• 更新日 : 2024年11月7日

適用額明細書とは?区分番号一覧表や書き方、欠損金額などの注意点を解説

適用額明細書は、法人が法人税関係特別措置を適用する際に税務署へ提出が必要な書類です。この書類は、適用を受ける租税特別措置法の条項や適用額などを記入のうえ、法人税申告書に添付して提出することが義務付けられています。本記事では、適用額明細書の提出が必要な場合や注意点、実際の書き方まで詳しく解説していきます。

適用額明細書とは?

適用額明細書とは、法人税関係特別措置を適用する場合に、適用を受ける租税特別措置法の条項、区分番号、適用額その他の事項を記載し、法人税申告書に添付して提出する書類を指します。

適用額明細書は、平成22年度(2010年度)税制改正で制定された「租税特別措置の適用状況の透明化等に関する法律(租特透明化法)」により提出が義務化されました。この租特透明化法により、平成23年(2011年)4月1日以降に終了する事業年度から、適用額明細書の提出ルールが開始されています。

万が一、法人税申告書へ適用額明細書を添付しなかった場合や虚偽の記載が判明した場合には、法人税関係特別措置の適用を受けられないおそれがあるため注意が必要です。適用額明細書の提出漏れや記載ミスがあった場合には、速やかに正しい内容で提出することが求められます。

適用額明細書の目的

適用額明細書を提出する目的は、税制における高い透明性と公平性を確保するためです。

そもそも租税特別措置とは、特定の政策目的を達成するために、一定条件を満たした個人または法人に対し税負担の軽減・加重を設ける措置を指します。つまり租税特別措置は、「政策税制措置」の1つといえるのです。

さらに、租税特別措置の中でも、法人税に関するものを「法人税関係特別措置」といいます。法人税関係特別措置のうち、税額または所得を減額させる規定等の適用を受ける場合に、適用額明細書が必須となるのです。

このように、法人税額の減額につながることから、法人税関係特別措置の適用実態を調査するための手段として、適用額明細書のルールが開始されました。適用額明細書によって法人税関係特別措置の実態を明らかにしながら制度の見直しを図ることで、国民が納得できる税制の透明性と公平性確保を目指しています。

租税特別措置の特例を適用する場合は必須

上述したように、法人税関係特別措置を適用する場合、必ず法人税申告書に適用額明細書を添付したうえで税務署へ提出しなければなりません。これを怠ると、租税特別措置の適用を認められないおそれがあります。

ここで、適用額明細書の提出が必要となる、法人税関係特別措置の一例を紹介しましょう。

<法人税関係特別措置の一例>

  • 中小企業者等が機械等を取得した場合の特別償却(中小企業投資促進税制)
  • 試験研究を行った場合の法人税額の特別控除(研究開発税制)
  • 退職年金等積立金に対する法人税の課税の停止
  • 中小企業者等の法人税率の特例
  • 情報基盤強化設備等を取得した場合の特別償却(情報基盤強化税制)

法人税関係特別措置を適用しない場合は提出不要

適用額明細書は、法人税関係特別措置の適用を受けない場合は、提出する必要がありません。なぜなら、適用額明細書は、法人税関係特別措置のうち、税額または所得の金額を減少させる規定等を適用する場合のみ、提出を義務付けられているためです。

そもそも法人税関係特別措置を適用しない場合は、税額へ影響を与えないため適用額明細書は提出不要とされるのです。

適用額明細書の記載に係る区分番号一覧表とは?

区分番号一覧表とは、適用額明細書に記載する区分番号の一覧表を指します。従来と同じ制度名称であっても、税制改正により法人税関係特別措置の入れ替えや内容の変更によって、年度ごとに条項や区分番号が変更されるケースがあるため注意が必要です。

変更による記載ミスを防ぐには、国税庁がウェブサイト上で公表する事業年度の手引を毎年確認しながら、適用額明細書を作成する必要があります。

令和6年度税制改正に伴う区分番号の変更箇所一覧表

国税庁は2024年6月、令和6年度税制改正に伴う区分番号の変更箇所を発表しました。この変更箇所一覧表には、変更箇所がわかりやすく網掛けされているため便利です。

改正前と改正後の対比表が記載された「令和6年4月1日以後終了事業年度に使用する区分番号の変更箇所一覧表」は、以下のリンクから確認できます。適用額明細書を作成する前に、必ず一度目を通しましょう。

参考:国税庁 令和6年度税制改正に伴う区分番号の変更箇所一覧表

令和6年4月1日以降終了事業年度に使用する区分番号一覧表

令和6年度税制改正に伴うすべての区分番号の一覧についても、2024年6月に国税庁から発表されています。令和6年度のすべての区分番号を確認するには、「令和6年4月1日以後終了事業年度に使用する区分番号一覧表」から確認しましょう。以下のリンクから確認できますので、適用額明細書を作成する際に参考にしてください。

参考:国税庁 令和6年4月1日以後終了事業年度に使用する区分番号一覧表

適用額明細書の書き方・記載例は?

