替えを行います。ここでいう「時価」とは、より実態を表す価額を意味し、具体的には子会社が有する土地や建物を時価に評価替えし、貸倒債権があれば、債権額から控除をします。
そして、評価替えを行った際に生じた個別上の簿価と時価との差額は「評価差額」として処理します。「評価差額」は後述する「投資と資本の相殺消去」仕訳で相殺され、最終的に「のれん」の金額に吸収されることになります。
(※1)支配獲得時の時価-個別上の簿価
(※2)貸借差額
投資と資本の相殺消去
上で評価替えをした投資勘定と資産・負債勘定の消去をし、差額は「のれん」として計上します。ここで、「のれん」の金額は投資した子会社の超過収益力を表しています。
「投資と資本の消去」仕訳を行うことにより、関係会社(子会社)株式と子会社の資本勘定が消去され、子会社への投資が「非支配株主持分」及び「のれん」として連結財務諸表上に反映されます。
(※1)子会社の純資産(簿価)
(※2)子会社の資産・負債を評価替えした際(上で記載した仕訳)に生じた評価差額
(※3)段階取得した子会社株式を支配獲得時の時価に評価替えした評価替え後の簿価
(※4)子会社の純資産(評価差額含む)に非支配株主持分割合を乗じた金額
(※5)貸借差額
段階取得を正確に理解し処理しよう
連結財務諸表を作成するに際し、今回解説した「投資勘定の評価替え」「子会社の資産・負債の評価替え」「投資と資本の消去」は連結仕訳の基本であり、重要な処理です。特に子会社株式を段階取得した場合の処理は、支配獲得時の時価で評価することが重要ポイントとなります。段階取得についてしっかりと理解し、正確に処理するようにしてください。
よくある質問
段階取得とは?
他の会社の株式を複数回にわたって段階的に取得し、最終的に子会社化(支配を獲得)することをいいます。 詳しくはこちらをご覧ください。
段階取得の会計処理の流れは?
子会社株式段階取得した際の、連結上の会計処理は以下の通りです。
- 子会社株式につき個別上の簿価を時価に評価替えする(評価差額は「段階取得に係る差損益」として特別損失に計上)。
- 子会社の資産・負債を時価に評価替えする。
- 投資勘定と試算・負債勘定を消去し、差額はのれんに計上する。
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