- 更新日 : 2024年8月8日
分記法とは?三分法や総記法との違いや仕訳例を解説・簿記3級受験者必見!
簿記には分記法や三分法、総記法とよばれる記帳方法があり、仕訳方法によってメリットとデメリットが異なります。仕訳方法の種類を知ることは簿記の第一歩です。この記事では主に分記法の基本について詳しく解説するとともに、どのような会社が分記法に合っているかを紹介します。簿記の基礎知識習得にお役立てください。
目次
分記法とは?
分記法とは商品売買の際に使用する簿記の記帳方法のひとつで、商品売買について「商品(資産)」と「商品売買益(収益)」で処理する方法をさします。分記法と似ている記帳方法には三分法がありますが、決算整理仕訳が必要かどうかなどの違いがあり、特徴を理解して使い分けることが必要です。
なお、簿記とは商品の仕入れや販売、経費の支払い、賃金の支払い、売掛金の回収など会社における日々の取引を勘定科目に置き換えて記録に残すことをさします。
なお、簿記の基本を知りたい人はこちらの記事をご覧ください。
分記法の仕訳例
分記法で仕訳をするとどうなるのか具体例を見ていきましょう。
ここでは「原価1万円の商品を現金で仕入れ、1万5,000円で売り上げた」場合の事例です。分記法では、仕入と売上の2段階で仕訳を行います。
【仕入】
商品を仕入れて在庫が増えた状態です。原価は借方に「商品」として記載します。
【売上】
先ほど1万円で仕入れた商品を1万5,000円で販売したことにより、5,000円の利益が出ました。貸方には商品の原価(商品)と売買益(商品販売益)が記載されています。このように、分記法では商品の購入と販売の差額によって利益がいくらになったのか確認できることがポイントです。
三分法との違いは?
三分法は商品売買を「仕入(費用)」「売上(収益)」「繰越商品(資産)」の3要素で仕訳する方法です。分記法は売上のたびに原価と商品販売益を考慮しますが、三分法は売価で計上するだけなので日々の仕訳が簡単になります。
ただし、三分法では決算時の在庫に対する原価を「繰越商品」に振り分ける決算仕訳が必要な点には注意が必要です。
それでは、三分法で仕分ける具体例を見てみましょう。先ほどと同様に原価1万円の商品を現金で仕入れ、1万5,000円で売り上げたこととします。
【仕入】
三分法の場合は「商品」ではなく、費用の勘定科目「仕入」で処理します。
【売上】
売価で売上を計上します。
【決算整理】
例)期首の商品棚卸高2万円、期末の商品棚卸高が4万円の場合
三分法は日常の記帳処理がスムーズに進められることが利点ですが、その分決算整理仕訳の負担が大きくなることが想定されます。また、決算整理仕訳をしない状態では会社の実態がつかみづらく、タイムリーに数値を追えない点もデメリットでしょう。
総記法との違いは?
総記法では商品の仕入れ、販売どちらも「商品」という勘定科目を使う方法です。原価と売価が混ざった仕訳を行うため決算整理が必須となります。
総記法を使った事例を見てみましょう。ここでは原価1万円の商品を現金で仕入れて、そのうち原価8,000円分の商品を現金1万2,000円で売り上げ、当期の商品販売益が4,000円の場合とします。
【仕入】
【売上】
原価8,000円分の商品を現金1万2,000円で売り上げた場合の仕訳です。
【決算整理】
当期の最終在庫は2,000円、当期の商品販売益は4,000円(=14,000円-10,000円)。
商品販売益を借方の「商品」勘定、貸方の「商品販売益」に計上することで、借方と貸方を合わせています。決算整理仕訳における「商品」勘定は最終的に辻褄を合わせるために使う科目で、それ自体に意味はありません。
このように総記法は仕訳から実態が把握しづらいのが難点です。そのため、簿記として正しい方法のひとつではありますが、ほとんど実務で使われることはありません。
分記法のメリット・デメリット
分記法とそれ以外の仕訳方法の概要をおさらいできたところで、分記法を使うメリットとデメリットを確認しておきましょう。メリット・デメリットが分かれば、自分の会社に分記法が合っているかどうか判断できるはずです。
分記法のメリット
分記法の一番のメリットは、取引のたびに原価と利益を反映しているため、粗利の推移をリアルタイムに把握できることです。スピーディーな経営判断が必要な企業にとっては、分記法を選ぶメリットは大きいでしょう。その他にも在庫の残高管理が簡単、決算整理が不要というメリットがあります。
分記法のデメリット
売上の都度原価と利益を分けて反映するので、日々の仕訳の手間がかかります。よって、日常的な経理業務にコストや手間を割けないような場合には、分記法が不適切な場合もあるでしょう。仕訳の手間がかかるため、単価の安い小売業など業種によっては採用しづらいのも難点です。商品数が少なく単価の高いビジネスには合った仕訳方法といえます。
それぞれの仕訳方法のメリット・デメリットまとめ
ここまで紹介した3つの記帳方法について、メリット・デメリットを表にまとめました。
すべてにおいて完璧な方法はありませんので、メリット・デメリットのバランスをよく検討し自分に合った方法を選ぶことが大切です。
・業績をリアルタイムで把握できない | ||
・決算整理が不要 | ・決算まで、売上高と売上原価の合計額が把握できない | |
・決算整理が複雑になりやすい ・仕組みを理解することがやや難しい |
簿記において分記法の仕訳や他の方法との違いの理解は重要!
簿記で認められている記帳方法が複数あることを知らなかった人も多いのではないでしょうか。会社によって向いている仕訳方法が異なるため、ビジネスの形態に合った仕訳方法を導入しましょう。
この記事で紹介した分記法は売上の都度原価と利益を計上する方法です。業績や在庫の状況をリアルタイムで把握しやすい半面、会計処理に手間がかかるデメリットもあります。特徴を理解して導入を検討してください。
よくある質問
分記法とは?
商品売買について「商品(資産)」と「商品売買益(収益)」で処理する方法。 詳しくはこちらをご覧ください。
三分法との違いは?
法人税等を中間納付したとき、決算時、確定申告により納付したときです。 詳しくはこちらをご覧ください。
総記法との違いは?
総記法は商品売買の仕入・販売ともに「商品」勘定だけを使う方法で、使用する勘定科目は少ないが決算整理が複雑。 詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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