実際に適用額明細書の記入用紙を参考に、記載例をみていきましょう。それぞれの記載項目について、以下に説明します。

適用額明細書_記入用紙

参考:国税庁 適用額明細書の記載の手引(令和6年4月1日以後終了事業年度分)

  1. 所管税務署
    所轄税務署を記入(別表一の記載内容を転記)
  2. 納税地
    本店所在地を記入(別表一の記載内容を転記)
  3. 法人名
    法人名を記入(別表一の記載内容を転記)
  4. 法人番号
    法人番号を記入(別表一の記載内容を転記)
  5. 期末現在の資本金の額又は出資金の額
    期末現在の資本金の額または出資金の額を記入
  6. 所得金額又は欠損金
    当該事業年度の所得金額または欠損金額を記入(別表一の記載内容を転記)
  7. 事業年度
    該当する事業年度を記入(別表一の記載内容を転記)
  8. 整理番号
    別表一または別表二に記載される法人の整理番号を転記
  9. 提出枚数
    適用額明細書の提出枚数を記入
  10. 事業種目
    当該事業年度の「適用額明細書の記載の手引」を参考に主たる事業内容を記入
  11. 業種番号
    当該事業年度の「適用額明細書の記載の手引」に記載される「事業種目・業種番号一覧表」から該当項目を記入
  12. 租税特別措置法の条項
    当該事業年度の「適用額明細書の記載の手引」を参考に適用した租税特別措置法の状況を記入
  13. 区分番号
    当該事業年度の「適用額明細書の記載の手引」に記載された該当する区分番号を記入
  14. 適用額
    適用上限額を超えない範囲で適用した金額を記載します。

参考:国税庁 適用額明細書の記載の手引(令和6年4月1日以後終了事業年度分)

適用額明細書を記載するときの注意点は?

適用額明細書は、法人税関係特別措置を適用するための重要な書類であり、正確な記載が求められます。記載ミスによって「税制優遇措置を受けられなかった」といった事態は避けなければなりません。

以下に、適用額明細書を記載する際の3つの注意点を解説していきます。

法人税申告書別表からの転記ミスに注意する

よくある誤りの1つとして、法人税申告書別表からの転記ミスが挙げられます。具体的にいうと、適用額明細書には「期末現在の資本金の額又は出資金の額」および「所得金額又は欠損金額」を記載する2つの項目欄が存在します。

この2つの記入箇所には、法人税申告書別表一の二(一)等と同じ金額を転記する必要があるため、間違えないようにしましょう。

記載金額が適用限度額を超えないよう注意する

たとえば、法人税関係特別措置の1つである「中小企業等である連結法人の法人税率」のように、適用限度額を設けている規定が存在します。限度額が設定されている場合、適用額明細書の記載項目である「適用額」に記入する金額が、あらかじめ定められた適用限度額を超えないように注意しましょう。

万が一、法人税関係特別措置の適用額が変更となる場合、修正申告書の提出が求められ、適用額明細書も修正のうえ再提出が必要です。

所得金額が0円の場合や欠損金額の場合に注意する

適用額明細書に記入した「所得金額又は欠損金額」欄が0円、またはマイナスの金額(欠損金額)である場合には、税額控除や「中小企業者等である連結法人の法人税率の特例」は適用できません。

このように、そもそも適用されない法人税関係特別措置は、適用額明細書の「租税特別措置法の条項」欄に記入しないように注意しましょう。

税制優遇を受けるためには、正確な適用額明細書の提出が不可欠

本記事では、法人税関係特別措置の適用を受けるために義務付けられる、適用額明細書について詳しく解説しました。万が一、適用額明細書を提出し忘れたり、記載に誤りがあったりすれば税制優遇を受けられないおそれもあります。

大切なのは、国税庁が公表する「租特透明化法に基づく適用額明細書の記載の手引」を必ず事業年度ごとに確認することです。

税制に対する正しい理解は、企業経営において不可欠な要素といえます。税制優遇のような経営にメリットのある制度を正しく活用しながら、安定した企業経営を目指しましょう。


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